6月27日公開の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

6月27日公開の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

【年末アンケート特集】アニメハック
コラム執筆陣が選ぶ、2019年ベストア
ニメ&20年期待の1作

6月27日公開の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(c) カラー アニメハックで毎月コラムを連載している執筆陣にアンケートをお願いし、2019年ベストアニメ、2020年期待の1作を挙げていただきました。前田久さん、島谷光弘さん、氷川竜介さん、数土直志さん、香川愛生さん(※掲載はコラム連載開始の早い順)の回答をコメントとともにお楽しみください。
前田久(ライター)/前Qの「いいアニメを見に行こう」
2019年ベストアニメ:青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない
2020年期待の1作:どうにかなる日々
 2019年はつくづくアニメ映画の年だったなあ、と。1、2年前であれば年間ベストに選ばれてもおかしくないような作品がドカドカ飛び出していた。11月の頭に阿佐ヶ谷ロフトAでトークイベントをやったときにも(アニメハック連載陣の藤津亮太さん、数土直志さん、香川愛生さんにお世話になりました)、限られた時間の中でどの作品を取り上げるかかなり悩まされましたが、それ以降も「ぼくらの7日間戦争」や「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が公開されているわけだし、この原稿の締め切りのあとにも、劇場版「新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X」が控えているという。いちアニメファンとして、これだけの活況はホントにありがたいことであります。退屈しているヒマがない。なお、注目作のいくつかは連載(https://anime.eiga.com/news/column/maeq_iianime/ )で触れているので、あらためてよろしくお願いします(宣伝)。
 で、その連載ではタイミングの問題で触れられなかったんですが、ワタクシの今年のベストは「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」です。Blu-ray&DVDのブックレットでお仕事させていただいたりもしたのですが、私、この作品を激しく偏愛しております!! 90年代末から00年代の中盤にかけて、主にPCでプレイする美少女ゲームなるものが一大ムーブメントを築き、その想像力はやがて「AIR」「涼宮ハルヒの憂鬱」「魔法少女まどか☆マギカ」「STEINS;GATE」といったヒット作品を通じてアニメの世界にも広がっていったわけですが、この作品はその最良の成果のひとつ。あちらを立てればこちらが立たず、選択することによって揺れ動く世界で、何を選ぶのか。自分にとって本当に大切なものは何か、そして人を愛するとはどういうことなのか。作品を通じてそんなことを思わず考えてしまう、SF(すこし・ふしぎ)な哲学的青春ストーリー……こういうのが好きなのっ!! 「『天気の子』のストーリーはギャルゲーっぽい」みたいな感想を公開直後にネットでちらほら見ましたけれど、そういう話をしていた人たち、それにうんうんと頷いていた人たちのうち、どれだけの人が「青ブタ」を見たというのか!? ギャーッ!! 舐めとんのかオラーっ!! えいえんはここにあるんじゃボケーッ!! まだ見てないなら、テレビシリーズとセットで見ろーっ!! 愛してるっていわなきゃコロスーッ!!(コロスは殺さない)
 ……ちょっと落ち着こう。さて、2020年の注目作ですが、こちらは「どうにかなる日々」を挙げたい。「あさがおと加瀬さん。」「フラグタイム」と、近作でセクシャリティと自意識の問題に果敢に切り込んだアニメを手がけてきた佐藤卓哉監督が、「青い花」「放蕩息子」の志村貴子先生の作品を、どう映像してみせるのか。BL作品の映像化企画も増えているし、アニメとセクシャリティの問題は次のフェイズに移行しつつある感があり、そうした意味でも見逃せないと感じております。
島谷光弘(ホビーマニアックス編集・ライター)/ホビー&フィギュア トレンド
2019年ベストアニメ:スパイダーマン:スパイダーバース
2020年期待の1作:シン・エヴァンゲリオン劇場版
 2019年のホビー的注目アニメは前回のコラム(https://anime.eiga.com/news/column/figure_trend/110102/ )でピックアップしたので、こちらでは個人的な趣味優先で。CGアニメがまだワイヤーフレームだったり技術的な検証が主目的だったりした時代からいろいろ見続けてきました。1986年にPIXARが「ルクソーJr.」を発表したときは、初めて物語として面白いCG作品が出てきたと感動したものでしたが、「スパイダーバース」はまた新たな可能性を開いた作品としてここ最近の中で最も気に入ったものになりました。CGアニメはほとんどの場合、そのキャラクター表現はワンパターンで、動きにしてもあまり面白みはありません(映画としての面白さとはまた違う部分での話です)。ところが、「スパイダーバース」はCGに手描きで手を加え、動きも2コマを基本にしてダイナミックに動かし、さらにパラレルワールドごとにキャラデザインも動きも変えているという徹底ぶり。とにかく映像を見ているのがこんなに楽しかったのは久方ぶりで、CGアニメの可能性はまだまだ広いというのを感じさせてくれました。2021年の続編には東映の実写版スパイダーマンも登場するらしいので、どんな新たな表現を見せてくれるか楽しみです。なお、動きを見るのが楽しかったというのでは「羅小黒戦記」もかなりのものだったというのも付記しておきます。
 期待の1作の方は、ホビー的注目という意味を含めつつ。「新世紀エヴァンゲリオン」は90年代中盤、ホビーやフィギュアのあり方を変えた作品でした。この作品の登場によって、フィギュアの質が大きく進化したと言えるのです。一方、旧劇場版でアニメとしての「エヴァ」がいったん終わったあとも、フィギュアだけは出続けていて作品人気の継続に一役買ったとも言えます。それが「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」として再スタート、当初は完全に冗談として最終作が物語の舞台となる2015年になったらおもしろいねぇ、でもまさかそこまではかからないよね、と言っていたのですが……(笑)。それが今度は本当に完結するということで、非常に感慨深いのです。ホビー的にも商品展開を早めに行うと聞いていますし、公開前後にどんなものが出てくるか楽しみです。さらに公開とあわせて6月に「エヴァ」のみのワンダーフェスティバルが開催されるという発表も先日ありました。これも注目です。
 こっちもちょっと付記。フィギュア史的に「エヴァ」と並ぶ最重要作品「セーラームーン」の新作「美少女戦士セーラームーンEternal」も2020年で楽しみなところ。ただ、こちらは現在ホビー面では新作も少なめで若干活動が鈍いのが残念ですが。
氷川竜介(明治大学大学院特任教授)/氷川教授の「アニメに歴史あり」
2019年ベストアニメ:この世界の(さらにいくつもの)片隅に
2020年期待の1作:シン・エヴァンゲリオン劇場版
 2019年は空前の劇場アニメラッシュとなり、中でも作家性の傑出したオリジナル作品の多さが目立ちました。「君の名は。」がヒットしてほどなく、「2019年には大変な新作ラッシュになる」という業界噂話を聞きました。観客の立場からすると、クール単位から年単位で変化や動向を考えますが、アニメ企画決定から市場リリースまで、テレビで2年、劇場で3年ぐらいの長期スパンを要します。
 その余波で来年も多作な状況が続くようで、後世には「君の名は。特需」と呼ばれることでしょう。個々の出来はともかく、「若い男女が手をつないで空を飛ぶ」という類似したクライマックスが連発するなど、無意識のうちに新しい《枠》が出来て可能性を絞っていないか、真価の問われていくはずです。
 2020年完結に向かう「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、アニメ制作リソースが乏しい激戦区で何を挑戦するのか。現時点で具体的なことは聞かないようにしているので、方法論含めて楽しみです。また「この世界の片隅に」は「君の名は。」と同じ2016年のダークホース的なヒット作でしたが、「さらにいくつもの」バージョンは「同じ・違う」「補完」のような認識を超越した挑戦と発展になり、最大の衝撃を呼んだ作品です。しかも初号試写に相当する上映(12月18日)は、今上天皇陛下ご一家と片渕須直監督・主演女優のんさんご同席となり、現実世界を揺さぶりにかかっています。「令和元年」を締めくくる作品として、忘れがたいものとなりました。
 2020年以後、自分もこれまでの仕事を大きく見直して、現実とアニメ・特撮の相関関係を良き方向へ変化させるべく努力していこうと決意しています。アニメは「奇跡を描くメディア」ですが、「アニメそのものが奇跡」であり、「活性化」という意味でのアニメーションが実現され得るのです。いくつもの局面で、それを実感させてもらった西暦2019年でした。
(c)2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project数土直志(ジャーナリスト)/数土直志の「月刊アニメビジネス」
2019年ベストアニメ:天気の子
2020年期待の1作:ジョゼと虎と魚たち
 昨今はアニメ映画の本数が増えただけでなく、傑作の多さに驚かされます。そのなかでも2019年は傑作が続出して、1本だけを選ぶなんてとても無理!
 技術的に完成したかと思われた手描き2Dが独自の進化を遂げ、新たな驚きを与えつつ3Dに融合させた「プロメア」はアニメ史に残る重要作品です。そして「きみと、波にのれたら」は気持ちのよいアニメの動きと、主人公の心が揺れ動くラブロマンスが見事にマッチングしています。さらにあらゆるジャンルに縦横無尽に挑みつつ、全てを傑作にしていく湯浅政明監督とサイエンスSARUに驚嘆させられました。
 それでも今年の1本は、「天気の子」。前作「君の名は。」が面白いアニメだとすれば、「天気の子」はよいアニメ。鑑賞後の釈然としない想いも含めて、人の心にここまで残る作品はなかったのでは。「『君の名は。』の後にここで攻めてきたか」という点でも素晴らしいの一言です。
 2020年の期待作は先日発表されたばかりの「ジョゼと虎と魚たち」。発表直後の印象は、「また難しい題材を……」。ここ何年か「ぼくらの7日間戦争」「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」といった実写映画で傑作となった作品をアニメ映画でとの流れがありますが、実写が傑作であればあるほどアニメのハードルは高くなる難しいジャンルです。今回はテレビアニメ「ノラガミ」を丁寧なドラマづくりで名作としたアニメ制作のボンズ、そしてタムラコータローさんを監督に起用。タムラコータローさんは初監督であるが、映画は「おおかみこどもの雨と雪」の助監督の経験あり。近年若手・中堅の実力派のオリジナル映画の監督登用が目立つなかでも、期待されていた逸材です。2003年には妻夫木聡と池脇千鶴の出演で実写化された名作に、どう挑むのか、どんな作品になるのか、いまから楽しみ。
香川愛生(女流棋士)/まなおのアニメ感想戦!
2019年ベストアニメ:ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん
2020年期待の1作:劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン
 2019年はアニメ映画、もうとにかく挙げ出すとキリがないのですが、リッチな映像表現に「あぁ、アニメが好きでよかったぁ」とたっぷり思える1年だったと思います。そんな中、今年の映画体験を充実させてくれたのは海外アニメです。中でも衝撃的だったのは「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」。背景も人物も主線なし。極限まで削りに削ったシンプルさのうえで、これほど情感豊かになるものなのかと、心から驚かされました。他にも「羅小黒戦記」など、世界の広さを感じられると同時に、アニメ映画や映像表現の幅の広さをより感じ取れた1年だったとも言えると思います。
 2020年もっとも楽しみにしているのは「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」です。京都アニメーションの手がける傑作アニメの完全新作。豊かな映像美と、石立(太一)監督・吉田玲子さんの脚本は心に触れる物語を約束してくれていて、きっと邦アニメ史上の宝物になる作品だと期待しています。「愛」とは何か。時間をかけて向き合ってきたヴァイオレットに、どうか幸せな結末を。テレビシリーズは何十回観たかわかりませんが、4月の公開までにまた周回したいと思います(皆さんもぜひ!)。
 また長年にわたる人気シリーズにも注目しています。40年の節目を迎える「映画ドラえもん」は2作を控えますし、「名探偵コナン 緋色の弾丸」では“緋色”が聖典(シャーロック・ホームズ)の第1作「緋色の研究」に由来する事からも、シリーズの中でも重要な位置づけになりそうな予感です。個人的にはポスターに棋士・羽田忠吉が登場していることからも、将棋が鍵を握るんでは? というのもひそかに注目ポイントです。

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