新国立劇場、藤倉大による世界初演の
新作オペラ『アルマゲドンの夢』 1
1月の上演が決定

2020年11月15日(日)~23日(月祝)新国立劇場オペラパレスにて、オペラ『アルマゲドンの夢』の公演実施が発表された。
本公演は、新時代の旗手としてロンドンを拠点に旺盛な作曲活動を展開している作曲家・藤倉大の新作オペラ。藤倉がオペラを手がけるのは3作目だが、フルオーケストラと合唱を伴うオペラは今回が初となり、世界のオペラファン待望の藤倉大初の大規模オペラの世界初演に、内外から注目の声が寄せられている。
藤倉が選んだ題材は、20世紀初頭に書かれた H.G.ウェルズのSF短編『アルマゲドンの夢』。藤倉と長年共同作業をしているハリー・ロスが台本(英語)を手がけ、藤倉らしい大胆な発想でオペラ化。時空を自在に行き来しながら、忍び寄る全体主義と科学技術の発展がもたらす大量殺戮への不安を鋭くも描いた原作を脚色し、ポピュリズムが世界を覆う今日、現代を生きる我々のそばにある脅威をスリリングに描き出す。
演出は近年ドイツを中心に欧米の観客の熱烈な支持を受け、2018年のザルツブルク音楽祭『魔笛』で一躍世界のオペラファンの話題の的となった女性演出家リディア・シュタイアー。指揮は大野和士芸術監督自らが務める。奇しくも世界を震撼させた新型ウイルスの脅威の下にある今日、今こそ上演意義のある『アルマゲドンの夢』世界初演に注目しよう。
【あらすじ】
大都市へ向かう通勤電車の中。若い税理士フォートナムは見知らぬ男クーパーに、その本は夢についての本かと問われる。訝しむフォートナム。クーパーは、夢と現実が入り混じることはないか、自分は夢の中で殺された、別の時間に生きていたのだと畳みかける。
クーパーは美しく聡明な妻ベラと新婚生活を送っていた。ダンスホールへ現れたインスペクターの扇動で、若者たちは戦争への恐怖を煽られ、ジョンソン率いる一派にあっけなく取り込まれてしまう。敢然と立ち向かおうとするベラ。なだめるクーパーを、ベラは自由を求め戦おうと必死で説得する。やがて巨大な飛行機や戦艦が近づき、興奮が渦巻く中、爆撃が始まる。ベラが撃たれ、クーパーの腕の中で息絶える。
大野和士芸術監督(指揮)
【指揮】大野和士
日本人作曲家委嘱シリーズ第2弾として、俊英、藤倉大氏に彼自身3番目となる新作オペラを委嘱しました。
彼が選んだ題材は、英国人のSF小説の父、H.G.ウェルズの小説『アルマゲドン(世界最終戦争)の夢』。ウェルズは未来を予言するような作品を次々と書きましたが、この『アルマゲドンの夢』は 1901 年に書かれながら、第一次世界大戦の大量破壊兵器や、第二次世界大戦に至るファシズムの到来、はたまた原子力による暴力までをも不気味に予測した驚くべき作品。藤倉はこの作品のオペラ化に当たって、「通勤電車の中の会話として語られるこのドラマを、音楽によって」「夢の中あるいは覚醒状態の連続体のようにした」「オペラ特有の合唱という存在には、電車を乗り降りする乗客や血に飢えた軍隊を想起させる役を与えた」と言っています。
シカゴ響やBBCプロムスなど世界的な楽団やフェスティバルからの作品委嘱が絶えない、また日本では子供から大人まで参加できる名物フェスティバル‘ボンクリ・フェス’ などで今日の音楽界を牽引するエネルギッシュな作曲家・藤倉の新作オペラの世界初演は必見です。演出は、2018年ザルツブルグ音楽祭で『魔笛』の演出を手がけたアメリカの女性演出家リディア・シュタイアー。世界の目が彼女に注がれている今、新国立劇場で新演出を迎えられることは大変幸運なことだと考えております。
藤倉大(作曲)
藤倉大(作曲)
『アルマゲドンの夢』は夢の物語であり、現実とは思えない世界を描いていますが、今日の社会にも強く結びついています。鏡のように、いまを映し出しているのです。
大野和士さんからの突然のメールで、僕の三作目のオペラ、それも合唱と管弦楽を伴うオペラの作曲を依頼された際、大野さんは現代に関連した物語を要望しました。
そこで僕は、H.G. ウェルズのこの短編がぴったりだと思ったのです。『アルマゲドンの夢』は 2度の世界大戦よりも前に書かれた物語ではありますが、見知らぬ他人同士が電車内で交わす会話を通じて、戦時下における全体主義的な世界が描かれています。
僕はこの小説にすぐ夢中になりました。台本作家と僕は、通勤電車の場面で幕を開けるオペラを作りたいと、20年以上も思っていたのです! それから結局作らないままになっていたのですが、それは 20 歳の僕たちにはそのような作品委嘱の機会に恵まれなかったというだけでなく、電車の場面からどう物語を展開させていくか、うまく決められなかったからでもあります。
ですがいま、オファーをいただいて、僕たちの物語は、電車の会話から近未来を予言する奇妙な夢の物語へと発展していったのです。
今回のプロジェクトで一緒に取り組むのは、台本作家のハリー・ロスと演出家のリディア・シュタイアーです。ハリーとは 20年以上、多くの作品を作ってきた間柄です。リディアとはここ数年、共同で創作できるプロジェクトはないか探っていました。彼女がもつヴィジョンであれば、僕の音楽を躍動させることができると感じていたからです。
この作品では、通勤電車内のコーラスが、血なまぐさい軍隊のコーラスへと変化します。そのコーラスは、僕たち全員の未来を予感させるものでもあります…
このオペラではどの場面でも、夢のような情景が浮かんでは消えていきます。何が事実で、何が想像なのか、判然としなくなるのです。
未来的な動く廊下のシーンや, ダンスホールでの、H.G.ウェルズによれば「言葉で説明できないような」未来のダンス音楽も、あります。
この未来の夢の世界には個性あふれる人物たちが登場し、彼らの感情や政治論が、叙情的なストーリーのなかで歌い上げられます。
この作品はオペラであるべきでした。
この作品は、夢であるべきでした。その夢から、目覚めることができればと願っています。
リディア・シュタイアー(演出)
リディア・シュタイアー(演出)
巨大な不正に直面した時、私たちはいかに行動すべきなのでしょう? 政治が激しく揺れ動いているときに、中立を保つのは可能でしょうか? 公共の場で交わされる言論が、全体主義的な空気へ流れているときに、自分ひとりの殻に閉じこもり、何もしないでいるべきなのでしょうか? こうした疑問は、フェイク・ニュースが溢れ、政治的な結びつきが希薄になり、混沌に巻き込まれるのが必然に思える現在の社会では、容易に思い浮かぶでしょう。
またこのような疑問は、1901 年に出版された H.G.ウェルズの短編を元にした私たちのオペラ『アルマゲドンの夢』のまさしく中核をなしているのです。『アルマゲドンの夢』が私たちの時代に重なる側面を考えると、不安になり、驚くほど考えさせられます。
この小説は夢に蝕まれる男の経験を辿っています。彼はいわば、ことわざで言うところの「茹でガエル」です。軍事的な独裁政権が絶対的な権力を握ろうとしている、ディストピア的な夢の世界。その夢の世界での語り手は、かつて権力を握っていた政治家であり、危機が迫っているのに何もしないという道を選ぶ。その結果、その語り手の分身は、愛するものをすべて失い、自らの命すらもなくしてしまうのです。
私たちが政治の領域で何もしないと、権力に加担することになってしまう。その様相を社会全体で検証するよう、『アルマゲドンの夢』は要求していますが、藤倉大の全く新しい解釈によって、そのテーマが鮮明になりました。リブレット作者のハリー・ロスは、社会的に機能しなくなっている私たちの時代の言葉を劇中で引用して、『アルマゲドンの夢』は私たちの現実とかけ離れていないのだということを明確にしています。
今回のプロダクションは、バーゼル歌劇場で上演されたシュトックハウゼンの「光」から『木曜日』のチームが制作します。このプロダクションは、オペラ専門誌 Opernwelt が選ぶ 2016 年の「プロダクション・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。斬新な映像技術と大胆な舞台美術を用いつつ、現実が揺れ動く空間を生み出し、私たち自身と、私たちの内側に潜む暗い側面が、絶え間ない劇的緊張のうちに映し出されるでしょう。

なお、本公演のチケット発売日は当初発表から変更。また、招聘スタッフ、キャストについては、出入国制限の状況により変更となる場合があるとのこと。

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