日本で世界初演! 主演の森田剛が「
日本の上演が一番良かったと言われた
い」と意気込み 舞台『FORTUNE』製
作発表

『ポルノグラフィー』『ハーパー・リーガン』『夜中に犬に起こった奇妙な事件』など、多くの戯曲を生み出した、イギリス演劇界を率引する劇作家・サイモン・スティーヴンスが、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作『ファウスト』を大胆にも現代のロンドンを舞台に置き換えた意欲的な新作『FORTUNE』が英国に先駆けて2020年1月13日(月・祝)より日本で世界初上演される。本作の製作発表が2019年11月28日(木)都内にて行われ、主演を務める森田剛が共演の吉岡里帆、田畑智子、根岸季衣、鶴見辰吾、そしてサイモン・スティーヴンス、演出のショーン・ホームズ、美術・衣裳のポール・ウィルスと共に出席した。
全てを手に入れるために悪魔と“契約”を結び、欲望を叶え続けすべてを手に入れた男が、やがて闇へと堕ちていく物語。
サイモン・スティーヴンス(作)
本作を手掛けたサイモンは、「昨年休暇で日本に来た時に、この美しい国に恋をしてしまいました」と笑顔を見せる。「自国のことを考えると、どんどん国が小さくなっているように思います。そんな中、大陸をまたいで国際的なコラボレーションが出来ること、何かを作る、コミュニケーションをとる、共通のものを分かち合うという作業の中で作るこの作品は、これまでに手掛けてきた作品の中でも最も大切な作品と言ってもいいと思う」と熱を込めて語った。
ショーン・ホームズ(演出)
続いてショーンは「今回、この作品は世界初演となることを素晴らしいことだと思っています。この会見に先駆けて2度日本に来る機会があり、1度目はワークショップ、2度目は本読みが出来たのでそういった経験をもとに日本の文化や演劇界、舞台についても分かり始めてきています。皆さんの文化を理解すると同時にサイモンとポールと僕の仕事のやり方を説明できるのでは、と思っており、稽古を通じて二つの国の真ん中にあるような世界を立ち上げ始めることが出来ているのではないかと感じています」と日英の融合に力を込めていた。
ポール・ウィルス(美術・衣裳)
ポールはショーンから「『FORTUNE』という戯曲があって、日本で世界初演で上演するんだ。と電話をもらった時、夢が叶ったと思いました。サイモンとショーンと、そしてこの素晴らしい俳優陣と一緒に仕事をすることが出来て本当に嬉しい」と顔をほころばせた。
森田剛
悪魔と契約をし、やがて闇に落ちていく二面性を持った主人公・フォーチュン役の森田は、かつてサイモンの代表作『夜中に犬に起こった奇妙な事件』での演技が高く評価されて今回、再び主演を務める。
『夜中に~』で主演した時のことを振り返った森田は「その時、ものすごく苦労したんです。なかなかそこにまた飛び込むのは勇気のいることでして。でも、僕にとってもチャレンジだしすごく刺激のある舞台なので、ぜひやりたいなと思いました。日本初上演なので、日本が1番良かったと思ってもらえるようにしっかりやりたいと思います」と意気込みを見せる。
そんな森田は本作の台本を読んだ感想を聞かれると、「びっくりしたのは、セリフの量(笑)。前回も凄かったんですけど……忘れちゃうんですよね、やっぱり!」と素直な心境を口にするとサイモンやショーンがニヤリと笑う。さらに森田は「『あ、これだ! サイモン、キター!』という感じで、拝見しました」と語ると、サイモンらはさらに大笑い。「その中には周りの人たちとの関わり合いが描かれていて、その人たちによって自分の心が動く、愛がすごく詰まった本だなと思ったし、これはチャレンジしたいなと思いました」と感想を述べる。なお、膨大な台詞の覚え方については「みなさんどうしているのか分からないですけど、受験勉強みたいな感じですかね。机に向かってとにかく読むという感じだと思います」と答え、笑いを誘っていた。
吉岡里帆
フォーチュンが想いを寄せる、素直でまっすぐな女性・マギー役の吉岡は「私が10代の時、この仕事をやりたいと明確に思ったのが小劇場の学生演劇を観た時でした。その時から舞台と戯曲の虜でした。とはいえ、ずっと映像作品が続いていたので、事務所の方に『舞台がやりたいんです』という話を何年もしてきたんです。やっと『FORTUNE』という素晴らしい作品と出会えて……サイモンさん、ショーンさん、ポールさんと、一つひとつ積み上げていく楽しさをまだ稽古2日目なんですけど、心から嬉しくて楽しくて噛み締めていて、こんな日がくることを望んでずっと頑張ってきたんだなと感じています」と喜びを表す。その上で「まずはみんなの足を引っ張らないように。そして自分自身がぶれないように役にしっかり染まりたい」と意気込んだ。
田畑智子
フォーチュンと契約を交わす悪魔・ルーシー役の田畑は「今までに演じたことのない役をいただき、たくさんのワクワクと期待がある一方で正直不安もあり、私にとって挑戦だなと感じています。いい具合に『FORTUNE』の世界に溶け込んで、またいい意味で期待を裏切れるようなことができれば」と力を込めた。
根岸季衣
フォーチュンの母親・キャサリン役の根岸は「はじめに本をいただいた時は、こんな無茶苦茶な内容をどう演じればいいんだろうと戸惑いました。お引き受けした後に、たまたまショーンが日本でワークショップをやると聞いて参加したらものすごくおもしろくて! シェークスピアを生んだ演劇の国の人だな、これはきっと楽しいものになると思い、稽古が始まるのを楽しみにしていました。稽古が始まりましたが、イギリス人はタフですね。SoTough!(笑)すごく面白いんですが、すでにヘトヘト状態。筋肉痛を起こしている人もいるくらいです」と笑いを交えつつ、喜びを語った。
根岸さんに「So Tough!!」と言われこの笑顔!
鶴見辰吾
そして、9年前に自殺したフォーチュンの父親・ショーン役の鶴見は「さぞかし小難しく難解な作品なんじゃないかなと思って台本を読み始めたらとても面白く、すべての人物に共感ができ、もしかしたら自分もこうなってしまうのではというキャラクターが描かれていました。私たち俳優は常にチャレンジをし続けていく仕事なんです。新しいものを見つけてそれをどう表現していくか、その機会を与えていただいたとみんな思っています。役者冥利に尽きる仕事です」と感謝を述べていた。
サイモンは本作を書いた理由として「何か自分が理解できないもの、怖いと感じるようなもの、でも探求したいものを扱いたい、探っていきたいということがあったと思います。永久に続いていく業や地獄、煉獄の怖さは非常に恐ろしいと思っています。その恐怖が、作家がものを書くところの良い出発点になると思っています」と胸中を語り、「文化として、世界として、人類として、経済的にも環境的にも政治的にも、今そういった何か裂け目に我々は落ちようとしているのではないだろうかと思っています。そんな時代に“我々がやっていることを理解するための物語”が必要なのではと思いました」と執筆の背景を語っていた。
また、ショーンは本作について「これはラブストーリーです。前半はパーティーがあって音楽があってハリウッドが出てきて、エキサイティング。それがとても重要なことだと思ってます。音楽や歌を織り交ぜながら、非常に高まる展開になっていく。そこから一気に落ちるということになりますね」とストーリーの見どころを語っていた。
なお、製作発表後に行われた囲み会見で、森田は改めて「お互いの想像力をぶつけ合って、それぞれが作品に責任を持って意見を言い合いながら作り上げる」という本作の制作現場の雰囲気に満足している様子。「悪魔との契約について憧れはあるか?」という質問が飛ぶと森田は「普段の生活で何気ない幸せを発見できたり、今の自分が幸せだと思う。演劇は舞台で自由に開放できる場所でもあるので、普段、窮屈な生活をしていても、舞台で自由になれるから、すごく幸せだなと思います」と穏やかな微笑みを浮かべる。
時々見せる笑顔がキュートですね!
小柄で華奢な吉岡さんですが、胸の奥に燃える演劇愛を感じました!
また、吉岡は「悪魔に魂を売った後からラブストーリーが始まるんですが、本当にそれは愛なのか? と本質的なところを考えてキャラクターを作っていかないとならないんだろうなと思います」と役作りについて構想を口にしていた。
クリエイターズ取材会の模様。右端が翻訳の広田敦郎さん
製作会見終了後には、サイモン、ショーン、ポールそして翻訳を担当した広田敦郎が出席したクリエイター取材会が行われた。
広田は13,4年前、「最近面白い戯曲はないか?」とドイツ人の演出家に聞いたら、サイモンの『On the Shore of the Wide World』が面白いと勧められました。イギリスの劇作家がドイツで人気だという事に興味を持ち、読んでみたら非常に気に入ったんです。サイモンの作品は英語圏の枠から出て自由になったところで描かれているからこそ、ドイツでも人気なのでは、ならば日本でも受け入れられるのではと思いましたし、その後世界で活躍するようになってからは、イギリスの劇作家というよりはインターナショナルな劇作家となっているように感じます。だから今回の『FORTUNE』が日本で世界初演となるのも不思議ではない流れだったのかも」と分析していた。
今回の舞台美術・衣裳についてポールは「かつて『ファウスト』を上演したとき、悪魔をドラゴンのようなもので表現したが、今回はそういう感じではなく、人間の“中”にそういった比喩的なものを集約する手法を取りたい、と語る。続けてショーンが「3つの世界があり、最初はフォーチュンの世界から始まり、そこではフォーチュンの欲望によってコントロールされています。そこにルーシーが入ってきてフォーチュンの世界にひびが入ったり、ゆらぎが起きます。そして2つ目の世界では、フォーチュンが契約書にサインをすることで劇的な変化が起きます。フォーチュンが魔法的な力を得てあたかも自分がステージをコントロールしているようになります。そして3つ目の世界は魔法がなくなり、フォーチュンが恐怖に襲われることになります。それらが空虚な広い舞台上で繰り広げられるんです」と説明した。これらの世界観を作り出す際にどのような手法や技術が用いられるのか、それは当日までのお楽しみといったところだった。
最後に海外クリエイターから見た森田の役者としての存在について。ショーンが代表して「彼は非常に内なる感情に溢れた役者ですね。その一方でV6というアイドルグループのポップスターでもある。この二つの才能を持った森田さんって凄い人物です」と評価し「僕なんて演出1本しかできないですから」と自らオチを作り、笑顔で会を締めていた。
取材・文・撮影=こむらさき

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