シド 過去最高にメッセージ色の濃い
『承認欲求』ツアーを終えた4人はど
こへ向かうのか? 新曲「delete」、
野外ライブ『Star Forest』に寄せる
思いから探る

シド史上最高にメッセージ色の濃い世界観を、多彩な映像を駆使して劇的に創造した『承認欲求』ツアーを終えた4人は、次にどこへ向かうのか? その布石となるのが、2020年最初のリリースであるシングル「delete」(テレビアニメ『七つの大罪 神々の逆鱗』オープニングテーマ)、そして5月9、10日に開催が決まった河口湖ステラシアターでの野外ライブ『SID LIVE 2020 -Star Forest-』だ。ツアーの回想、新曲のエピソード、そして野外ライブに寄せる思いについて、4人の言葉から今のシドを探り出してみよう。
――『承認欲求』は、ファイナルのあとに振替公演が2本ある、変則的な終わり方でしたけども。終わった時は、どんな気持ちに?
マオ(Vo):最後の2本は、もちろんツアーの一環としてやったんですけど、うちは年末や新年のライブをなかなかやらないんで、いい機会になったなという気持ちでしたね。結果、良かったんじゃないかなと思います。
明希(B):今回のツアーは、映像とコラボすることが多かったので、今のキャリアの中で新しい試みをやれたことが、まず新鮮でした。10年以上やってると、自分たちの中のセオリーのようなものができてくると思うんですよ。“ここでこう来て、定番曲があって”とか。新しいアルバムのツアーなので、それをやったとしても新鮮にはなると思うんですけど、さらにライブとしての見せ方を、追及してやれたんじゃないかなという気がしました。
――お客さんが聴き入るシーンが多かったのが、印象的でしたね。特にアルバム曲を。
明希:そうですね。激しい曲よりは、わりとゆったりした曲が多いアルバムだったんで。それはそれで、見せ方として、寄り添えたのかなと思います。
Shinji(G):シンプルな楽曲が多いアルバムだったので、自分たちの演奏がすごくダイレクトに聴こえたというか。演奏してる音がすごく入って来るので、テンションが上がりました。自分の演奏がうまくいった瞬間って、勝手にテンションが上がっていくので。上げるぞ!と思わなくても、すごく自然に上がって行けたツアーだったなと思います。
ゆうや(Dr):ファイナルから振替公演の間に、『Trigger In The Box』という事務所のイベントで、対バンをやったんですけど、俺の中でそれがけっこう大きくて。普段はツアー中に対バンはやらないし、しかも『承認欲求』の世界観一直線でやってきた中で、別の感覚を感じることができて、振替公演はまた一つパワーアップした感じがあったんですよ。最終的に、面白いツアーになったなと思ってます。
シド/マオ(Vo) 撮影=森好弘
どんどん身につけて、自分を大きく見せるよりは、そぎ落として“今はこれだ”というものに挑戦していく気持ちが、すごく大切だなと思った。
――そのツアーを経て、2020年最初のリリースが、新曲「delete」。テレビアニメ『七つの大罪 神々の逆鱗』オープニングテーマで、明希さんの曲。
明希:はい。アニメの制作サイドの方の意見や、作品の風味や、それと自分たちとして、2020年の第一弾としてのイメージとかを、自分の中でリンクさせて作れたかなと思ってます。
――曲調は、激しく強く、ライブ感全開で突っ走るという。
明希:『承認欲求』の世界からは対極にある感じの曲がいいんじゃないか?と、自分では思っていて。仮に『承認欲求』を静とするなら、今回のシングルは動にしようというイメージでしたね。それが『七つの大罪』ともリンクして、そこからアニメの作風ともっとリンクさせたり、意思を確認しあって作っていきましたね。
マオ:アニメの世界観は、すごく意識しました。作詞に関してもそうなんですけど、特に最近って、昔と違って、アニメのタイアップをやられているアーティストさんは、すごく幅が広くなったなというか、いろんな方がやられるようになって、俺たちもその中に入ってるんですけど。そんな中で、こんなにすごいアニメがシドと組んでくれたのは、純粋にすごくうれしかったし、それに応えようという気持ちはかなり強かったかもしれないですね、今回は。『七つの大罪』と一緒にやるぞ、という気持ちはありました。
――歌詞でいうと、キーワードはありますか。
マオ:もともと知っていたわけではなく、これをきっかけに知ったんですけど。いろんなタイプのアニメのタイアップを今までやらせてもらっていて、その中でも、このアニメのこのクールは、自分で言うのも何ですけど、シドにハマるだろうなという予感がすごくしていたので。言葉に関しては、どのへんというよりは、アニメ全体を意識したものとして書きましたね。なので、アニメファンの方もきっと、曲に乗せてこの言葉を聴いた時に、何かを共感してくれる部分があるんじゃないかな?と思ってますね。
――「delete」=削除というのは、かなり強い言葉ですけど、これは?
マオ:最初からあったわけではなくて、途中で思いついた言葉ですね。導かれるように出てきた言葉でした。歌詞を書く時は、その時の自分の気持ちやテンションがかなり左右するんですけど、それが大きかったと思います。最近、前に進みたいなという気持ちが強くて、そのために必要なものって何だろう?ということを、よく考える機会が多かったんですよ。その時に、自分の中のいらないものをそぎ落としていかないといけないなと。どんどん身につけて、自分を大きく見せるよりは、そぎ落として“今はこれだ”というものに挑戦していく気持ちが、すごく大切だなと思ったので。「delete」=消すという、負のイメージを持たれがちだと思うんですけど、前向きな消去というイメージでしたね。それが自分の中で、ズバッと来ました。
シド/Shinji(Gt) 撮影=森好弘
ギターの楽しい部分が全部詰まった曲で、小賢しいことはやっていないので、いろんな人が弾いてくれたらうれしいなと思います。
――演奏的には、ギター的には、どんな曲でしょう。
Shinji:この曲、ギタープレイが満載なんですよ。イントロはグリス奏法で、Aメロはミュートで、Bメロはリフでカッティング、そしてサビはジャカジャカ弾きという、ギターの楽しい部分が全部詰まった曲というか。しかも、小賢しいことはやっていないので、ライブで弾いててすごく楽しいんですよ。なので、いろんな人が弾いてくれたらうれしいなと思います。
――それは、自然にそうなっちゃった?
Shinji:そこは、作曲家の意向が強かったですね。
明希:けっこう、デモをかっちり作ったので。“こんな感じ”というイメージはありました。
――ということは、ドラムの打ち込みも精密に?
明希:まあ、普通に聴けるくらいには。でも細かいフレーズは、ギターもドラムもそうですけど、プレイヤーらしさが出ればいいなと思ってます。
ゆうや:ドラムは、わかりやすいフレーズをいっぱい詰め込む感じでしたね。疾走感と、パワー感と、わかりやすい派手さと。そのほうが合うと思って、そういうプレイをセレクトして入れてみました。すごくシンプルに、わかりやすく、盛り上がっていく感じが伝わりやすいフレーズを、と思ってました。最近の、こういう曲に対する自分の向き合い方の旬というか、それは昔だったらなかったかなと思います。こういう、シンプルにわかりやすいものを叩いてやろうという気持ちがなかったので。
――ああー。なるほど。
ゆうや:たとえばサビナカとか、毎回違わなきゃ嫌だったのが、一緒でも良くなったというか。今はそこを聴かせるところじゃないから、と思える自分がいたりとか。オン/オフをはっきりできるようになった。“今は俺じゃなくてShinjiの場所だ”とか、だったら普通にステイでいいじゃんという。そして、自分が出るところはちゃんと考えて、わかりやすく出す。そのほうが、聴きやすいと思うんですよね。
明希:イントロとか、各々の楽器が、単体でもかっこいいなという感じがありますよね。そこが気に入ってるポイントではあります。ギターが一番前にいながら、リズムトラックもかっこよく聴こえる。
――キャリアが生んだ、アンサンブルの妙。今年はこういう、躍動感ある曲が多くなりそう?
明希:それはわからないですけど、曲は3人が各々作って来るんで、自分がそういう気分だったらそういう曲が生まれてくるだろうし。それを4人でまとめ上げると、ちゃんとバンドの音になる。次に何ができるか、予想はつかないですね。選曲会はずっとやってるし、毎回悩むんですけど……変な言い方ですけど、昔はあったぎくしゃくした感じが、今はないので。いい意味で。そういう意味で、風通しがいいと思います。

――マオさん。シドの2020年は、このシングルのあと、どんなふうに進んでいくんでしょう。
マオ:今のところ、河口湖の2DAYSが決まってるんですけど、そこへ向かっているのはもちろんなんですけど、今まさに話している「delete」を中心に進めていこうと思っています。2020年はまだ始まったばかりなので、まずはシングルをしっかり届けて、それから河口湖の2DAYSをどういう展開にしていこうか?ということを今話してますね。『承認欲求』ツアーで、アルバムのツアーは一段落しているので、また今度は、新しい題材を探しているイメージですかね。シドとして。次にどこへ向かっていこうか?というものを探しながら、しっかりと前に進んでいる感じです。
――楽しい時期じゃないですか。次のプランを練りながら、ゆっくりと考える時期。
マオ:そうですね。そういう時期も、たまには必要なので。それこそ、今度の河口湖2DAYSも、湖のほとりでやるので、もしかしたら4人とも、少し疲れてたのかな?と思うんですけどね(笑)。
――はい?(笑)
マオ:都会を離れて、ちょっと自然に帰ってみたい気持ちがあったのかな?と。ヒーリングの世界ですね。ファンのみなさんも一緒に、ヒーリングの世界へ導けたらなと思います。
――河口湖の2DAYSにそんな裏テーマがあったとは(笑)。
マオ:そういうイメージで、楽しみたいなと思ってます。
――ではその、河口湖2DAYSの話をしましょう。5月9日と10日、『SID LIVE 2020 -Star Forest-』。河口湖ステラシアターで、過去にライブをやったことは?
マオ:ないです。前から話には出てたんですけど、なかなかタイミングがなくて。やりたかった場所ではありますね。
――誰かのライブを見に行ったことも。
ゆうや:ないです。
――まったく初めての場所で、一体どんなライブが繰り広げられるのか。今思っているイメージは?
ゆうや:これは自分だけの感覚ですけど、そういう自然の中だと……僕たちはいつも屋内で、時間帯が関係ないような演出でやりますから。そこで夜とか朝とか、作り上げてライブをやるんですけど、自然時間の中でライブが進んで行くというところで、すごく人間っぽいというか、生活の時間っぽいというか。いつもよりも、かしこまりすぎずに、自然の流れに身をゆだねるようなライブになるんじゃないかなと思いますね。優しい気持ちになるような気がします。みんなでそこで、生活をしている感じが出るんじゃないかな?と。
シド/明希(Ba) 撮影=森好弘
選曲会はずっとやってるし、毎回悩むんですけど……昔はあったぎくしゃくした感じが今はないので。風通しがいいと思います。
――いい場所ですよね。ステージ後ろにはすぐ河口湖、そして背景には富士山。いい気が流れてるというか。
ゆうや:富士山って、いいって言いますよね。“SID開運ライブ2020”というテーマを、今僕が勝手につけました(笑)。
Shinji:僕、目が悪いので。自然の中にいると、目が良くなるって言うじゃないですか。オスマン・サンコンさんとか。アフリカの人とか。
――はあ(笑)。
Shinji:ライブはいつも通り頑張るんですけど、連泊して、目を良くしたいですね。……違います(笑)。
ゆうや:違うんだ(笑)。じゃあもう一個、お願いします。ちゃんとしたやつを。
Shinji:ライブは本当に、頑張るだけなんですけど。星とかが見えたらいいなと思ってます。星や夜空が似合う楽曲が、シドにはけっこうあると思うので。演出的に、星が間に合ったらいいなと。
――開演が17時。夕暮れから夜へ、なんとか間に合うかも。
ゆうや:山だから、日が沈むのが早いんじゃない? たぶん。
Shinji:そういう時に、そこに合う楽曲をやったら、何倍増しにもぐっとくると思うので。それは自分たちも楽しみにしてます。
――自然とのコラボ。いいですね。
Shinji:それが醍醐味ですよね。この会場は。
明希:確かに、1日の表情に合ったセットリストとか、いいかもしれないという気はしますね。でもやっぱり、しっかり見せたいので、今のシドの集大成を、しっかり表現できたらいいなという。まだ漠然としてますけど、そういう気持ちですね。
――やりたい曲とか、あります?
明希:懐かしいものもやってみたいですね。ツアーはどうしても、アルバムの曲で半分以上固定になってしまうので。久しく登場していない曲も、これを機会にやれたらいいんじゃないかなと思います。具体的にこれをやりたい、というのはないですけど、そういう感じですね。
マオ:タイトルが『-Star Forest-』というんですけど、野外に人が集まるライブって、お祭りみたいなイメージがあって、フェス的なイメージが今は根付いてると思うんですけど。このイベントに関しては、本当に冗談抜きで、癒しの要素だったり、そういったものも入っていていいのかな?という気はしてますね。普段、ファンのみんなも、俺らのところに来てくれる時はシドのファンのみんなですけど、家に帰った時には、それぞれの日々の生活、人生があって、その中で疲れたりすることもあると思うんですよ。そんな時に、「シドの『-Star Forest-』はすごく癒されたね」というものが、ちょっとでも出たら、こっちはうれしいかなという気はしてます。そういう要素が少しでもあればいいかなと思います。
――やりたい曲は?
マオ:やりたい曲はいっぱいあるんですけど。たとえば、アレンジをちょっと変えてみたりとか、面白いかなという気はします。単発のイベントは久々だし、ある意味遊べると思うので、遊べるだけ遊びたいなと思います。
シド/ゆうや(Dr) 撮影=森好弘
(河口湖でのライブは)かしこまりすぎずに、自然の流れに身をゆだねるようなライブになるんじゃないかな。優しい気持ちになるような気がします。
――楽しみにしてます。最後に一個、編集部が用意したおまけ質問、いいですか。「皆さんが今、deleteしたいものは何ですか?」。
Shinji:deleteの、dを消したいですね。
ゆうや:エリートになりたいってこと? エリートって、スペルが違うぞ。
Shinji:…違いました(笑)。
ゆうや:今のShinjiのコメントを、僕はdeleteしたいです。
Shinji:うまいこと言った風で。
ゆうや:本当のことを言うと、僕は、ブルーレイ・レコーダーをdeleteしたいです。
明希:ああ、容量を。見てないやつがたまってるってことでしょ?
ゆうや:いや、デッキ自体を。壊れてないのに、新しいのを買ったんですよ。容量が小さくて、外付けのハードディスクを買ったら、対応してなかったんですよ。なので、新しいのを買ってしまったので、全然まだ現役で行けるやつが、もう一台あるんですよ。deleteしたいです。deleteします。
明希:消したいこと……なんだろう。今は、ないかもしれない。思ったらすぐ行動するんで、断捨離みたいなことを、こないだもやっちゃったし。今はあんまりないかな。
――記憶から消したいことも。
明希:それはいっぱいあります(笑)。知り合いの結婚式で、急遽ピアノを弾いてくれと言われて、その場で弾いたんですけど、いきなりすぎて、間違えちゃって、恥ずかしかったなーという、その記憶を消したいです。
マオ:すごい考えたんですけど。お財布に、焼き肉の油が飛んできて、シミになっちゃって、消したいです。見てほしいぐらいなんですけど、本当に嫌で。それは近々、お店に持って行こうと思ってます。「すいません、これ、deleteしてください」って言おうかなと思います。
――それはdeleteというよりcleaningでは。
マオ:そうか(笑)。でも消したいです。今は、それぐらいかな。

取材・文=宮本英夫 撮影=森 好弘

シド 撮影=森好弘

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