オオサカ・シオン・ウインド・オーケ
ストラ 石井徹哉 楽団長に聞く

1923年(大正12年)に誕生以来「Shion(しおん)」の愛称で親しまれ、日本で最も長い歴史と伝統を誇る吹奏楽団「大阪市音楽団」は、2014年に一般社団法人大阪市音楽団として民営化の道を歩み始めた。2015年3月には名称を「大阪市音楽団」から「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ」と改め、2018年には公益社団法人大阪市音楽団として新たに活動を開始。
行政の施策転換に振り回された格好の民営化スタートだったが、当初はテレビや新聞でも「Shion頑張れ!」といった論調の記事が多く、社会面でもこの話題で盛り上がっていたが、最近ではあまり目にする事はない。しかしOsaka Metroでは、Shionのポスターを目にする機会も多く、手元に有るパンフによると、来シーズンの定期演奏会は、年6回を計画しているようだ。大阪4大オーケストラなどは、この時期どこも厳しい情勢だが、Shionはどんな状況に置かれているのだろうか。
オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラの楽団長 石井徹哉にあんなコトやこんなコトを聞いてみた。
―― Osaka Metroのポスター、目立ってますね。
ありがとうございます。特に今月のポスターは評判良かったみたいで、チケットも良い感じで動いていたのですが、新型コロナウイルスの影響で、そのコンサートが中止になりました。シーズン最初の定期演奏会を、人気作曲家チェザリーニ氏が指揮をしてくださるはずだったのですが、来日出来なくなってしまいました。
Osaka Metroに貼ってある話題のポスター
―― えー、それは残念ですね。やはり新型コロナウイルスの影響は、相当出ているのでしょうか。
どこの楽団も大変だとは思いますが、Shionも中止、払い戻しの対応に追われています。早く収まってくれることを祈るばかりです。
―― 石井さんは楽団長と理事長をやりながら、楽団では現役で楽器を演奏されているそうですね。
はい、バストロンボーンを吹いています。Shionに入団したのは2004年、26歳の時です。音楽大学を卒業して、4年間はフリーランス奏者としてオーケストラのエキストラなどを務めておりました。実は、Shionに入るまで吹奏楽をやったことがありませんでした。意外に思われるかもしれませんが、Shionには他にもそういうメンバーがいます。
楽団長 石井徹哉
―― それは意外です。てっきり中高生の時は吹奏楽の強豪校で、目指せ普門館!でやって来られたと思っていました。日本の現役吹奏楽人口は100万人とも120万人とも言われていますね。経験者でいうと1000万人を超えると聞くと、日本は世界有数の吹奏楽大国。しかし、目指せ、全日本吹奏楽コンクール!の若い人たちは、卒業と同時にその反動からか、楽器からも音楽からも離れてしまう人が多いといった事をよく聞きます。
全日本吹奏楽コンクールの取り組みは本当に素晴らしいと思います。先生や仲間との繋がりは深まり、行儀やマナーなども含め、人間形成の場としては理想的です。ただ残念なのは、卒業してからも吹奏楽を続けていける環境が整備されていないところです。野球であれば、素晴らしい成績を上げた高校球児はプロ野球や実業団への道がありますし、そうでなくても野球を続けていく事は出来ます。しかし、吹奏楽で言えば、プロフェッショナルの楽団が少ないことや、職業としない場合でも演奏するには40名程度の大人数が集まらないと出来ないなど、吹奏楽部の生徒たちは同じ情熱を注いでも、キャリアパスが用意されていない状況なのだと思います。
Shionでは、そういった人たちに少しでも演奏の場になればという想いで「月イチ吹奏楽」という参加型のイベントを行っています。演奏経験のある多くの方がお越しになられ、練習を経て一緒に演奏をします。一度吹奏楽に向き合った人は、機会を求めていたのだと感慨深いものが有ります。大切に継続していきたい事業ですね。
「月イチ吹奏楽」の様子(於:大阪フィルハーモニー会館)
―― Shionはコンクールの課題曲の参考演奏もやっています。吹奏楽部の生徒たちの憧れ的な存在なのではないのでしょうか。
そうであると嬉しいのですが、意外と生徒の皆さんには知られていませんよ(笑)。そういった事をもっとアピールし、我々の存在を知ってもらう所からしっかり始める必要があると思います。
―― 両方を経験されて来た石井さんから見て、吹奏楽とオーケストラを比較して、吹奏楽の勝っている所と劣っている点を教えて頂けますか。
楽器の特性上、息を吹き込んで音を出す楽器が並ぶので、迫力のあるサウンドは吹奏楽の魅力だと思います。オーケストラの様に弦楽器が入る事で生まれるサウンドは、また違った魅力が有るので、どちらが良いかではなく好みじゃないでしょうか。
ただ、楽曲的にはオーケストラのように名曲と呼ばれる作品が少ないのは確かですね。吹奏楽の歴史は浅く、現在も存命中の作曲家の作品も多いです。歴史に名を残すクラシック音楽の作曲家の中にも、ホルストやヒンデミットなどは吹奏楽の為の曲を書いていますが、やはり少ないです。長い時間の中で淘汰されて、名曲だけが残っているオーケストラの状況とは、やはり違います。
―― ベートーヴェンで250年、チャイコフスキーでも180年ですね。
そうですね。中には、オーケストラの曲を吹奏楽の特性を活かして編曲する事で、オーケストラ以上に人気の曲となり、演奏機会が多いものもたくさんあります。レスピーギのローマ三部作もそうですし、「シバの女王ベルキス」は吹奏楽で演奏する方が圧倒的に多いでしょう。ワーグナーの作品は吹奏楽でも人気ですが、「歌劇『ローエングリン』から“エルザの大聖堂への行列”」は吹奏楽ファンにとっては特別な曲だと思います。
Shionの定期演奏会では、そういったすべてを考慮した上で、プログラミングをしております。吹奏楽経験者にもクラシックファンにも、喜んで頂ける曲を並べたつもりです。
―― なるほど、では定期演奏会のラインナップを見ていきたいと思います。4月の第130回定期演奏会は、吹奏楽の人気作曲家フランコ・チェザリーニを指揮者に迎えてのコンサートですね。
フランコ・チェザリーニ (c)Daniel Vass
チェザリーニ氏が自身の曲を指揮するのは国内初。人気の「交響詩『アルプスの詩』」と「ビザンティンのモザイク画」を並べて、メインプログラムはやはり交響曲を!という事で、この1月の定期演奏会でも演奏いたしました「交響曲1番『アーク・エンジェルズ』」に次いで、「交響曲第2番『江戸の情景』」をラインナップして皆さまに聴いて頂こうと思っていたのですが、チェザリーニ氏が新型コロナウイルスの影響で、母国スイスから渡航許可が出ず、中止となってしまいました。
―― 本当に残念ですね。6月の第131回定期演奏会は汐澤安彦さんの指揮です。関西の楽団を指揮されるのは珍しいですね。
汐澤安彦
東京佼成ウインドオーケストラや東京吹奏楽団の指揮者もされていましたし、これまでシオンを振って頂かなかったのが不思議なくらいです。汐澤さんは元々バストロンボーン奏者で、実は私も教わった事があるので、お呼びするのは個人的にも嬉しいです(笑)。今回指揮して頂くのはクラシックの名曲ですが、すべて吹奏楽でもお馴染みの曲。「私の吹奏楽、これで始まりました!」といったラインナップと言って良いのではないでしょうか。このプログラムなら、オーケストラのファンの皆さまにも、聴き比べ目的でお越し頂きたいですね。
―― 第132回定期演奏会は下野竜也さん。吹奏楽にも造詣の深い下野さんですが、今回が初共演だそうですね。
下野竜也 (c)Naoya Yamaguchi
はい。楽団員からもやってみたいという声が多かった下野さんと共演が決まりました。どんな音を引き出してくださるか、私も楽しみです。何を指揮して頂こうか迷いましたが、少々マニアックなプログラムをお願いする事にしました。ジローの「交響曲第5番『エレメンツ』」は、プロの楽団が取り上げるのは初めてだと思います。マスランカは代表的な吹奏楽の作曲家ですが、Shionは今まで取り上げたことがない作曲家です。「交響曲第4番」は代表作ですが、難易度の高いやり甲斐のある曲。細部までスコアを読み込むことで知られる下野さんのリハーサルも楽しみです。1曲目の藤掛廣幸さんの曲は、下野さんオススメの曲です。
―― 第133回定期演奏会は芸術顧問の秋山和慶さんです。
芸術顧問 秋山和慶
吹奏楽の作品は現在進行形で次々と誕生していますので、一度は取り上げる機会が有っても、なかなか2度、3度と再演する機会はありません。この回は、吹奏楽の人気作曲家ジェイガーとリードの代表的な交響曲を、お馴染みの小品と組み合わせてお聴き頂きます。それぞれ名曲の誉れ高い交響曲ですが、クラシックの名曲のように、これからも演奏され続けるのかどうか、皆さんの感想をお聞かせください。芸術顧問の秋山和慶の指揮でお聴き頂きます。
―― 第134回定期演奏会は齊藤一郎さんの指揮ですね。東京佼成ウインドオーケストラと一緒に録音した「ブラバン!甲子園」のシリーズが人気でした。
齊藤一郎
齊藤さんとの音楽作りはとても楽しく、シオンのメンバーとの相性は抜群!今回は「祭り」にちなんだ作品を指揮して頂きますが、派手で煌びやか、そしてスケールの大きな音楽作りをされる齊藤さんにはぴったりだと思います。バラエティに富んだプログラムをお楽しみ下さい。
―― シーズンを締め括る第135回定期演奏会は、正指揮者 西村友さんの指揮です。1曲目の「イギリス民謡組曲」以外は、オーケストラの定期演奏会のようなプログラムですね。
正指揮者 西村友
正指揮者の西村友と言えば、ご存知の方は熱い演奏を連想されると思いますが、吹奏楽の特性を生かした素晴らしい編曲が出来るのです。昨年11月の127回定期演奏会で演奏したイベールの「交響組曲『寄港地』」とドビュッシーの「交響詩『海』」は全編、吹奏楽の音で成立するように作られていて、とても見事でした。今回はラヴェルの「ラ・ヴァルス」とバルトークの「中国の不思議な役人」を編曲していただきますが、ぜひ、オーケストラ版と比較して聴いて頂ければと思います。
シーズンを通してソリストが入る公演はこの回だけ。一昨年、佐世保でやった「吹奏楽meetsJAZZ」でご一緒したジャズ・ピアニストの松永貴志さんと再び共演しますが、今回取り上げる曲は名曲「ラプソディ・イン・ブルー」!前回のアニメ「坂道のアポロン」公演からさらに場数を踏んだ松永さんとの共演は、盛り上がる事は間違いないでしょう。どうぞご期待ください!
ジャズ・ピアニスト 松永貴志
―― 自主公演としては、定期演奏会以外何がありますか?
京都定期演奏会と特別公演、それと楽器をお持ちのファンの方と一緒に演奏する「月イチ吹奏楽」と、Shionメンバーのリサイタルシリーズ「ワンダフルコンサート」ですね。
来年度の京都定期演奏会と特別公演については、まもなく発表出来ると思います。
―― その他にも「ドラゴン・クエスト」や「ジョン・ウィリアムズ」のコンサートなど、色々とやられていますね。最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。
人気の「ドラゴン・クエスト」コンサートは年間10公演ほどさせていただいています。色々な依頼を受けて数多くのコンサートをやらせて頂いてますが、自主公演はもちろん、依頼公演も常に新しい企画を提供していこうと工夫をしてプログラムを作っています。
来シーズンは定期演奏会に登場しませんが、音楽監督の宮川彬良が指揮をするコンサートは、お客さまはもちろん、メンバーも笑いが絶えず、とても楽しいものです。
音楽監督 宮川彬良 (c)PACO
音楽監督の宮川彬良、芸術顧問の秋山和慶、正指揮者の西村友と三人三様の指揮者陣でお贈りするコンサートは、吹奏楽の醍醐味や魅力といったものを楽しんで頂けるはずです。
一度、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラのコンサートにお越しください。コンサートホールでお待ちしています。
オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラをよろしくお願いします! (C)飯島隆
取材・文=磯島浩彰

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