パンクシーンからお茶の間へ!ブレイ
クの可能性に満ちたLONGMAN

2019年11月にシングル「Wish on」でメジャー・デビューを果たした、愛媛県在住の3人組・LONGMANがメジャー1stフルアルバム『Just A Boy』をリリースした。メロディック・パンクからパワー・ポップに接近した「Wish on」で、そのポップ・センスを拡張した路線をさらに推し進め、ヘヴィー・メタルあり、レゲエあり、インディー・ギター・ロックありの、実にヴァリエーションに富んだサウンドを大展開。各曲が互いを引き立て合いながら突き進み、最後の最後は、涙なしでは聴けないほどの奇跡的なメロディとともに、これまでのLONGMANの王道を貫くパンクなタイトル曲で締めるその流れは、完璧と言っていいほどの強度だ。その劇的な進化の秘密に迫ったインタヴュー。ぜひ、作品を聴きながら読んでもらいたい。


Photo_Keiichi Ito
Text_Taishi Iwami

今のLONGMANになるために必要な休止期
間だったと思えるようになってよかった

――昨年の11月6日にメジャーからのファースト・シングル「Wish on」をリリースしたときにもインタビューしましたが、”アルバムからの先行シングル”とはうたってなかったですよね?

ひらい : もともとこのタイミングでアルバムを出す予定はなかったんです。「Replay」がドラマ「ゆるキャン△」の主題歌に決まったので、何か出そうって話になって、じゃあアルバムにしようって、勢いのままに録りました。
――曲は新たに作っていたのですか?

ひらい : いえ。「Nothing On My Back」と「One Day」以外は、2017年の6月から約1年間活動を休止していた間に、作った曲から選びました。

――今作は、これまでのメロディック・パンク然とした魅力もありつつ、さまざまなジャンルを越境し、音楽的な幅を大きく広げた作品になりました。活動休止の理由はさわさんの喉の治療でしたが、その逆境がプラスに転じたと感じました。

ひらい : そうですね。結果的に、今のLONGMANになるために必要な休止期間だったと思えるようになってよかったです。

――パワー・ポップにアプローチした「Wish on」、レゲエやサーフ・ロックを背景に感じる「One Day」などの新しいチャンネルは、休止期間中に採り入れたのか、もともとひらいさんのなかにあった要素を煮詰めていったのか、どちらですか?

ひらい : それは後者ですね。もともと好きだったんですけど、技術不足でできなかったことが、できるようになったんです。リリースの予定もライヴの予定もなかったぶん、時間だけはあったので、スコアブックを熟読したり、さらにいろんな音楽を聴いたり、いろいろと勉強しました。

――休止期間中、さわさんは、治療以外の時間をどう過ごされていたのですか?

さわ : 定期的に3人で集まって曲は作ってましたし、愛媛から東京の病院に通うときも、いつもベースを持って行って、欠かさず練習してました。休止中にやっていたことが実って、すごくいいアルバムができたので、ほんとうによかったです。
さわ

――ほりほりさんは、完成したアルバムを聴いてみて、どう感じましたか?

ほりほり : バラードあり、2ビートの典型的なメロコアあり、すごくヴァラエティに富んだ作品になったと思います。なので、これまでに経験したことのない、いろいろなパターンのドラムを叩いたんですけど、そこは過剰に意識せずに、一貫して同じようなテンション感で臨みました。そういうところでLONGMANらしいパンクな勢いも、僕らしさも出せたと思います。

――とは言え、メロディック・パンクの要素が、曲によってはソウルとして内に秘めたるものになり、かなり遅めのBPMにも対応していかなければならなくなったことは、大変ではなかったですか?

ほりほり : そういう意味では「One Day」が大変でした。僕のなかにレゲエはまったくなかったんで、どんなドラム叩いたらいいんやろうって。

――パンクと比べたら手数的には問題ないと思うんですけど、強弱や間の演出は難しい。

ほりほり : そうなんです。メロコア・ドラマーは常に走ってるんで止まれなくて(笑)

ひらい : 魚みたいやな(笑)

ほりほり : マグロやからね(笑)。あの休譜に感覚は完全に別世界。だから勉強にもなりました。常にバスドラが前に行っちゃうんで、レッスンにも通ったんですけど「待つことを覚えようか」って。BPM90くらいで、ドラムの基礎的なことやタイム感を体に叩きこみました。

――作詞作曲を手掛けるひらいさんのなかにはあった音楽性でも、ほりほりさんとさわさんは初めて触れるジャンルの音楽にある、手先の技術より先に必要な、感覚的は価値についてはどうシェアしたんですか?

ひらい : 「One Day」だと、いったんBob Marleyを聴かせたら、LONGMANではやったことのない遅いBPMなうえにビートがシャッフルなんで、落ち込んでました。

さわ : これは天才じゃないとできんやつやって(笑)。そこから私なりにレゲエをじっくり聴きこんで、ひらいさんのイメージと繋げて完成した曲です。

――ひらいさんが歌う、レゲエに倣った濃厚で強いメロディラインから、サビでは爽快なツイン・ヴォーカルに転じる流れがカッコよかったです。

ひらい : サビはOf Monster And Menのツイン・ヴォーカルを参考にしました。

――暑いジャマイカから寒いアイスランドに。転調の温度感も、そこを意識した演出ですか?

ひらい : これ、Aメロとサビは同じキーで、Bメロで転調してるんです。だから最初めっちゃむずくて、なんでこんなに歌いにくいんやろって。でも、そりゃそうですよね。サビでの転調を強く意識したわけではないんですけど、結果的にそこがいい感じになったんで、ラッキーでした。
ひらい

曲を作って、人に向けて発信している限
り、LONGMANは僕ら3人だけのものじゃな

――1曲目は40秒のオープニング。最初の14秒は、モダンなポップに接近したMuseやFall out Boyのような曲かと思いきや、一気にスラッシュ・メタルをねじ込むサプライズが。

ひらい : やりたいことはぜんぶやろうって。これはMetallicaを意識しました。フレーズがすごく好きなんです。

さわ : これをやったら絶対おもしろいけど、LONGMANに馴染むのか、不安もあったんですけど、やってみてよかったなって。

ほりほり : オープニングはライヴでもやり続けてるんですけど、今回は見事に斜め上を行けたと思います。

――そこから開放的なポップ・パンク「Nothing On My Back」がきて、マイナー調の「Mind Of Past」への流れは、これはLONGMANの持つパンクの2面性を示す意図があったのでしょうか?

ひらい:そうですね。4曲目の「Memory」も合わせて、これまでのLONGMANらしさを意識しつつそれぞれタイプの異なる流れにしました。

――そして「ゆるキャン△」のテーマソングである「Replay」で、じっくり歌を響かせる。

ひらい:もとのイメージにはOasisがあって、コード進行や展開は前からあったんです。でも、メロディがずっとつけられなかったんですよね。どうやってもありきたりになっちゃって。なんとか形にできないかと思っていたところに、ほりほりが不意に即興で歌い始めたメロディがめっちゃよかったんですよ。ラップする発想は僕にはなかった。これでいこうって閃いて、家に帰ってすぐBメロとサビをつけました。

――なぜラップになったんですか?

ほりほり:ほんとにサラッと歌ったんで、自分でもよくわからないんですけど、考えてみると、UVERworldが好きなんですよね。ああいう言葉を詰め込んで歌う感じが根っこあるのかもしれません。

――それを歌ったさわさんは、いかがでしたか?。

さわ : もろにラップはできないんで、歌に寄せていったことでいい感じになったと思います。そこからのサビが大好きで、MVは森の中で撮ったんですけど、歌っていて最高に気持ちよかったです。

――メジャー・デビュー曲の「Wish on」での反応が、この多彩な作風への後押しにはなりましたか?

ひらい : 周りの人はみんないいって言ってくれましたし、アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」のエンディング・テーマになったことで、海外の人からもたくさんメッセージをもらえました。

さわ : ブラジルの人からTwitterでリプライがきたり。

ほりほり : たぶんグーグル翻訳とかを使って、カタコトやけど応援してくれるのが、めちゃくちゃ嬉しかったです。

ひらい : すごく励みになりましたし、いろんなタイプの曲があるこのアルバムに入って、さらに活き活きとしているように思います。
ほりほり

――そしてインディー・ギター・ロック的な「She Is Coming」から電光石火のメロディック・ハードコア「No End」の落差のある流れも印象的でした。

ひらい : どんなことをやってもLONGMANらしくなる。そういう筋肉はついてきた自信があったんで、まったく異なるタイプの曲を並べることで、まとまりのない印象になってしまうリスクへの恐れはありませんでした。だからこそ、次から次へと変化をつけていったんです。実はサウンド自体は、あえてどの曲もそこまで変えてないというか、細かい変化にこだわったんで、そこもLONGMANらしさを保ちながら、いろんな側面を見せられたポイントになってると思います。

――ほんとうにいろんなドラマがあって、最後に「Just A Boy」。メロディもツイン・ヴォーカルの掛け合いも、ほんとうに綺麗で、泣きそうになりました。

ひらい : 最後にしたからこそ、切なさも出たように思います。

――このメロディは、“降りてきた”とか、“キラー・フレーズができた”とか、何かしら確信めいた感触があったんじゃないですか?

’ひらい’ : そしてボーナストラックの「YUBUNE」。これだけ心振るわせといて、脳天気に終わるLONGMANらしさがいいですね。

ほりほり : こういう感じで、最後にオチみたいなのをつけるのは好きですね。

’ひらい’ : これだけ多岐にわたる強い作品を作ってしまったら、次はどうします?

ひらい : いい作品ができただけに不安です。それは毎度のことなんですけど。

――歌詞からも『Just A Boy』というタイトルからもわかります。焦燥感や悶々とした感情を抱える日々を受け入れてるひらいさん。

ひらい : 常に焦ってるんですよね。でも曲を作って、人に向けて発信している限り、LONGMANは僕ら3人だけのものじゃないんで、この先もずっとそうなんだと思います。余裕はないけどどうにかするんで、まずは、このアルバムのツアーから、頑張ります。

――どんなツアーにしたいですか?

ほりほり : もう若さゆえの勢いだけじゃだめだよね。

ひらい : それはその通り。

ほりほり : ポップというか、そういうフィールドでのカリスマ性が必要になってくるんじゃないかと思います。だから、頑張れよ。

ひらい : え?俺だけ?(笑)

さわ : このアルバムができたことで、既存曲との組み合わせも含め、やれることがかなり広がったと思うので、それぞれの場所で違ったこともできると思います。なので、楽しみにしていてください。

<リリース情報>

02.05 release
Major 1st Album
「Just A Boy」

AICL-3799 ¥2,500+税

M-1 Opening
M-2 Nothing On My Back
M-3 Mind Of Past
M-4 Memory
M-5 Replay
M-6 Take Your Time

M-7 Wish on
M-8 She Is Coming
M-9 No End
M-10 One Day
M-11 Just A Boy
Secret Track YUBUNE


LONGMAN
オフィシャルサイト
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パンクシーンからお茶の間へ!ブレイクの可能性に満ちたLONGMANはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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