【SA インタビュー】
これまでとサウンドが
違うところをまず見せたかった
SAから約2年振りとなる待望のニューアルバム『CALL UP MY COMRADES』が届いた。昨年MATCHAN(Dr)が加入したことで、パンクバンド最強と言われたサウンドがさらにパワーアップ! その制作背景を4人に語ってもらったが、メンバー間の会話の端々からも今バンドがすこぶるいい状態であることがうかがえるインタビューとなった。
前のドラマーが辞めた2日後には
MATCHANがリハで叩いていた
新体制となって初めての取材ですので、まずは新メンバーに語っていただくのがよいのではないかと思いますが。
NAOKI
(※MATCHANに向かって)よろしくお願いします!(笑)
昨年2月のライヴで前メンバーが脱退して、MATCHANさんがその翌々月の4月に加入したわけですが、どういう経緯だったのでしょうか?
MATCHAN
一昨年末でしたかね。僕が前のバンドを辞めることが決まっていて、その時点でもう予定がなく…特にバンドをやる予定とかもなく、完全にフリーな状態になっていて、バンドをやるか、やらないかも含めて“少し休もうかな?”みたいな期間だったんですよ。そうしたらその時期くらいにTAISEIさんから電話がかかってきて。“久しぶり。元気? バンド辞めるんだって?”みたいな話で(笑)。で、“久しぶりに飯でも食いに行こうよ”ってことになったんですけど、ふたりで会って話すなんて何年振りだったんですかね?
TAISEI
…20年弱くらい?(笑) 何かいい感じのタイミングだったっていうか、前ドラマーが辞めることになって“誰かドラマーいねぇかな?”ってなった時に、3人で候補を挙げていった中で、“そう言えばMATCHANがKEN YOKOYAMAを辞めたらしい”みたいな話になったんですよ。19歳くらい頃から知ってる仲だし、KEN YOKOYAMAとは何回か一緒にライヴをやったこともあったから、MATCHANのドラムも知ってて、“いいな”と思ってたからね。いいタイミングだと思って速攻電話して“会おうよ”って。
新しいドラマーの候補のひとりとして、まずは会ってみようという感じだったんですか?
TAISEI
いや、もう決め打ちだったね。ドラムのうまさは分かっていたから。あと、人間性も知っていたし。そこを大事にしたかな?
NAOKIさんとKENさんはTAISEIさんからMATCHANさんの名前を聞いた時はどう思いました?
NAOKI
最初はね、MATCHANだけじゃなくて…
NAOKI
うん。ひとつずつ挙げていて。でも、それぞれに事情があってダメになって…ということがあった中で、TAISEIがMATCHANに電話して一緒に飲んだと。で、俺も途中からそこに入って。俺らの推しの候補者もあったんだけど、MATCHANはTAISEIの推しだから“一回スタジオに入ろう”ってなって…それは正式なオーディションではなくて遊びで。でも、4人で合わせたら、これがもう!(笑)
KEN
そこまでの期間がすごく短かったんですよ。前任者が辞めることになって、そのMATCHANとスタジオに入るまでが。
KEN
すごいスピードでしたね(笑)。とにかくバンドの動きを止めたくなかった…それが一番だったんですよ。
実際、SAの公式サイトで前メンバーの脱退が発表された時も“我々SAは立ち止まるわけにはいきません”とのコメントが出ていましたね。
NAOKI
2月の頭にホームページ上で告知しておいて、水面下ではMATCHANと飲んだりしてて、前のドラマーが辞めた2日後にはMATCHANがリハーサルスタジオで5曲ほど叩いたんですよ。もう心はひとつに決まってましたね。こちらは土下座の気持ちだった(笑)。
NAOKI
“お願いします! SAに入ってください!”って(笑)。先輩だから実際には土下座しなかったけど、心は土下座ですよ。
TAISEI
前のメンバーでのライヴは京都で最後だったんだけど、MATCHANはそれを観に来てましたからね。
MATCHAN
連絡をいただいた時はドラマーが辞めることを知らなくて。電話をもらった翌々日くらいが京都でのライヴだったんで、弾丸ツアーで京都まで行きました(笑)。
なかなか後任が決まらずにしばらくサポートで…なんてバンドも中にはいますが、その点ではSAはスムーズだったんですね。
TAISEI
うん。MATCHANが加入して1年ちょい経つけど、ある意味で奇跡的だったとたまに感じるよね。メンバーチェンジって普通はもう少しゴタゴタするじゃない? なかなか見つからずに何度もオーディションをしたり。そもそもオーディションはしてないもんな?
NAOKI
してない。逆にオファーもありましたよ。“SAで叩きたい”って奴からオファーも来たけど、ちょっと高齢の方ばっかりで。俺ら高齢バンドだから、ちょっと若いメンバーが欲しかった(笑)。
フレッシュなメンバーのほうが良かったという(笑)。
確かに(笑)。まぁ、真面目な話をすると、MATCHAN さんに会って“一回スタジオに入ろう”ということになったというのがいいですね。何よりもバンドっぽい。
TAISEI
そうそう。相性ってあるからね。言葉では言い表せない感覚…音にはそれがある。そこがマッチングしたという。俺だけの話をしたら、MATCHANは欲しかったドラムだったんですよ。パワーがあってテクニックがあって、こう…感情が入っているドラムというのか。実はまだこのメンバーになる前のSAで一度叩いていて。
あぁ、そうでしたか。
TAISEI
うん。ただ、その時は粗削りで…まぁ、こっちも粗削りで“パンクだ! 行くぜ! オリャーッ!”ってやってたんだけど、時間が経っ、“ずっとやり続けている人間というのはやっぱり成長するんだな”と思ったというか、向上心がすごく見えたというか。
時を経たことで成熟したと。
MATCHAN
すごかったですよ、音を出した瞬間は。僕、SAのことは好きだったんです。バンドとしてめちゃくちゃうまいし、実際に人によっては“パンクバンドでは日本で一番うまい”と言う人もいるくらいだし、僕もそう思っていたから“この人たちと音を出したらどういうふうになるんだろう?”という興味がかなり強くて。で、曲が始まった瞬間、“このバンドでやらなきゃダメだ!”と本当に思った…一瞬クラっとするくらいの感動があったんですよ。こんなふうになれるんだったら、技術的なところでみんなに迷惑さえかけなければやっていけると思って、僕はその時に“SAでやりたい!”って。
いきなり“ここでやれる”という確信を得たんですね。
MATCHAN
初めてに近かったですね、そこまで強烈なのは。
それは音楽をやっている方にとっては何物にも代えがたいことでしょうね。
MATCHAN
本当にそうです。“音楽をやってる価値があった”と(笑)。僕は一度バンドを辞めている人間なんで、なおさらそういうふうに思ったし、“やっぱりバンドってこうだな”ってことを教えてもらった瞬間でした。
前バンドを辞めた時には“音楽活動自体をリタイアするかもしれない”という気持ちもあったんですか?
MATCHAN
ありました。むしろそっちの方が強かったですね。“今までのバンドで味わった感動を、もう超えることはないだろう”という覚悟がちょっとあったんです。でも、その2カ月くらいで超えちゃったという(笑)。
メンバーがひとりでも変わるとバンドはまったく別物になってそのサウンドをまとめるのも大変だとも聞くんですが、その点、新生SAは極めて順調に進んだようですね。
TAISEI
すごく順調。だから、MATCHANが去年の4月に入って、その前の18~19年を払拭するくらいの打ち出し方、見せ方をしたいということで、去年はむちゃくちゃライヴやったもんね。“やれるもんはとりあえず全部やろう”みたいな。以前のことを僕らのファンであるコムレイズの連中が忘れるくらいのものにしなきゃいけないくらいの気持ちでいたから。