L→R 村井研次郎(Ba)、石井秀仁(Vo&Gu)、桜井 青(Gu)

L→R 村井研次郎(Ba)、石井秀仁(Vo&Gu)、桜井 青(Gu)

【cali≠gari インタビュー】
20年前のアルバムを録音し直す
チャンスなんて普通はない

自粛の世の中だからこそ
下世話な音楽のほうが元気が出る

では、内容についてもおうかがいしたいんですが、オリジナル盤の1曲目は「エロトピア」なのに、今作の1曲目はSPANKERSの大ヒット曲「Sex On The Beach」のカバーという。

桜井
たいした理由はないんですけど、せっかく出すなら少しお召し替えをしようかなってくらいのノリで。「Sex On The Beach」は当時のクラブでよくかかっていた曲なんですよ。MVも含めてバカっぽいノリが良くて、こーゆーのをカバーしたら面白いなってのが頭のどこかにあったんですね。

“飲もう! 騒ごう!”みたいな開放感マックスのダンスナンバーですよね。

桜井
ええ。ヒップホップとかレゲエの人がカバーするならいざ知らず、“えっ、ビジュアル系がやるの!?”っていうところですよね。

でも、cali≠gariバージョンは真夜中の秘めごとみたいでロックですよ。

桜井
特筆すべき点があるなら石井さんの声と村井さんのベースですね。“あの曲をこういうふうに歌うのか! こういうベースが乗るのか!”っていう。
石井
何も考えずに歌いましたけどね(笑)。

そのカバーを1曲目に持ってくるのが驚きでした。

桜井
「エロトピア」はライヴでも1曲目っていうポジションが長くて、復活してからもそうだったので、そろそろ1曲目のお役目御免っていうところですかね。

そもそも「エロトピア」はどんな想いで書いた曲だったんですか?

桜井
研次郎くんに“リフから曲を作ってみたら?”って言われたのがきっかけなんですよ。

フックのある骨太でストレートなギターリフから始まりますものね。

桜井
その頃、やたらにBLANKEY JET CITYを聴いていたので、“よし! ここは一発、ブランキーみたいな曲を作るぜ!”と意気込んだんだけど、全然そうならなかったっていう(笑)。前のヴォーカルがなかなか衝撃的で面白い詩を書いていたので、それに代わるパンチの強い曲…すぐに“エロなのね”と分かる曲が必要だと思ったんですよ。だから、タイトルもずばり“エロトピア”なんです。アルバム全てを支配してしまうような、「ブルーフィルム」と対を成す曲が欲しいと。

そういう意味では、キレがあってパンクな「ミルクセヰキ」のほうはブランキーの匂いを感じます。

桜井
「ミルクセヰキ」はSHEENA & THE ROKKETSなんですよ。「LEMON TEA」のオマージュですね。柴山俊之さんの書く歌詞が好きなので、“自分がゲイだという前提で書くならこういう歌詞だよね”って。ノリ一発で書いた感じです。

新しいバージョン、めちゃくちゃカッコ良いです。

桜井
同期が入っていないんですよ。ソリッドな感じで。(石井に)なんで入れなかったの?
石井
そもそも必要ないと思って。新録すると音を足すことはあっても引くことはあまりないじゃないですか。この曲はシンプルなほうがカッコ良いと思ったんですよ。
桜井
まぁ、アレンジとか、お互いにやり取りしないですからね。“お好きにどうぞ”って感じで。だから、完成したものを聴いて“同期が入ってないんだ!?”って(笑)。

でも、そこは長年の信頼感があるからこそですね。

桜井
そうですね。あとは、聴く人が自由に解釈してくれればいいっていう。復活してからは特にそういうスタンスですね。昔は“こうじゃないと嫌だ”とか、自分もかなり神経質だったと思うけど、今は“どうぞ、どうぞ”って感じです。

全体的には音像もメロディーも儚さがありますね。「真空回廊」「原色エレガント」「さかしま」「ブルーフィルム」という後半の流れは絵画みたいな世界観で。

桜井
そもそも「さかしま」(デカダンスの聖書と評される小説)を訳したのが澁澤(龍彦)だったりしますからね。この言葉をエロに結びつけるっていうのはかなりいろいろ読んでいないと書けないなって。

自粛ムードの世の中にこういうアルバムを出すのがcali≠gariらしいと思いました。

桜井
コロナ禍で音楽業界は元気がないですけど、性産業はやっぱり活気があると思うんですよ。下世話なぐらいにこういう曲たちを出していったほうが分かりやすいし、元気が出ると思ったんです。

そんな今作について、ひとりひとり印象深い曲について紹介してもらえますか?

村井
新曲「デリヘルボーイズ! デリヘルガールズ!」ですね。タイトルだけで面白いし、20年前にこの曲を出してたらどうなってたのかなって。青さんは昔からカミングアウトしてますけど、今よりLGBTへの偏見があったと思うので世間的にもとらえられ方が違ったと思いますね。とはいえ、今もcali≠gari だからこういう曲を歌ってもOKなところはあるので、この曲が世に出ると思うとワクワクしますね。
石井
僕は昔は“音程なんてどうでもいいや”って思っていたところがあるんですけど、ここ数年は“ちゃんと歌おう、ちゃんと聴かせよう”と思ってて。cali≠gari の曲は難しくて…特に青さんの作った曲は難易度が高いんですよ。特に「ブルーフィルム」はライヴで歌い慣れているけど、ヴォーカルがしっかりしていないと説得力が出ないんです。演奏のノリと歌のノリをあえて変えている部分があるので、うまく噛み合わないと不自然に聴こえてしまう。なので、そういうところをしっかり歌うことを意識しつつ、丁寧になりすぎると落ち着いてしまうので後半はライヴのテンションを意識して歌いましたね。

「ブルーフィルム」でアルバムが終わるので胸が締め付けられます。

石井
この曲が好きなお客さんは多いと思うんですよ。なので、みなさんが思い描いているものに近づけないと!って思って歌いました。

作者として石井さんのヴォーカルはどうでした?

桜井
素晴らしいんじゃないですか? 当時と声質からして違いますしね。テープの回転数が違うんじゃないかと思うぐらい(笑)。
石井
青さんのコーラスも全然違って面白かったよ(笑)。
桜井
(笑)。僕は全体的に非常にいいアルバムだと思っているので、どの曲とか選べないんですけど、相当キテると思ったのは石井さんが作った新曲「さかしま」ですね。ただ、この曲、レコーディング当日の朝にギターのコードが届いたんですよ。お互い手癖が強いコードの曲を作るから、どの部分にどのコードが来るのか分からなくて苦労したので、せめて前日には欲しかったなと(笑)。しかも、石井さんは12弦ギターを弾いてほしいと無理難題を言ってくるので大変でした。

ギリギリだけど、名曲が来ちゃったっていう。

桜井
そう! 来ちゃったからしょうがないですね。まぁ、なんとかしましたけど。

あと、ポルノ盤のほうには今年の7月に行なった無観客配信ライヴの模様もDVDにパッケージされているので、最新のcali≠gari のステージも楽しめますね。10月からスタートする東名阪ツアー『cali≠gari ライヴツアー「プライベート♥エロチカ2020」』についても教えてください。

桜井
ツアーはお客さんを入れてやります。キャパの3分の1ぐらいしか入れられないけど、今は仕方ないですよね。

20年前のライヴがフラッシュバックするような内容ですか?

桜井
ツアータイトルが20年前と一緒なので当時に近いことができたら、それはそれで面白いですよね。

衣装も再現するとか?

桜井
いや〜、あの頃は突拍子もない格好をしていたので(笑)。

でも、生で音圧を感じられるライヴはやっぱり特別ですよね。

桜井
そうですね。ライヴが好きな人たちはライヴ会場で観たいと思うんですよね。配信ライヴでは音圧が感じられないから限界が来ていると思うし。

爆音で頭の中がリセットされるのも快感ですからね。

桜井
どのバンドもそうだと思うんですけど、ライヴに来て音圧を感じて、その熱にほだされるような感覚になってくれないと。そうでないとグッズが売れないですからね(笑)。

取材:山本弘子

アルバム『ブルーフィルム -Revival-』2020年9月30日発売 ビクターエンタテインメント
    • 【ポルノ盤】(CD+DVD)
    • VIZL-1799
    • ¥5,000(税抜)
    • ※初回限定
    • 【ピンク盤】(CD)
    • VICL-65428
    • ¥3,000(税抜)

ライヴ情報

『cali≠gari ライヴツアー「プライベート♥エロチカ2020」』
10/03(土) 愛知・名古屋ElectricLadyLand
1部:OPEN 15:15 / START:16:00
2部:OPEN 18:45 / START:19:30
10/25(日) 大阪・梅田バナナホール
1部:OPEN 15:15 / START:16:00
2部:OPEN 18:45 / START:19:30

『cali≠gari 東名阪ツアーファイナル「クライマックス♥エロチカ2020」』
11/15(日) 東京・KANDA SQUARE HALL
1部:OPEN 15:30 / START:16:30
2部:OPEN 18:30 / START:19:30

cali≠gari プロフィール

カリガリ:1993 年結成。現在のメンバーは石井秀仁(Vo)、桜井青(Gu)、村井研次郎(Ba)。メジャーデビューは2002 年、ビクター内のガイレコーズより。約1 年後の2003 年、日比谷野外音楽堂でのワンマンライヴをもって無期限活動休止。その後、2009 年に消費期限付き(期間限定)で復活。これまたビクター内のフライングスターレコーズよりリリース。この復活期は、シングル・アルバムセールスともに自己ベストを更新。ワンマンライブも日本武道館を完売するなど、復活前のスケールを大きく超えることになった。期限付きでありながら活動は続き、2012 年に「活動休止の休止」を宣言。しかし『ただいまインディーズぅ?さよなら、ビクターぁ?』と銘打ったツアーを行い、活動をメジャーからインディーズに移す。以降、ドラムが抜け現体制になり今にいたる。メジャー復帰10 周年の2019 年、7 年ぶり3 度目となるビクター復帰。結成30周年となる23年6月にはアルバム『16』を発表。cali≠gari オフィシャルHP

「ブルーフィルム -Revival-」
ダイジェスト映像

OKMusic編集部

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