ソロピアノの可能性を拡げた
キース・ジャレットの
『ケルン・コンサート』
本作『ケルン・コンサート』について
そして、この『ソロ・コンサート』の良いところを凝縮し昇華させたのが、本作『ケルン・コンサート』である。収録曲は2曲。前作同様、曲のタイトルはなく、単に「ケルン、1975年1月24日(パートI)(原題:Köln, January 24, 1975, Part.I)」という表記。そして、2曲目は「ケルン、1975年1月24日(パートIIA)(原題:Köln, January 24, 1975, Part.IIA)」「ケルン、1975年1月24日(パートIIB)(原題:Köln, January 24, 1975, Part.IIB)」「ケルン、1975年1月24日(パートIIC)(原題:Köln, January 24, 1975, Part.IIC)」と3パートに分かれている。これはLP収録時にA〜D面に振り分ける必要があったためだ。
即興とはいえ、前作の『ソロ・コンサート』のフレーズがアレンジされて使われているのだが、まさに良いところが凝縮されている。特に1曲目の「Köln, January 24, 1975, Pt.I」(26分半)の出来は秀逸で、この曲のためにこのアルバムを買っても損はない。静謐感の漂う曲のスタートは、まさにECMのイメージ通りであり、数多いソロピアノ演奏の中でも群を抜いて素晴らしいと思う。
僕はこのアルバムと出会って40年近くになるが、今でも繰り返し聴き続けていて、何度聴いても新しい発見ができる稀有の傑作だと思う。本作が気に入ったら前作の『ソロ・コンサート』や、キース・ジャレット以外のECMの諸作品も聴いてみてほしい。また、このアルバムにまつわるさまざまな逸話は、ウィキペディアで紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。
ちなみに、冒頭で紹介したダラー・ブランドのライヴ盤『アフリカン・ピアノ』もECMからのリリースで、こちらは汗臭いまでの気迫に満ちあふれた熱気が伝わってくる傑作である。
TEXT:河崎直人