檀れいと中村橋之助が描く禁断の恋と
真実の愛の物語! 明治座『恋、燃ゆ
る。』オンライン製作発表レポート

明治座「恋、燃ゆる。〜秋元松代『おさんの恋』より〜」の製作発表会見がオンライン配信された。本作は、近松門左衛門作の浄瑠璃『大経師昔暦』を原作とし、劇作家・秋元松代が書いたTVドラマシナリオ『おさんの恋』を、石丸さち子が演出と上演台本を手掛けて舞台化させたもの。明治座での座長公演は2018年の『仮縫』以来となる檀れいが主人公のおさんを演じ、その相手役である茂兵衛を中村橋之助が演じる。そのほか、東啓介、多田愛佳、石倉三郎、西村まさ彦、高畑淳子らが出演する。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オンライン生配信となった製作発表会見。この日は、上演台本と演出の石丸さち子、檀れい、中村橋之助をはじめとするメインキャストが登壇して思いを語ったほか、本作の主題歌を歌う氷川きよしからのコメントも紹介された。その様子をレポートする。
『恋、燃ゆる。〜秋元松代作『おさんの恋』より〜』製作発表の様子(オフィシャル提供)
■上演台本・演出:石丸さち子   
『おさんの恋』は『大経師昔暦』を原作に、秋元松代さんが大胆に書き換えられたテレビドラマの台本です。たくさんの名戯曲があるのに、私は明治座さんと一緒にこの作品を上演したいと大胆にも選びました。そこに今に訴えるような、ほとばしるような恋があると思ったからです。
 
一生自分の人生で起こることはないと思っているような叶わない恋。最初は運命のいたずらと言いながら、結局選んでいくのは自分自身です。恋をして、おさんと茂兵衛は、自分たちが胸の奥に隠していた心の強さを大いに発揮して、自分の人生を選び取っていきます。
 
それが今、この日本で上演されることがあまりにも素敵だという想像からこういう冒険を明治座さんとさせていただいています。素晴らしい出演者で、コロナ禍のなかで大変ですけれども、(作品を)立ち上げる喜びにみんな満ち満ちています。大変幸福に感じております。劇場に足を運んでいただけたらいいなぁと思っております。頑張ります。
■檀れい(おさん役)
今年は年の初めからコロナの問題がありまして、私自身この舞台『恋、燃ゆる。』が本当に上演できるのかどうか、日々不安に思っておりました。ですが、今日こうしてオンラインではありますが、製作発表をさせていただける喜びと、また毎日石丸さんの情熱溢れる演出のもとで、共演者の皆様とともに七転八倒しながら、もがきながら、お稽古していること、本当に幸せに思っています。
 
秋元先生のつくられた『おさんの恋』を元にお稽古しているんですけれど、とても難しいです。私自身、日々の稽古の中で、おさんをどのように演じていこうかと、もがいている最中です。ですが、先生の描かれる女性は、とてもはかなくも強く、たくましい。恋を知った女性は本当に強いなと日々感じています。それをみなさんにお届けできればと思っております。よろしくお願いします。
■中村橋之助(手代・茂兵衛 役)
今回こうして素晴らしい先輩方とご一緒させていただき、石丸さんに毎日熱く熱くお稽古いただいていまして、本当に幸せだなと思っております。石丸さんに熱くお稽古していただき、皆様とご一緒させていただき、より身が引き締まる思いでございます。『恋、燃ゆる。』、燃えて燃えて一生懸命務めなくてはいけないなと私自身も「燃えて」おります。一生懸命務めさせていただきます。よろしくお願いします。
■東啓介(永心の異母弟・政之助 役) 
さきほど檀さんが仰っていたように、今年の3月ぐらいから新型コロナの影響で、今でもなお、舞台が中止になるとか、ライブが中止になるという話を聞いていて、これはちゃんと幕が開くのだろうかという不安を抱えながら、(この舞台に)臨んでいます。でも稽古場はそのコロナに不安を持ちつつではありますが、すごく活気あふれています。
3月から何かぽっかり穴があいてしまったものであったり、何か見失ってしまったものであったり、そういうものがこの作品には込められているんじゃないかと僕は思っています。その中でも僕は複雑な役を務めさせていただきますので、それが担えるように今も稽古を頑張っております。
ぜひ劇場に足を運んで、この作品の魅力を生で肌で感じていただきたいと思っております。
■多田愛佳(女中・おたま 役) 
私は今回時代劇が初めてで、所作だったり、方言だったり、課題が多いんですけれども、演出家の石丸さんが声の出し方や感情の動かし方を細かくたくさんのことを指導してくださるので、本当にありがたい環境で稽古していただいているなと実感しております。そして、今回素敵な先輩方とご一緒させていただけることもすごく光栄に思っております。
 
おたまは、(茂兵衛への)燃え上がる恋心がテーマになるかなと思うので、ひたむきに思う気持ちを熱く熱く1つ1つのシーンを舞台上で演じていきたいなと思っております。みなさん、どうぞよろしくお願いします。
■石倉三郎(住職・宗林 役)
世の中がコロナで大変なことになっておりまして、今まで私は長らく生きてまいりましたが、こんなにつまらない世の中になったことはありません。ですから、明けても暮れてもコロナ、コロナと騒いでいるところに、明るく素晴らしい戯曲のもと、頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
■西村まさ彦(彩玉堂の主人・永心 役)
情熱と熱意と才能あふれる演出家の石丸さんとご一緒できること、大変嬉しく思っております。そして、大変素晴らしいスタッフ・キャスト、さらには明治座の舞台にまた立たせていただけること、嬉しく思っております。嬉しさに満ち溢れています。
 
稽古はマスクをして、フェイスガードをしての稽古でございます。マスクとフェイスガードをしての稽古は、相手役の表情が見えません。やりにくいったらありゃしない(笑)。しかし、これは逆の意味で言えば、表情が見えないということは、声に頼るしかない。声の変化に、より敏感になれるんじゃないかと思っております。逆手にとって相手の声を集中して聴くような環境の中で、稽古が進められるんじゃないかと思います。
 
もしかしたら本番でもマスク・フェイスガードをしたままかもしれません。わかりません。世の中はどうなるか。でもそれはまずないでしょう。劇場に入って、それらをとったとき。相手の反応を見て、きっと度肝を抜かれて、腰を抜かしてしまう自分がいるのではないかなと。それがいちばんの不安です。......すみません、どうでもいいことをお話ししてしまいました(笑)。精一杯舞台を務めさせていただきます。何卒よろしくお願いします。
■高畑淳子(永心の母・刀根 役)
西村さんのお母さん、檀さんの義理のお母さんを演じます。心構えといたしましては、長期の公演ですから、公演中に怪我をしない、やっぱり病気をしないように。それだけは心がけたいなと思います。
稽古場でマスクをしていても美しい壇さんにうっとりしているのに、今日マスクをとった檀さんをみたらどうなっちゃうんだろうというぐらい綺麗で。本当に相手役の橋之助さんはいろんな意味で大変だなと思いました(笑)。本当にうっとりするんですけど、お客さんにもうっとりしていただきたいですし、このコロナのことで一番最初に消えてしまった職種ではあります。でも、このお芝居というものは、人にはなくてはならないものだと思っております。
劇場に人が集い、自分が見たのとは違う感想を人が持つ。たくさんの方で見ていただきたい。思うところ、ツボはそれぞれ違うと思います。檀さんが綺麗だったという人もいれば、高畑さんが綺麗だったという人も万に一つはいるかもしれません(笑)。それぐらい違うのが人間というものだと思います。お互い違う価値観のなかで平和を保つ。それが私たち人類の使命じゃないかと思います。ぜひ劇場へ。お待ちしております。
■主題歌『恋、燃ゆる。』(作詞:石丸さち子、作曲・編曲:森大輔)を歌う氷川きよし
初めて舞台の主題歌を歌わせていただくことになりました。素晴らしい出演者の皆様で、『恋、燃ゆる。』の内容を盛り上げられるように、切なく、思いを込めて歌わせていただきました。初めての舞台の主題歌なので緊張もしましたが、すごく気持ちよく歌わせていただきました。
 
初めてデモテープを聞かせていただいた時に、なんと切ない歌なんだろうと。自分の心の底から歌いたいという気持ちで胸が締め付けられるというか。すごい舞台なんだろうなと感じましたし、歌詞の内容に共感ました。好きになった人に対して、結ばれなかったりすることって多いと思うんですけど、本気で好きになって、結ばれない切なさ。みんな誰しもが幸せになりたくて生きているんですけど、人のことを好きになる気持ちって止められないじゃないですか。いろんなルールに縛られて......というような歌詞が出てきたりすると、今の時代にあっているバラードだなと思って。自分の宝物の歌がまた1つ増えたような感覚でいます。
氷川きよしもデビューから21年目になりまして、新たな自分を表現したいという決意で今年が始まりました。そうして、自分がいま表現したい音楽を表現したいと思って制作したアルバムの中に「恋、燃ゆる。」も入れさせていただきました。本当に幅広い作品が入っております。初めてここまでのことをやってしまったので、多くの方に、幅広い世代のみなさんに、聞いていただけるアルバムになりました。『生々流転』ぜひ聞いていただきたいと思います。
歌の世界と重ね合わせながら、お芝居の世界に入っていくと思うので、そのお手伝いできるといいなと思いますし、素敵なキャストのみなさんでございますから、この歌がお芝居の中で流れるのがすごく楽しみです。舞台とともにこの歌の世界も楽しんでいただきたいと思いますし、みなさんに「恋、燃ゆる。」を覚えていただきたいと思います。本当にいい作品が出来上がりました。
檀れい「女性の強さ、たくましさみたいなものを伝えたい」 
続いて、質疑応答が行われた。
――本作品を通じて伝えたいことを教えてください。
 
檀れい:時代物を演じる時にいつも思うんですけれども、西洋東洋問わず、長らく女性は個として生きることが難しいことが続いたなとすごく感じることがあります。今回のおさんという人間も、主人のために、彩玉堂のために生きる。自分を押し殺して生きる。それが当たり前。そういう時代に生きている女性なんですけれども、そんな女性が茂兵衛からまっすぐな恋心を伝えられた時に、女性として人として本当の自分を見つけるというか、本当の自分を見つけた時にどういう風に変化していくか。女性の強さ、たくましさみたいなものを伝えられたらなと思っています。
 
高畑淳子:主軸はまさにおさん・茂兵衛の恋物語。恋というよりもやはり江戸時代、女は女としてまっすぐに見てもらう機会の少なかった女が、自分をまっすぐに見てくれる男性と出会ったというのが起点だと思っております。でも、ここで恋が生まれるということは、この旦那さんは捨てられるわけですからね(笑)。その悲哀もあるわけで。私はこちらの物語も嫌いではなく。
 
それだけではなくまめまめしく働く奉公人たちもいきいきと描かれるはずです。そのなかで、四季折々の景色が美しく描かれるはずです。そういう日本で住んでいること、お互いを美しむようなこと、そういうことをお土産にもって帰っていただけたらありがたいなと。それで婆さんもいたなという感じで覚えて帰っていただけたらありがたいなと思っております(笑)。
石丸さち子「展開が早く、エモーショナル。皆に満足していただける作品」 
――今回の舞台はドラマを舞台化した作品です。舞台化にあたって、工夫された点を教えてください。
石丸さち子:テレビドラマですので、シーン数が多くてカットが多くて。それをまず上演台本としておこすときに、一つの連続する時間で、一つの場所で起こることを長くするように、秋元さんの戯曲を壊さないように丁寧に書き換えました。
 
これを舞台にしようとする時にそれでもまだシーン数が多いですから、舞台の機構をたくさん使います。俳優のみなさんはいろんな形の転換に今、てんてこ舞いになっているんですけれども、おかげでよく見る時代劇の形ではなく、ものすごく展開の早い、エモーショナルな、明治座のよく時代劇を見てくださっているお客様も、初めて時代劇を見るお客様もみなさまに満足していただけるような魅力が出てきたように思っています。
 
そして、テレビドラマだと、シーンで感じたことをカメラのアップで表現することが多いですが、舞台ではそれができません。出演者のみなさまに、表情一つ、わずかな、繊細な表情の変化で表現できることをどういうふうに演劇的に拡大しているかということを稽古場でご相談して、1つ1つ組み上げています。それを楽しみにしていただきたいと思います。 
中村橋之助「マスクの上からフェイスシールドをしていて......」 
――新型コロナウイルス感染症対策をされながらのお稽古ですが、苦労された点は?また、稽古場の雰囲気は?
 
中村橋之助:西村さんも仰っていましたが、お稽古中マスクをして、マスクの上からフェイスシールドをしているんですけれども、お芝居においてとても大切な表情が読み取りづらく、苦労しています。マスクとフェイスシールドをとったときにどういうお芝居になるのか、とても楽しみでもありますし、それに負けてはいけないんだという心持ちでおります。
コロナの時期であるということで、外食や会食ができませんので、今回初めてご一緒させていただくみなさまとそういう機会で交流を持てないというのはとても寂しいなという気持ちはあるんですけど、稽古場ではみなさん優しく話しかけてくださったり、話をさせていただいたり。東さんは同い年なんです。稽古初日からとんちゃんくにちゃんと呼び合おうと仲良くお話をさせていただいております(笑)
 
多田愛佳:時代劇が初めてなので、自分のシーンが終わったら、ステージの前からお稽古を見学させていただいて、先輩方のお芝居を見るようにしているんです。場面を抜いてお稽古をしていて、まだ通してお稽古をしていない時でも、やっぱりこの茂兵衛のおさんを思う燃え上がる恋心が、顔はマスクをしているので見えないですけど、体から溢れてくるおさんへの愛を客席から見ていて、すごく感動してしまうんですよ。
本当に勉強、勉強で、学ばせていただく機会が多いんですが、それと同じぐらいこの作品をひとりのお客さんとして楽しませていただいているので、本番が開けるのがすごく楽しみだなと思いながら、稽古をしております。
 
石倉三郎:マスクとフェイスシールドですが、さっぱり表情が見えません。こんな状況は初めてで、自分のセリフを喋って終わり、みたいなところがありまして。相手の表情が全く読めなくてですね、何を頼りにしたらいいのかわからないんですけれど、とにかく一生懸命頑張ります。
 
西村まさ彦:稽古場ではマスクをずっとして稽古。稽古というのは作品をつくっては壊し、つくっては壊しの連続なので、苦しみが伴うのは当然でございます。先が見えないというか、生みの苦しみはつきまとうものですし、演じる側、支えてくださるスタッフの皆様のやりがいにもつながっていくのではないかなと思っております。
幕が開けてもずっとより良いものを求めて、お互い力を合わせて、千秋楽まで突き進むという所存でございます。苦しいことは口にしたくありません!絶対言いません!苦しい時には笑っていたいと思います。というか、人前に顔をさらしたくないと思っております(笑)
 
――セリフが方言だと伺いました。方言を覚えるコツなどありましたら教えてください。
  
東啓介:方言僕も初めてでして、正直コツっていうものはないのではないかなというぐらい僕も苦戦しておりまして、石丸さんと対面して、アクセントの練習をして......脳が麻痺してくるんですよね。何を言っているか、分からなくなってくる。言えたとしても心情が乗ってこないということがあるので、コツを掴むというのは、簡単に言えるものではなくて。板に立って、そこで心情を動かした時に、方言も身についてくるかなと。まだできていない状態ですけれども、そう感じております。
(方言を披露してほしいというリクエストに応えて)劇中で、永心様と御隠居様に挨拶するシーンを言わせていただきます。「英心様、御隠居様、ご機嫌ようござります」。
 
――最後にお客様へメッセージをお願いします!
檀れい:舞台に立つ者にとって、やはりお客様が劇場に足を運んでくださってこそ、私たちが存在するのだとすごく今回感じております。『恋、燃ゆる。』、石丸さんを中心に、スタッフキャスト一丸となって、感染対策もしながら、日々稽古に励んでおります。見にきてくださったお客様が心震えるような、そんな物語をつくるために頑張っています。おさん・茂兵衛の命をかけた恋物語、ぜひ劇場でご覧ください。
取材・文=五月女菜穂

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