赤い公園の一筋縄ではいかないポップ
センスの源とは?

まず第一回に登場するのは赤い公園。昨年8月にリリースされた1stフルアルバム『公園デビュー』でネクストブレイクの本命となった新世代ガールズバンドの彼女たち。耳の早い音楽ファンのみならず、ミュージシャンやメディアからも高い評価を集める4人組です。3月にリリースされたシングル曲「絶対的な関係」がドラマ『ロストデイズ』の主題歌に起用されたこともあり、いよいよ広いフィールドに打って出ようとしている彼女たちは、どんなアーティストと繋がっているのでしょうか?

赤い公園のメンバーは、佐藤千明(Vox&Key)、津野米咲(Gu&Pf&Cho)、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr&Cho)の4人。高校の軽音楽部で同級生3人のコピーバンドに先輩の津野米咲が加入したというのがバンド結成のきっかけです。作曲を手掛けるのが津野米咲なんですが、彼女のルーツは実に多彩。作曲家の父親のもとに生まれ、その影響もあって小さな頃から様々なジャンルの音楽を水や空気のように当たり前に吸収して育ってきた経歴の持ち主。クラシックも、ジャズやフュージョンも、現代音楽も、歌謡曲も、アイドルも、バンドも、すべて分け隔てなく聴いてきたそう。母親も、兄弟も楽器を弾けて、小さな頃には家のリビングでジャムセッションが始まったりするような、まさに“音楽一家”で育った彼女。たくさんのルーツのもとで赤い公園の独特なポップセンスが生まれているわけなのです。
その中でもまず注目すべきルーツは、歌謡曲からJ-POPに連なる日本のポップスの王道を支えてきたアーティストたち。具体的な名前を挙げると、小田和正槇原敬之や平井堅など。実はこれまでにリリースされたシングルで、カップリングにこれらのアーティストの楽曲のカバーを収録し、リスペクトを表現しているのです。「今更/交信/さよならは言わない」では小田和正の「さよならは言わない」を、「風が知ってる/ひつじ屋さん」では平井堅の「POP STAR」を、そして「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」では、槇原敬之の「遠く遠く」のカバーを収録。また、インタビューでは津野米咲は影響を受けたアーティストとして松任谷由実の名前を挙げることも多く、まだ実現はしていませんが、おそらくこの先にリリースされるシングルでユーミンのカバー曲がカップリングに収録されることもあるんじゃないでしょうか。
たくさんのCDに囲まれて育った津野米咲のルーツとしては、洋楽のロックやポップスの影響も大きいようです。カーペンターズやサイモン&ガーファンクル、アース・ウィンド&ファイア、ペイヴメントなど、ジャンルや時代に関係なく聴きまくっていたとか。さらには、子供の頃にバレエを習っていたので、チャイコフスキーやドビュッシーのようなクラシック音楽にも触れていたそうです。赤い公園の一筋縄ではいかない曲調は、こんなところからも生まれているのかも。
そして、バンドとしての赤い公園を見ると、その直接的なルーツには00年代に活躍してきたロックバンドの流れがあります。立川の高校で軽音楽部のコピーバンドをやっていた時代には、東京事変GO!GO!7188土屋アンナ阿部真央など女の子ボーカルのバンドの曲をカバーしていたそう。新作シングルではまさに東京事変のメンバーでもあった音楽プロデューサー・亀田誠治を「J-POPの師匠」としてプロデューサーに迎えていたりもしています。いわば憧れの人との対面だったのかも。
先日3月27日には、2年ぶりの自主企画イベント『~赤鬼VS藍鬼VS栗鬼~』を恵比寿LIQUIDROOMで行なっています。そこで招いたのが藍坊主クリープハイプ。この2組も赤い公園のメンバーが大好きで憧れていたという先輩バンド。ライヴでは藍坊主の「テールランプ」やクリープハイプの「社会の窓」とそれぞれの代表曲のカバーも披露し、愛とリスペクトを放っていました。
そして最後に欠かせないのが、同世代のガールズバンドたち。特に親交が深いのが、ねごとSCANDALだ。今年1月にはEX THEATER ROPPONGIにてこの3組による対バンライヴが実現。さらに3月にはSCANDALの主催イベント『バンドやろうよ!!Vol.5』では、赤い公園の津野米咲とねごとの沙田瑞紀(Gu)がゲストに招かれ6人のスペシャル編成でのライヴを披露するなど、様々なコラボも実現しています。この3組はプライベートでも仲が良いらしく、一緒にシーンを盛り上げていこうと打ち上げで語り合ったりしたこともあったとか。まさに今の音楽シーンを代表するガールズバンドなわけです。

というわけで、赤い公園から縦横様々方向に広がるアーティストたちを紹介してきたこの企画。今後も様々な「繋がり」を紹介していきます!

著者:柴 那典

OKMusic編集部

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