リアルとの垣根を軽やかに飛び越えた
VRアイドル「えのぐ」がバンドと共に
迫力の生ライブ!『えのぐワンマンL
IVE2020 -次章-』Day2レポート

VR(バーチャルリアリティ)にAR(拡張現実)、そして「VTuber」に代表されるリアルタイムCGキャラクターなど、日進月歩の勢いで進化を続けるデジタルコンテンツの世界。その中で2018年に「VRアイドル」としてデビューし、様々な活動を重ねてきた4人組ユニットが「えのぐ」だ。
映像配信のみならず、実際の会場でのVR握手会やトークイベントにライブなど、リアルな現場での活動にもチャレンジし続けてきた彼女達の集大成ともいえる「えのぐワンマンLIVE2020 -次章-」は、「デジタルコンテンツ」と「アイドル」の新たな可能性を感じさせる刺激的な時間となった。
そんな二日間のうち、生のバンド演奏とともに熱いステージパフォーマンスを繰り広げた8月9日(日)のライブの様子をお届けしよう。
ステージに現れた彼女達は生の躍動感あふれる「そこに存在する二次元」だった
ライブ会場となった「ヒューリックホール東京」は、ソーシャルディスタンスの関係で席が飛び飛びではあったがほぼ満席となり、場内はマスクとコンサートライトを身につけたファン達の熱気に満ちていた。
そしてステージでは、照明機材が据え付けられたやぐらの上にバンドメンバーが陣取りセッティングに余念が無い……そう、このライブ二日目は全曲が生のバンド演奏とVRアイドルのセッションという初の試みとなっているのだ。
リアルのバンドとVRアイドルがどう呼吸を合わせるのか、そんな未知の体験に思いを巡らせているとライブの始まりを告げるアップテンポなメロディが会場を包み込み、ファンも歓声の代わりにリズムに乗せた手拍子でえのぐの4人を迎え入れるべくテンションを上げていく。
そしてバンドの激しい演奏が始まると、何もなかったステージ上に4つの色彩…「青」の鈴木あんず、「赤」の白藤 環、「紫」の夏目ハル、「緑」の日向奈央が弾けるように出現し、演奏に負けない叩きつけるようなシャウトと共にデビューマキシシングル収録の「絵空事」、そして初日にライブ初披露となった「ギザギザコミュニケーション」を唄い上げてライブの幕は上がった。そして驚きとともに目を奪われてしまうのが「えのぐ」の4人の存在感だ。
写真ではわかりづらいかもしれないが、VRゴーグルなどの機器越しではなくてもステージ上には4人の姿がはっきりとした立体感と共にリアルに存在して唄い踊っているのだ。その歌やダンスも3Dキャラクターを使ったリズムゲーム的なものとはまったく違う、ライブならではの生の躍動感にあふれていた。
演奏の激しさに合わせるようなシャウトや生歌ならではの息づかいが伝わるボーカル。そして同じダンスを踊っていても、環のスタンダードな動きに比べて小柄なあんずは動きが可愛らしく、大人しげなイメージのハルはゆったりなめらか、そして元気系の奈央はビシッと切れのあるといった個性が見えて、それがえも言われぬリアリティを生み出しているのだ。
「みなさーん、こんばんわー! 私たちVRアイドル、えのぐでーす!」
オープニングの二曲を終えたMCタイムでは、生身のアイドルと変わらぬテンションで集まってくれたファンに挨拶をして、歓声の代わりに4人それぞれのイメージカラーのコンサートライトを激しく振って応えるファンの姿に喜びとお礼の声を返していく。
そしてバンド演奏の迫力に「やばくないですか? 同じ曲でもこんなに変わるんだ」と興奮気味に語り合い、次の曲に入る前に「みなさーん、盛り上がる準備はできてますかー!?」と元気な笑顔でコール&レスポンスを求める4人……その姿はまさに「アイドル」そのものだ。
このライブで「えのぐ」が見せたのはVR技術の凄さだけではなく、「アイドル」としての完成度の高さなのだ。
「それじゃ私たちも、いくぞー! えのぐー! ワンツーサンハイ!」
自分達とファン双方を鼓舞するようなゲキとともに始まった3曲目「e☆Jump!→Dream!!」では4人がダンスで絡み合うパフォーマンスを見せ、4曲目の「ショートカットでよろしく」では「会場暖まってますかー!?」と手拍子&配信コメントでコールを求めて共に盛り上がっていく。そして陽気なサマーソングとなる5曲目「常夏パーティータイム」では「みんなタオル思いきり振り回してくださーい!」と一緒に腕を振って一体感を生み出していく。
ほかにもステージを左右にめいっぱい移動して、サイドの客席のファンにも間近でアピールするなど、VRでありながらも現場のファンの存在をきっちりと見据えて、彼らに気持ちを届けるように向き合いながら全力でパフォーマンスを披露していく。
「えのぐ」の魅力はけっして「VR」という新規性だけじゃない。そのベースに「アイドル」としての全力の取り組みがあるこそ、ファンは彼女達に引きつけられてコロナ禍でも会場に足を運んで声援を送り、そこに「VR」という唯一無二の個性が噛み合うことで彼女達ならではの存在感が生まれているのだ。
待望のファーストアルバムも発売決定! 「えのぐ」が見せるアイドルの新たな形とは?
その後もライブ初日にお披露目となった新曲「Welcome to Live」や、二人ずつのユニット曲「午前0時のプリンセス」「無敵のヒーロー」などが続いていく。熱い応援歌でもある「無敵のヒーロー」では曲の中盤で環がギターソロを呼び込んでばっちりタイミングを合わせていくなど、リアルとVRの境を飛び越えるようなパフォーマンスも見せつけた。さらに、初日に発表された新曲「Original Color Girls!!!!」は、女優を迎えた実写MVもYouTube上で公開されている。
「Original Color Girls!!!!」MV
「このライブが2020年夏のみんなの思い出になるように!」
「この会場が世界で一番熱い場所になるように!」
そんな「えのぐ」の思いを込めたような熱いライブは全14曲でいったん幕引きとなったが、ファンはコールの代わりにリズミカルな手拍子でアンコールを求める。そして待望のファーストアルバム発売決定の告知PVと共に、再び4人がステージに姿を現してアルバム発売にまで辿り着いた嬉しさを語った。
夏目ハル「2年前の自己紹介で語った自分の目標がアルバム発売だったので、あの頃の自分に教えてあげたい。これも応援してくれたみんなやスタッフの皆さんのおかげです!」
白藤 環「本当に嬉しい! あんずと二人で始めた時は曲も無かったので、その頃を考えたらワンマンライブもできてアルバムも発売できるなんて本当に幸せです! これからも「えのぐ」についてきてください!」
日向奈央「CDになっていない楽曲が多かったから、「これを聴けば「えのぐ」がわかるから」」って勧められるアルバムができて本当に嬉しい! これからもがんばりますから「えのぐ」をよろしくお願いします!」
鈴木あんず「二年前はまだ三曲しかなかった私たちが、今こうして自分達の大切な曲がひとつひとつ増えてきて、そんな「大切」と「好き」の集大成みたいなアルバムがでるっていうのが本当に嬉しくて、きっとこれからも私たちの大切な曲が増えていくと思うので、それをもっとみんなに聴いてほしいです」
コメント中に涙声になる一幕も挟んで、いよいよライブもフィナーレに。そして最後の二曲「It’ s 笑 time!」「Colors」ではスマホでの写真/動画撮影&SNSでの拡散OKというVRアイドルならではのサービスも盛り込みながら、熱い盛り上がりと共に二日間にわたるワンマンライブの幕を閉じた。最後に「えのぐ」の4人はライブを盛り上げてくれたバンドメンバーに一礼し、新型コロナ対策を守りながら懸命に応援してくれたファンのみんなへの感謝の言葉とともに「私たちは絶対世界一のVRアイドルになります! 二日間ありがとうございましたー!」と締めくくった。
アニメやSF映画の中だけの存在だったバーチャルアイドルが、現実の存在になりつつあることを実感させてくれた「えのぐワンマンLIVE2020 -次章-」。さらなるVR技術の進化と生のアイドルの熱いパフォーマンスの融合がこれからどんなステージを見せてくれるのか、「えのぐ」の4人の今後の活動に注目しよう。
取材・文=斉藤直樹

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