サクソフォン音楽が300年先、400年先
の未来に残るように~上野耕平(Sax
.)×イープラスの新事業「エージェ
ントビジネス」

イープラスが新しく始動した「エージェントビジネス」。SPICEでは、全四回でこの新事業をひもといていくインタビューシリーズを敢行中。第一回では、株式会社イープラス代表取締役会長・橋本行秀氏に事業の概要や根幹をきいた。
では、契約アーティストたちはどのような思いで、イープラスとのパートナーシップを結ぶことにしたのか。ここからは三名の契約アーティストに登場してもらい、それぞれのヴィジョンとともにその思いをきくインタビューをお届けする。
アーティストサイド第一弾は、サクソフォン界の若手No.1カリスマ奏者・上野耕平。サクソフォンという楽器ゆえに抱く熱い思いも語ってくれた。
——アーティストとイープラスとが対等な立場でパートナーシップを組んでいく「エージェントビジネス」ですが、上野さんがイープラスと手を組まれた決め手はどんなところにありますか?
僕はクラシック音楽が子どもの頃から大好きで、同世代はもちろん、僕よりももっと若い世代の人たちにもたくさん聴いてほしいと思っています。でも、その面白さや素敵さが、なかなか伝えきれていない。なんとかアプローチさせていきたいなと、日頃から考えてきました。
最近ではYouTubeやSNSなど、ネットを使った発信ができるようになったので、今までとは違った形のアーティストたちも出てきています。クラシックの音楽家といえば、これまでは、音大を出てコンクールで賞を取って……といったレールしかほぼなかったのですが、今では多様な活躍の仕方をする人たちも出てきました。そうした中で、僕自身もいろいろなことをやってみたいですし、様々な関わり方で、広い層に音楽の魅力を伝えたいと。
上野耕平がコロナ禍で始めたオンラインコンサート『配信小屋』シリーズ(Streaming+より提供)
イープラスの橋本会長とお話しをしていましたら、「クラシック音楽にできることは、まだまだたくさんある」とおっしゃっていて、僕も同じ思いを抱いていますから、何かこれから一緒にやっていけたら、と思ったのです。
特に日本は吹奏楽人口が多いですから、みなさんにもっとコンサートに足を運んでいただきたいですね。日本の吹奏楽には、アマチュアの同志で違いの演奏を聴き合う文化はあるのですが、プロの演奏を聴く文化も、もっと魅力的に形成していかなければいけないと思っているんです。
イープラスのエージェント契約は、「縛りがない」というのが一番の特色で、とてもフレキシブルです。僕自身は、楽器を吹くことと鉄道について語ることしかできませんが(笑)、僕がやりたいと思っていることを、イープラスと協力し合いながら、より多くの人に届けて行きたいです。 
——突如起こったコロナ禍でも、いち早く反田恭平さんのオンライン・コンサートに出演されたり、上野さんご自身もイープラスの配信サービスStreaming+での配信コンサートシリーズ「配信小屋」、YouTubeでのオンライン合奏など、様々な企画や発信にも積極的でしたね。
3月から6月まで、ほぼ4ヶ月はお客様の前で演奏できる機会はありませんでしたので、4月から5月中旬くらいまでは、毎日1時間から1時間半、インスタライブを夜9時から続けました。
日頃、コンサートではお客様とダイレクトにコミュニケーションを取れるのはサイン会でのほぼ一瞬でしたが、時間ができたこういう時にこそ、みなさんの質問に答えたり、演奏も聴いていただくという形で続けていました。
ようやく最近ではコンサートが復活し、素晴らしいギタリスト、押尾コータローさんのライブにサプライズ出演させていただくなど、新しい取り組みもできで、とても嬉しく思っています。
一般に広く演奏動画を集め「宝島」の”テレワーク合奏”企画も実施した
——最近では、アマチュア奏者や楽器を学ぶ若い人たちに向けたレッスン動画サービス「creatone」の講師としても登場されていますね。
「creatone」は、僕が所属するThe Rev Saxophone Quartetのメンバーでもある宮越悠貴が立ち上げたサブスクリプション・サービスで、吹奏楽の楽器ごとに、複数のプロのアーティストが制作しているレッスン動画を見ることができる仕組みです。
僕は茨城県の出身で、身をもって実感しているのですが、地方では楽器や演奏に関する情報がその地域のコミュニティーで完結しがちなんですね。地元の先生がおっしゃることが絶対で、それがたとえ自分とは相性の合わないものであっても、固定観念に縛られてしまう。トップ奏者や、プロのアーティストが実践しているような、多様な演奏技術や情報が、行き届いているかというと、必ずしもそうではないんです。
いいものに出会い、さまざまな情報から自分で取捨選択するという経験を、特に楽器を習得中の若い人たちには経験してもらいたい。そんな思いから、僕も熱意をもってそうした取り組みに参加しています。
「creatone」ホームーページより
——多岐にわたる活動でファンを楽しませてくれている上野さんですが、今後のヴィジョンとして思い描いているのはどんなことですか?
サクソフォンという楽器は比較的新しいですから、レパートリーとなる作品も少ないですし、奏法も開拓している途上にあります。とてもキャッチーな音色が魅力的な楽器だけど、キャッチーな曲ばかりを吹いていると、はたしてこの楽器に未来はあるのか?と思ってしまいますし、かといって前提的な作品ばかりでは聴いてくれる人が減ってしまう。歴史の浅いサクソフォンならではの課題があります。作曲家たちとは理想的なパートナーシップをはかって行きたいですし、いっときの流行で終わらない良いものを生み出して行きたい。
そう考えると、クラシック音楽って、とんでもない文化ですよね。300年、400年前のものを共有し、現代人の生きがいにもなり得るとは、すごいこと。サクソフォン音楽も300年先にそう思ってもらえるようにしていかなければ、と思います。
■若い音楽家たちへのメッセージ
いろんな情報で溢れ、多様な発信方法があるなか、若い人たちには本物を見定めていく力が必要になります。やはり、本物しか残らないと思うんです。今ネットでいくら注目を集めても、それが果たして何十年も、数百年も残るのかどうか。
いかに本質の部分を高め、プロモーションとのバランスを取り、文化を発展させていけるか。バランスの大切さが問われている。そう、両軸で進めていかなければならないと思っています。音楽とはそうやって受け継がれてきたものですし、僕らがそれを途絶えさせてはいけない。若い音楽仲間たちにも、そうしたことをしっかりと伝えていきたいですね。​
取材・文=飯田有抄

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