約2か月の休館を経て……本多劇場グ
ループ営業再開 第1弾『DISTANCE』
上演に永島敬三、井上小百合、入江雅
人が出演

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2020年4月7日(火)からすべての劇場を自主的に休館していた本多劇場グループが6月1日(月)に営業を再開した。その第一弾として同日19時から東京・本多劇場にて舞台『DISTANCE』を無観客配信という形で上演した。
7日(日)まで上演される本作は、このプロジェクトの発起人を川尻恵太が務め、御笠ノ忠次と共に企画・脚本・演出を行い、日替わりで11人の俳優たちが繰り広げる一人舞台だ。初日は劇団「柿喰う客」の永島敬三、元乃木坂46の井上小百合、そして入江雅人が出演した。
撮影:和田咲子
撮影:和田咲子
撮影:和田咲子
撮影:和田咲子
撮影:和田咲子
撮影:和田咲子
永島は「ときめきラビリンス」をスタンドマイク1本、身体一つで高い熱量で演じ、井上は「齷齪(あくせく)とaccept」を初一人舞台とは思えない力量で一人何役も演じ分け、これまで何度となく一人舞台をやってきた入江は自身の作品の中から「500」をチョイス。友人と二人で飲んでいたのにいつしか500人に膨れ上がり、全員を連れて東京を練り歩くという物語をパワフルに演じ、観るものの心をわしづかみにした。3人の芝居の合間には川尻と御笠ノが荒廃した劇場の清掃員として登場し、ストーリーテラーとして物語を進行させていた。

撮影:和田咲子
会見に臨む報道陣の様子。座席の間を空けさらに敷居を設けていました。
ステージに登場したキャストたちも間隔をあけていました
配信上演の後、劇場内に報道陣を呼び込んで会見が行われた。報道陣に対して入場前にサーモグラフィーで検温を行い、持参のマスクの上からフェイスシールドを装着させ、客席も感覚を開けて座り、客席の間もアクリル板で区切るという徹底した環境の中、会見に登場したキャストたちも一定の間隔をあけてステージ上に登場した。
本多一夫
会見ではまず本多劇場劇場グループ代表の本多一夫氏から挨拶。一夫氏は集まった報道陣に感謝の意を伝えると共に「時節柄いろいろな事があり、これからも何があるか分かりませんがスタッフ一同協力して頑張っていきたい」と語る。
本多愼一郎
続いて同グループ総支配人の本多愼一郎氏が「やっと初日を迎えることができました。劇場で舞台を再開することしか考えずに今までやってきました。本日とても素晴らしい初日を観る事ができて、関わった皆さますべてに感謝しています」と溢れる想いに時々声を詰まらせ、目を潤ませながら言葉を続けた。
川尻恵太
川尻は「4月から全国の劇場が閉鎖し、どの演劇人も初めて遭遇する事態でした。(そんな環境下で)いろいろな表現方法を模索したが、いちばんやりたかったのは劇場を開けて劇場でお芝居をすることでした。そこで関わる全てのスタッフとキャストの方々と一緒に演劇に携わりたい、という想いがありました。今はまだお客さんを入れた芝居が出来る状態ではないですが、一つずつ出来るところから演劇を初めて再開したいと思います。この『DISTANCE』は少しずつ距離を縮めて最終的には今までの距離感で満員の劇場でお芝居をやりたいと思って付けた名前です。これからも頑張っていきたいです」と語った。
御笠ノ忠次
御笠ノは「僕は前向きな性格なのですが、今日をきっかけに新しい演劇のやり方が発見できたのかなと思っています。配信中に実況している人たちが楽しんでいる姿を見ていました。この先劇場に来れない人たちが同時に生で演劇を楽しむ形が確立していくかもしれないと思っています。そんな希望を持ってこの日を迎える事ができました」と笑顔を見せた。
永島敬三
永島は「配信の公演をやってみてやる前も、そしてやっている間も客席にお客さんがいないのが寂しいなと思っていましたが、一方で『明日(配信を)観るよ』『今日観るよ』と言ってくださった方もいて、配信の向こうでいろいろな想像力をもって観てくださったんだなと思っていました。僕もお客さんたちは手に力を込めて観ている姿を想像しながら演じるという、夢みたいな時間を過ごせました。本多劇場は演劇を始める前からお客として何度も来ていた場所。ナイロン100℃とか大人計画とか阿佐ヶ谷スパイダースとか多くの先輩たちが芝居をやった場所で、いつか僕もこのステージに立ちたいと思っていたところです。その後僕も何度か関わらせていただき、下北沢は帰ってきたい場所です」と熱い想いを口にし、今芝居ができない仲間たちの代表としてこの場所に立たせてもらった事に感謝を述べていた。
井上小百合
井上は初一人舞台に挑戦した感想を「本当に楽しかったです。いろんな苦しい事がある中、本多劇場に立つことが自分にとって大きな出来事になるだろうなと思っていたんですが、楽しんでしまいました」とニッコリ。「やっているうちに関わった方一人ひとりへの感謝の想いが溢れてきて……。私ごときが演劇を語るのはおこがましい事ですが、演劇じゃなくても誰かと同じ時間を共有して泣いたり笑ったりする時間は大切だったんだな、と緊急事態宣言をうけて一人の時間を過ごしている間に感じていました。今回川尻さんが書かれた脚本の中に『一人で過ごす平和ほど平和じゃないことってあるじゃないか』という台詞があって、その台詞を何度も読みながら涙してしまう事がありました。配信画面の向こう側にいる一人ひとりにこの思いが伝わる事を祈りつつやりました。また、真っ暗な客席を見ながら今までお客さんがいる事がどれだけ幸せな事だったのかと実感しました」と一言一言かみしめるように語った。
井上さん初めキャストたちは手にマスクを握り締めての会見でした
そして「私の芝居が始まる前に(川尻と御笠ノが演じる場面で)『演劇は必要ないんだよ』って話をしているんですが、私にとっては演劇で誰かと笑い、泣いたりする事が生きる意味、生きる目的だったとやりながら考えていました」と少し照れくさそうに述べていた。
入江雅人
最後に入江から挨拶。「井上さんがおっしゃっていましたが、演劇ってはっきりいって日本中の人が観ている訳ではないし、劇場がない土地もあるから演劇自体を観たことがない人も多数いるかと思います。ですが演劇によって人生が変わる瞬間もあります。僕も元々は主にテレビでコントをやっていた一人ですが、ある日芝居を観て舞台が好きになって、今は芝居ばかりやっています。敷居が高いと思われている演劇をこの機会に日本中の人に観てもらって面白いと思い、劇場に足を運んでもらうきっかけになったらいいなと。長年一人芝居をやっていますし、一人で配信もやっていますが、本多劇場さんが旗を振ってくださるのがすごくありがたいです。やっぱり演劇なんですよ。声をかけてくださったことが嬉しかったですし、今後またいつものスタッフさんたちと会って芝居ができたら」と今後に向けて想いを馳せていた。
本公演は7日(日)までイープラスのStreaming+で配信(オンタイムのライブ配信のみ)。伊礼彼方、柄本時生、小沢道成、片桐仁、小林顕作、近藤芳正、清水宏、鈴村健一(※五十音順)が日替わりで出演する。
劇場が満席になって、皆が笑顔で演劇を楽しめる日を目指して、さらに新たな演劇の姿にも期待しつつ、この公演を楽しんでみてはいかがだろうか。
取材・文・撮影=こむらさき
舞台写真撮影=和田咲子

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