アイビーカラーが配信ライブを決行そ
して配信新曲「夏空」リリースとアフ
ターコロナの新時代に彼らが生き残れ
る訳とは?メンバー全員インタビュー
敢行

長い自粛生活でくたびれた心をぐっと奮い立たせる、それはまるで高らかな希望のファンファーレ。大阪発のノスタルジックピアノポップバンド、アイビーカラーの配信新曲「夏空」は、「せつなく甘酸っぱい青春ソング」というバンドイメージを一新する、力強い前向きポップチューンだ。現メンバーになってから1年半、ワンマンライブは連続ソールドアウトを続け、女性をフィーチャーしたドラマ仕立てのミュージックビデオ・シリーズも再生回数を伸ばし続ける、次世代ブレイク候補の要注目株。強力な個性がぶつかりあう楽曲作り、前向きなバンドの現状、そして未来への展望について、4人の自宅をリモートで繋いで聞いてみよう。
――5月31日に有料配信ライブをやったでしょう。あれってどうでした? 初めての試みだったけれども
佐竹惇(Vo&Gt.):リハーサルをしてる段階では「大丈夫なんかな?」と思ってたんですけど、場所(梅田Zeela)は僕らが結成当初からずっとお世話になってるライブハウスでしたし、いろいろ気を使いながらやってくれたことと、あとライブ中に大きい画面にお客さんのコメントがずっと流れていて、目に入るんですよ。目の前にお客さんはいないですけど、ちゃんとお客さんに向けてライブしてるなという感があって気持ちが入りました。ただMCが難しかったです。「今日はよろしくお願いします!」「…シーン」みたいな(笑)。でも僕は気持ち込めてちゃんとやれました。
川口彩恵(Key.):私は普段のライブでもめちゃ緊張するんですけど、いつもと違う緊張感がありました。いつもだったらお客さんの表情が見えてきて、楽しんでくれてるなと思うと緊張がほぐれてくるんですけど、表情が見えないので、慣れて来るまでいつもより時間がかかったというのはあります。でもさっきも言ってた、スクリーンにコメントが映し出されて、「手振ってね」と言ったら手の絵文字がばーっと出てきて、テンション上がって、それからはめちゃ楽しくやれました。
酒田吉博(Dr.):「この曲来た!」みたいな反応を、目で見える形でしてくれるんで、わかりやすかったですね。「この曲はこんなに求められてるんやな」とか、文字でわかるんで。あと、ライブハウスの人やレーベルの社長が、ネタコメントを入れてくるんですよ。めっちゃしっとりしてる曲をやってる時に「テキーラ差し入れしました!」とか出されて、笑いをこらえるみたいな。佐竹:先輩バンドマンの方も、ちょこちょこコメントしてくれてたんですよ。面白かったです。
碩奈緒(Ba.):よしくんが言ってたみたいに、普段のライブよりも反応がわかりやすいというのが思ったところで。あと、普段のライブやといい意味でかっちりしてるというか、MCもボーカルの惇しかしゃべらないんですけど、あの日はメンバー全員がしゃべって、コメント読んで、普通のライブよりもいいところがあったんじゃないかな?と思いました。普通にライブができるようになって、別のコンテンツとしてやってもいいんじゃないかな?と思います。
アイビーカラー
――その場で、今回配信リリースした新曲「夏空」も初披露して。
佐竹:けっこう自信がある曲なので、「オラ行くぜ!」っていう感じでした。「覚悟しやがれ!」みたいな。
――あはは。そんな曲じゃないでしょ。
佐竹:全然違いますけど(笑)。ただ、好きな人には絶対に喜んでもらえると思うぐらい、僕らにとってもいい曲なので。それを出すことに対する緊張はなくて、むしろ早くやりたいとライブ中に思ってたぐらいです。
アイビーカラー
――この「夏空」、そもそもどんな成り立ちが?
佐竹:当初は6月に配信リリースする予定はなかったんですけど、年明けから曲はずっと作ってたんですね。「3月4月はライブで忙しくなるから今のうちに作っとこう」ぐらいの感じだったんですけど、2月23日から今まで、無観客配信ライブを除いたら1本もライブができてなくて。そこで普段僕らを応援してくれてる人に何か提示できるものはないか?ということで、急遽リリースさせてもらった感じです。曲的には、これから不安な夏が訪れようとしているので、こういう時期やからこそ希望を与えるというか、「今まで過ごしてきた夏はこんなに素晴らしいものだったんだよ」ということを提示できる曲になってると思うので、元気を与えられたらいいなと思ってます。
――力強く夏を迎えるメッセージチューン。アイビーカラーって切ない曲調が多いから、かなり新鮮でしたよ。
佐竹:みんな、コロナでもう十分切ないと思うんで。僕らには珍しいですけど、元気な曲をやってみようと思いました。
アイビーカラー
――それぞれの、「夏空」に対する思いを聞きます。彩恵ちゃんは?
川口:とにかく今までのアイビーカラーのイメージの、ちょっと切ない甘酸っぱい青春の曲とは違うところを表現したかったので、それが伝わる作品になって嬉しいなと思うのと、今はみんな前向きになるのが難しい時期だと思うんですけど、背中を押す曲をアイビーカラーらしく表現したいというのが私の中にあって。全体を通して明るく前向きな感じなんですけど、歌詞とか細かいフレーズとか、あえて落とす場面もあって、その分最後の最後はめちゃめちゃ盛り上がるという構想を描いてたんですけど、その通りに創り上げられたなというところが、伝わってほしいポイントです。力強さの中にもアイビーカラーっぽいキラキラ感はほしいなと思っていたので、キラキラな部分はいつものアイビーカラーとして楽しんでもらって、力強い部分は新しいアイビーカラーだと捉えていただけたら嬉しいです。
碩:たぶん恋愛以外の歌詞が初めてなんかな?というぐらい、今まで恋愛の曲が多かったんですけど、そこが一番の違いなのかなって思います。人の背中を押すのがあんまり似合わないバンドという感じやったけど、サウンド的にはめっちゃアイビーカラーっぽさを出せたかな?と思っていて、コーラスで始まるとか、ストリングスが入ってるのも、アイビーカラーらしさなのかな?って思ってます。
アイビーカラー
――彩恵ちゃんのピアノもすごく自由な感じだけど、奈緒ちゃんのベースもよく動くでしょう。メロディアスというか。
碩:歌うようなベースが好きなんで。最初はコード感を意識するんですけど、「メロディがあんまり動いてないところはベースが動いたろ」「メロとハモったろ」とか、今回の曲はそこを今まで以上に意識した気がします。
酒田:全体を通して壮大なイメージがあったんで、「壮大と言えばストリングスと打楽器やな」と思ってエンジニアさんとも話して、イントロとアウトロをオーケストラっぽくしてみたり、大サビのボーカルのリバーブの質感にこだわってみたり、曲全体の壮大さを意識してます。
――ちなみにアレンジメントって、全員でやってるの?
酒田:一応僕がミックス・エンジニアみたいなことをできるので、各自に家で録ったものを送ってもらって、合わせて聴くみたいなことは何回もしましたね。この曲に限らず、僕がバンドに入ってからその手法でやってます。ストリングスや打楽器は、彩恵ちゃんに僕の家に来てもらって、二人で考えたりしてました。
――そうなんだ。惇くんが曲を作った時点で、頭の中にアレンジのイメージがあるのかな?とか思ってたけど。
佐竹:いや、僕は詩とメロディとコード進行だけで、「あとは任せた」という感じが多いです。
酒田:弾き語りの歌とギターを送ってもらって、それを編集しつつ、みんなで付け加えていく感じです。
アイビーカラー
――アイビーカラーって、それぞれの楽器が良い意味でフリーダムというか、動き回るところが多いと思っていて。自由主義な感じがする。
佐竹:良く言ったらそうかもしれない(笑)。結構意見は言い合いますね。歌詞やメロに関しても、「それはあんまり好きじゃない」とか。でも言われた時に大体納得するので、全然気にならないというか。
酒田:細かいメロディについても言ったりします。
佐竹:そうだね。吉博が「ここのメロディをこうして」って、自分で歌ったボイスメモを送ってくれたりするんですよ。メロディに関しては、「じゃあそうするわ」「いや、このまま行かせてくれ」というのと半々ぐらいです。
酒田 : あとコーラスは、ほぼほぼ奈緒ちゃんが決めてます。レコーディング当日に「こんな感じでどう?」っていう感じで渡されるんですよ。
――当日? そんなぎりぎり。
その日まで、コード進行が定まってなかったりするんで。定まったあとに、コーラスのメロディを彩恵ちゃんに投げて、彩恵ちゃんが音を確認して、それから録ることが多いです。「夏空」に関しては、イントロの♪夏空のBGM、というフレーズが4人全員違うメロディでハモってるんで、結構難しかったです。
碩:コーラスは、曲が全部出来上がった後じゃないと付けれないので。アイビーカラーは上も下もコーラスが入ってる曲が多いバンドなんで、いつも必死でやってます(笑)。
――すごいなあ。4人がそれだけ均等に貢献するバンドって、かなり珍しいと思う。
佐竹:そうなんですかね。確かに、曲を作る人が全部作っちゃうバンドは多いと思うんですけど、僕はそれができないので、助かってるって感じです(笑)。途中でケンカみたいになることもあるけど、最終的にみんながやりたいことをやれてる感じかなと思いますね。
碩:納得いくまでちゃんとやるみたいな。
――彩恵ちゃん、さっきから母親のように微笑んで見守ってるけど。
佐竹:彩恵は一番言いますよ。
川口:曲作りに関しては、私は一番めんどくさいタイプやと思います(笑)。普通やったら、ボーカルがもっと独裁主義みたいなバンドもいるかもしれないですけど、たぶん私がそれは耐えられへんかなと思うんで。歌も大事にしつつ、それぞれみんなが自由にできるバンドだからこそ、私は楽しいなと思えるんで。
酒田:彩恵ちゃんみたいに知識と能力があって、コードの解釈ができるとか、そういうところは強みやと思います。コーラスで「この音とこの音が当たってる」とか、僕は全然わかんないんで。
佐竹:わからん…(笑)。
アイビーカラー
――惇くんに、歌詞の話をもう少し。特に大事なフレーズとかはある?
佐竹:何でしょうね…ラブソングじゃない歌詞は久しぶり、ぐらいの勢いで書いたんですけど…「約束の最果てへ」とか、自分が言うイメージが湧かなかったんですよ。
酒田:確かに。
佐竹:でも歌ってて、今の時期もあいまって「これは今かっこいいな」と思うようになりました。最初は漠然と、「ここはこういう雰囲気の歌詞がいいんかな?」と思って書いた部分が、時が経つにつれてどんどんハマっていった感じはあります。前向きな言葉として。
――余談だけども、惇くん、歌詞で影響受けた人って誰かいるのかな。
佐竹:あんまりいないです。これは絶対に良くないんですけど、この人にめっちゃ影響受けて音楽始めたとか、この本の作者が好きとか、この映画が好きとか、あんまりないんですよ。まったく見ないということはないんですけど、一般の方と同じレベルというか、そういう文化的なこだわりがないのが良くないなと自分では思います。
――良くないってことはないと思うけど。
佐竹:ざっくり好きなアーティストはいっぱいいますし、この歌詞すごいなと思う人もいますけど、「この人です」というのは正直ないですね。あんまり誰かに憧れるということがないというか…まだまだですけど、自分もアーティストとしてこういうことをしてるからか、誰かに憧れるというのがちょっと嫌なんですよ。それは子供の頃からそうで、ちょっとイタイ奴やったんやと思います(笑)。自分もそういう人になりたかったんやと思います。
――ああー。なるほど。
酒田:曲調に関しては、4人ともマジで全然違う趣味の人たちばっかりなんで。それでいい感じに塩梅取れてるというか、それがあるからいいんじゃないかなと思います。
――アイビーカラーの音楽って、「90年代J-POPを思わせる」的なことを書かれがちだけど、そこは別に意識してるわけじゃない?
佐竹:ああ、でも、その時代の曲は好きです。うちの社長、TONIGHT RECORDSの長尾さんも、僕らをレーベルに呼んでくれた理由がそこなんですって。「90年代っぽいから」みたいな。自分ではあんまりわかってないんですけど、いろんな方に言っていただけるので、「じゃあ、そうなんかな」みたいな。もちろん好きやし、懐メロ的なことは絶対影響されてると思うんですけど。
――それっていわゆるミスチル、スピッツというか、バンドで作るメロディアスなポップチューン的な?
佐竹:そうですね。90年代から2000年代の初め頃にスピッツ、ミスチルとかが出してた曲はすごく好きです。
――そのへんのルーツ話はまた今度、じっくりやりましょう。「夏空」のミュージックビデオの話もしときますか。これって、ファンの方から映像素材を募集して作ったんでしたっけ。
佐竹:そうです。ミュージックビデオにするとは言ってなくて、「夏の思い出をください」「何か表現でお返しします」ということだけを伝えたので、送る側も「何なんやろ?」って思うところもあったと思うんですけど、本当にたくさんの人が送ってくださったので。みんなで一緒に作ったミュージックビデオになったと思うし、コロナウィルスの状況とあいまって、完成したものを見た時はちょっと泣きそうでしたね。こういう時期やからこそ、一緒にやれてる感が一つの作品に表れてることにすごくぐっと来ました。
――夏の海や空、ひまわりや虹、お祭りっぽい風景とか、あとスポーツのシーンも結構あったりして。
碩:自分の思い出じゃないのに、めっちゃ「わー!」ってなりました。
酒田:わかるわかる。自分の思い出に置き換えられる場面もめっちゃあって、良かったなと思いますね。
アイビーカラー
――みなさん是非チェックを。そして今後のライブは?
佐竹:3月から5月にかけて3ヶ月連続東京企画を行う予定だったのですが、その延期公演が7-8月に決まってますね、ただ、こういった状況なので、ホームページを随時チェックしてくれたらという感じです。
――まだまだ、大変な時期が続くと思うけれども。アイビーカラーの今後について、今思っていることは?
佐竹:どうやってライブしよう?という思考やったのが、最近はそうじゃなくて、どうやって伝えよう?というふうに変わってきたというか、配信リリースや別のコンテンツでも、伝える形はいくらでもあるので。僕らの曲って「あの頃を思い返す」という曲が多くて、そのテーマ性を武器としてやってるところもあるので、今の時期やからこそ、この時期を経験したからこそ、刺さるような歌をこれからもみなさんに届けたいと思っています。
川口:この時期、バンドってどうなるんやろ?って心配してくれる人もいると思うんですけど、確かにライブハウスが閉店しちゃったところもあるんですけど、でもやっぱり「今こそ頑張ろう!」という感じでみんな頑張ってるし、たとえば配信ライブだと、今までライブには来てもらえなかったけど、配信だからこそ見てもらえることもあると思うし。
酒田:地方の人とかでも、配信やったらチケット代だけで見れたりするんで。
川口:そういう、いいところもあると思うので。バンドマンとしても前向きに活動したいし、お客さんも今まで通り安心感を持って楽しんでくれたらなと思います。
碩:バンドって別にライブがすべてじゃないと思うので。今はSNS中心になってきてるし、音楽はもちろんやけど、投稿一つでも繋がれるし、いつでも見たり聴いたりできる状況があると思うので。やっぱりライブはしたいですけど、できるようになるまでは、こっちもいろいろ考えないとなと思います。
酒田:こういう時期やからこそというのもあって、4月にファンクラブ「yours」を開設したんですよ。よくあるホームページ上のファンクラブじゃなくて、アプリを使って、お客さん同士だったりとか、僕らもマネージャーもスタッフも全員入れるチャットルームがあったりとか、ファンクラブ内でライブ配信もできますし、いろんな表現の仕方でみんなとコミュニケーションを取り合えたらいいなと思ってます。
――世界に広げよう友達の輪。
酒田:会員同士で友達が増えてくれたらうれしいね。
佐竹:そうだね。ぜひ参加してほしいです。
取材・文=宮本英夫

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