ファンク系ブルースを生み出した
B・B・キングの
『コンプリートリー・ウェル』

ブルースマンからアメリカーナ系
アーティストに

彼はギターもヴォーカルもべらぼうに上手いし、人より好奇心も旺盛だったのだろうが、ブルースでトップに立った後、その位置には安住せず新しい音楽を求めて試行錯誤していく。それが60年代の終わりから70年代中頃まで続くロックやファンク系のアーティストたちとのコラボである。そして、この取り組みが日本やイギリスなどのブルースファンの神経を逆撫でし、白人に媚びるヤツとして見られるのだが、もうこの時点で彼はブルースマンというよりはアメリカーナ音楽のアーティストになっていたのである。

事実、彼が影響を受けたとして挙げているアーティストの中には、ジーン・オートリー(歌うカウボーイと呼ばれた初期のカントリーシンガー)、ジミー・ロジャーズ(ブルースマンではなく、ヨーデルを取り入れた初期のカントリーシンガーのほう)、ジャンゴ・ラインハルト(フランスのジャズギタリスト)、チャーリークリスチャン(テキサス出身のジャズギタリスト。初めてエレキギターを使ったミュージシャンとして知られる)など、カントリーやジャズのアーティストが含まれており、この時代のブルースマンには珍しい雑食性だ。ブルースやR&B系のアーティストでカントリー系の音楽に影響を受けたと公言しているのは、他にはゲイトマウス・ブラウン、レイ・チャールズ、バーバラ・リンぐらいではないだろうか。

ロックやファンクへのアプローチ

そして69年、16枚目のアルバム『ライブ&ウェル』のB面(A面はライヴ。B・Bのブルースギターが炸裂する名演)で、プロデューサーに若手のビル・シムジク(後にイーグルスやジョー・ウォルシュのプロデューサーで知られる)を迎え、ニューヨークで活動するソウル/ファンク系のミュージシャンに加えて、アル・クーパー、ヒュー・マクラッケン、ポール・ハリスといった白人アーティストをバックにつけ、いよいよB・Bは新たなスタートを切る。

このアルバム、出来は悪くないが、A面はブルースだがB面はファンク/ソウル系のブルースなのでまとまりはない。若いシムジクにとって、一枚まるごとファンク/ソウル系のブルースで勝負するのは怖かったのだろうと思われる。ところが、このアルバムがチャートで好成績を収め、予想外のヒットを記録する。

OKMusic編集部

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