THE BOHEMIANS 「やればやるほど物
足りなくなる」、内容も集客も全箇所
過去最高を記録したツアーが残したも

the popman's tour 2019~明るい旅~

2019.12.13(FRI)渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
9月25日にリリースした9thアルバム『the popman’ s review』をひっさげ、THE BOHEMIANSが行った『the popman's tour 2019~明るい旅~』が12月13日の金曜日、渋谷duo MUSIC EXCHANGEでツアーファイナルを迎えた。10月26日にツアーがスタートしてから全国9か所でライブを重ね、「全箇所内容集客過去最高を記録している!」と言える手応えを感じていたことに加え、「ムダにデカい会場を押さえてしまった」と冗談半分で言っていた10公演目となるツアーファイナルにも大勢の観客が駆けつけ、「(duoの)床を見ながらやるんだと思っていた(笑)」というビートりょう(Gt)も一安心。ライブ中、自分のネガティブシンキングを反省していたが、今回のツアーはタイトルに掲げたとおり、明るい旅になったこともさることながら、最後の最後にバンドの明るい未来を予感させながら、大団円を迎えたところに大きな成果があると思う。
この夜、2時間半におよぶ熱演を見た誰もが感じたに違いない。DELICIOUS LABELに移籍してから5年、着実に調子を上げてきたTHE BOHEMIANSは今、バンドとして最高に良い状態にあることを!
THE BOHEMIANS/平田ぱんだ(Vo)
この日のライブは最新アルバム収録の「ツイスターズのテーマ」から始まったが、自らツイスターズ=ひねくれ者たちと名乗るメンバーたちが絶好調であることの興奮を隠さず、素直に言葉にする姿も印象的だった。
だったら、もっともっと……いや、それはまたこれからの話。まずはツアーファイナルの熱演を振り返っておかなければ――。
THE BOHEMIANS/ビートりょう(Gt)
すでに書いたとおり、「ツイスターズのテーマ」でスタートダッシュをキメたバンドは、そこからたたみかけるように「male bee, on a sunny day. well well well well!」「I Don't Care That Pretty Girl」「ハイパーデストロイでクラッシュマグナムなベイビージェットよいつまでも」とアップテンポのロックンロールナンバーを繋げ、ぐいぐいと会場の温度を上げていく。そんなバンドに応え、スタンディングのフロアを揺らす観客の盛り上がりに「たいした騒ぎっぷりだな! 平日の金曜日。しかも13日の! 頭おかしいぜ!」と平田ぱんだ(Vo)も大満足。
THE BOHEMIANS/星川ドントレットミーダウン(Ba)
さらに「La-La-La Lies」「THE ALWAYS」と繋げたところで、フロアを埋めた観客を見渡しながら、「平日の夜に忘年会すっぽかしてきた? 受験勉強さぼってきた? そうでもない? 仕事、真面目な奴がロックンロール好きなわけないか。おまえら、怠け者のちんちくりんだな。でも、大丈夫! 俺も怠け者だから(笑)」と皮肉屋の平田ぱんだらしい言い方で、多くのファンがツアーファイナルに足を運んでくれたことに感謝を述べると、「うんざりするぐらいやりまくってやるんでよろしく!」と宣言。
THE BOHEMIANS/本間ドミノ(Key)
中盤のブロックでは、「新作を聴けばわかるが、THE BOHEMIANSには良い曲がいっぱいある」(平田ぱんだ)というレパートリーの中から、「恋はスウィンギン・イン・ザ・レイン」をはじめ、持ち前の類稀なるポップセンスを物語る佳曲の数々を厳選・披露。さっきまでモッシュと言えるほど、体をぶつけあいながら乗っていた観客たちをうっとりとさせる。
「トイレに行くなら今のうち」と平田ぱんだが言いながら、レゲエ調の「▶▶|(とばす曲)」も忘れずに披露。『the popman’ s review』の全11曲を、この日、演奏したところにアルバムに対する自信や愛着が感じられた。
THE BOHEMIANS/千葉オライリー(と無法の世界)(Dr)
そして、「ここからは遠慮なくロックンロールの時間に入ります。それが目当てだったんだろ!」と平田ぱんだが言い放ってからの「GIRLS(ボーイズ)」以降は、本編ラストの「Jagger/Richards」まで、THE BOHEMIANSのベスト・オブ・ロックンロールと言える8曲を、「もうちょい近う寄れ! 匂いを嗅がせろ!」「拳と声をくれ!」と平田ぱんだが煽りながら、ほぼノンストップで繋げていき、観客をジャンプさせ、シンガロングさせ、踊らせたわけだが、そんなロックンロールの時間の前にメンバーが順々に語っていったツアーの感想もある意味、聴きどころだったんじゃないか。
THE BOHEMIANS
「今回のツアーが一番楽しい」(星川ドントレットミーダウン/Ba)
「かっこいい、かっこいいと言われて、元気をもらったツアーでした」(千葉オライリー(と無法の世界)/Dr)
「10本やってきても、MCが全然うまくならない。でも、MCがうまくなりたいわけじゃなくて、音楽、演奏姿がかっこいいと思われたくてやっている。だから、かっこいいと思ったら好きなように楽しんでください」(本間ドミノ/Key)
THE BOHEMIANS/ビートりょう(Gt)
そして、「今回のアルバムはビートりょうに任せろってことで、(曲を1人で作って、やりたいように)わがままを通させてもらった」と語り始めたビートりょうは、「もう一つわがままを言わせてもらうと、来年はこの5人で曲を作っていきたい。(メンバーに)わがまま聞いてもらえる?」と問いかけ、メンバーたちが頷くと、客席に向き直って、「死ぬまでTHE BOHEMIANSやるんでよろしく! ついて来いよ!」と新たな決意を大きな声で言葉にしたんだから、そこからさらに盛り上がらないわけがない。
「Jagger/Richards」では、曲のタイトルどおり、まるでミック・ジャガーとキース・リチャーズがやるようにお立ち台の上で平田ぱんだとビートりょうが1本のマイクに向かい、コーラスを重ね、観客をうっとりとさせたのだった。
THE BOHEMIANS/平田ぱんだ(Vo)
アンコールでは会場限定の両B面シングル「ナナナナナナナ」と「スペルまで」を含む全5曲を披露した。「ナナナナナナナ」では、「今年一番の思い出を作ろう」(平田ぱんだ)と、『the popman’ s review』のジャケットに使っている球入れゲームをメンバー全員が被り、「球が入った人には今年31日までの幸せを約束します」(平田ぱんだ)と観客に球を投げさせ(因みに幸せを掴んだのは、わずか2名!)、「スペルまで」ではゲストに林宏敏(カネコアヤノバンド / ex 踊ってばかりの国)、牛尾健太(おとぎ話)という2人のギタリストを迎え、狂乱のジャムセッションを繰り広げた。
THE BOHEMIANS
「(行く先々で)来て良かった。やって良かった。ロックンロールが好きで良かったと思った。ライブをやるたび、ロックンロールが好きになった。“明るい旅”とつけた甲斐があった」と平田が言ってから演奏した「明るい村」から、「ありがとう。そして、ありがとう……としか言うことなんてないんだけど、最後に一つだけ言いたことがある。それはロックンロール!」と繋げた「That is Rock And Roll」を演奏し終え、予定では「この5人でTHE BOHEMIANSだ!」という平田による宣言で、この日のライブは終わるはずだった。
しかし、名残惜しいのか、なかなかメンバーたちがステージを去れずにいる中、「ツアー終わるの寂しいよね」と平田がポツリ。
「一番、今日(の演奏)が短く感じる。30分ぐらいしかやってないんじゃない? 料金分やってないよね。真面目だから、このままじゃ帰れないよ。THE BOHEMIANSやってきて、今までで一番良いツアー。そのツアーファイナルだ。あと2、3曲やっても問題ないんじゃない?」
その声に客席から大歓声が沸く。そして、バンドは急遽、選曲会議を開き、予定になかった「おぉ!スザンナ」「NEW LOVE」、そしてジェ-・リー・ルイスの「火の玉ロック」の3曲を追加で披露。終演後、メンバーに尋ねてみたところ、演奏できる曲の中からレア曲を選んだという。
THE BOHEMIANS
THE BOHEMIANSのライブの見どころは、類稀なるポップセンスのみならず、シニカルな視点も持つ彼らのロックンンロールの魅力を、今一度、ライブならではの臨場感とともに味わいながら、ライブハウスで鍛えあげてきたライブバンドならではの熱気に身を任せるところにあると思う。しかし、この日に限って言えば、メンバーが気持ちの赴くまま口にした言葉にも胸を打たれたという観客は少なくなかったんじゃないか。中でも新たな決意を、そしてバンドに取り組む現在の心境を、皮肉を交えず、素直に語ったビートりょうと平田ぱんだの言葉は、ファンが聴きたかったものという意味で、この日の大きな聴きどころだったと言ってもいい。
そして、平田ぱんだはダメ押しでもう一つ、今、THE BOHEMIANSの中で新たな情熱がある意味、貪欲さとともに燃え上がっていることを思わせる言葉を、堂々とピースサインを掲げながら口にした。
「物足りない! 物足りないよ。やればやるほど物足りなくなる。それがロックンロール。やめたくないけど、また一から遊ぶため、今日はこれくらいで許してください(笑)。ロックンロールがお互い好きだったら、また遊びましょう!」
取材・文=山口智男 撮影=釘野孝宏
THE BOHEMIANS

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