亜無亜危異 are 小林高夫(Dr)、寺岡信芳(Ba)、仲野 茂(Vo)、藤沼伸一(Gu)、逸見泰成(OMAMORI)

亜無亜危異 are 小林高夫(Dr)、寺岡信芳(Ba)、仲野 茂(Vo)、藤沼伸一(Gu)、逸見泰成(OMAMORI)

亜無亜危異(仲野 茂、藤沼伸一)
- Key Person 第5回 -

あそこで諦めてたら
デビューできてないかもしれない

BOØWYやTHE ROOSTERSとも親交があったと思いますが、特に刺激を受けたバンドや人物はいましたか?

仲野
THE ROOSTERSだね。それまでロックは英語だって言ってた奴らが、サザンオールスターズが出てきた影響で“これからのロックは日本語だよ”って言うようになってさ。そんな中、THE ROOSTERSは英語で歌ってて、演奏もうまいし、“こいつらやるな”って思ったし、いい意味ですごいムカついたし、一番響いたんだよね。“こいつら面白いな”って思ったのを覚えてる。

アナーキーは流行りに乗らないと言いますか、周りと同じことをせずに自分で道を切り開いていくイメージがあるので、そのTHE ROOSTERSの変化球なアプローチがより気にかかったのでしょうか?

藤沼
そうだと思うよ。
仲野
そういうことで言うとさ、自画自賛だけど、俺たちは目の付けどころがいいんだよ。昼夜食わずだったけどね(笑)。

藤沼さんはどうですか?

藤沼
パンクはもちろんそうだけど、パンクが出る前から山口富士夫はすごく好きだった。ギターのプレイとかね。そのあとに80年代のブームがあって、俺は忌野清志郎さんに“おっ!?”と思って。昔はカリメロみたいな髪型でフォークをやってたのに、急に髪の毛を立ててさ、どうしたのかと興味があったというかね。泉谷しげるも“清志郎を見たらびっくらこいた”って言ってたよ。““愛し合ってるかい?”なんて言うタイプじゃねえぞ、あいつは人間としてひでぇからな”って(笑)。だから、“この人は何かあるな”ってずっと興味があったね。

30年前はバンド同士やリスナー同士での喧嘩もたくさんあったと思いますが、ぶつかり合って仲が深まった人はいますか?

仲野
これもTHE ROOSTERSかな。当時はみんな仲が悪かったからね。“こいつらを蹴落とせば一番になれる”みたいなのがあって、イベントで一緒になることは多かったけど、口利かなかったもん。
藤沼
THE ROOSTERSに限らず、だいだいそんなんばっかりだったよね。俺たちだけがそうなんじゃなくて、相手方もそうだったから。
仲野
THE ROOSTERSも九州から出てきて“東京もんに負けるか”っていうのはあったと思うよ。TH eROCKERSの陣内孝則も仲良くなってから“てめぇ、何であの時は口利かなかったんだよ”って訊いたら“方言が出るのが嫌だったんだよ”って言ってたし(笑)。だから、90年代くらいになってバンドが自分のイベントをやるようになってからは、呼ばれて行ったらさ、みんなが和気藹々としててびっくりしたよな?
藤沼
うん。それはいい意味でも悪い意味でも、俺らを見てた連中が“あんなふうにはなりたくない”って思ったのもあるだろうね(笑)。
仲野
まぁね。当時は気に入らないバンドのライヴに襲撃するとかが頻繁にあったし。

今の楽屋なんかは当時の雰囲気と180度違うと思いますが、逆にそこまで変わると居心地悪かったりしませんか?

藤沼
“よろしくね”とか言って、いい感じになるような態度はとってるよ。いいおじさん風にね。
仲野
そこは時代に合わせていかないといけないからね。
藤沼
“オラァ!”なんて言って入っていったら浮いて仕方ない。
仲野
でも、ひとつムカつくのはさ、俺への勝手なイメージかもしれないけど、“酒を飲んで暴れないんですか?”とか言ってくる奴がいるんだよ。“テーブルをひっくり返さないんですか?”とか言ってさ。当たりめぇだろ! そんなことしたら請求書が大変だよ。

あはは。今回はバンドの歴史のほんの一部を聞かせていただいたわけですが、中でもご自身に起きた転機や、忘れられない出来事はありますか?

仲野
やっぱり『EastWest』じゃない?実は一回落っこちてるんだよ。“アナーキーはいいんだけど、今回はごめんね”みたいなこと言われて。俺たちも最初は勝ち上がっていく気なんてなかったのに、実際に進んでいったら欲が出てきて、審査員のところに“何でいいのに落とすんだ”って言いに行ったんだよ。そしたら“もう一個同じ大会をやるからそっちに出てみなよ”って言われて、2回目のコンテストで決勝の中野サンプラザに出れたの。あそこで諦めてたらこんなふうにはデビューできてないかもしれない。
藤沼
うーん、俺は全部が転機だからね。茂が言ったコンテストもそうだし、“アナーキー”って名前が使えなくなって“THE ROCK BAND”って名前にした時もそうだし、新生アナーキーって打ち込みのユニット作った時もそうだし、3・11が起きて自分の中でも変わったこともそうだし。あと、マリが亡くなったことで、またみんなでやるかってなって、今の“亜無亜危異”って名前でミニアルバム『パンクロックの奴隷』(2018年9月発表)を出したことも転機だしね。数えきれない。

では、最後におふたりにとってのキーパーソンとなる人物はどなたでしょうか?

仲野
お前は父と母って言うんだろう?
藤沼
言わないよ(笑)。
仲野
俺はやっぱり頭脳警察のPANTAかな。「ふざけるんじゃねえよ」っていう曲をラジオで聴いてからすごく好きでさ。そんなPANTAとの対談が決まった時、会えるのが嬉しくてね。でも、その時には頭脳警察はもう解散してて、PANTAが『KISS』っていうアルバムを出したんだけど、それが大嫌いだったんだよ。その矢先に対談が決まったから、俺はどうしていいか分からなくて。憧れの人に会いたいし、俺もやっとここまで来たっていうタイミングなのに、PANTAはクソみたいなアルバムを出しやがって(笑)。当日、PANTAは取材場所にバイクで来たのね。俺はどうしたらいいか分からなかったから、PANTAのヘルメットを被ってずっと黙ってたの。だから、その対談の記事を見ると、俺だけヘルメットを被ったまま黙ってて宇宙人みたいなの。PANTAもやさしいから、何も文句を言わずにいてくれて、俺もあんなに憧れてるPANTAのヘルメットを平気で被って“口利きたくない”なんて言ってたんだから大したもんだけど、そんな俺をPANTAは許してくれたんだよね。
藤沼
おかしな話だよ!(笑) 俺はやっぱり清志郎さんかな? 今でこそ伝説化されちゃったけど、本当はそんなにいい人じゃないっていうか、すげぇ悪い悪戯おやじなんだよ。俺はその悪戯感とか、本当か嘘なのか分からないところも好きでさ。清志郎さんが俺にコソッと“俺、もっと有名になって悪戯がしてぇな”って言ったのよ。あの人のアルバムなんてさ、“君が大好きで金なんかどうでもいいぜ”って歌ったかと思えば、次の曲で“女なんてどうでもいい”って歌ってるからね。そういうところが大好きなんだよね。あと、泉谷をいっぱい怒ってくれるんだよ(笑)。“泉谷、歌をちゃんと大事にしろよ。馬鹿野郎!”なんて言ってくれて、そういうあの人の精神が好きでさ。アルバム『パンク修理』(2020年5月発表)にユーモアが入ってるのは清志郎さんの影響というか、そのやり方が好きだからなんだよね。批判にしてもさ、THE TIMERSは頭から怒ってるわけではないじゃん。あの辺のセンスが俺は好きなんだよ。見習ったりとか、影響は受けてますね。

取材:千々和香苗

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OKMusic編集部

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