L→R atsuko(Vo)、KATSU(Key&Gu)

L→R atsuko(Vo)、KATSU(Key&Gu)

【angela インタビュー】
運命に抗いたくなる時もあるけれど、
全てを受け入れて叫べ!

30枚目のシングルは長年寄り添ってきたアニメ『蒼穹のファフナー』最新作のオープニングテーマ「叫べ」。重厚なコーラスで荘厳な印象を醸しつつ、激しいエモーションを呼ぶ高速ドラムにエスニックな情緒、全てがタイトルと同じく潔い。“奇跡の周波数”とも言われるソルフェジオ周波数に挑戦したカップリング「おやすみ」も必聴だ。

万人の共感は呼べなくていい
それが“ファフソン”の宿命

ニューシングルの「叫べ」は、アニメ『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の後半話分オープニングテーマですよね。ということは、前半のオープニングだった「THE BEYOND」(2019年5月発表のシングル)と同時に作られたんでしょうか?

atsuko
いや、後半が別の曲になるなんて知らなかったんですよ。最初に『蒼穹のファフナー』の新作が始まるという話があって…「THE BEYOND」を作った時に“これが『ファフナー』最後の曲かもしれないね”なんて話してたのに、“もう一曲、お願いできますか?”とのオファーが。

ええ!

atsuko
“これで終わりだろうな”と思っていたから“THE BEYOND”なんて作品と同じタイトルをつけちゃったのに、次があったっていう。よくあるんですよ、こういうこと(笑)。
KATSU
プロデューサーによると、後半戦は怒涛の展開になっていくので、そこをフィーチャーした、もっと激しいオープニングが欲しかったみたいです。「THE BEYOND」はバラードっぽく始まり、じょじょにピークを迎える曲だったから、“いきなりピークを迎える曲”というオーダーを受けて…でも、ちょっと嬉しかったですね。“そういうのやっていいんだ!”って。

それでド頭からドラムが鳴り響く、サビ始まりの勇ましいメタルチューンに仕上がっているんですね。

atsuko
KATSUさん、そういうのが好きですからね。歌詞に関しては、物語の中で成長していくキャラクターたちが、その中で痛みを共有していったり、どんなふうにしてここまで辿り着いたのかという経緯を含めて描いていきました。なので、過去の『ファフナー』曲の歌詞を引用しているところもありますし、MVを1コーラス公開した段階で、すでに気づいてくださっている方もいますね。

《あなたはそこにいますか?》等、特にBメロには『蒼穹のファフナー』という作品に関する重要な文言が散りばめられていますが、なぜ日本語でも英語でもなく、ドイツ語で歌われているんでしょう?

atsuko
それ、私も分かんなくて。KATSUさんが急に“ドイツ語にしよう”って言い出したんですよ。なんでだったんですか?
KATSU
そもそも“ファフナー”というワード自体がゲルマン神話に登場する“ファフニール”が語源だったり、登場する機体の名前がドイツ語でカウントされていたりするので、僕の中では『蒼穹のファフナー』ってドイツ発祥みたいなイメージがあったんですよ。今回Bメロでラップとメロディーの中間みたいなものを入れたかったから、“これ、ドイツ語でやったら面白いんじゃないかな?”と。で、歌詞にしたい日本語を知り合いのドイツ人の方に訳していただいて、僕らで歌ったという流れですね。
atsuko
カタカナ表記をそのまま歌ってもドイツ語の発音にならないので、ネイティブな方の音声を聴いた上で録っては送り、発音の確認をしてもらっては歌い直して送る…というのを繰り返しました。それを何回も!
KATSU
“Ich(=私)”は“イッヒ”じゃなくて“イッシ”とか、細かくチェックしていただいて、すごく時間がかかりましたね。僕なんて担当したのは最後の1行だけなのに、一番ダメ出しが多かった!

もとからドイツ発祥のイメージがあったのなら、もっと早く取り入れても良かった気もするのに、今回が初めてというのが不思議なのですが。

KATSU
やっぱり“これが本当に最後なんだろうな”って感じたからでしょうね。『蒼穹のファフナー』の最後の曲として、もう今までの全てを引っくるめた集大成にしたいと…って、これ十何年も言ってるんですけど(苦笑)。
atsuko
“何回言ってるんだ!”ってね(笑)。
KATSU
集大成詐欺くらいの勢い! そういった中で原点に返るという意味で、ドイツ語を入れたかったんですよね。あとから気づいたら冒頭は英語なんで、その混在ぶりも『ファフナー』っぽいなと。

ドイツ語って音の響きが固い分、バトル系の作品とも相性いいですからね。

atsuko
ドイツのイベントに行った時も、現地に住まわれている日本人の方に“どうしてドイツ語を選んだんですか?”って尋ねたら、“オタクにとってドイツ語ってめっちゃカッコ良いんですよ!”って力説されました(笑)。
KATSU
確かにカッコ良いですよね。

同感です。あと、ドイツ語のバックにオリエンタルな音が入っていたり、他のパートでも笛とか琴といった和楽器の音があったりと、いつにも増してサウンドは多国籍じゃありません?

KATSU
『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の曲を作るにあたり、僕の中で一貫しているのが“和の要素を入れる”っていうことなんですね。なので、イメージソングとし作った「Prologue-君の向こう側-」(2017年発売のアルバム『Beyond』収録曲)では民謡っぽいメロディーが出てきたり、前作の「THE BEYOND」も島唄のような始まり方をしていたりするんです。さっき機体の名前がドイツ語だって話しましたけど、日本神話に出てくる神様の名前でも呼ばれたりしているので、そういう意味でも和を強調しつつ。後ろではシタールが鳴っていたりする異国感みたいなものは、僕の中での勝手な『蒼穹のファフナー THE BEYOND』のテーマとしてあったんですよ。

なるほど。結果、エスニックなメタルチューンという、なんとも魅惑的なサウンドに仕上がったんですね。ちなみに“叫べ”というタイトルはどの段階で決まりました?

KATSU
確か、レコーディング直前でしたね。
atsuko
KATSUさんに伝えたら、最初は“え!?”って言われたんですよ。“本気?”みたいな(笑)。でも、サビの歌い出しが《叫べ》なので、それ以外に思い浮かばなくて。ひと言系のタイトルだと“~”でサブタイトルをつなげるパターンもありがちですけど、そういうポエムっぽい見せ方は違うと思ったんです。

音が振り切っている分、これくらい潔いタイトルのほうが似合いますよ。では、そこでatsukoさんが一番訴えたかったことは?

atsuko
“全てを受け入れて叫べ!”ってことですね。運命に抗いたくなる時もあるけれど、人間って腹を括ると強くなるじゃないですか。物語の中でもそれぞれ年代の違うキャラクターが成長していって、みんな同じ方向で団結して最後に戦うことを決意するから、そうやって強くなっていく姿を書けたらと思いました。

全てを受け入れて強くなる…今、この状況で聞くと、なんだかグッときます。

atsuko
叫べない時代なのに“叫べ”になっちゃってるよ!っていう(苦笑)。まぁ、曲を作った時は、そんな未来が来るなんて予想もしていなかったので。
KATSU
ただ、僕の中での「叫べ」はシリーズの前作だった『蒼穹のファフナー EXODUS』の最後…それこそキャラクター全員が叫びまくってる場面とリンクして、この曲は島民(『ファフナー』ファンの呼称)だけに響けばいいと思っているんです。オープニングの映像も島民からすると“ここでこういうことやっちゃうの?”って度肝抜かれるものになっていて、僕自身グッときたんですよ。下手に一般の人も共感しやすいような要素を入れてしまうと、また違うものになってしまう。
atsuko
サビの《契れ 島へ》とか、普通は歌詞に出てこない文言ですからね。
KATSU
例え故郷が島の人でも、なかなか共感できない!(笑) まぁ、それがこの曲の宿命かなと。

MVもそういった歌詞をフィーチャーしたものになっていましたよね。

atsuko
イメージ的にはだだっ広い景色とか空撮とかを想像しがちなんですけど、それだと予定調和になってしまうので、監督にはあえて何もオーダーしなかったんです。そしたら、歌詞の中の印象的な言葉をアクリル板に3Dプリントして、レーザーカットしたものを回転させながら光を当てて撮影するっていう、非常にアナログなことをされていて。
KATSU
監督曰く“この曲は3文字の癖がすごい”ってことだったんですよ。言われてみると“叫べ”とか“唸れ”とか、常に3文字で歌っていて、そのインパクトには僕も撮りながら気づかされましたね。
atsuko
“タタタ、タタタ、タタタ、タタタ”っていうメロディーが先にあったので、ところどころで韻を踏みつつ、頭に残る言葉を叩き込んでいこうっていうのは、詞を書く時から意識してたんですよ。

しかも、全部“え段”で終わってますよね。日本語って“え段”で終わると命令形になるので、そこで強さが醸し出されるのかもしれない。

KATSU
《契れ 島へ》って、すごい命令ですよね(笑)。
atsuko
MVでは歌詞を押し出す一方、我々と言えば、まさかの1シチュエーションでひたすら歌い、ギターを弾くだけという、これまた潔いものになって。
KATSU
1シチュエーションなのに、意外と撮影時間は長くかかりましたね。もっと意外なのが、前作の「乙女のルートはひとつじゃない」(2020年4月発表のシングル)と同じMV監督なんですよ。

音も映像もコミカル要素たっぷりだった「乙女のルートはひとつじゃない」からすると、すごい振り幅!

KATSU
しかも制作してたのが、実は同じ頃だったんです。
atsuko
レコーディングも同じ日でしたね。
KATSU
頭がおかしくなりそうでした(笑)。

そりゃそうですよ! ちなみに今作は30枚目のシングルでもあるとか。

atsuko
また、それが感慨深いですね。30枚もシングルを出してきて、それが長年寄り添ってきた『蒼穹のファフナー』の楽曲で、それを待ち望んでいる方がいてくださって、オファーしてくださる制作陣がいる。だからって、angelaが歌えばなんでも『ファフナー』になるというわけではなく、ちゃんと作品のことを考えて作ったものを、またみなさんに聴いていただけるのが嬉しいですね。『蒼穹のファフナー』の楽曲は30曲近く作ってきたので、正直言ってどうしたらいいのか我々の中では分からない部分もあるんですよ。“新しい引き出しはどこにあるの?”って毎回すごい試行錯誤で…だから、ドイツ語を入れたりし始めるんですけど(笑)。それでも“『ファフナー』でしかない”っていうコメントをファンのみなさんが今回も寄せてくださって、新しい主題歌として受け入れてくださるのが本当にありがたいし、嬉しいし、つくづく愛されている作品なんだなぁと実感しますね。

試行錯誤と言いつつ、ちゃんと毎回新しいものが出てくるんですからさすがですよ。

KATSU
本当に次はもうないですけどね!
L→R atsuko(Vo)、KATSU(Key&Gu)
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OKMusic編集部

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