成河、渡辺大知らが参加した舞台『ね
じまき鳥クロニクル』ワークショップ
に潜入&奇才インバル・ピントにイン
タビュー!

世界的ベストセラー作家・村上春樹の大長編小説『ねじまき鳥クロニクル』が初舞台化され、2020年2月11日(火・祝)~3月1日(日)東京芸術劇場プレイハウスで上演される(その後、大阪・愛知でも上演)。イスラエルのインバル・ピント(演出・振付・美術)とアミール・クリガー(脚本・演出)、日本の藤田貴大(脚本・演出)が協同作業を行い、音楽を世界的な即興演奏家の大友良英が手がける話題作だ。SPICEでは、2019年10月下旬、ピントとクリガーが来日して実施された出演者ワークショップに潜入し、併せてピントに単独インタビューを行った。
体で触れ合いながら互いを知る
主人公の岡田トオルは妻のクミコとともに平穏な日々を過ごしていたが、猫の失踪や謎の女からの電話をきっかけに、奇妙な出来事に巻き込まれ、思いもしない戦いの当事者となっていくーー 村上春樹の原作は1984年の東京・世田谷から始まる謎めいた迷宮世界。それをいかに舞台化するのか。村上ファンはもとより舞台好きならば大いに気になる。
訪れた日の稽古場には、ピント、クリガーそして出演者の成河、渡辺大知、徳永えり、松岡広大、鈴木美奈子、皆川まゆむの姿があった。
インバル・ピント  撮影:近藤誠司
出演者6人は皆ラフな服装。床に転がり、さまざまな組み合わせで絡みあったりしている。互いの足を絡め合いながら変幻自在にうごめく姿は不思議で、時にブキミな生き物のよう。その組み方が面白いと自然と笑い声も起こり、和やかな雰囲気に包まれる。ピントはイスラエルを代表する振付家のひとりで、独得の発想から生まれる動きと深みのある世界観を持ち味にしている。
ピントの「こうしてみよう」という提案に演者たちが自在な発想で応え、クリガーが助言するといった光景が見られた。出演者たちは<演じる・歌う・踊る>と称された役者陣、<特に踊る>というダンサーに便宜上分けられている。でも、ここでは両者が垣根なく存在し、岡田トオルを演じる2人である成河、渡辺のように初共演であっても、体で触れ合いながら互いを知っていくことで早くも親密な空気をただよわせている。

ワークショップ風景  撮影:近藤誠司

長机の上に白いシャツを広げ、それを折り畳むというタスクでは、各人各様の手つきと表情が見もの。時おり自ら動いてみせるピントの動作もおもしろい。両足を滑らすように歩いていくという場面の、驚異的にしなやかで奇妙な流動感には思わず引きこまれた。
見学した範囲に関して、原作の何か具体的な場面をあらわすものではないとのことだが、それぞれに与えられた役柄、キャラクターに応じて生まれてくる身体の動き、この出演者たちだからこそ立ち上がる空気感というものが感じられる。それが12月から始まる稽古にどのように反映され、本番に結晶していくのか楽しみになってきた。
インバル・ピント(演出・振付・美術) インタビュー
インバル・ピント
ーーワークショップの目的は何ですか?
凄く長い原作をどのように舞台化するのかを時間をかけて考えました。俳優・ダンサーたちにどのような動きをしてもらい、どのように視覚的に演出し、どのように物語を伝えてもらうのかを考えてきましたが、実際にそれを実現できるのかどうかを模索しています。フィジカルな面で「こういうことがしたい」というイメージがあるので、その方向性が合っているのか、出演者の持ち味をどのように生かしていくのかを見るために集まってもらいました。それぞれの特性を見ながらいろいろと試しています。
ーーどのような手ごたえがありますか?
さまざまな新しいアイデアが生まれています。役を演じてもらうにあたって、どのような性質を持ってもらえばいいかを模索しています。フィジカルな面で表現することを大切にしているので、そこから「シャツを畳む」という動作が生まれました。シャツを畳みながら、その人の役をどのように表現していくのかを実験したり遊んだりしています。俳優・ダンサーの特性も生かしつつ、どのように役につなげていくのかを考えているところです。
『ねじまき鳥クロニクル』チラシビジュアル
ーー原作を読まれての印象は?
一言でお伝えするのは難しいですが、凄く複雑で、豊かで、遊び心があると感じています。遊び心というのは「現実とは何か?」と人の心で遊んでいることです。人には分かっていること、分からないものとの間があって、その間の部分が凄く豊かなのだと感じています。この本を題材に演出させていただけて光栄です。
ーーアミール・クリガーさん、藤田貴大さんとのクリエーションはどのような感じになりそうですか?
3名の異なる人間が関わるので豊かな制作のプロセスになっていると感じます。それぞれバックグラウンドが違っている3人がコラボレーションするのは面白いです。共通の理解がありつつも物語に対する理解をそれぞれの視点で出し合って、いいものを創っていきたいです。お互いに学びのプロセスだと感じています。また藤田さんは私たちがわからない”日本語”の部分をカバーしてくれます。台詞回しを聞いたとき、声のトーンからどういうことを伝えたいのかは分かりますが、具体的なセリフの内容は理解はできないので、そういったところを藤田さんに担当していただいてコラボレーションができればと思います。
左から アミール・クリガー、藤田貴大  提供:ホリプロ
ーー日本ではホリプロ制作でミュージカル『百万回生きたねこ』、百鬼オペラ『羅生門』を手がけ、今回は『ねじまき鳥クロニクル』に挑みます。イスラエルで創るダンス作品とは違った挑戦でしょうか?
どの作品も挑戦ですが、今回は特に大きな挑戦、でも凄く楽しい挑戦です。どのように作品に深みを持たせるか、どのようにフィジカルな共通言語を作るか、スタイルやデザイン、音楽といったさまざまな面から考えていく必要があります。今回の村上作品は物語が複雑で、それをどのようにお芝居やダンスで表現していくのかを1年程かけて作業しています。アミールと一緒に物語を深く理解し、エッセンスを取り出しながら考えているところです。ダンス作品の場合は自分の世界を主に大切にして創ればいいのですが、今回は物語を生かして創るので、村上作品に対する責任感も大きく感じています。
取材・文=高橋森彦

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