奥華子、自分でも作って良かったと思えるベスト盤

奥華子、自分でも作って良かったと思えるベスト盤

奥華子、自分でも作って良かったと思
えるベスト盤

花、空、月の3テーマ

──3枚組となった『奥華子 ALL TIME BEST』。選曲もご自身で行われたということで。ひとことでいうと、どんなベスト盤になったと思いますか?
奥華子:今回のベストは、正直に言うと……自己満足に近い形のベストでいいなという思いもあったんですね。だから、選曲もすべて自分でやりました。最初は1枚のベストにって考えてたんですけど、選んでいたら1枚にまったく収まり切らなくて。それでも44曲まで絞って、さらにテーマに沿って3枚にわけました。その分け方が、すごく自分らしいなと思えたし、満足出来るものになったなと思います。

──3枚のディスクそれぞれに「花」「空」「月」というテーマがありますよね。このアイデアはどこから?
奥華子:例えば、具体的にわかりやすいところでいくと、失恋ソングディスク、ハッピーディスク、人生ソングディスクとか……っていう風にもわけることが出来るかなと思ったんです。でもそうすると、1枚の中で同じテイストの曲が続てしまい同じ印象に聴こえてしまって、1曲1曲がもったいないなと思ったんです。それで、歌詞のテーマじゃなくて、何か違うテーマでわけることができないかなと考えた時に、出て来たのが「花」「空」「月」だった。これは、完全に自分の中のイメージなんですけど、「花」は儚いからこそ愛おしいものの象徴だな、と。そうすれば失恋ソングでも当てはまるし、歌詞の中に「花」があるのも当てはまる、いろんなパターンが当てはまるなと思ったんです。

──「空」についてはどうでしょう?
奥華子:「空」はいつでもそこにいてくれるもの……というテーマ。何となく空っぽいなって曲もあるし、「この曲は、いつでもそばにいてくれるものに当てはまるな」って思うような曲もあったり。ここは、今回のベスト盤でわかったっていう。楽曲に対して、こういう新発見も結構あったんですよね。だから、すごく新鮮な気持ちもあって。新たな3枚のアルバムが出来た感じも強いです。

──「月」のテーマは、闇があるからこそ見えるもの。まさに奥さんが作る楽曲の肝になっている、すべての曲に当てはまってくるテーマだと思いました。
奥華子:本当に、すべての曲が「月」でもあると思うんです(笑)。だからそういう匂いがより強いものを集約しました。選ぶのがすごい難しかったですね。「月」ディスクが、1番、選曲が混雑しました(笑)。最初は「月」ディスクに入れたい曲の歌詞を中心にして選んでたんです。でもアレンジとかサウンドとかも含めて、耳心地を大事にしました。ずっと同じようなアレンジが続くと、曲同士がぶつかっちゃうので、そうならないように意識しました。スマホに入れてウォーキングしながら、ずっと聴いて、「あ、この曲の後はこういう曲が欲しいな」とか考えながら、曲順と収録曲を決めていきました。

彼女の中の「花」、「空」、「月」

──「花」と「空」と「月」っていう言葉について、もう少し伺っていきます。なぜ「花」と「空」と「月」が出て来たのですか?
奥華子:今回、新曲で『はなびら』という曲があって、その中に「儚き愛しい日々」って歌詞があるんですね。儚くて愛おしいものの象徴として「はなびら」が一番初めに思い浮かんだんです。
この『はなびら』って曲が無ければ、「花」「空」「月」という発想は出てこなかったです。で、改めて見ると、今まで自分が作ってきた曲の中でも「花」ってつく曲が多くて。デビュー曲も『やさしい花』だったし。『ガラスの花』『明日咲く花』『キミの花』とかいっぱいあるんですよね。

──花は枯れる。そこに、永遠じゃないという意味合いでの儚さというか。時間のうつろいを感じますよね。
奥華子:そうですよね。人生もそうじゃないですか。うつろい、ずっと変わっていく。変わらないことなんてないと思うから。

──「空」はどうですか?
奥華子:恋愛でも、それ以外でも、別れの歌に「空」って出てくることが多くて。「空」ってどこにいっても無くならないじゃないですか。いつも見られる、いつもそこに在るもの。それは心の中にいつもいてくれる人とか、離れていても自分を支えてくれる人に通ずるな、と。大切な人って「空」と一緒だなと思ったんです。

夕陽を撮ってた中学時代

──普段、空を見上げることはあります?
奥華子:最近は、減っちゃったんですけど。昔、中学生くらいの時に、インスタントカメラで空をよく撮ってたんですよ。学校から帰って来て、家から夕陽を撮ってたなと。それが毎日、すごく楽しみだった。

──自分の部屋の窓から撮ってたんですか?
奥:そうなんです。ちょうど家が高台にあって、よく空が見えたんです。で、いつも空が違うんです。『今日の空すごいぞ』とか思って、学校から走って帰って撮ってました。空がすごく好きだったなぁって、今、話してて、思い出しました(笑)。すごい夕日になりそうな、。そういう日は、ダッシュで帰ってました。

──素敵なエピソードですね。
奥華子:ただ好きで撮ってただけだったんですけどね(笑)。自分の代表曲のひとつに『ガーネット』という曲があるんですけど、この曲は、監督から『青空をイメージして作ってください。映画を観終わった時に青空を見上げたくなるような曲をお願いします』という言葉を頂いて出来た曲なんです。それまで6曲ほど作って、なかなかOKにならなかったんですけど、「青空」ってキーワードをもらったお陰で出来ました。この『ガーネット』に限らず、それだけ自分の中で「空」っていうのは、大切なキーワードになってる気がしますね。空って、自分の心の在り方によって、その時々で見え方が変わると思うんです。自分が淀んでいる時って、どんな青空を見ても曇ってる。でも自分の気持ちによって、本当に涙が出てくるくらい綺麗な空になったりする。空って自分の心を映すものなんだと思いますね。

──日常にある些細なことに、すごくいろいろ感じてて。しかもそれを覚えてるっていうのは、日常を大切にしている証だと思います。
奥華子:え、そんなことないですよ(一同笑)。

──あ、自分ではあんまり、そう感じない?(笑)
奥華子:どうだろ(笑)。うーん……どうかな(一同笑)

──「月」についても思いを詳しく教えてください。
奥華子:月は、いろんな色の月があるし。大きさもいろいろありますよね。それから、星もそうだけど暗ければ暗いほど輝いてる。都会だと、月とか星とかあんまり見えないじゃないですか。

──そうですね。ネオンという別の光があるから。夜中になればなるほど、空には月があるのに意識しにくい気がします。
奥華子:そう。でも暗闇だからこそ光ってみえる。その象徴だと思うんです。歌詞の中でも「月」って言葉を使っている曲もありますね。
我がままに作った 

──ベスト盤の選曲をアーティスト自身がセレクトすることで、そのベスト盤に大きな意味が生まれてくると思うんですね。そこらへんは奥さん、どう考えてます?
奥華子:ベスト盤って、やっぱりシングル曲は入れなきゃとか、タイアップがついた曲は絶対に入ってるというイメージだと思うんですね。

──そうですね。一般的にはまさにその通りだと思います。だから入門編とか呼ばれたりしますし。でも今回の奥さんのベスト盤は、そこの概念とはまったく違う。
奥華子:そうですね。「え? あの曲入ってないんだ?」って思うような感じですよね。これまで作ってきた楽曲は、もちろん全部愛しいし大切。ただ、アレンジや選曲、曲順も含めて、何も言わずに誰かに渡せるかどうかって考えたら、そうじゃないかもしれない。私、例えば出来上がった曲(=CD)を誰かに渡す時に、曲について『これは何々のタイアップで』とか、ちょいちょい説明したくなるんです(笑)。でも今回のベスト盤はそれが無いし、とにかく、この世に自分の曲を残したいっていうのが強かった。選曲していく中で、シングル曲をこれだけ入れないのはどうなんだみたいな、葛藤もすごくあったんですけどね。でも今回は、15周年の区切りってこともあって、自分が残したいように、我がままに作りました。

──このベスト盤を通して印象に残ったのは、奥華子というアーティストの強い個性なんです。特に、声とメロディと歌詞のマッチングは、すごい武器だな、と。
奥華子:声とメロディと歌詞のマッチングは、曲を作る時に1番大事にしていることですね。20歳の頃、ライブを始めた時に「曲も歌詞も暗いね、ダメダメだね。でも声はいいよね」って、いろんな人に言われたんです。声だけは、ずっと、いろんな人に褒められたっていうか(笑)。それで声は特徴的なんだなって自分でもわかって。この声が気持ちよく響くメロディ、響くサビっていうのをいつも探して曲を作ってきましたし、さらに言葉がのった時に、1番伝わる言葉を、ベストマッチングを探し続けてきた15年でしたね。
新曲『はなびら』

──先ほどちょっとお話していただきましたが、改めて新曲『はなびら』について御願いします。
奥華子:映画(=11月15日公開『殺さない彼と死なない彼女』)の主題歌だったので、映画を観てから監督の要望を伺ったんです。そしたら「映画を観終わった人に前向きになってもらえるような曲を作って欲しい」と。映画の内容が、前向きなだけでなく、すごく切なさもあるものだったんです。

──そういう中で、最初に浮かんだ部分は?
奥華子:「あなたに出会えなければ」ってフレーズ。このフレーズをどうしても入れたくて。「出会えたから……」じゃなくて「出会えなければ この空の青さも知らないまま」っていう。前向きさも出したかったけど、同時に切なさも出したかったんですね。
はなびら 歌詞 「奥華子」
https://utaten.com/lyric/mi19102924

──今おっしゃったワンフレーズ、歌詞を拝見して、すごく強いなと思いました。
奥華子:基本的にマイナスに言う方が、すごく強いなと思っているんです。

──なるほど。この『はなびら』に限らず?
奥華子:そうです、この曲に限らず。私、歌詞で「ない」って言葉、すごく使ってるんです。

──ネガティブな要素を入れた方が強くなる……ということでしょうか?
奥華子:そうだと思いますね。注意してみると、めちゃくちゃ「ない、ない」使ってるんですよ。

──それって、元々、自分の中に在る感情がベース?
奥華子:そうですね。すごいネガティブだと思います。
感情の先に在るもの

──ネガティブな感情……例えば怒りとか悲しみとかが、曲になりやすいって説もありますが、奥さんはどうです?
奥華子:それは昔からそう思っていて。自分が幸せだなと思うと、何も求めないし、何も感じなくなるんですよね。ストレスがあるから、マイナスな感情があるからこそ、何かが生まれると思うんです。だから辛い時ほど、いろんなことを感じるし、創作意欲が沸くんだと思うんですよね。でも、それだけだと、段々自分が持たなくなってくるので、曲の作り方は変わってきましたね。

──長く続けるには、必要なことですよね。
奥華子:そうなんですよね。私の曲は恋愛ソングが多いんですけど、自分が実際に感じた感情をベースにしているのは同じなんですよ。で、そこをもっと切なく届けるにはどうしたらいいだろうと考えて、一部フィクションを加えたり、自分の立場から考えたり、男性の立場から考えたり、角度を変えていくと、いろんなパターンが出てくるから。

──自分の感情が曲作りのベースにあるわけじゃないですか。それで曲を作るって、めちゃくちゃ自分を削ることでもありませんか?
奥華子:めちゃくちゃ削られてますね。そう、本当に…。

──そういう中で、もっと曲を作ろう、もっと……って、曲を書き続けられたモチベーションって?
奥華子:正直、曲作りは毎回大変なんです(笑)。いつもストックの曲が無いから、新たに曲を作るって感じで。15年間ずっとそうなんですね。14曲収録のアルバムだったら14曲作る。毎回、作品作るたび、もう無理だって、泣きながら作ってるんですよ。で、そういう中でのモチベーションは何かって言われたら、曲を作ることしか自分に出来ることがなかったから、ですかね。
──自分の中にある何かを曲にしたいって思いが強い?
奥華子:うーん……そういう感じでもなくて。自分の中にある1番の目標が、誰もが知る教科書に載るような曲を作りたいっていう。曲を作り始めた時から、ずっとその気持ちがあるんですよね。スタンダートなもので、みんなが歌ってくれる。そういう存在になりたいし、そういう曲が書きたい。でも、15年続けてきた中で、なかなか簡単ではないなとわかったし、他にもいろんな想いが出て来て、気持ちの浮き沈みもあったんです。でも、今回のベストの選曲をしていて、自分らしい、奥華子らしい曲を、1曲1曲妥協しないで作ってこれたんだなと思うことは出来た。このベスト盤は、自分にとっても作って良かったと思えるものになったと思います。

TEXT 伊藤亜希
PHOTO 安東佳介 (Senobi)
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