LUNA SEA「30年やって、いまが一番カ
ッコいい!」過去を超え続けるバンド
の精神性を観た【『LIVE LUNATIC X’
MAS 2019』初日レポート】

LUNA SEA 30th Anniversary LIVE LUNATIC X’ MAS 2019

201912.21(SAT)さいたまスーパーアリーナ
2019年に観たライブのなかで、間違いなくNo.1。サウンド、演出、映像、光、すべてが一体となって飛躍的な進化を遂げたいまのLUNA SEAを表現した圧巻のショーだった。30周年を迎え、毎年恒例となったさいたまスーパーアリーナでのクリスマスライブ『LUNA SEA 30th Anniversary LIVE LUNATIC X’ MAS 2019』1日目。とんでもなくアップデートしまくったLUNA SEAを観たその衝撃と感動をレポート。
LUNA SEA/RYUICHI
「さいたまスーパーアリーナ! 30周年の“LUNATIC X’ MAS”。毎年ここに帰ってきて、僕らのライブハウスでもあり、僕らのベースとなっているさいたまスーパーアリーナで、過去を超えていけたらと思います」
満場の客席を見渡しながら語りかけるRYUICHI(Vo)の表情は、いつになく自信満々に見えた。そうして、それが目の前で見事に有言実行されていった。1年前にここで観たLUNA SEAなんか比じゃない。半年前に日本武道館で観たLUNA SEAからもさらにバージョンアップ、スケールアップした現在のLUNA SEAは、とんでもなくフレッシュだった。いまのこのLUNA SEAをドームで観たら凄いことになりそうだなとライブ中妄想が止まらなかった。
LUNA SEA/SUGIZO
「5人全員が思ってます。30年やって、いまが一番“カッコいい!”と」
これはアンコール、SUGIZOが万感の思いを込めて告げた言葉だ。30年というキャリアを経て、いまが一番仲がいいとか楽しいとか幸せとかじゃなく、“カッコいい”といい切れる音像を響かせ、フレッシュな存在感を放てる。これが、LUNA SEAのすごさだ。
LUNA SEA/INORANI
開演予定時刻を20分過ぎたあたりで、場内は暗転。クワイアが流れ、会場内がサンクチュアリな儀式が始まるようなムードに包まれるというオープニングはいままでもあった。だが、今回はそこからアリーナ席の両サイドの天井から小さな円盤状の飛行物体が無数に降りてきて、これが照明を乱反射しながら上下に稼働しだした。まるで、LUNA SEA版の人類と宇宙がコンタクトする『未知との遭遇』が始まるようなオープニング演出に、ゾクゾクが止まらない。そこに、まさかの「FALLOUT」という幕開けで、息が止まる。“in the fallout~”と地を這うようなRYUICHIのローボイスが続くなかに差し込むSUGIZOのギターソロは、闇を照らす一筋の光。その光にすがりつくように、RYUICHIが1オクターブ高い声で、全身全霊を出し尽くして荒々しい声で叫ぶ後半パート。圧倒的なスケール感のなか、集中したLUNA SEAがものすごい密度と圧でさいたまスーパーアリーナにfall outした直後、その降臨を告げるように場内には爆発音がパーンと鳴り響く。そうして「G.」のアッパービートが“聖なる夜”を切り裂いていく。
LUNA SEA/J
「さいたまスーパーアリーナ、待たせたな」と挨拶を告げたRYUICHIは、こうして誰一人欠けることなくこの5人でいまもステージに上がれていることに感謝し「そういう奇跡が1日でも長く続くように、精神的にはもっともっと上を目指していきたいと思ってます」と力強く宣言。そして「のっけから飛ばしていくぞ!」と場内を煽って始まったのは、まさかの「ROSIER」。これまでLUNA SEAのライブ終盤を盛り上げるキラーチューンをここから連発して前半パートに投下していく。
この時点で、彼らは自分たちがすでに前とは違うモードにシフトチェンジしていることを明確にアピールしていく。それに合わせて、真矢はインストゥルメントの部分で発売前のPerlの電子ドラム“e/MERGE”を今回のライブから使用することで、アリーナでもダイナミックかつ、クリアな音を叩き出す。Jはいまから考えると、こうなることを予想していたかのように30周年からフェンダーとタッグを組み、自分のベースの新しい可能性を探っていた。また、SUGIZOはこの日、自前の燃料電池車(および周辺機器)で電力を提供し、このライブ自体も、出演者が自力で電気をまかなうというLUNA SEAのサスティナビリティへの取り組みを表したものにもなっていた。
LUNA SEA/真矢
さらに、病気を経て、日々の筋トレで肉体改造をしていったRYUICHIのボーカルに至っては、ダイナミクスと繊細さ、毒とエレガントなど、様々な成分を場面に合わせグラデーションのように混ぜ合わせて表現していくボーカルが本当に気持ちよくて、美しかった。そんなRYUICHIが「俺たちは一度は5人で家出をしましたが、LUNA SEAという実家に帰ってきました」といってオーディエンスを笑わせた後、「ニューアルバムは聴きましたか?」と語りかけ、このあとは最新アルバム『CROSS』の始まりとなった『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』シリーズの楽曲を次々と披露。このブロックで彼らは音と、光と、映像一体となってLUNA SEAと宇宙が“CROSS”する宇宙との遭遇みたいな、壮大で深遠な映画を1本観ているような高揚感に観客を浸らせていったのだ。
LUNA SEA
縦長の巨大パネルがステージに出現して地球が映し出され、客席が照明で小宇宙に変わっていった「宇宙の詩~Higher and Higher~」、そのパネルの左右に設置されたタワーがレインボーに輝き、アリーナ席の両サイドに再び円盤状の物体が降りてきてメビウスの輪のように光をツイストさせていった「BEYOND THE TIME~メビウスの宇宙を超えて~」( TM ネットワークのカヴァー)、縦長のパネルが円柱になって花びらが美しくクルクル舞い降りたバラード「悲壮美」、その物語を地球と宇宙の間にあらわれた幻想的な森のなかへと誘う映像で「absorb」へと集結させ、再びオーディエンスを地球へと戻していくという物語の展開は見事としかいいようがなかった。
LUNA SEA/RYUICHI
そうして、ライブは中盤戦へ突入。始まったのはソロコーナーだった。オレンジの着物を羽織った真矢は半年前に行なった武道館の流れを踏襲し、今回も和太鼓、和笛、鼓の和楽器とドラムが乱舞してお囃子を奏でるソロを披露。スパンコールがキラキラ光るジャンパーに着替えて飛び出したJが「今日と明日、30周年を派手に盛り上がろうぜ!」と叫び、オーディエンスの熱気を呼び醒ましていったあとは、「Dejavu」から再び5人がオンステージ。Jはスロープの最先端まで移動してオーディエンスを指差し、叫びながらアイコンタクトを繰り返す。SUGIZOはRYUICHIがいるセンターに行ってソロを奏で、去り際にRYUICHIの頭をポンポン。INORANはドラム台の上に移動して真矢のシンバルをポンポン。ライブ前半の荘厳なまでの高揚感と、宇宙とCROSSしていく壮大な物語のなかで精神の奥底へと潜行していく緊迫感あるパフォーマンスとは打って変わって、ここでは5人のナチュラルな振る舞い、笑顔がオーディエンスを歓喜で満たしていった。
LUNA SEA/SUGIZO
いまのLUNA SEAを「まだ体力的にも精神的にも満ちていく途中」と表現したRYUICHIは、スティーヴ・リリーホワイトを共同プロデューサーに迎えて制作したアルバム『CROSS』で世界基準の音が作れたことを自信たっぷりに伝えたあと、そんなアルバムを作っても「自分たちはもっとデカくなりたいという欲とともに、まだまだ学びたい、もっと上手くなりたい、もっと強くなりたいとそれぞれが思っている」といまの心境をあかした。そして「30周年。まだまだ30周年のこの“旅”は続きます。1本1本、みんなとともに高め合っていきたいと思います」と言葉を結び、“この旅が果てしなき時のように続くように”と願いを込めて歌う「THE BEYOND」から、ライブは宇宙から降り注ぐ光のエナジーを享受していくブロックへと移り変わる。
LUNA SEA/INORAN
3枚のブロックが舞台後方で天空への扉を開くと同時に、RYUICHIのボーカルが光の粒を纏いだした「THE BEYOND」、観客一丸のクラップが巻き起こるなか、光の粒が無数のレーザービームとなって「Hold You Down」で煌めきだし、続く「STORM」で、その光の粒子が猛スピードでスパークしていったあとの「SHINE」。この展開がまた素晴らしかった。巨大ミラーボールが光源となって縦長パネルの裏側からキラキラした光を放つなか、SUGIZOが間奏をRYUICHIの横に移動して弾いていたら、そこにINORANがふいに加わり、それを見たJまでがRYUICHIの横にピタリと構え、いつの間にか4人がセンターで集合してみせるというハプニング(この瞬間、場内には大歓声が上がった!!)も加わり、この日一番SHINEで心温まる空間を作り出していった。
LUNA SEA/J
そこから、本編最後、「TONIGHT」でその光を“君”だけのものへと落とし込んでいくと、さいたまスーパーアリーナはまさにライブハウスのような一体感ある熱狂に包まれていったのだった。RYUICHIの前に跪いてストロークを奏でていたINORAN、続けてすれ違ったJ、それぞれを労うように肩にポンポンと触れていったSUGIZOは、曲のエンディング、ペットボトルを客席に投げ入れ。Jはベースにキスしたあと、それをライフル銃のように構えて感謝の気持ちを場内に打ち込む真似をした。
LUNA SEA/真矢
オーディエンスがスマホのライトをつけて大合唱する「きよしこの夜」に迎えられたアンコール。再びステージに集まった5人は、INORANの提案からスマホのライトを星空に見立てて、今度はLUNA SEAからのプレゼントとしてLUNA SEAのX‘masソング「HOLY KNIGHT」、「White X’ mas~I for You」を続けてアクト。そして、RYUICHIが「ここはリハーサルとかしてません。すべてがリアルです」と解説した後に突入したメンバー紹介のコーナーでは、真矢、Jに続いてINORANへ。INORANがギターリフを弾き出すと、それに真矢が加わってきたのをきっかけに「1、2、3、4!!」といきなりJの真似をしてカウントを入れると、客席が大爆笑。当人であるJは当惑しながら照れまくっていた。INORANに続けて、SUGIZOはT.REXの「20th Cetnury Boy」のリフを弾いてスマートにきめたあと「旅はまだまだ続きます。よければお供していただければ」と伝えた。そのあとSUGIZOとINORANが掛け合いでRYUICHIを紹介。SUGIZOが「メンバーの命は各々のためだけにある訳じゃない」と前置きしたあと、筋トレをしすぎるRYUICHIに注意喚起をすると、INORANに速攻で「そんなSUGIちゃんが一番病気してますから」と瞬殺され、会場は笑いに包まれた。
LUNA SEA
そうして「BELIEVE」、「WISH」では大量の銀テープが場内に降り注ぐなか、SUGIZOがフロアの通路を移動。RYUICHIがスロープを左右に一気に駆け抜け、“ララララ~”の大合唱の後、曲がブレイクを迎えると、ステージ後方に5つのパネルが“CROSS”するなかにメンバーの姿が初めて映し出され、場内からは悲鳴のような大歓声が上がった。
そうして、初日のラストを締めくくりとして用意していた名曲「MOTHER」。これがまた凄かった。巨大な十字架の中、天に向かって手をさし伸ばす映像には、がむしゃらなまでの生命力がみなぎっている。この日観た「MOTHER」の人間の憂や悲しみ、嘆きをすべて包み込む包容力と、それでも未来に向かって“旅”を続け、生きていく強さはいまのLUNA SEAを体現しているようで、深く胸に響いていった。
終演後、「これからも俺たちについてきてくれ。一緒に旅しようぜ!」と叫んで姿を消したINORAN。LUNA SEAの新しい旅『LUNA SEA 2020 全国ホールツアー』が、2020年2月1日からいよいよ幕を開ける。
取材・文=東條祥恵 撮影=田辺佳子、橋本塁
LUNA SEA
>>【インタビュー】LUNA SEAはなぜ結成30周年を迎えても進化できるのか? SUGIZOとJに訊く、最新で最高のアルバム誕生物語

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