サイケデリックロックから
転向を果たした
グレイトフル・デッドの
『アメリカン・ビューティー』
サザンロックの原型を生み出す
ガルシアのルーツへの回帰
『ワーキングマンズ・デッド』ではクロスビー・スティルス・ナッシュ・アンド・ヤング(以下、CSN&Y)ばりのコーラスと優しいフォーキーなサウンドが聴けるが、それは偶然ではなく、実際にCSN&Yが絡んでいるのである。ガルシアはCSN&Yのアルバム『デジャブ』(‘70)にペダルスティールで参加した際、歌を大事にする彼らの音楽性に大きなインパクトを受け、作詞家のロバート・ハンターと、自分たちのルーツであるカントリー、フォーク、ブルーグラスをモチーフにした曲を書くようになっていた。デビッド・クロスビーとスティーブ・スティルスはミッキー・ハートの牧場で休暇期間を過ごしており、その時に彼らの訓練された美しいコーラスをウィアとともに聴き、ガルシアらと同じタイミングで影響されるのである。『ワーキングマンズ・デッド』はこれまでのような演奏主体のセッション的な作品とは違って、歌を生かしたルーツ色の濃いアルバムで、デッドは見事な転身を遂げたと言えるだろう。ガルシアはギターだけでなく、バンジョーやペダルスティールも駆使して新生グレイトフル・デッドに貢献。デッドを代表する名曲のひとつ「ケイシー・ジョーンズ」を収録している。