黒子首が創る、誰かの居場所

デートで使うこだわりのレストラン、仲間で集まるのに最適な居酒屋など、誰かと行くための“とっておき”はブックマークしておきたい。しかし、本質的に自分を癒してくれるのは、恋人・家族・親友にすら教えたくない秘密の場所だったりしないだろうか。東京を中心に活動する黒子首は、まさしくそういった居場所になってくれるミュージシャンだ。

彼らは2018年に結成された3ピースバンドだ。フロントにはアコースティックギターを据え、抒情的かつ憂いのある音楽を展開している。
黒子首の魅力は、重みのある力強い演奏だ。“力強い3ピース”なんて謳ってしまうと、エフェクターをガシガシかけた爆音バンドを想像してしまうかもしれないが、決してそういう話ではない。一音一音に重心と思いをこめてるからこそのパワーが、黒子首のセッションには秘められている。また、程よい距離から言葉を届けてくれる堀井のボーカルも心地よい。見放すでも引っ張りこむでもなく、求めてくれる人には全力で答える姿勢が、歌声に表れているのだ。

先日配信が開始された『旋回』は、2nd E.Pとして作られた作品。愛しい日々を思う「戻ろう」を皮切りに、パーカッションなども交え“新たな黒子首”に挑戦した全5曲が収録されている。息苦しい毎日のなかで、そっと居場所をくれる1枚だ。