新国立劇場「巣ごもりシアター」、期
間限定で蓬莱竜太、長塚圭史など演劇
公演の書き下ろし戯曲を公開

新国立劇場が行っている、長期に渡り自宅などでの待機を余儀なくされている方々へ、そして舞台芸術を愛する方々に向けて贈る「巣ごもりシアター」。この度、演劇部門から、新国立劇場のために書き下ろされた戯曲を、期間限定でウェブ公開する“おうちで戯曲”を開始することが発表された。
公開日程は、2020年4月23日(木)より毎週2作品をそれぞれ2週間ずつ公開し、1ケ月以上にわたって様々な戯曲を楽しむことができる。
外出自粛を余儀なくされている昨今、自宅で俳優になりきって戯曲を音読してみたり、文字から観劇当日の感動を呼び起こしてみたり、もしくは普段の小説とは違う読書タイムを過ごしたりと、新国立劇場の演劇作品と共に思い思いの「巣ごもり」をしてみてはいかがだろうか。
<作品紹介>
【配信期間4月23日(木)15:00~5月7日(木)14:00
■蓬莱竜太『エネミイ』(2010年7月初演)
蓬莱竜太『エネミイ』(左から)高橋一生、高橋長英、梅沢昌代、林隆三、粕谷吉洋、高橋由美子、瑳川哲朗  撮影:谷古宇正彦(2010年)
平凡な家庭にある日突然、謎の男たちがやってきた。目的も告げず、なぜか居座り続ける男たち。「……どうして帰ってくれないんだろう」そんな男たちと家族の間で揺れる青年の物語。学生運動、安保闘争という「戦いの時代」から「戦わない時代」への移り変わりを1976年生まれの劇作家の視点で描きだしている。
■早船 聡『鳥瞰図』(2008年6月初演)
早船聡『鳥瞰図』 (左から)浅野和之、野村佑香、弘中麻紀、渡辺美佐子  撮影:谷古宇正彦(2008年)
東京近郊のある港町を舞台にした、埋め立てられた海をめぐる家族の物語。失われた海、失われた命、失われた愛……。この町で三代続く船宿を営む家族を中心にそれを取り巻く人々が、それぞれの「失われた何か」を見つけるために過ごしたある夏の日が描かれる。
【配信期間】4月30日(木)15:00~5月14日(木)14:00
■倉持 裕『イロアセル』(2011年10月初演)
倉持裕『イロアセル』 (左から)加藤貴子、藤井隆、小嶋尚樹、高尾祥子  撮影:谷古宇正彦(2011年)
話す言葉に人それぞれ固有の色があり、そのため住人はいつも慎重に発言しウソをつかない、という島が舞台。あるとき、丘の上に檻が設置され、島の外から囚人と看守がやってくるが、彼らとの会話は無色透明だった……。というところから始まる、現代のマスメディアやインターネット社会への風刺をこめた喜劇。
■長塚圭史『音のいない世界で』(2012年12月初演)
長塚圭史『音のいない世界で』 (左から)長塚圭史、首藤康之、近藤良平、松たか子  撮影:谷古宇正彦(2012年)
新国立劇場初の「こどもに開かれた」大人の演劇。大切なカバンを盗まれたことで「音」を失ってしまった女性がカバンを取り戻そうと旅に出る。その女性と、彼女を追う夫を軸に綴られる不思議な一夜の物語。
【配信期間】5月7日(木)15:00~5月21日(木)14:00
■蓬莱竜太『まほろば』(2008年 7月初演)
蓬莱竜太『まほろば』 (左から)中村たつ、魏涼子、秋山菜津子、大西風花、前田亜季、三田和代  撮影:谷古宇正彦(2012年)
とある田舎町の祭りの夜、本家を名乗る大きな日本家屋の居間を舞台に、命を繋げる、次世代への記憶を紡ぐ、ということをテーマに描いた6人の女の物語。蓬莱竜太は本作品で、2008年第53回岸田國士戯曲賞を受賞した。
■鄭 義信『焼肉ドラゴン』(2008年4月初演)
鄭義信『焼肉ドラゴン』 (右から)ナム・ミジョン、ハ・ソングァン  撮影:谷古宇正彦(2016年)
日本の焼肉屋を舞台に、ある在日コリアンの家族を通して、日韓の現在、過去、未来を、音楽入り芝居でおかしく、そして哀しく切なく描き出し、2008 年の演劇賞を総なめにした作品。2018年には、鄭自身がメガホンをとり、映画化された。
【配信期間】5月14日(木)15:00~5月28日(木)14:00
■長塚圭史『かがみのかなたはたなかのなかに』(2015年7月初演)
長塚圭史『かがみのかなたはたなかのなかに』 (左から)首藤康之、長塚圭史、松たか子、近藤良平  撮影:宮川舞子(2017年)
『音のいない世界で』に続く、子どももおとなも一緒に楽しめる演劇。合わせ鏡の中の自分、うまくいかない恋、はがれ落ちない孤独感…… 未来のおとなと、かつての子どもたちへ向けた、少しビターで、少しファンタジックで、そして少しアイロニカルな物語。
■鄭 義信『赤道の下のマクベス』(2018年3月初演)
鄭義信『赤道の下のマクベス』 (右から)池内博之、平田満  撮影:谷古宇正彦(2018年)
1947年、シンガポール、チャンギ刑務所で、第二次世界大戦の BC級戦犯として収容されていた元日本軍人と朝鮮人の元捕虜監視員の物語。 2010年、韓国・ソウルで韓国語にて初演され、北京公演を経て、2018年新国立劇場上演のために大幅に改訂、日本初演された。
「巣ごもりシアター」“おうちで戯曲”に寄せて
小川絵梨子演劇芸術監督 メッセージ
新国立劇場演劇から、「巣ごもりシアター」“おうちで戯曲”をお届けいたします!
お家で演劇の世界を楽しんで頂きたいとの思いから、これまで新国立劇場に書き下ろされた数々の戯曲を、“戯曲”家(劇作家)の方々のご厚意とご協力を得て公開致します。
新国立劇場演劇では、権利関係や音楽著作権などの問題があり公演映像のネット配信が難しいところがあります。
そこで、演劇の土台であり、稽古場での設計図でもある、大切な「戯曲」に、是非この機会に触れて頂けたらと思いました。公開に当たり、ご快諾下さった方々に、心より感謝申し上げます。
戯曲を初めて読む!という方に、僭越ながら、例えばこんな風にも戯曲を読める!というご提案として……
1)気負わず楽しんで読む
2)舞台化を想像しながら読む
3)俳優になって、好きな役を選び、一人の人物になりきって読む
4)演出家になって、具体的に配役や舞台美術などなどについて、アイデアを巡らせながら読む
5)短いセクションで区切って、そこを繰り返し読み、行間にどんなドラマがあるのか想像しながら読む
などなど。
個人的なことですが、自分が演出をする際は戯曲の存在が非常に大きく、戯曲に頼って、戯曲に助けられて、戯曲に教えてもらって、戯曲に楽しませてもらっています。戯曲があるから作品を作れるし、作りたいと思う事ができています。
「戯曲」の豊かさや楽しさを、共に感じて頂けましたら幸いです。

また、新国立劇場は、演劇公式SNS(Twitter/Facebook/Instagram)にて、2019/2020 シーズンと 2020/2021 シーズン公演の演出家総勢9名からのメッセージをリレー形式で投稿している。劇場の扉は現在残念ながら閉まっており公演ができない状態だが、劇場関係者一同、公演が再開できる日を心待ちにしつつ、「我々は止まってないよ」「未来に向かって進んでいくよ」ということが、演劇、そして舞台芸術を応援してくれている方々に少しでも届けば、という思いで行っているとのこと。

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