山崎美貴×高井浩子インタビュー 演
劇とお茶の両方を楽しめる「和」な公
演 東京タンバリン『花筏』

劇団「東京タンバリン」が、2020年2月8日(土)と9日(日)に横浜のBankART SILKにて『花筏(はないかだ)』を上演する。今作は東京タンバリンが「和をモチーフに輪を広げていこう」と行っている企画「わのわ」の作品の一つで、2018年に初演、2019年に再演され、いずれも東京国立博物館九条館で上演された。実際の茶室で茶道にまつわる演劇が上演され、出演者はもちろんスタッフも全員着物、終演後にはお茶とお菓子が提供されるという、演劇を楽しみながら茶道や着物など「和」も同時に堪能できる公演で好評を博している。今回はTPAM(国際舞台芸術ミーティングin横浜2020)フリンジへの参加ということで、茶室ではない空間での上演となり、出演者も5名中3名が新キャストとなる。初演・再演とはだいぶ環境が変わる今公演に向けての思いを、作・演出の高井浩子と初演からさくら役を演じ続けている山崎美貴に聞いた。
《あらすじ》
茶道教室に通う人たちの物語。
先生は未婚でイケメン。人気の先生で最近では雑誌などに載るほど。
この日は普段の稽古場ではない場所での稽古。
稽古前に話があるから早めに来てくれと先生に言われ、自分だけだと思って来る、さくら、あかね、いぶき。

東京タンバリン『花筏』舞台写真 (過去公演より・劇団提供)
「お茶と演劇は似ている」と思って始めた「わのわ」

――2018、19年と2年続けて東京国立博物館九条館で上演されてきた『花筏』ですが、今回はTPAMフリンジに参加、BankART SILKという新たな空間での上演になります。
高井 九条館は、あの場所自体が舞台美術みたいな感じでしたね。今回の公演に関しては、あまり茶室以外の空間で上演する機会を作ってこなかったのでやってみようか、ということと、2018年にTPAMフリンジに参加したことをきっかけに、昨年『お点前ちょうだいいたします』という作品のフランス公演を行うことができたので、また海外公演に行きたいという気持ちもあって今回再びTPAMに参加しました。
――会場にはやはり畳を敷いて上演するのでしょうか。
高井 そうですね、畳を敷いて、客席を作って、床の間を作ってやります。ただ、いつもは座布団席があるんですけど、今回は全部椅子席になってしまいます。だからちょっと茶室とは違った雰囲気にはなると思います。
――前回拝見して、お芝居自体も非常に面白かったのですが、会場の雰囲気であったり、終演後にお茶とお菓子が出て来たり、そういったことすべてひっくるめてなかなか日常では経験できない「和」を楽しめる公演でした。
高井 この公演は劇団でやっている「わのわ」という、和をモチーフにした企画の一つなのですが、お茶も演劇も敷居が高いと思われがちなので、そんなことないですよ、という思いを込めてどちらも知ってもらうきっかけにしたいと始めた企画なので、そう思っていただけるのはとても嬉しいです。
東京タンバリン『花筏』 高井浩子
――元々、高井さんがお茶を習っていて、そこから着想を得た作品だそうですね。
高井 最初の2、3年は作法を覚えるのに必死だったんですけど、だんだん慣れてくると「おや? これは演劇に似ているな」と思うようになりました。茶会を開くときに、どんなテーマでどういうお道具を揃えるか等の段取りを考えるのが、芝居の公演に向けて準備する感じにすごく似ているなと思ったのと、お点前の作法が人によって、すごく好感を持てる作法の人とそうではない人がいたり、それって何だか役者の演技と通じるものがあるんじゃないかと思ったんです。それで、お茶と演劇をコラボしてやってみたら面白いんじゃないかな、というところから「わのわ」という企画を立ち上げました。
――山崎さんは文学座所属ということもあって、和物のお芝居にも多くご出演されていますが、現代社会では日常で着物を着る機会がどんどん減ってきていると思います。そのあたりどう思われますか。
山崎 私は和物のお芝居にも出演してきましたし、時代劇に出演していた時期もあったので、着物は割と着慣れていますが、やはり圧倒的に着ない・着たことがないという人が多く、着物に対して距離感があるように感じています。この作品の面白いところは、現代劇で着物を着るところなんですよね。現代っ子が出てきますし、「着物を着ててもあんなふうに動けるんだ」みたいに身近に感じてもらえるんじゃないでしょうか。
「東京タンバリンの山崎美貴です」
――高井さんと山崎さんの出会いについて教えてください。
高井 美貴さんに初めて東京タンバリンに出ていただいたのは、2017年の『ただいま おかえり』という公演です。私が美貴さんに出演していただきたい、と希望して共通の知り合いに紹介してもらいました。そのとき、文学座の事務所に呼ばれて面接みたいな感じでお会いしたんです。
山崎 私の方はもちろん高井さんのことを知っていましたけど、高井さんは私のことを知っていてオファーしてくださったのだろうか、本当に私でいいのだろうか?と心配になったんです。それで一度お会いしたい、とお願いして文学座の事務所に来てもらったんです。
東京タンバリン『花筏』 山崎美貴
高井 主人公の設定が“元アイドルの専業主婦”だったので、この設定でお芝居がちゃんと出来る方となると、これはもう美貴さんしかいないだろうと思ってオファーしたんです。私は美貴さんがご出演されていたオールナイトフジを見ていましたし、舞台も見ていますよ、とお話しをして。でも正直、美貴さんが文学座に入ったときもびっくりしましたけど、こんなに長く文学座にいらっしゃることにもびっくりしました。きっと美貴さんは、お芝居が好きなんですね。
山崎 好きなのかもしれないけど、自分では正直よくわからないですね……。もちろん芝居をやる理由は一つではなくていろいろあるんですが、究極は自分が解き放たれるためにやってるのかな、なんてことを最近友人と話していて思いました。演劇は稽古を積み重ねて本番で解き放つ、という感じなので、映像よりも達成感というか充足感みたいなものが強いのかもしれません。あと、演劇は自分が出ていないシーンも含めて全体を見ながら作っていくので、より作品に関わっている感じがありますよね。
――そこから翌年の2018年、2019年、そして今回と『花筏』に山崎さんがご出演されることに繋がっていくんですね。昨年はバウムちゃんねる映画祭で上映された高井さんの初監督映画『こたつ』にもご出演されていました。
高井 そうなんです。もう私が美貴さんを離さないんです。
山崎 東京タンバリンの山崎美貴です、と名乗ってもいいんじゃないかと思うくらい(笑)。お世話になっています。
高井 最近、自分や自分の周囲の人が抱えている問題を題材に「これからどうやって生きていこうか」ということを書くことが多くて、それを同世代の美貴さんにやっていただけることによってリアリティが生まれて、作品がより面白くなるのかな、と思っています。
何かを抱えた人たちの“寂しさ”から生まれるドラマ
――山崎さんは、高井さんの作品をどうご覧になっていますか。
山崎 ちょっと不条理っぽいところがあって、一見普通のホームドラマに見えるけど実は違う、みたいなシュールなところが面白いですよね。高井さんは人の寂しさみたいなものが好きなのかな、と感じています。寂しさとか悲しさを背負って生きる人々が出てきて、みんな個々に寂しさを抱えて孤独なんだけど、でもみんなで寄り添い合う、とか人間って寂しさと温かさのバランスを取りながら生きていくのかな、というようなところに私はすごく共感するんです。
高井 言われてみるとそうですね、まさにこの作品もそうですが、底抜けに明るいだけの人って出てこないですし、みんなそれぞれに何かを抱えていて、人との関係性によって明るい気持ちにもなるし、嫌な気持ちにもなるし、というところを書いてる感じかもしれません。やっぱり何も抱えていない人って多分いないし、それぞれが何かを抱えていないとドラマにならないのかな、と思いますね。
――今公演に向けてのメッセージをお願いします。
山崎 これまでは九条館で上演していたので、建物や場所の雰囲気に助けられていた部分もあったと思います。今回の会場は何もないところから舞台を作るので、ちょっとこれは大変だぞ、という気持ちもありますが、新しいキャストの皆さんも素敵な方たちばかりなので、また新たな『花筏』を楽しく作りたいと思っています。皆さん是非楽しみに見に来てください。
高井 この作品は、20代~50代のそれぞれの世代の女性が出てくるお話しなので、様々な年齢の方から共感を得られるのではないかと思っています。いつも、本当に花筏後の時期(※)に上演していたんですけど、今回は2月なので時期が全然違いますが、5月くらいをイメージしながら見ていただければ嬉しいです。
(※「花筏」とは、散った桜の花びらが水面に浮いている状態を筏に見立てた春の季語。)
東京タンバリン『花筏』 写真左から高井浩子、山崎美貴
取材・文・撮影=久田絢子

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