職人ミュージシャンたちの旨味が
凝縮されたスタッフの『スタッフ!!』
ジョー・コッカーとの出会い
そして、コッカーは翌年には結成されたばかりのスタッフをバック(パーカーは参加していない)に迎えた『スティングレイ』(‘76)をリリース、この作品では彼らの持ち味である歌を活かす最高の演奏を聴かせてくれたのである。コッカーの長い音楽生活の中でも、この『スティングレイ』は間違いなく彼の最高傑作であり、バックを務めたスタッフはコッカーとの『スティングレイ・ツアー』でも大成功を収めている。
本作『スタッフ!!』について
収録されているのは全部で9曲。全曲、名演と言っていい。特にリチャード・ティーはピアノ、エレピ、オルガンと八面六臂の活躍だ。ピアノはパーカッションのように弾き、ゴスペルライクな泥臭い演奏を聴かせる。逆に、エレピとオルガンは都会的なプレイで好対照となっている。デュプリーとゲイルのギターは歌心にあふれるもので、勘所を押さえた燻し銀のような風情が感じられる。パーカーとガッドのドラムはツインドラムであることを感じさせないぐらい抑えたプレイで、歌伴好きにはたまらないドラミングである。ライヴの時は観客へのサービスで派手なドラムソロもやるのだが、スタジオ録音時は自分の役割をしっかりわきまえている。エドワーズのベースはどっしりと重く、出る時は出ると言ったベーシストの鑑のようなプレイである。デビッド・フッドやドナルド・ダック・ダンが好きなら間違いなくハマる。
「ハウ・ロング・ウィル・イット・ラスト」はゲイル作で、初出はチャック・レイニーの初ソロ作『ザ・チャック・レイニー・コーリション』(‘72)。デュプリーの初ソロ作『ティージン』(’74)にも収録されているが、本作所収バージョンの出来が最高だと思う。アルバムの白眉は「ウォント・サム・オブ・ジス」「ルッキング・フォー・ザ・ジュース」「素晴らしき恋の想い出(原題:Reflections Of Divine Love)」「ハッピー・ファームス」あたりか。「ウォント・サム・オブ・ジス」のティーのピアノ独演部分から後半の盛り上がる部分は彼らの十八番のセクションで、素晴らしいグルーブ感が味わえる。
残念なことに、1993年にリチャード・ティー、94年にはエリック・ゲイル、2011年にコーネル・デュプリーが亡くなっており、スタッフの演奏は2度とライヴでは聴けないのである。もし、彼らの音楽を聴いたことがないなら、本作もしくは『ライヴ・アット・モントルー 1976』か『ライヴ・スタッフ』(‘78)あたりを聴いてみてほしい。また、デュプリーのソロでライヴ作『Uncle Funky』(‘92)は、ベースにウィル・リー、キーボードはリチャード・ティー、ドラムにはエリック・パーカー(クリス・パーカーの弟)を迎えて、スタッフ時代に負けず劣らずの素晴らしい演奏を繰り広げており、オススメ(入手困難だが、この時のDVDもあり)だ。
TEXT:河崎直人