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『有吉反省会』での里咲りさ:ロマン
優光連載155

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第155回 『有吉反省会』での里咲りさ 先日放送された『有吉反省会』の里咲りさ登場回。視点によって同じ物事が色んな意味を帯びるということを体現したような感があり、なんか変な気分に。
 あそこで取り上げられていた「ぼったくり物販」というのは、過去ファンが20~50人くらいの間の時期、2015後半~16年くらいによく行われていたもので、現在行われているわけではありません。『武道館アイドル博』の物販という、アイドルを集めて武道館で物販をするというイベントに2017年に参加した時も披露していましたが、あの時点でも新規に向けた「再現」をわざわざやっていたのであって、普段それをやってたわけではないんですよね。こう見てみると、2015年12月の『TVタックル』をはじめ、何度かメディアに取り上げられてきた手垢のついたネタ、実質現在は実態がないようなものでコーナー一つ造ろうとした『有吉反省会』がいい加減であるととらえることもできます。しかし、視点をズラせば、現在は基本的にはやってないことを現在やっていることのように見せかけてまで、なんでもいいから地上波テレビに出ようと思った里咲さんがゲンキンだという話にもとることができるわけです。
 番組内で里咲さんのアイドル活動を紹介する際に使われた映像が、ぼったくり物販に関するもの以外は、デビュー当時のドンキで売られてるような安っぽくてダサいセーラームーン風衣装の里咲さんと、かかる曲も里咲さんが楽曲にタッチしていない封印されてる外注曲という黒歴史部分というのも凄かったですね。シンガーソングライターとしてのアーティスト寄りの活動がメインで楽曲と声の良さに定評があるという現在の活動については全く触れてないという。
 地下アイドルらしさをわかりやすく伝えれるのが、あの辺の時期のものしかなかったので、ああなったのかなとは思いますが、あれによってスタジオのタレントさんや視聴者に「うわっ、こんなことを六年もやっている痛い地下アイドルなの!」とミスリードされた可能性は高いと思われます。現在の活動を全く紹介しないというのは、さすがに切り取り方が良くないと思う人も多いでしょう。しかし、視点を変えれば、現在はシンガーソングライターとしての活動がメインで、地下アイドル的な活動はしていないのにもかかわらず、地下アイドルとして登場し、普段は黒歴史扱いしているような時期を晒してまで地上波テレビに出たがる里咲さんが非常にゲンキンだという話にもなるわけです。
 里咲さんがレジ袋にサインして売ってたエピソードを自分で披露してあきれられていましたが、レジ袋エピソードにはそこにいたるまでの流れがありました。里咲さんと親しい地下アイドルである絵恋ちゃんさんがライブ中にオタクにレジ袋をガサガサさせるというオタ芸(?)をやらせている曲があったのですが、絵恋ちゃんさんがレジ袋をグッズとして売ったら面白いのではという感じの話が一部で盛り上がっていたんですよね。そうしたら、なぜか里咲さんがそれを勝手にやったという……。まあ、「なぜ里咲が……」というところが面白かったわけですが、あからさまな便乗というかアイディアのパクリなのですね。この流れを説明しなかったために、里咲さんの意図と違って「面白い」ではなく「ただのレジ袋を売りつけるなんて、さすがにひどい……」みたいになったわけですが、流れを説明すればしたで「友達のネタをパクったの……」と引かれてた可能性も。さらにいうなら、番組中では他にも「50音嘘つき」という絵恋ちゃんさんのネタを微妙に改変したネタで本気で事故るという大罪を犯してるのです。
 現在は実質存在しないぼったくり物販、客が遊びとわかった上で乗っかる遊びであって誰にも実害がないぼったくり物販を反省するよりも、親しい友人のネタをパクってしまうことの方を反省すべきなのではないか? 本当に怒られそうなことは隠して、たとえ怒られても別に問題がないようなことで安全に『有吉反省会』に出たかったのでないか? シバノソウとのスカジャン問題とは何だったのか? 色々な疑念がわいてきますが、番組が雑に取材し、雑に切り取ってくれたおかげで、そこが追及されずにすんだので良かった良かった。
 そういえば指原さんの「小さい自分の国で面白いとされてるものって駄目なんですよ」という里咲さんに向けた発言も色々な意味でとらえられる言葉です。このまま普通にとると、ニッチな面白さ自体を否定しているように聞こえます。ただ、この後に、オタクは守ってくれるからというような言葉が続いているんですよ。だから、「オタクは何をやっても面白がってくれるけど、テレビのバラエティのような場でやると事故るからダメ」という程度の言葉にも思えます。指原さんの里咲さんへの「辞める」というアドバイスにしてもそうで、アイドル活動をやめるのか、50音嘘つきをやめるのか、ぼったくり物販をやめるのか、どうとでもとれるんですよね。だいたい「辞める」とスーパーに出したのは番組であって、本当は止めるなのか、辞めるなのかもわからないんです。「辞める」だとアイドルを辞めろと言ってるような感じがして、里咲さんの本当の活動も知らないのに嫌な奴だなという風にも見えますが、止めるだと「バラエティでこういうネタは止めなさい」という親切なアドバイスに見えてきます。あの番組は反省しにきた人をキツく怒って罰ゲームさせて面白がる番組なので、反省する人はより怒られそうに演出するし、ゲストの発言もよりキツく見えるように演出されるのが当たり前です。ぼったくり物販も『TVタックル』などでは好意的に評価されていたわけですが、『有吉反省会』で好意的に評価したら番組の主旨が成り立たなくなるわけで、あの扱いは知った上で喜んで出た以上仕方がないとも言えます。
 里咲さんの面白さを番組の古くさいバラエティ然とした作りで殺してしまったというような意見もあるでしょう。『吉田豪とハミダシ女!』とかでは面白かったのに、つまらない番組の演出で面白さが殺されてしまったという意見ですね。それは大きな間違いですね。
 里咲さんの現在の活動について一切といっていいほど情報を出さないために、プロモーションとして役に立たないという問題は番組の演出から感じますが、里咲さんの面白さが消されていたかというと、答えはノーです。頭の回転の良さ、そこからくる独自の発想、変わった経歴、音楽活動への真摯な想いという、吉田豪さんが引き出してくれる面白さは確かに里咲さんの面白さの一部ではあります。しかし、あの姿はあくまでメディア対応、よそ行きの姿だと思うんですよ。嘘ではないんですが、あくまで彼女の一部分でしかありません。ライブや物販でファンによく見せがちな姿は、スタジオでの彼女の姿そのものなんです。
 ぱいぱいでか美さんが番組内で言っていたとおり、あれは普段通りの姿です。そして、あれを素直な意味で面白いとオタクが思ってるわけではありません。普段もやっぱり事故ってるのです。そして、その事故ってる姿を見て、事故りっぷりを面白がったり、本人だけがよくわかってない様子や面白いことを言ったと得意満面になってる様子をかわいらしいなと思って見てるだけなんです。元から事故現場なんですよね、里咲現場って。ただ、里咲さんのつくる楽曲の良さや声の良さといったものがあるから、その事故を面白がれるわけですけど。
 普段通りに本人だけが自信満々で、普段通りに事故り、本人だけがよくわかってない感じ。有吉さんやバカリズムさんの反応も百点です。普段はオタクがやっている役割をちゃんと果たしていたわけで、ちゃんと面白くしてもらえてたと思います。
 里咲さんは4歳児のような人です。無邪気で自信満々で自慢話も大好き。自己評価がとんちんかん。思いつきで喋っているうちに楽しくなって、話をめちゃくちゃ大げさにしていく。いいなと思うと悪気なく人が考えたことを自分が考えたことかのように真似しちゃう。口の回りに食べ滓をつけてるのに「つまみ食いしてません」と言い張る子供のような間抜けな嘘(というかホラ)をたまにつく。調子にのりやすい。調子にのって怒られたらしおらしく反省をしてみせて、その様子があまりにかわいそうになって許してしまう。反省するけど、またやる。それら全てが人としての可愛さに繋がっている。まあ、だから絵恋ちゃんも何度パクられても許してしまうのかもしれません。そういう4歳児のような暴虐と可愛らしさと間抜けさが入り交じった無邪気な様子が私は大好きです。それも、彼女という車の両輪の片側である、音楽の才能や頭の良さという部分があって初めて生きるものなので、初めて見るのが『有吉反省会』だった人には伝わらないかなと思いますが、あれも、りっちゃんの良さでもあるのは間違いないんですよ。
 こういう話を書いてしまうと、里咲さんが自分の間抜けさを自覚してしまって面白さ、可愛らしさが損なわれることがあるかもしれません。しかし、私はあまり心配してません。なぜなら、あの人は基本的に他人に言われた話の自分に都合のいいところばかり覚えてるタイプだからです。でも、大きな4歳児である里咲さんのそういうところも、やっぱりかわいいのだと思います。
(隔週金曜連載)
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※『有吉反省会』(日本テレビ 毎週土曜23:30~)に里咲さんが出演されたのは、2020年2月22日放送分となります。29日土曜の23:29までネットのTVer、日テレ無料(TADA)で見られる他、その後もHuluで常時配信されています。
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ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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