リトル・フィートの熱演が
収録された初のライヴ盤
『ウェイティング・フォー・
コロンブス』
本作「ウェイティング・フォー・
コロンバス」について
このツアーには『アメイジング!』から時々バックを務めているタワー・オブ・パワーのホーンセクションも参加し、彼らの歯切れのよいバックアップもあってリトル・フィートの演奏は文句なしの完成度になっている。まさにロック史に残る名演の連続を記録したドキュメントだ。
収録曲は全部で15曲(デラックス・エディションは27曲)。ライヴは観客の熱狂ぶりを伝える導入部分から、最もリトル・フィートらしい変則セカンドラインの代表曲「ファットマン・イン・ザ・バスタブ」でスタート。ローウェルのヴォーカルもスライドもスタジオ録音(『ディキシー・チキン』に収録)をはるかに凌駕する名演になっている。ペインのキーボード&シンセは『アメイジング!』以降のスタイルで随所にプログレっぽさが見え隠れしており、ローウェルのダイナミックなスライドプレイと相俟ってバランスのとれた仕上がりだ。特にローウェルのコブシの効いたヴォーカルは、スタジオ録音では60パーセント程度しか出してないのかと思わせるほどのうまさである。リズムセクションはどの曲もシャープこの上なく、技術に裏打ちされた白熱したインタープレイが繰り広げられている。
本作に収録されたナンバーは全曲ハイライトと言えるが、中でも「オールド・フォークス・ブギ」から9分近くにも及ぶ「ディキシー・チキン」への流れは素晴らしい。ここでのペインの力強いピアノのタッチはスタジオ盤を大幅に膨らませた内容で、リスナーは最後まで傾聴せずにはいられない緊張感がある。「ウィリン」「セイリン・シューズ」「コールド・コールド・コールド」といった初期のナンバーは、どれもかなりの重量級にアレンジされているし、グラドニー加入後の「スパニッシュ・ムーン」や「スキン・イット・バック」のような曲についても、スタジオ盤しか聴いたことがなければ改めて惚れ直すのではないだろうか。
このアルバムをリリースしてからわずか1年後の1979年、ローウェル・ジョージは心不全で亡くなってしまう。まだ34歳の若さであった。この後、グループは一旦解散するのだが、87年に残ったメンバーに新たな面子を加えて再結成し、少しメンバーが変わりながら現在も続いている。ただ、良いバンドであることは認めるが、残念ながらローウェル在籍時のリトル・フィートとはまったく性質の違うものである。なお、ドラムのリッチー・ヘイワードは2010年に、ギターのポール・バレルは2019年に亡くなっている。
TEXT:河崎直人