茅原実里インタビュー15周年ベストア
ルバム『SANCTUARYII~Minori Chiha
ra Best Album~』「不思議な気持ち
と一緒に喜びと感動がこみ上げた――

茅原実里の15周年を記念して2月5日に発売されるベストアルバム『SANCTUARY II ~Minori Chihara Best Album~』。声優・アーティストとして、常に作品とファンと寄り添いながら駆け抜けてきた茅原実里の集大成ともいえる作品になっている。改めてベストアルバムの楽曲について、さらにはオーケストラコンサート『TACHIKAWA STAGE GARDEN グランドオープニング記念 Minori Chihara ORCHESTRA CONCERT 2020 「Graceful bouquet」』、そして8月にはおなじみの河口湖で『SUMMER CHAMPION 2020 ~Minori Chihara 12th Summer Live~』について訊いた。
『SANCTUARY II ~Minori Chihara Best Album~』ジャケット写真
この5年間は大きな出会いと別れを繰り返してきた期間
――今回は15周年ベストアルバム『SANCTUARYII~Minori Chihara Best Album~』のお話をお伺いしたいと思っています。
デビュー15周年を記念したベストアルバムをリリースします、というお話を聞いたときに、結構びっくりしました~(笑)。だけど、10周年、15周年、20周年…ってアニバーサリーごとにベストアルバムを出すアーティストさんは多いですよね。だから、そっか、茅原実里にもベストアルバム2枚目を出すタイミングがやってきたんだなっていうことに改めて気がついて…。それだけの道のりを歩んできたんだな…っていう。不思議な気持ちと一緒に喜びと感動がこみ上げました。今は素直にすごく嬉しいですね。
――前にもベストアルバム『SANCTUARY~Minori Chihara Best Album~』を出しているじゃないですか。2014年なので6年前です。あれもかなりボリュームのある3枚組でした。
そうですよねえ。すでに懐かしいですね。
――あれから曲も増えて、年月を重ねていて、今回のアルバムは、Disc2がキャラクターソングだったりもしているじゃないですか。そういう構成とかも考えられたりはしたんですか?
2枚組にして1枚はキャラソンベストにしようというのはプロデューサーからの提案でしたね。それに大賛成!っていう感じで。Disc1のほうは、一枚目のベストアルバムリリース以降のシングル曲「会いたかった空」から「エイミー」までと、その他は茅原実里の鉄板曲と言われているような外せない代表作、名刺代わりになるような曲を揃えた感じです。昔からのファンの方にとっても大切な曲達だし、新規にこのアルバムを手にとってくださる方もいると思ったので、はじまりの「純白サンクチュアリィ」は絶対に収録したいなって思ったり…。結構セレクトは早かったですよ。
――茅原さんのなかで前回のベストアルバムからこれまではどんなものでした?
約5年間、濃密……でしたね。大事な選択とか決断に、常に迫られ続けていたような気がします。去年は所属事務所もホリプロインターナショナルさんに変わったりとか、自分の周りにいるスタッフさんも変化したりして。色々と葛藤だったり、模索したりしながら、大きな出会いと別れを繰り返してきた期間だったような気がします。
――それは自分から変化を求めていったのでしょうか?
もちろん求めていました。仕事をしながら今の状況をよりよくしたいなっていつも考えているので。悩んでいた時期も長かったけど、それも意味のあることだったと思っているし、良い形で動いていけたなって思っています。
――ご自身のなかでは、いい流れになってきているなというのはある、と?
そうですね。でも、正直想定外の変化もありましたよ。ランティスでデビューしてからずっとお世話になってきたプロデューサーの斎藤滋さんがランティスを辞めて独立するという…。今もサウンドプロデューサーとしてサポートは変わらずしていただいているので、完全に離れ離れになってしまったわけではないんですけど、やっぱり自分にとっては大きな出来事ではありましたよね。それでも、そのひとつの変化がきっかけで、それまでになかった新しい流れがやってきたりするものだし、不安にならずに自分のステップアップに繋げていけたらなって思っています。
――個人的に思うところとしては、たとえばここに来て(2019年に)SOS団がみんなで集まるとか、ひとつ時代が巡ってきたなという感じはあるんです。
そうですね。20周年のランティス祭りがあって、奇跡的に…というか、みんなに強い気持ちがあったからこそ実現できたことだと思っています。もうすぐTVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(第1期)から14年経ちますからね…。ちょっと前だったら簡単にできなかったことが、巡り巡ってまたみんなで、それぞれの気持ちで集まってやろうかみたいな…、そういうタイミングがやってきて嬉しいし、それってとっても素敵なことですよね。
――そう考えると、アニメ界の変遷も1ループしてきた中で、茅原さんは真ん中にずっといるというか。それって凄いことだと思うんです。
私も信じられないです(笑)。紆余曲折ありながらも、15年間という長い年月こうしてお仕事を続けてこれたっていうことが。自分一人の力では到底難しいことだったし、本当にありがたいですよね。
撮影:福岡諒祠
これからもみんなと輝き続けていきたい
――改めて、ちょっとDisc1の話から聞かせて下さい。「エイミー」までの新曲っていうことと、さっきおっしゃっていたように代表曲が入っていますけど、今回の収録曲のなかで個人的に思い入れがあったりとか、印象深い曲ってありますでしょうか?
そうですね、特別に数曲あげるとするなら、「純白サンクチュアリィ」、「Paradise Lost」、「エイミー」、「We are stars!」…ですかね。
――せっかく挙げていただいたので、1曲ずつちょっとお話を伺いたいのですが。
「純白サンクチュアリィ」は、念願だった歌手としてのソロ活動がランティスさんでスタートすることが決まって、その1曲目のシングルっていうところで思い入れは強いですよね。
――今回も1曲目に収録されています。
ベストアルバムって順番に収録したくなっちゃうんです。歴史をたどる作品でもあるので。10周年のベストアルバムに倣ってリリース順に収録したというところもあります。
――逆に今、当時レコーディングしたものを聴くのってどうなんでしょう?
そうですね…。昔の自分、幼少期のアルバムを見ているような感覚に似ているかもしれないですね。
――たとえば歌い方が今と違ったりもするところもあるじゃないですか。
違いますよね!歌い方だけじゃなくて、若干声質も違ってたりとか。でも、当時の歌がいいなって感じることもあるんです。逆に今の自分だったらこういうふうに歌えないよなって。過去の自分だって、その時は負けじと必死に歌っていますからね。当時悔しがってた荒削りな部分も、あぁ、これはこれでいいな…って思ったり。
――なるほど。
正直「この曲は歌い直したいな」とかも実はあったりはするんですよ。でもそのときの自分のせいいっぱいの、そのときだけの歌なので、それはちゃんと認めて受け入れてあげないとなって。
――そして「Paradise Lost」。
「Paradise Lost」はTVアニメ『喰霊-零-』のオープニング主題歌で、私が養成所に通って声優の勉強と歌の勉強をしていた時に掲げていた目標が、声優として出演するアニメの主題歌を自分が歌うことだったんです。その大きな夢が叶った思い入れの強い楽曲です。
――もう「Paradise Lost」はアニソン界のマスターピースという感じがあります。
本当ですか!?(笑)。
――アニソンが好きな人で知らない人はいないと思いますよ、本当に。
いや~、嬉しいです。日本でも海外でも、場所を問わずにみんなが一緒に歌ってくれるし、たくさんの人に受け入れてもらえる楽曲に育ちました。知名度の高さに私自身びっくりしてしまうときもありますよ(笑)。
――アニソン界って、もう一生忘れないみたいな曲もあるわけじゃないですか。そのなかの1曲に間違いなくなっていると思います。
そうだと本当に嬉しい!うん。イントロが流れればアニメの映像も思い浮かぶし。まさに胸を張って聴いてもらえる茅原実里の名刺代わりの代表曲です。そういう存在があるということは幸せです。
――そして「エイミー」です。『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 - 』ED主題歌ですが、僕は劇場で号泣してしまいました。
姉妹の愛の物語が本当に素敵ですよね。私はこれまでアニメタイアップの作詞をさせてもらったのが「みちしるべ」と「エイミー」だけなんですよ。タイアップのほとんどは畑 亜貴さんに作詞してもらっています。私自身が、歌だけじゃなく更に作品に踏み込んで、作品を背負う自信と覚悟が持てなかったんです。だからこれまで自分では作詞してこれなくて…。だけど『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品に対しては、向き合って書いてみよう、書いてみたいと心から思えた作品でした。
――そうだったんですね。
TVシリーズのED主題歌の作詞をしてみない?って言われて、一歩踏み出して「みちしるべ」を書かせてもらいました。「みちしるべ」があったから「エイミー」も書く流れになったんです。
――これはやっぱり『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』というものを全部噛み砕いたなかで作られた曲という印象があります。
「エイミー」に関しては、京都アニメーションの藤田春香監督と、テレビシリーズの石立太一監督と、あとはレーベルや事務所の主要なスタッフで集まって、楽曲の方向性をどうしようっていうところから打ち合わせがスタートしたんですけど、脚本の中にヴァイオレットがイザベラと踊るシーンが出てくるよねっていう話になって。
――はい、とても美しい印象的なシーンでした。
そこで(TV版・劇場版ともに音楽を担当している)Evan Callさんが、そのシーン用にワルツの曲を作っていたんです。記憶に残るとても印象的な場面ということもあって、物語を見終えたあとに、主題歌もワルツで締めくくられるというのはとても美しいし素敵だよねって。満場一致で楽曲の方向性は決まったんですよ。
――なるほど。
詞の内容に関しても藤田監督といろいろディスカッションしつつ、藤田監督の思いをなるべく詰め込んだ形の内容にできたらな…と思って。打ち合わせが終わって、最初に私なりに書いてみて、それを藤田監督に読んでもらって、その後でリテイクが返ってきたんですけど、手書きのお手紙のリテイクなんですよ。今はもうメールが当たり前の時代に、すごく長文で細かい共感だったりアイデアだったりを書いてカラフルに送ってくれて…。
――それは嬉しいですね……。
やっぱり藤田さんにとって初監督の作品なので、そこで受け取った愛情を100パーセント返そうと心に決めました。例えば1曲のなかで一人称が変わったりする書き方って、多分これまでしたことがなくて。
――そうですよね。
1番は(一人称が)“僕”で、“僕”はイザベラ視点で、2番は(一人称が)“私”で、テイラー視点っていう。最後はヴァイオレットの想いも混ざり合ってひとつになる…みたいな。みんなの思いを束ねるようなイメージで書いてみたんですけど。
――「エイミー」に関していうと、作品を観終わったあとに改めてタイトルを見るだけで「そういうことか」と腑に落ちるというか。「みちしるべ」もそうなんですけど、作品との絡まりというか、意味合いの強さが歌詞にあって。そこを聴いてちゃんとストーリーが完結するというところまでいっている気がするんです。これはもう総合芸術だなと思って。
ありがとうございます。嬉しいです。原作を読んだときに、魔法の言葉が「エイミー」っていう一文を読んで…。その時から「あ、これはタイトルは『エイミー』がいいな」って、漠然と思っていました。スタッフさんにも最後の最後まで「エイミーってカタカナで良いんですか?」って言われ続けていたんですけど、原作を読んでもカタカナで「エイミー」だから絶対にカタカナが良いなって。ビジュアルやデザインまわりのことを考えると、どうしても英語表記のほうがカッコいいっていう意見も出てきて…。だけど、私は絶対カタカナじゃないと嫌だなって思って、貫かせてもらいました。
――世界観を守っている感じが確かにありますよね。MVでもワルツ踊られていました。
そうなんです。MVの方向性を探って頭の中で映像化させた時に、踊る絵しか見えてこなくて…(笑)。もしくはアニメーションがいいなとも思っていました。ここまで歌詞の世界が物語と内容がシンクロしているからこそ踊ることもできました。ただ、一緒に踊る相手はリアルになりすぎないように日本人ではない方がいいと思ったので相談しながら着地させた形ですね。こういうタイプのダンスははじめての経験だったので、イザベラと同じように先生の足を踏んだりして難しかったです(笑)。

――そして最後が新曲ですね。Q-MHzさんの「We are stars!」。けっこうクールな語りが入っていたりしていますが、どんな楽曲になっているのでしょうか?
15周年の曲を作りましょうということになって、楽曲打ち合わせをしたんです。「ありがとう、これからもよろしくね!」っていうキラキラ感動系ではないほうがいいよねという話になって、15年目だからこそ、今の茅原実里にできるアグレッシブな攻め方をしている楽曲にしようという方向にまとまって。そこでQ-Mhzさんの名前があがりました。まだまだ通過点だよ!ついてきてね!っていう茅原実里のカッコイイ面をしっかりとサウンドからも歌からも伝えられるような楽曲にできたらと。私からは「誕生」をテーマにして欲しいというお願いをしました。アニバーサリーで15周年を盛大に祝いつつも「私はまだまだ行っちゃうけど、みんなついてこれる?」みたいな挑発的な部分を兼ね備えた曲で。でも、サビはすごく爽やかという(笑)。
――たしかに、サビは爽やかでしたね(笑)。
そうなんですよ!あらゆる角度から攻め立てているのにも関わらず、勇気や元気、優しさまでもらえる楽曲になっています。バースデーライブで初めて歌ったんですけど、初めて聴いてもらったのにすごく盛り上がりました!!
――「これから茅原実里は更に加速するよ!」という印象を受けました。
初めて聴いたときは「なんじゃこの楽曲!?」って思いましたけどね(笑)。 セリフもあってラップもあって、もうとんでもない曲だなと思って。自分のなかに落とし込むまで時間がかかったというか。
――そうなんですね。
とてつもなく難解な曲だなっていう印象でした。Q-MHzの田代(智一)さんには「雪、無音、窓辺にて。」(TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』、長門有希キャラクターソング)を作っていただいているのですが、有希のセリフがとても印象的な楽曲で。そういう細かい部分まで歴史とリンクされていて本当に感動しました。
――なるほど、そこに繋がってくるんですね。
「雪、無音、窓辺にて。」も自分がソロ活動をするきっかけになった曲なので、ある意味、始まりの曲です。
――確かに、そう言われて聴き返したら長門成分も入ってる気がします(笑)。
そうなんです!特に畑さん、田代さん、黒須(克彦)さんたちには、本当に私の楽曲をいろいろと作ってもらっていますし、私のことを育ててくださっている方々であるので。お祝いに曲のプレゼントをいただいたような気持ちです。
――なんかこう、所信表明ではないですが、「15周年を踏まえての茅原実里を楽しみにしててよ、楽しいことするからさ」っていうのを伝えている感じを受けたんです。そのタイトルが「We are stars!」っていうのも意味深だなと。
そう言って頂けると嬉しいですね!これからもみんなと輝き続けていきたいです。

撮影:福岡諒祠
15年間声優を続けてきたからこそ、ここまでキャラクターソングも揃った
――そしてDisc2はこれまで演じてきたキャラクターたちの歌になるわけじゃないですか。まさに“stars”でもあり。非常に構成として面白いですね。
確かにそうですね!これは本当に嬉しくって。キャラソンのベストアルバムって、すごく出したかったんですよ。でもなかなかそういう機会がなくって。キャラクターソングっていい楽曲が多いんです。だから曲を絞るのもとても大変で、ものすごい数のキャラクターソングがありますしね。そういう中で、一枚のアルバムとして聴いてもらった時に、楽曲のバリエーションだったり、キャラクターの個性だったり、より楽しんでもらえるような選曲をしたつもりです。…大人の事情で入れられない曲もあったりとかもしたんですが(笑)。
――このなかで1曲目にOVA『天上天下 ULTIMATE FIGHT』の「負けない」が入っているあたりが、ファンからすれば「そこからですよね!」みたいな。
これは外せないですよね。良かったです収録できて!
――2曲目の「雪、無音、窓辺にて。」も先程おっしゃられているように代表曲の1つじゃないですか。
そうですね、海外に行く機会が増えて、海外のファンの方は「雪、無音、窓辺にて。」を待ってらっしゃる方がすごく多いんですよね。だからキャラクターソングだけど歌うとすごく喜んでもらえるっていう。『アニメロサマーライブ』でも「雪、無音、窓辺にて。」が歌えるっていうのは、珍しいというか、特殊な曲だなっていう感じもします。歌うたびに、ハルヒや有希の存在の大きさを実感しますよね。
――逆に、このベストアルバムを購入する人でも、聞いたことがない曲がある人がいるかもしれないじゃないですか。そういう人に注目してほしい曲はありますか。
ええー!全部!(笑)。 本当に全部好きだし、全部注目して欲しいんですけど。
――僕であれば、自分の好きな作品、『D.C.II ~ダ・カーポII~』や『みなみけ』が入ってくるのは嬉しいなっていうのもありますし。知らない人に聞いてほしい。
いいですよね。私も大好きです!!アニメファンのみんなにも思い入れがあると思いますしね。
――個人的には「BE TOGETHER」(TVアニメ『世紀末オカルト学院』挿入歌、中川美風)が入っているのが素晴らしいなって。
本当に懐かしいですよね! 美風はまさかのラスボスキャラでしたもんね(笑)。当時はその事実を聞いてうそでしょ!?って驚いたのを覚えています(笑)。キャラクターの個性が際立つものを集めたいなって思ってたので、なるべくカラーがバラけるようにはしたつもりなんです。その方が絶対面白いし。せっかくの念願のキャラクターアルバムですからね!
――「Borderless journey」(TVアニメ『RAIL WARS!』挿入歌、鹿島乃亜キャラクターソング)とかいい曲ですしね。
そうなんですよ!めちゃくちゃかっこいい曲なので、絶対に入れたいなと思って。あとは「My Treasure」も。TVアニメ『デート・ア・ライブII』の誘宵美九というキャラクターの歌なんですが、海外でも『デート・ア・ライブ』の人気が高くて。美九のコスプレをしている方にもこの間お会いしましたしね。嬉しかった!美九が大好きな方も多いんですよね。
――何か1曲これをっていうのは絞りづらいですね。
やっぱり、「雪、無音~」と(TVアニメ『みなみけ』の)南千秋の曲はお気に入りですけどね。どのキャラクターも大事ですけど、南千秋っていうのは自分のなかの新しい引き出しをしっかり作ってくれたキャラクターの一人でもあるので。小学生なのに毒舌で。「バカヤロウ」が口癖で。ファンの方にも人気が高いっていう(笑)。
――『みなみけ』はいまだに好きな人が多いですからね。
ねえ。ぼちぼち、続きをやりたいんですけど、またやれないかなあ……?
――これはちょっと強めに書いておきましょうかね。『みなみけ』やりたいって。
そうですね!やりたいです!強めで!(笑)
――『みなみけ』みたいに何クールもやっているものもありますし、逆に1クール13本のなかで完結している作品もあるし。声優さんってその作品のなかでの世界観との出会いと別れを作品のなかで味わっているんだろうなというのを、お話をうかがっていて感じました。
そうですね、だから続編が決まったときに、当時と同じような声が出せて同じような演技ができるかな?っていうのは不安つきまといます。だけど、それよりも、また演じられるんだ!っていう喜びの方が強い。それこそ13話1クールでそれっきりになっちゃうキャラクターもいますからね…。
――だから、実はアニメファンよりも、声優さんはよりたくさんの出会いと別れを繰り返しているんだろうなというのを感じます。だから「今までこういう子たちと出会ってきたよ」っていうのが形で見える今回のベストアルバムは凄くいいなって。
いいですよね!あらためて我が子を紹介していくような親心もあったりなんかして…(笑)。15年間声優を続けてきたからこそ、ここまでキャラクターソングも揃ったので、声優としての歴史でもありますからね。また前回のベストアルバムとも違ったアプローチができて良かったなって思います。
――やはりキャラクターソングごと、役柄、作品によって歌い方の違いとかもあるのでしょうか。
あります。基本キャラクターソングはお芝居をしている延長線上のものだと思っています。もちろん求められるものだったり役割は、それぞれのキャラクターや楽曲にもよるので一概には言えないのですが…。クライアントさんの意向に応える努力はしつつ、なるべく喋っている感覚で歌えたらいいなって。その方が歌からもキャラクターの気持ちを感じて楽しんでもらえると思っているので。自分のソロ名義の曲とは違った形なので、どんな感想を持ってもらえるのか楽しみです!

もっと自分が成長していけるような2020年にしたい
――なるほど。そしてオーケストラコンサート『TACHIKAWA STAGE GARDEN グランドオープニング記念 Minori Chihara ORCHESTRA CONCERT 2020 「Graceful bouquet」』、そして8月にはおなじみの河口湖で『SUMMER CHAMPION 2020 ~Minori Chihara 12th Summer Live~』も控えております。オケコンの開催決定っていうのは嬉しいですね。
そうなんですよ!こんな嬉しいことありますか? 10周年のときにもシンフォニックコンサートを開催させてもらったんですけど、いろんなタイミングが重なったミラクルな公演だったので、もう2度とできないと思っていたんです。それなのに、またこうして15周年でできるっていうのはすごくご縁を感じますよね。しかも新しい会場で…。
――立川ステージガーデンですね。もちろん『SUMMER CHAMPION』も、おなじみになってきましたけど、お客さんの熱量が下がらないのがすごいですね。
本当ですよね!毎年毎年、基本2DAYS……3DAYSやる年もありますけど。ちゃんとチケット売れるかな?っていう心配もや不安ももちろんあるけど、みんな来てくれるんですよね…(涙)。ありがたいです。本当に…。だから私は誰よりも気合いを入れて毎年あのステージに立ってます!!
――でも、このベストを出すことで、リスタートではないですけど、チェックポイントを超えた感じがすごくするんですよね。お話をうかがったり楽曲の流れを見ていると。逆にこの2020年の茅原実里がどうなっていくのかすごく気になります。
そうなんですよ、これからですよ。問題はここからですよ(笑)!
――改めて、どうなっていきたい、というものはあるのでしょうか?
私は、一番に歌い続けていきたいです。もちろん声優のお仕事も続けていきたいし、また舞台をやりたい気持ちもありますし、ジャンルを問わず挑戦できるステージがあったら積極的にやっていきたいなと思っています。あとは、ホリプロインターナショナルさんに所属させていただいてから海外に行く機会もどんどん増えていたりもしているので、海外でも単独ライブっていうのは絶対にやりたいなと思っています。それにまた武道館に帰りたいなと思っているし。この間、玉置浩二さんのディナーショーに行って、ディナーショーやりたいなとも思っているし……願望ばっかりですね(笑)。
――まだまだやりたいことが多い、ということはすごいことだと思います。
あとは、年末年始に山梨で年越しをしてきたんです。私ファンクラブの中でファンのみんなと旅行する「みのりんトラベル」っていう企画をやっているんですけど、去年はみんなとハワイに行ったんですよ。今度は山梨でやりたいなっていう。やまなし大使なので(笑)。山梨で年越ししてあらためて大自然と食べ物、美味しい水にも癒やされて最高な時間を過ごすことができたんですよ。とっても楽しくって。だから今度はみんなと行きたいなって!!
――お話をお聞きしていると、環境が少し変わってきたところもあって。挑戦してもいいんだ!と自分のなかでのスイッチが入った感じがありますね。
そうですね。なんかもっと自由でラフで良いんだよなってすごく思う(笑)。
――年月を重ねて来たなかで、前とは違い柔軟になってきたっていうことなんでしょうか?
うーん。そうかもしれないですね。「純白サンクチュアリィ」を出した2007年が、そのころなんかはもう、いい意味でガチガチでしたしね。自分はこうあらねばならぬ、みたいなのがありましたけど、どんどん自分らしく好きなことをやっていかないと気持ちが続かないですもんね。本来、好きなことをやっているはずなのに苦しくなってきたりするっていうのもおかしな話なので。
――どんな仕事の人でも10年、15年過ぎていって、「好きでやっていたはずなのにな」みたいに思うことも出てくることはあると思うんですよね。それを自由でいいんだよって茅原さんとかに言ってもらえると、ファンの人でも「そうか、自由でいいのか、そうしようかな」って思う方もいるかもしれないですよね。
うん。そうですね。こんな私でも経験を活かしてなにかプラスに感じてもらえるようなことがあるのであれば、意味がありますね。
――逆に言うと、新しいフィールドに出ることで、茅原さんを初めて観る方も出てくるかもしれないじゃないですか。そういう方にどう見られたいですか?
どう見られたいっていうのはないかもなぁ。逆にどう見られてるんだろうっていう。自分が何かアクションを起こしてみた時に、誰が何を感じてくれて、何をあげられるのかは自分ではわからないですからね…。だからこそ、色々やりたいなっていうのはありますよね。でみ、やってみて誰の中にも何も残らなかったら、それこそ向いていないんだなと思うと思うし…(笑)。
――そう聞くと、茅原さんがこれから何をするんだろうとワクワクしますね。改めて最後になりますが、今回のベストアルバムを踏まえて、2020年からの茅原実里をアピールしていただけないでしょうか。
おかげ様で、15周年を迎えることができました。まだ15周年プロジェクトは続いていきます。ベストアルバムのリリース、オーケストラコンサート、年末にハワイで撮影した写真集のリリースも決まっています!この機会にぜひ茅原実里に触れてもらえたら嬉しいです。これからもファンのみんなと新しい景色をいっぱい見たいなと思ってるし、自分の可能性を試していきたいと思っています。新しい出会いを求めてときめきを探しながら、もっと自分が成長していけるような2020年にしたいですっ!
撮影:福岡諒祠
取材・文:加東岳史 撮影:福岡諒祠

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