日本一&世界一のスキルを見せたCre
epy Nutsツアーファイナル

1月16日(木)、Zepp Diver CityにてCreepy Nutsのワンマンツアー「よふかしのうた」追加公演が開催された。本公演は、昨年8月のミニアルバム『よふかしのうた』リリースに伴い、9月から12月まで全国29カ所を回ったツアーの追加公演にして、正真正銘の最終公演。チケットは完全ソールドアウトとなり、会場はヘッズからラジオリスナーまで、男女問わず様々な層のファンでごった返していた。

Creepy Nutsとしてはもちろんのこと、R-指定とDJ松永個々の仕事も目立った2019年。R-指定は般若からバトンを受け継いで『フリースタイルダンジョン』のラスボスとなり、DJ松永は「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP FINALS 2019」で優勝して悲願のDJ世界一に。『オールナイトニッポン0』やDJ松永が水曜レギュラーを務める『ACTION』といったラジオ番組に加えて、テレビへの露出も増え、今やお茶の間レベルの人気者となりつつある。とはいえ、彼らの本分はあくまでヒップホップアーティスト。その圧倒的な実力をこれでもかと言わんばかりに見せつける、圧巻の二時間となった。


Text_Akihiro Aoyama

世界一のDJルーティーンで幕開け

冒頭、まず登場したのはDJ松永一人。ステージ後方の高台に据えられたDJ機材に陣取り、すさまじい手つきで世界一のルーティーンを披露していく。高台の下部がそのままスクリーンとなっていて、ターンテーブルの様子が映し出されることで、DJ松永がいかに凄いスキルを持っているのかがよく分かる。

DJ松永ルーティーンの終わり際に、R-指定がステージに上がり、続けて「板の上の魔物」へ。早くもオーディエンスは熱狂状態となり、ハンドクラップや大歓声でCreepy Nutsの熱演に応えていた。R-指定の前口上から「助演男優賞」へと繋ぐと、早くも投入されたキラーチューンに、会場全体でコール&レスポンスが繰り広げられた。

続いて披露されたロック調の高速BPM「ぬえの鳴く夜は」で更に勢いは加速し、間奏部のDJ松永によるスクラッチプレイには客席から黄色い歓声が飛ぶ。「東京の皆さん、聞くまでもないけどお金好きっすか?」とR-指定が観客を煽り、次の「紙様」へ。打って変わってバウンシーなビートに、オーディエンスは手を振りながら心地よさそうに揺れていた。

「たりないふたり」関連の文脈を見事に
回収

Creepy Nutsとしては今日が2020年初ライブだと話したMCは、俺らが学生の頃に夢中になったヒップホップ、ラジオ、いろんなものの影響をステージの上で全部出そうと思っております。それは全部、夜に培われてきました。」と締めくくられ、今回のツアーとミニアルバムのタイトルトラックである「よふかしのうた」へ。もともと「オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー」の公式テーマソングとして制作された同曲に続いて、若林正恭(オードリー)と山里亮太(南海キャンディーズ)の二人にインスパイアされた「たりないふたり」を披露。しかも、そのリリックは途中から結婚という大きな転機を迎えた二人の現況を反映した歌詞に。そう、11月に行われたイベント「さよなら たりないふたり ~みなとみらいであいましょう~」に合わせて書き下ろされた「さよならver」だ。これぞ、Creepy Nuts流の完璧な文脈回収! とても粋な展開に、客席からは大歓声が上がった。

続いても、若林がMCを務めたテレビ番組『犬も食わない』のテーマソングとして作られた「犬も食わない」。2ndパートの終わりに「みんなちがって、みんないい」では、ありとあらゆるステレオタイプなラッパーのスタイルをR-指定が上手下手を向きながら演じ分けていった。最後は「みんなちがって、みんないい♪」と全員で大合唱。どこまで行っても足りないことばかりの人間の業を、皮肉と自虐と愛情を込めて表現したパートを締めくくった。

話術とラップスキルを見せつけた「聖徳
太子フリースタイル」

ラップとDJがどれだけ凄いことか伝えたいと話した後は、R-指定お得意の「聖徳太子フリースタイル」へ。ファンにはもはやお馴染みだが、一応説明しておくと、「聖徳太子フリースタイル」とは会場の観客からその場で募った単語を入れて即興ラップしていく離れ業だ。当てたお客さんをイジって和やかに会場を笑わせながら、集まった単語を入れて韻を踏むだけでなく、会話の中で出たエピソードや文脈まで入れ込んで意味を紡ぎ、見事に「聖徳太子フリースタイル」を成功させた。

「メジャーデビュー指南」、「合法的ナトビ方ノススメ」とアッパーな楽曲を立て続けに披露すると、オーディエンスの熱狂は最高潮に。R-指定の合図に合わせて全員が飛び跳ね、会場全体が縦に揺れた。熱にまみれたフロアを一度クールダウンするように、次の「阿婆擦れ」は小粋でジャジー。続いて「新曲です」とR-指定が話すと、客席からは大きな歓声が上がり、「オトナ」へ。現在放送中のドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」のオープニングテーマとなっている同曲は、ぶっといベースラインが印象的なトラップ風トラックで、Creepy Nutsには珍しいタイプの新曲だ。

「オトナ」のパフォーマンスでR-指定にミスがあったらしく、その言い訳をしながらライブ中のミスについて話し合う二人。MCは最近放送中の出演CMへと続き、「今年はラッパーとDJとしての根っこの部分を大事にしたい」とR-指定は語った。「もしヒップホップが廃れてしまって全く仕事がなくなってしまっても、俺らはラップやってるし、DJやってる。もしこれから全く人が来なくなっても、俺たちはこれをやっていくぞっていう決意表明のような歌を」とMCを締め括った後、披露されたのは「未来予想図」だった。

R-指定のストーリーテリングにオーディエンスが聴き入る中、切実なビートは「朝焼け」へと続く。未来の自分から昔の自分へ向けての戒めが歌われる「だがそれでいい」では、そんな切迫したムードを切り裂くようにアッパーなビートへと移り、フロアは再び熱狂に包まれた。

「ヒップホップは全部自分のことを歌っ
ている」

ライブも残りわずかとなり、二人が話したのはツアーで訪れた各地の思い出話について。「ヒップホップっていうのは全部自分のことを歌ってるんです。冒頭から今の今まで全部、俺の個人的な話。俺も松永も新潟と大阪で全然違うところで生まれ育って、全然違う人生を歩んできたけど、Zeebraさん、RHYMESTERさん、般若さんの“俺の話”を聴いて、勝手に俺の事やと思って自分に置き換えて、のめり込んでいったんです。今日もお客さんを見ると、どっかで自分に重ね合わせてくれてる感じがする。」と話しながら、「俺らはどっかで欠けた部分を持った人間やと思うんです」と、続いての曲「使えない奴ら」へ。レイドバックしたトラックに乗るR‐指定のラップは、他のどの曲よりも優しく響いた。

本編のラストを飾ったのは、全国各地を忙しく飛び回るツアーの締め括りに相応しい「グレートジャーニー」。スクリーンには各地で撮られたオフショットが映し出され、長きにわたったツアーの大団円を伝えた。

手拍子がアンコールを催促する中、二人が再び登場して感謝の言葉からMCで掛け合い。「今回のツアー、何が凄いって、松永は最初の横浜ではまだ世界一じゃなかったんですよ。ツアー中に世界一になったんです」という話から、DJ松永による二度目のルーティーンが始まると、客席が大歓声と割れんばかりの拍手に包まれた。「これが世界一の男、決して替えの効かない存在です。でも、替えの効かない存在は松永だけじゃない。俺だけでも。ここに集まった皆さん、一人ひとりが替えの効かない存在やと思ってます。」というR-指定の言葉に重なるように、「スポットライト」のイントロが流れ出し、客席は最後の大揺れを見せた。

正真正銘の最後に選ばれたのは、「生業」。どこまで知名度が上がりメディア露出が増えても、ラップとDJという生業を疎かにせず研鑽を重ね続ける決意表明のような楽曲は、内面に潜り込み全てをさらけ出すようなディープさで、余韻たっぷりの幕引きとなった。

Creepy Nutsの二人はライブ中、「2020年も変わらずライブと曲をたくさん届けていく」と何度も話していた。多くの仕事が舞い込み多忙を極める中でも、彼らの本分はライブにあり、本質は楽曲に濃く刻み込まれている。Creepy Nutsの凄さはライブを観れば一発で分かるという至極シンプルな事実が、改めて身に染みた一夜だった。

作品情報

Creepy Nuts
2020.02.05.
オトナ

配信中https://smar.lnk.to/EePKJ
作詞:R-指定 作曲/編曲:DJ松永

◆タイアップ番組名:ドラマ24「コタキ兄弟と四苦八苦」

放送時間:毎週金曜深夜0時12分 放送中
放送局:テレビ東京系 (テレビ東京・テレビ北海道・テレビ愛知・テレビ大阪・テレビせとうち・TVQ九州放送)
※テレビ大阪のみ、翌週月曜 0時12分放送

主演:古舘寛治 滝藤賢一
出演:芳根京子
脚本:野木亜紀子


Creepy Nuts公式サイト:http://creepynuts.com/
Creepy Nuts公式Twitter:https://twitter.com/creepy_nuts_

日本一&世界一のスキルを見せたCreepy Nutsツアーファイナルはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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