天月-あまつき- 歌・想いを届けるこ
とを諦めず、大きな困難を乗り越え1
0周年記念ライブ閉幕 2日目『Rock&
Cool』をレポート

天月-あまつき- 10th Anniversary Live Final!!~Rock&Cool~

2020.8.30
10年前、部屋の片隅でひっそりと芽吹いた種は、たくさんの愛を浴びて、本当に大きく育ち、色鮮やかな花を咲かせることとなった。こんなに素敵なことって、あるだろうか。
前日の『天月-あまつき- 10th Anniversary Live Final!!~Love&Pop~』の興奮も覚めやらぬ中、『天月-あまつき- 10th Anniversary Live Final!!~Rock&Cool~』と題した無観客生配信ライブを8月30日に開催した天月-あまつき-(以下 天月)。2日間で、視聴者はなんと5万人。ロック色の強いアップテンポなナンバーを軸に、前日とはガラっと異なる表情とパフォーマンスで魅せてくれた彼は、どんな状況でも多くの人を惹きつけてやまないアーティストでありエンターテイナーであることを、堂々と証明したのである。なお、9月2日(水)23時59分までアーカイブ配信され、期間中であれば誰でもチケットを購入し視聴することが可能なのだが、ここからはネタバレを含んだレポートをお届けする。
まずステージに現れたバンドメンバーの演奏、ダンサーチームのパフォーマンスは、“Rock&Cool”に相応しくだいぶアグレッシヴなモード。そこに現れた天月は、ブラックを基調とした衣装で、髪には幾筋かの赤いエクステンションが。力強い歌声を響かせた1曲目は、「イデア」だ。この日はバンドメンバーにチェリストが加わるという初の試みが楽曲それぞれに新たな息吹をもたらしていたわけだが、ただでさえエモーショナルなロックナンバーが、チェロが加わることで実にドラマティック。「会いにきたぜ、幕張!」という叫びも、高まらせてくれる。
天月-あまつき-
続くダーク&スリリングな「This Night」では、ステージ前にファイヤーボールが噴き上がり、鮮烈な赤が効いたライティングに、低音ボイスのラップ、やさぐれた巻き舌も、なんて映えるんだ。「Mr.Fake」の挑発的な歌い方、ジャケットのすそを華麗にひるがえすターンといい、「幕張、遊ぼうぜ!」と煽り、骨太なバンドサウンドに埋もれないロングトーンで圧倒した「ヒロイックシンドローム」といい、前日の“Love&Pop”で観たさわやか笑顔のボーカリストと同一人物とは、よもや思えない。
「小さな恋のうた」から「きみだけは。」、「ホシアイ」への流れは前日と同じだが、よりエモーショナルに感じたのは筆者だけではないだろう。刹那的な美しさをたたえた「きみだけは。」の前の、「誰にだって初めてのことはあるだろうし、僕にとっての無観客ライブも初挑戦。見届けてくれるみなさん、どうか最後まで楽しんでいって」という言葉も。「ホシアイ」の中での、「またみんなとこうして歌える日を待ってました!」という言葉も。どんなに離れていたって、彼は距離なんか感じさせない。
天月-あまつき-
がっつりロックでグルーヴィーなインストゥルメンタルからのメンバー紹介を経て、赤と黒のナポレオンジャケットをまとった天月が歌うのは、「儚きゴースティング」。艶っぽさを感じさせる歌とダンサーとの躍動、<報われない真実など切り裂いて君を奪いたい>というフレーズに、思わずドキっとさせられてしまう。
チェロから始まるイントロにもしびれた「マリオネットラヴァーズ」では、狂気さえ感じさせたり。再びステージ前にいくつものファイヤーボールが噴き上がった「Ark」での歌やパフォーマンスにしても、まるでなにかに憑依されたかのようにも見えて、天月から一時たりとも目が離せない。
「10周年の締めくくりである今回の2デイズライブ、当初はこの幕張メッセにて4月に予定していましたが、8月に延期をして、それでも開催が難しいということで、中止になって。観客数を減らすとか、昼夜2公演にするとかっていう提案もされたんですけど、たくさんの応募の中から当選された方たちに無理をお願いするということはしたくなくて、無観客でやらせてもらうことにしました。やっぱり、こうして衣装を着て、セットを組んでフルライブができるっていうのは、めちゃめちゃ楽しい! 僕は、自分が楽しいこと、自分がやりたいことをやって、それをみんなが喜んでくれるような活動をしてきたと思っているし、これからもし続けていきたいと思っています。ここからは、10th Anniversaryとして、みんなへ伝えたい言葉ひとつひとつを大事に、精一杯歌います」
チェロとアコースティックギター、ピアノが重なるイントロから、天月がていねいにピアノ弾き語りをした「キミトボク」。<今の僕からかつての僕へ>の想いを託した「Letters to me」。吹き出し花火のようなスパークラーがサビを華やかに彩り、「哀しいことだってたくさんあった、くじけそうなことだってたくさんあった。でも、やっぱり楽しいことがやめられるわけないだろ!」と叫んだ「流れ星」。バンドサウンドとチェロの奏での上で、迷いなく想いを届けた「Dear Moon」。歌に、言葉に込めた熱と魂に、心は動きっぱなしだった。
Tシャツにデニムというラフな出で立ちで現れた、アンコール。「スターライトキセキ」でいつも巻き起こる感動的なシンガロングは、画面の向こうにいるひとりひとりの胸に、天月の胸に、しっかりと響いていたはずだ。
天月-あまつき-
オリジナル楽曲4曲が8月31日よりサブスク&音楽ダウンロード配信サービスにて配信開始となり、9~10月にかけて、天月が立ち上げたアパレルブランド“STELLAR”のポップアップショップが全国11か所でオープン予定。さらには、今冬に向けて、ポルノグラフィティいきものがかりのプロデュースを手がける音楽プロデューサー・本間昭光氏とのウインターソング&他楽曲制作進行中といううれしいお知らせもあり、天月ならではの豊かな表現がここからよりいっそう広がってゆくのだと思うと、ワクワクが止まらない。
「夢も希望も無かった学生の僕が、たった1000円のマイクを買って、しゃべることから初めて、ゲームをやってみたり、友達と遊んでみたり、好きだった歌を歌ってみたり。そういうことを続けていたら、ちゃんと音楽活動をやってみないか、と声をかけてくれる方たちがいて。実際に人前に立ったらとんでもなく緊張したけど、残った感情は楽しさだったんですよ。無料で提供していたのに、CDを作って有料にすることになったら、批判も受けたし、お金を取ることに対してプレッシャーもありました。でも、それを積み重ねていく中で、みんなの反応ひとつひとつの言葉に救われてきました。なによりも……今日、開催できて本当によかった。僕はグループじゃないし、僕の声が出なくなってしまったり、いい曲が書けなかったり、自分が出す作品が受け入れられなかったりしたら、そこで終わってしまうのかなって……ライブ中止と言われたときも、世界が終わってしまったような気がして。だから、この2日間で5万人もの人が僕のライブを観てくれたというのは、すごくうれしかった。自粛期間中、考えれば考えるほど弱くなってしまって、満足に活動できないこと、やりたいことがやれないことが哀しくてつらくて……やっと、みなさんの気持ちに届くことができたんじゃないかな、と思います。もっと歌いたい曲、見せたい自分があるし、もっともっと天月というコンテンツを楽しんでもらえるように、みんなが胸を張って「天月くんが好き」って言えるような、立派な立派な僕でいたいなと思います。これからもよろしくお願いします」
涙をこらえながら、ここには書ききれない想いも口にした天月。そして。
「大きく自分の人生を変えてくれる一瞬に出会うのは、なかなか難しい。でも、僕は出会えました。だからこそ、この感謝は伝え続けていかなきゃいけないなと思っています」
あらためてそう誓うと、「Hello,My story」へ。「好きなものを好きと言える世界でよかった。それは、なによりも、なによりも、君がいてくれたからだ!」と言って、銀テープが舞う中、<これからも君の手を離さない>と歌いながら差し伸べた手は、画面の向こうの“君”もまた離さない。
天月-あまつき-
「今飛んだ銀テープ、昨日の銀テープと同じく、ファンクラブ『月ノ山天文部』の次の会報と共にお届けします。いつも、銀テープを周りの人と分け合ってくれて……みんなやさしいよな。やさしい人に囲まれて、日々甘えさせていただきながら生きております。あの、もうひとつ甘えていいですか? 昨日、最後の曲をやったあとで間違えて「最後の曲いきましょう」って言っちゃったんですけど、今日こそもう1曲やりたくて……」
天月がそう言い出して、急きょ「きっと愛って」を歌うことに。この日は観に来ていただけのダンサーも加わり、シャボン玉の演出もきまって、そこにあふれていたのは笑顔と愛だった。
「無観客ライブ、画面の向こうにたくさんのお客さんがいた! やってよかった! これからもまだまだこの道は続く。みんなとまたたくさん遊べますように!」
予想もしなかった事態に見舞われた10周年だったけれど。歌を、想いを届けることを諦めなかった彼は、たくさんの“君”と共に、どんな困難も乗り越えていくだろう。天月という光は、この先も決して輝きを失わない。

文=杉江優花 撮影=Tatsuya Kawasaki(isai.inc)

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