『ブックフェスタ・ジャパン』初開催
~全国の『まちライブラリー』のネッ
トワークを駆使して、さまざまなイベ
ントが結集


 『まちライブラリー』という活動を知っている? 「まちライブラリー」とは本を通じて人と人が出会う、私立、私設の図書館のこと。図書館と言っても決して巨大な施設ではなく、カフェや個人宅、オフィス、病院やお寺、商業施設や公共施設の一角を利用したもので、アウトドアで開催されることもある。主宰するのも個人やNPOなどの団体、企業、行政などさまざま。地域を元気にしたい、地域の方々の居場所や新たな交流拠点をつくりたいなどその想いも、またさまざま。共通点と言えば、人と本、あるいは人と人のつながりの中心には本があることくらい。また寄贈された本にはすべて、寄贈した人からのメッセージが書かれ、借りた人は感想を書き連ねていくカードが設置されているのも特徴かもしれない。
 『まちライブラリー』の活動が始まったのは10年ほど前。東京や大阪から広がり、現在では800を超える登録があるそう。特に関西ではこの活動が盛んで、25パーセント近い数が立ち上がっている。
■約10年で全国800を超える『まちライブラリー』が活動
 さて、2020年9月20日より1カ月にわたって『ブックフェスタ・ジャパン2020』が開催される。前身は2015年から関西で始まった『まちライブラリー ブックフェスタ』で、いよいよ全国展開へと拡大していく。まちライブラリーの提唱者である礒井純充氏に話を聞いた。ちなみに礒井さんは森ビルで「アーク都市塾」「六本木アカデミーヒルズ」などの文化事業を立ち上げた方だ。
 「関西では公共図書館、まちの書店などと連携して『まちライブラリー ブックフェスタ』を春に開催していたんです。今年はコロナの影響で秋に延期したんですけど、なかなか収束に向かわない中で、ネットワーク、オンラインを通じて本と人が出会ったり、人と人が出会ったりということができればいいねということになりました。そしてどうせオンライン上で開催するなら、北海道から九州まで『まちライブラリー』が広がっているので、いろんな地域の方々の協力を得て『ブックフェスタ・ジャパン2020』の立ち上げようということになったんです」

ブックフェスタ・ジャパン2020の関連イベント「サポーター会議」の様子
ブックフェスタ・ジャパン2020の関連イベント「おんせん図書館みかんPV」
 主なプログラムにはこんなものがある。
◆オープニングシンポジウム 大阪のまちと文化を考えるVol.2
 大阪府立大学大学院教授・観光産業戦略研究所所長である橋爪紳也氏(『まちライブラリー ブックフェスタ』実行委員長)が、『図書館』『はじめて沖縄』などの著者がある、社会学者、立命館大学大学院先端総合学術研究科教授の岸政彦氏を迎えて、まちライブラリー発祥の地「大阪」に焦点を当て、その文化的背景を探るシンポジウム。
◆マイクロ・ライブラリーサミット2020(小さな図書館全国大会)
 「コミュニティ」「認知症」「里地」「イベント」「まちじゅう」を柱に全国のマイクロ・ライブラリーの13の事例発表。また中国のマイクロ・ライブラリー事情に詳しい鶴見大学教授の長塚隆氏からの報告と礒井純充氏からまちライブラリー10年の活動報告がある。
◆岐阜市メディアコスモス連携プログラム 本の力でまちを変える 〜公共図書館と地域づくり、みんなの森ぎふメディアコスモスの先進事例から学ぶ〜
 滞在型施設として話題を呼んだメディアコスモス総合プロデューサーの吉成信夫氏に公共図書館と地域づくりの可能性と課題について聞く。
◆蓼科高原の焚火を囲むトーク ブックツーリズムで茅野を変える
 茅野市の高原で焚火を囲み、本の力で地域を元気にする公開作戦会議。作家の原田マハ氏がパリから中継参加!
◆本のまち、神保町で始まるまちライブラリーと絵本本屋さんの挑戦
 本の街、神保町から本の場トーク。まちライブラリーって何? 神保町で本やするって? ブックハウスカフェへの想いを、ブックハウスカフェ店主・今本義子氏、まちライブラリー提唱者の礒井純充氏が対談。
◆Re:Publicの逆襲 ~「パブリック 図書館の奇跡」座談会~
 映画「パブリック 図書館の奇跡」の県内公開に合わせ、参加者と自由に語り合う座談会。後半部分は県立長野図書館と塩尻市立図書館の両会場をオンラインでつなぎ、YouTubeにてライブ配信!
 そのほか、ビブリオバトル、製本ワークショップ、ジャズとのコラボ、お茶会などなどバラエティに富んだイベントが最終日まで連日全国で行われている。
 ユニークなのは、ブックフェスタ開催中も本を通じて人との出会いを楽しめるイベントを募集していること。応募を申請すると、ブックフェスタHP内で公式イベントとして紹介してもらえる。
カリグラフィー/コロナ後の大阪でのミニイベントより(ブックフェスタ・ジャパン2020でも実施予定)
ママカフェ/コロナ後の大阪でのミニイベントより(ブックフェスタ・ジャパン2020でも実施予定)
英詩音読会/コロナ後の大阪でのミニイベントより(ブックフェスタ・ジャパン2020でも実施予定)
■『まちライブラリー』を拠点に、本を中心にしたコミニティ・ツーリズムへ
 「本でまちが元気になる、地域が面白くなるというのが『ブックフェスタ・ジャパン2020』の狙いでもあるんです。ブック・ツーリズムという言葉を聞いたことはありませんか? “ツーリズム”というと外国からたくさんの方がやって来たり、有名な温泉に行ったりという非日常を楽しむというイメージがあるかもしれませんが、『ブックフェスタ・ジャパン2020』はどちらかというと市民の生活にある面白さ楽しさを発見していく、ことを目指しています。これをコミニティ・ツーリズムというのですが、本を中心に置いてできないかというのが発想の原点です。地域の人たちが、本を紹介しあったり、本のある場所をお互いに公開することによって、地域全体に本がある場所が広がる。さらに地域を超えて『まちライブラリー』を目当てに本好きの人がやって来たり、場合によっては移住することになったりという動きを全国に広げられないかということを目指しています」(礒井氏)
 コロナが終息したら、いろんなところに出かけて、リアルな空間での出会いを創出できるように、『ブックフェスタ・ジャパン2020』その第一歩の挑戦となる。
 「世の中の新しいことが始められるのは、行政とか大きな企業でないと難しいと思われがちだと思うんですけど、案外、一人の人がやってみるだけでもいろんなことを起こせるんですよ、というのが『まちライブラリー』のもう一つの意図なんです」(礒井氏)
 『ブックフェスタ・ジャパン2020』をのぞいて、『まちライブラリー』に興味を持ったら、あなたも本のある、独自の空間を立ち上げてみるのはいかがだろう。
 「まちライブラリーは特段のルールはなくて、登録も無料なので、趣旨に賛同いただければ、手をあげてくだされば申請書を送ります。そして、どこどこ県のなになに市でこんな『まちライブラリー』がオープンしました、こんな活動をしていますということをご紹介します」(礒井氏)
まちライブラリーHPより

まちライブラリーHPより

取材・文:いまいこういち

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