【この2.5次元がすごい】刀ステ新作
の挑戦 表現方法が変わっても変わら
ない熱量と魅力

 コロナ禍の影響で、たくさんの舞台が中止や延期となった2020年の春。季節が変わり、少しずつ再開をする舞台も増えましたが、感染症対策を行うために多くの公演が今までとは違うかたちでの上演となっています。
 刀ステこと、舞台「刀剣乱舞」もそのひとつ。7月16日から上演されているのは「科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶」(「綺伝 いくさ世の徒花」に取り消し線)です。科白劇とは「しぐさとせりふの演劇」。刀ステの世界を、今度はどのように描いてくれるのか、公演が始まる前から大きな注目を集めていました。
表現方法にとらわれない刀ステそのものの魅力
 公演前に脚本・演出の末満健一さんは「舞台上の役者を2メートル以内に近づけないという制約の中で、やれることを模索していく」と刀ステ科白劇についてツイートしていました。刀ステの魅力のひとつである殺陣はどうなるのだろう? と気になったファンの人も多いのではないでしょうか。さらに舞台上ではキャストのみなさんがフェイスガードを付けて演技を行う、ということも発表されました。
 結果からみると、フェイスガードは華やかなキャストたちの表情を邪魔せず、違和感なく物語にのめり込むことができました。今回、舞台上で物語が展開する際に重要人物となるのが神田山緑さん務める講談師。キャスト同士の距離を感じることがなかったのは、講談師の存在も大きかったように感じました。
 今回、幕が上がるのか、と心配していたのはもちろんキャストのみなさんも同じです。歌仙兼定を演じる和田琢磨さんは「昨今の世の状況の中、お芝居できる場をいただけることに一役者として感謝いたします」と公演に当たってコメントしていました。また、にっかり青江役の佐野真白さんが「歯がゆい距離、その分想いを届ける熱量は高く、心の距離はものすごく近くに感じています」と話すように、当たり前だったことが行われない現在の状況を乗り越えての上演ということで、いつもとは違う思いを抱えて始まったということがわかります。
 非常事態を乗り越えて、見たことのない舞台を見せてくれた刀ステ。キャストのみなさんが舞台に立てる喜びを噛みしめるのと同じように、観客のひとりとして舞台を見ることができる幸せをあらためて感じる公演でした。舞台をはじめとしたエンターテインメントが心に与える影響の大きさを感じます。
 様々な公演が様々な判断をするなかで、かたちを変えて上演することを決めた刀ステ。舞台表現や刀剣男士の見せ方に新たな可能性を感じさせてくれました。8月4日からは会場を日本青年館ホールに移し、公演が続きます。さらに8月9日午後5時から上演される大千秋楽はライブ配信も決まっています。

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