過去を捨てて前に進む。ポルノグラフ
ィティ「メリッサ」の真意とは
大人気アニメとリンクした歌詞
『メリッサ』といえば、人気アニメ『鋼の錬金術師』の初期主題歌としても有名です。
サビから始まるこの楽曲は、通称『ハガレン』の世界観とも絶妙にマッチしており、鋼の義手を持ち、自らの手で運命を切り開こうとするエルリック兄弟の覚悟を彷彿させます。
アニメファンなら、この歌い出しは胸が熱くなること間違いなしでしょう。
メリッサ 歌詞 「ポルノグラフィティ」
https://utaten.com/lyric/ja00011062
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「明日が来るはずの空」というのが印象的です。黙っていても訪れるはずの明日を前に空を見上げるその心には、不安がよぎります。
進むべきか、戻るべきか。信じるべきか、疑うべきか。迷ってばかりの心は、まさにエルリック兄弟と重なります。
自力では降りられないほどの高い場所へ置き去りにしてほしいという願いは、禁忌を犯し、罪の意識に囚われながら懸命に生きようとする心を象徴しています。
自分で選んだ道だから、優しさはいらない。あえて自分を追い込んでいるようです。
傍らの鳥が一足先に空へ飛び立ち、その姿が見えなくなるまで見送る。まるで名優を見送るかのような場面です。
自由の風に吹かれて舞い上がった鳥とは違い、地面を這いつくばって生きる惨めな姿。その姿を見たくなくて、自由になりたくて「宙を舞うメリッサの葉」に憧れるのです。
自分の意志で自由に空を飛べる翼は自分には分不相応だから、せめて風に翻弄されて舞い上がる葉っぱでもいい。ただ、地面から離れたくて、光り輝く自由という響きに恋い焦がれているようです。
二度と醜い過去を見なくて済むように、閉じ込めて永遠に鍵をかけたい。そう願うのは人間の性です。自らの罪に苛まれながら、最愛の弟が体を失うという罰を受けたエルリック兄弟。
過去から目を背けたいけれど、希望を掴むためには背けてはいけません。泣きながら、もがきながらも前に進むしかありません。だから閉じ込めるのは過去ではなく、弱虫だった自分の心だったのでしょう。
もう泣き言は言わない。ただ信じる未来、欲する未来を手にするために前進し続けるしか道はないのです。
「救いのない魂」とは、魂だけの存在になりながらも体を求め続ける弟、アルフォンスに対してあまりに皮肉です。それでも、救われない魂ですら消える瞬間には美しく光るのだから最期の一瞬まで命を燃やせ。というメッセージにも聞こえます。
幻想的に輝く月の存在が、わずかに残った希望を象徴しているようなラストが印象的な楽曲です。
TEXT 岡野ケイ
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