THE BEAT GARDEN「ここから第2フェイ
ズが始まる」 積極的に進化中の4人
聞く、せつなさとあたたかさが交錯す
るノスタルジーいっぱいのラブソング

夏の終わりの穏やかな風に吹かれて、ふと思い出すのはどんな恋の物語ですか? ――THE BEAT GARDEN(以下、ビートガーデン)の新作配信シングル「夏の終わり 友達の終わり」は、せつなさとあたたかさが交錯するノスタルジーいっぱいのラブソング。80’ s感覚いっぱいのビジュアルに包まれた、20代、30代には懐かしい思い出を、10代にはリアルタイムのときめきを届けてくれる、青春のタイムカプセルのような1曲だ。ビートガーデンはいま、YouTubeでのJ-POPカバー企画、SNSを使ったファンとの交流、配信ライブなど、新しいアイディアを駆使して積極的に進化中。デビュー5年目を迎え、さらなる飛躍を目指す4人の本音を探ってみよう。
――本題に入る前に、YouTubeのオフィシャルチャンネルでやっている、J-POPカバーの話をしたいんですね。あれはいい試みだと思います。ビートガーデンの名前を、より広く知ってもらうためにも。
U:こういう機会だからSNSを積極的に利用して、まずはファンのみんなに楽しんでほしいという思いで始めました。トラックはビートガーデンらしくアレンジしているんですけど、どんなオケでもいい曲はいい曲ですね。作り手の出汁が濃いというか、クセというか、コード進行も譜割りもそれぞれ違っていて、いろんな人がいるんだなと思いました。
――ヒゲダン(Official髭男dism)、あいみょんsumikaとか。ヒット曲をがらりとイメチェンして、ビートガーデン流に料理している。
REI:今までいろんな人の曲を聴いていましたけど、それを自分たちなりにどうリアレンジするか?という考えはしていなかったので、すごく勉強になります。各アーティストのカラーもあるし、“せつなさを出すためにこのコード進行を使っているのかな”とか、自分なりの解釈もしながらやっていきました。
――ヒット曲には、法則がありますか。
REI:法則があるかどうかはわからないですけど、どの曲も素敵だなと思います。
MASATO:僕もヒットの法則はわからないし、わかったら作れるじゃないですか(笑)。でも一貫して、聴けば聴くほど、歌えば歌うほど“いい曲だな”という感覚がどんどん増えていくとうか。パッと聴いていい曲であり、聴くたびに味が出るスルメ曲でもあるという感覚があります。
SATORU:自分で言うのも何ですけど、ちゃんと自分たちの曲にできているなと思います。トラックをアレンジして3人の声が乗ると、気持ちいいぐらい違和感がないですね。
U:自分たちも作っていて、“もっと自分たちを出していいな”と思いました。カバーをすることでそれに気づいて、楽になったというか、曲作りがすごく楽しくなりました。それが一番、いただいた財産かもしれない。
――このインタビューを読んでいるみなさんぜひ、チェックしてみてください。では本題に入って、新曲の「夏の終わり 友達の終わり」。まさに、この時期にぴったりのラブソング。
U:「花火」(2018年7月発売/6thシングル)という曲があるので、次は夏の終わりがいいんじゃない?というのと、夏の終わりにリリースして、コロナ禍で夏を楽しめなかった人に夏の思い出を味わってもらえたら、という思いもありましたね。昔の夏でもいいんですけど、楽しい気持ちになってくれたらうれしいなと思って、作り始めました。
――これはトラック先行ですか。
U:メロディ先行です。テーマを“夏の終わり”に決めて、みんなで5曲ずつぐらい作って持ち寄ったんですよ。いい曲がたくさんあったんですけど、この曲はREIが推してくれてたんだっけ?
REI:僕、この曲を推しました。
U:僕とMASATOは、違う曲がいいんじゃないかと思っていて、そのぐらいいい曲がいっぱいあって。このトラックはmushOKDという、僕の同級生がデモトラックを作ってくれて、リフがかっこいいし、ビートガーデンがやりたいことと、トレンドの音を混ぜて打ち込みで作っていくという完成形が一番明確に見えたので、この曲に決まりました。
THE BEAT GARDEN/U 撮影=森 好弘
――作曲はUくんとMASATOくんの共作になっています。
MASATO:Uさんが「いいメロディができた」と言って、この曲のAメロとサビを持ってきて。僕に「Bメロ、何か思いつく?」と振ってくれた時に、すごく懐かしいメロディだと思ったので、それを守りたかったんですよね。それで何日かもらって、Bメロを考えました。
――つまり、AメロとサビがUくん、BメロがMASATOくんの合作という。
MASATO:そうですね。
――このサビ、強力ですよ。一発で覚えちゃう。
U:やったー、うれしい。これはお風呂上りに、洗面台で浮かんだメロディなんですけど(笑)。ボイスメモに入れずに、翌朝起きた時にも忘れていなかったので、強いメロディだなと思いました。“♪恋をした”という言葉と一緒に出てきたので、歌詞にもできそうだなと。
REI:デモ会議でこの曲を聴いた時に、“夏の終わり”というテーマにすごく沿っていましたし、せつなさも感じていて、トラックもメロディもハマったなという印象があって。いろんな曲の中でも僕はこれがいいなと思いました。
SATORU:僕の第一印象は、トラックが気持ちいいなと思いましたね。最近の感じと、懐かしさとがうまく合致したと思うし、そこに歌が入ってどんどんブラッシュアップされていって、すごくいい曲ができてうれしいなと思いました。
MASATO:最初のトラックを作ったmushOKDさんは、Uさんの中学校からの親友で、同世代なので、聴いてきた曲も似ているというか。このリフもそうですけど、初めてじゃない感覚があるというか、それがすごく心地良いんですね。
U:mushOKDは、前にも一緒にやっていますし、今はYouTubeのカバーのトラックも作ってくれています。ほかに仕事をしながら音楽を作っているんですけど、いいトラックがいっぱいあるんですよ。今回もそのまま使おうと思ったんですけど、「いやー、まだいい」と言うので(笑)。「花火」をやってくれたソウくん(Soma Genda)にも入ってもらいました。彼も僕らが今の事務所に入る前からのつきあいで、トレンド感を入れるのが上手なんですよね。今回初めて、ボーカルディレクションもやってもらいました。
――歌詞のストーリーは、友達だと思っていた彼女に恋をして……。
U:気づいちゃう、みたいな感じです。“夏の終わり”というテーマで何を書こうかな?と思った時に、夏が終わってしまう焦りと、恋に気づくのが遅くてもう誘えない、というエピソードが思い浮かんだんですよ。恋に気づいた瞬間を切り取って、そこから自分の実体験と妄想を織り交ぜて、書いていった感じですね。
――“終わり”というとせつない感じだけれど、そればかりではなくて。
U:そうなんです。恋に気づいて、友達として見られなくなったけど……という感じです。このタイトルは、MASATOが考えてくれたんですよ。
THE BEAT GARDEN/MASATO 撮影=森 好弘
――いいタイトルじゃないですか。
MASATO:ありがとうございます。これは、大喜利みたいなものですね。「Snow White Girl」(2019年12月発売/9thシングル)の時も、「白雪姫といえば?」「黒雪姫ですか」みたいな、今回もそういうやりとりがありまして。ミーティングでそれぞれが出したアイディアの中で、僕が出したこれがいいんじゃない?ということになりました。
U:「恋が始まったということは、友達が終わったということですよね」と言うから、「確かに」と。そういうところ、うまいよね。なんで歌詞を書かないの?
MASATO:僕が歌詞を書くと、ユートピアとか言っちゃうんですよ。行き過ぎて。
U:そうそう。“ユートピア”とか“レジェンド”とか入れたがる(笑)。
MASATO:どんどん逸れていくんですよ。“で、結局何が言いたいの?”みたいになりがちなので。
U:そういうことも、わかってきたよね。それぞれの得意なものが。
MASATO:そうですね。タイトル案を出す時とか、REIさんはぜんぜん発言しないですから(笑)。
REI:そういう時は任せていますし、メンバーも僕に求めて来ない(笑)。
――歌詞とメロディを作るのが得意なUくん、キャッチーなワードとメロディを思いつくMASATOくん、トラックメイクにセンスを発揮するREIくん、そして盛り上げてくれるSATORUくん。
SATORU:見守っています(笑)。
U:SATORUは動画の編集もしてくれていますし、いい感じですね。
――いま、すごくいいバランスじゃないですか。
U:特に最近はより濃密に、チーム全体で動いていたので。いい意味で人に役割を任せることができるようになったので、曲もたくさんできていますし。ただこの歌詞は、今までで一番書き直したかもしれない。最初はこんなにストレートじゃなくて、もっと夏のマリーン感を出したくて、もっと懐かしくて、恋愛だけどそうじゃないものにも取れるみたいな、そういう世界観にしようと思っていて。でもビートガーデンらしくならなくて、何回も書き直しました。“♪恋をした”というフレーズから抜け出せなくなって、それ以外の言葉を探したりとか。
――それで結局、もとに戻ったと。
U:そうですね。メロディとのハマりもいいし、ずっと頭に残っているのはつまりそういうことだなと思って、そこからふくらませていきました。
――かなり細かいというか、生々しい表現が多いでしょう。たとえば《短い部屋着で君が歩いていたって/脚より続きに夢中で漫画読んだあの頃》とか。まるで画が浮かぶよう。
U:実際に僕にそういうシーンがあったわけではないんですけど。中学校の時に、親友に恋をしたことがあるんですよ。一番友達だと思っていた女の子がいて、その子に恋をして、ぜんぜん叶わなかったんですけど。
――告白したの?
U:言いました。ちゃんと告白みたいな感じではなかったんですけど、“好き”ということを伝えて、でもその子が僕を恋の対象として見るわけもないので、叶わなかったんですね。その子は僕の親友が好きで、僕が相談に乗っていたんですよ。ところがある日、急に“あれ?”ということになって。その時の気持ちを思い出しながら書いたフレーズです。脚よりも漫画に目が行くぐらい、それまではまったく興味がなかったので。
――教室なのか、部室なのか、そういうシチュエーションなのかな。すごくシーンが浮かぶ。
U:みんな言ってくれるんですよ、「中学生の頃を思い出す」とか。
SATORU:この間、SHOWROOMの「ビートガーデンの音庭部屋」でフル音源を解禁したんですけど、コメント欄の中でも「高校生の頃を思い出しました」とか、過去を振り返って懐かしい気持ちにひたってくれるコメントがけっこうありました。
MASATO:でも僕はこの歌詞に関しては、ぜんぜん共感できなくて。
――あれれ(笑)。そうなんだ。
MASATO:女の子が短い部屋着で歩いていたら、漫画どころか、話も耳に入って来ないので。「ここは歌いたくないです」と言いました(笑)。
U:まあそうだね(笑)。
MASATO:僕はすごい田舎育ちで、近くの家の子たちが学校に集まるので、みんな幼馴染なんですよ。恋愛に発展することはなかったので、“もしも発展したら”と妄想するのが面白かったです。
THE BEAT GARDEN/REI 撮影=森 好弘
――あと、二番に出てくる《僕の前じゃ半音下がる君の声》とか。ここも妙にリアルだなあと。
U:これもさっきの話の続きなんですけど、僕の親友だった彼女がディズニーランドに行って、もう一人の男の親友に、おみやげにストラップを買ってきて渡したりするのを、目の前で見ていたんですよね。向こうは僕のことを、ただの友達としか思っていないから、何も気にしてないんですけど、そいつ(男)がいない時、僕と二人になった時のテンションの下がり具合をすごく覚えていて。
――ああー。そういうことか。それはせつない。
U:今はもう気にしていないですけど、あの時の胸をえぐられる感じは、色濃く残っているんですよね。この曲を作るまでは忘れていたんですけど。“そういうこと、あったな”と思って、歌詞を書く前に男のほうの親友に電話して、メロディを聴かせて、「あの子のことを書こうと思うんだけど、何か覚えてる?」って、思い出のエピソードをいろいろ聞いて。
――リサーチしたんだ。
U:はい(笑)。本当に懐かしく思いながら書いたので、歌う時も懐かしいというか、当時の自分に戻っていろいろ思い出すので、そういうエッセンスは入っているかなと思います。それとブリッジの部分の《けどもう戻れない/きっと友達にも/叶わなくてきらいにも》というのは、僕の携帯電話の中に歌詞帳があるんですけど、そこにもともとあった言葉で、いつか使おうと思っていたんですよね。やっと出番が来ました。
――みなさんもぜひ。夏の終わりに、懐かしくてせつない思い出と重ね合わせて聴いていただければ。
U:僕ら世代の人は懐かしんでもらって、中高生の人はタイムリーに感じてもらえたらうれしいですね。
THE BEAT GARDEN/SATORU 撮影=森 好弘
――これ、ミュージックビデオはどんな感じですか。
U:9月28日に解禁されますけど、めっちゃいいです。過去イチ説があるくらい。ね?
SATORU:めっちゃいいです。僕たちがよく行っていた渋谷の街の風景とかが入っていて、それがすごく新鮮で。すごくいいものができたなと思います。
U:今までで一番自然体かもね。
REI:ミュージックビデオを撮っている感じがしなかった。いかに自分たちのありのままの姿を残してもらうか、みたいな感じでやりました。
U:あと、TikTokもやっています。サビを30秒だけ解禁して、それを自由に使って投稿してもらっているんですけど(「#なつとも」)、もう何百件も来ています。
MASATO:それぞれの夏の思い出とか。みんな楽しんでやってくれていますね。
――いいね、ファン参加型。YouTubeカバーシリーズもそうだけど、最近、ファンとの繋がりがどんどん濃密になってきている。
U:やろうと言った時にこれだけ乗っかってきてくれる、ビーマーという仲間がいることを、こういう期間にあらためて感じますね。本当にありがたいです。この曲をリリースして、SNSでもっと繋がって、まだ出会っていないみんなに広げていけるように頑張ります。ここからビートガーデンの第2フェイズが始まるつもりで、頑張っていこうと思います。
取材・文=宮本英夫 撮影=森 好弘

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