【ライブレポート】植田真梨恵、5周
年締め括りのZepp公演で「そばにいつ
もいることを、最低限の約束に」

植田真梨恵デビュー5周年記念のグランドフィナーレとなるライブイベント<PALPABLE! MARBLE! LIVE! -ANNIVERSARY 2019->が11月1日、Zepp DiverCity TOKYOで開催された。
<F.A.R. / W.A.H.>ツアーを終えて以降は、“ワクワクすること”を第一に、楽しいアイディアと挑戦がたんまりと入った配信シングル「Stranger」をリリースし、次なるフェーズにも突き進んでいることを感じさせる現在。このスペシャルな一夜は、5年間の集大成であると同時に、枠にはまらず感性の赴くままに表現をする植田の言葉でいうところの“アートする1年”となった2019年と、その先に見えるものとを繋いでいくものとなった。
暗転した会場にエフェクティヴな多重コーラスが響きわたる。神聖であり、また不可思議でスリリングでもあるそのアカペラに乗せて、するすると幕が開くと、ステージからは真っ白なスモークが床を這うようにこぼれ落ち、SEはアカペラから一転してスペイシーなシンセサウンドに変わっていく。SF映画のはじまりのようなムードの中、蛍光ラインがシュールなつなぎ姿の人々(※バンドメンバー)が、“DANGER”と記された箱をゆっくりと運び込んできた。この光景に、2016年の<PALPABLE! BUBBLE! LIVE!>でのオープニングシーンを思い起こした人も多かっただろう。3年前、植田真梨恵はその箱から姿を現して会場を歓喜で包んだ。

なるほど、これは当時のライブの再現か?というのが、大方の予想だっただろう。スペイシーなレーザーがフロアを照射するなか、つなぎ姿の面々が楽器を手に「旋回呪文」のラウドなサウンドを奏ではじめると、どこからか植田の早口のヴォーカルが聞こえてくる。もちろん観客の視線は、ステージ上の箱に釘付けだ。しかし箱はピクリとも動かない。そのうちフロア前方から驚きの声が上がり、見るとステージに設置されていた繭状のオブジェを突き破って、植田がステージに這い出て来ている。開演前からずっと観客の目の前にあった、そのオブジェ。“一体いつの間にそこに!?”と観客の頭上の疑問符が浮かび上がっていたが、重厚なバンドサウンドと攻撃的なヴォーカルがそれを豪快になぎ払って、「流れ星」「壊して」とアグレッシヴに加速していった。
今回のバンドは、車谷啓介(Dr)、麻井寛史(B)、西村広文(Key)、KEI(G)、岩井勇一郎(G)というツインギター編成。植田が歌に徹するということではライブシリーズ<UTAUTAU>にも近いが、このステージでは歌、歌うことを楽しむ<UTAUTAU>とはまた違ったよりシアトリカルな表現で、大きくアップダウンしたり、心の機微に触れる情緒的な曲の光景を体感させる。「ミルキー」や「ナビゲーション」といったインディーズ時代の曲も、現在の“ワクワク”とこのメンバーだからこその厚みのある極彩色なサウンドへとアップデートされた。植田は「大切な歌たちを、大切に歌っていきます」と語る。

特に中盤は新旧の楽曲が入り混じって、ライブタイトルにあるようなマーブル模様を描く。西村の静かでいて扇情的なピアノと感情的な余韻が尾をひくエモーショナルなヴォーカルによる「kitsch」から、今年リリースされたミニアルバムから「FAR」「Bloomin’」へと流れ、淡々としながらもリスナーの想像力を喚起させる仕掛けや余白があるポエトリーな歌心で観客をゆらりと揺らせる。予測不能に生き物のように形を変え続け、見る人それぞれで印象が変わるようなリキッドアートの演出もマッチして、歌から広がるイマジネーションが膨らんでいく感覚だ。
また、衣装替えでモードも変わった(クールさと愛らしさが同居したツインテールが新鮮) ところでプレイされたのが、「Stranger」と新曲「WHAT’s」。ソウルタッチで、ライトに刻まれるアコースティックギターにグルーヴのあるヴォーカルが乗っていく「Stranger」は心地よく、マジカルな間奏からファットなボトムが冴えるアンサンブルへと転がっていく感じもまたいい。タイトなループ感に遊び心をたくし込んだ音源でのエレクトロな雰囲気を残しつつ、このバンド編成での骨太さも生かしたライブバージョンは、きっとここからの植田真梨恵サウンドでさらに突き詰められるところでもあると思うし、可能性を含んだところだろう。新曲「WHAT’s」もまたグルーヴィで、フューチャーR&Bを植田真梨恵がポップにドリーミーに解釈するような面白さがある。こうした試みが、2020年に向けての“ワクワク”のひとつなんだなと感じられて、ここから先が楽しみとなる。
新機軸も交えた中盤から、後半に向けては「みなさん楽しんでますか? もう後半戦ですけど、そんなもんですか? 平日にわざわざ来たんですから楽しんでいってください」と観客を煽って、「REVOLVER」や「S・O・S」でロックにボリュームを、スピードを上げる。まだまだとボルテージを上げるように、躁的なアレンジとなった「わかんないのはいやだ」や、手拍子やタオルを振ったり、シンガロングする「ふれたら消えてしまう」「夢のパレード」と続いて、次に演奏したのは25時間生配信企画<「25時間生放送 まりえのま」#25時間で作曲からMVまでつくってみた>でファンとともに制作した新曲「I JUST WANNA BE A STAR」だ。ダイナミックなロックサウンドと、キャッチーなメロディと歌のこの曲は、ライブという場がいちばん似合う。
「みなさん、今日はありがとうございました。5年前、この歌からはじまりました」──植田真梨恵

そういって本編最後に、観客の手拍子を伴奏に歌ったのが1stシングル「彼に守ってほしい10のこと」だった。「みなさんのそばにいつもいることを、最低限の約束にしたい」とMCをした植田。ここからも音楽的な冒険や、そのときどきの気持ちに素直に曲を描いていくという思いは強いが、真ん中で変わらないのは、その歌があなたのそばにあること。5周年の締めくくりとして、歌への普遍的な思いと、果てのない音楽的な楽しさや喜びを伝える、そんな叫びが詰まった一夜となった。
なお、アンコールのMCでは、ピアニスト西村広文と二人で作る真冬の恒例<Lazward Piano>を2020年は東京と大阪の二大都市のホールで開催することが発表となったほか、重要文化財である大阪市中央公会堂にて今年3月に行われた<Lazward Piano>ツアーファイナルのライブBlu-rayを2020年1月にリリースすることが明らかとなった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎山口渚

■<植田真梨恵 SPECIAL LIVE “PALPABLE! MARBLE! LIVE! -ANNIVERSARY 2019-”>2019年11月1日@Zepp DiverCity TOKYO セットリスト

01. 旋回呪文
02. 流れ星
03. 壊して
04. RRRRR
05. 泣いてない
06. ミルキー
07. ナビゲーション
08. メリーゴーランド
09. 心と体
10. kitsch
11. FAR
12. Bloomin'
13. Stranger
14. WHAT’s
15. REVOLVER
16. S・O・S
17. わかんないのはいやだ
18. ふれたら消えてしまう
19. 夢のパレード
20. I JUST WANNA BE A STAR
21. 彼に守ってほしい10のこと
encore
en1. 中華街へ行きましょう
en2. 僕の夢
en3. 変革の気、蜂蜜の夕陽


■新曲「WHAT’s」

・2020年春公開映画『ミセス・ノイズィ』主題歌に決定


■LIVE Blu-ray『Live of Lazward Piano -凍てついた星座- at 大阪市中央公会堂』

2020年1月8日リリース
【二枚組 (Blu-ray + LIVE CD)】
GZXA-8035 ¥6,500 (Tax out)
※植田真梨恵と西村広文の二人による<Lazward Piano>(ラズワルドピアノ)。重要文化財でもある大阪市中央公会堂で行われたツアーファイナルを映像化。東京日本橋三井ホール公演を収録したLIVE CDとの二枚組。


■東阪ホール公演<植田真梨恵 LIVE of LAZWARD PIANO “Academic!”>

1月26日(日) メルパルクホール大阪
open16:15 / start17:00
(問)サウンドクリエーター 06-6357-4400
2月09日(日) ヒューリックホール東京
open16:15 / start17:00
(問)H.I.P. 03-3475-9999
▼チケット
5,800円(税込/指定席) プログラム付き
一般発売日:2019年12月21日(土)
※3歳以下入場不可、4歳以上チケット必要
※東京公演のみドリンク代別途必要
※アカデミック版=学生割引 1,000円キャッシュバック


■ライブイベント出演情報

11月24日(土) 東京・オリンパスホール八王子 <「SHOW BY ROCK!!」3969 GRATEFUL ROCK FESTIVAL>
12月10日(火) 大阪・JANUS EIGHTY EIGHT special 中島卓偉×植田真梨恵

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

新着