マエストロ・ムーティのアカデミーを
皮切りに『トリスタンとイゾルデ』や
プッチーニ・シリーズが初登場 『東
京・春・音楽祭2020』華やかなプログ
ラム

2020年3月13日(金)から4月18日(土)の約5週間にわたり開催される『東京・春・音楽祭』の開催概要記者会見が、このほど行われた。
今や上野公園一帯に春を告げる風物詩ともなったこの『東京春祭』は2020年が16回目。恒例のワーグナー・シリーズでは『トリスタンとイゾルデ』が初上演されるほか、2019年に第1回を実施し講評を得た、指揮者 リッカルド・ムーティによる『イタリア・オペラ・アカデミー』や、バイロイト音楽祭との提携プログラム『子供のためのワーグナー』も『トリスタンとイゾルデ』をテーマとして、引き続き開催される。
また、2020年から新たに『東京春祭プッチーニ・シリーズ』をスタート。さらに生誕250周年を迎える“この年の主役”、ベートーヴェンは「ミサ・ソレムニス」をはじめ様々な楽曲が取り上げられるという。期間中は東京文化会館をはじめ、上野公園内の美術館や博物館、東京奏楽堂などで約200のコンサートが予定されている。記者会見で登壇した東京・春・音楽祭実行委員会・鈴木幸一実行委員長らのコメントを含め、以下に詳細を紹介していこう。
撮影=西原朋未
上野の春の風物詩。ワーグナーは『トリスタンとイゾルデ』がついに登場
2005年『東京のオペラの森』として始まり、2019年に15周年を迎えた一区切りを経た『東京・春・音楽祭』は、新たな16年目へと踏み出した。会見で鈴木幸一実行委員長は「さらに10年先、20年先を見据え成長させていく」と挨拶し、上野観光連盟の二木忠男会長も「音楽を街に連れ出すイベントとして、また上野の春の風物詩としてすっかり定着した。上野の山にとって重要なイベントだ」と語った。
マレク・ヤノフスキ 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳 聡
その音楽祭の目玉のひとつが『東京春祭ワーグナー・シリーズ』で、11回目となる2020年は、これまで一度も上演のなかった『トリスタンとイゾルデ』がついに登場する。指揮は4年がかりで上演したハルサイ[リング]で絶賛を博した、マレク・ヤノフスキ。トリスタンにアンドレアス・シャーガー(テノール)、イゾルデにペトラ・ラング(ソプラノ)を迎えての上演は期待が持てる。
東京春祭ワーグナー・シリーズ(2019.04.07《さまよえるオランダ人》) 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳 聡
また昨年に続き行われ、鈴木実行委員長が「日本の未来のために欠かせない重要なプログラム」と位置付けているのが『東京春祭 for Kids』。今年は『子どものためのワーグナー』として、こちらも『トリスタンとイゾルデ』を取り上げる。これは提携しているバイロイト音楽祭(ドイツ)が子ども向けに編成したプログラムで、2013年に現地で上演され、好評を博した。「私が初めてクラシック音楽を聴いたのは小学生の時。『子どもに(ワーグナーが)分かるのか?』とよく言われるが、生きている間に作品を完全完璧に理解することは大人だって難しいだろう。芸術文化の将来のために、早い年齢から子どもを巻き込む工夫が必要だ」と鈴木実行委員長。プログラムは船を模した座席に子供たちを座らせて物語を進めるなど、大人でも興味を惹かれる趣向が凝らされている。
ムーティのアカデミーは『マクベス』を。新たにプッチーニ・シリーズも開始
2019年に始まったリッカルド・ムーティによる『イタリア・オペラ・アカデミー in 東京』は引き続き第2回目が行われる。これは2015年からマエストロ自身がラヴェンナで開催している若い音楽家向けのプログラムで、東京春祭はその海外展開版だ。2020年のテーマは『マクベス』で、世界屈指のマエストロからその作品の魅力を直々に聞くことのできるまたとない機会となる。またマエストロの指導を受けた音楽家らによる演奏会も行われる。
リッカルド・ムーティ「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳 聡
2020年のもう一つの注目は、新たにスタートする『東京春祭プッチーニ・シリーズ』だ。これは先のマエストロ・ムーティとの交流もシリーズ創設の契機の一つとなったもので、読売交響楽団の演奏のもと、第1回目は『外套』、『修道女アンジェリカ』、『ジャンニ・スキッキ』の「三部作」を取り上げる。指揮は近年注目を浴びているスペランツァ・スカップッチで、読響の津村浩常任理事・事務局長は「ぜひご一緒したかった」と期待をのぞかせる。春音楽祭のワーグナー・シリーズと並ぶ、新たなシリーズ・プログラムになることは間違いないだろう。
読売日本交響楽団 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳 聡
2020年の主役、ベートーヴェンも多様なプログラムを用意
2020年のクラシック音楽界で重要なテーマといえるのは、生誕250年を迎えるベートーヴェンだろう。2020年は定番から演奏の機会の少ないレアな音楽まで、楽聖の多岐にわたる音楽を聴くチャンスが多いであろうこの作曲家について、東京春祭でも『合唱の芸術シリーズ』で晩年の大作「ミサ・ソレムニス」を、ヤノフスキ指揮、東京オペラシンガースの演奏で上演する。
さらに『ベートーヴェンとウィーン』をテーマとした『東京春祭・マラソンコンサート』をはじめ、このイベントではすでにおなじみのピアニスト、エリザベート・レオンスカヤがベートーヴェンの後期三大ピアノソナタを弾くなど、様々な『ベートーヴェン・プログラム』が用意されている。
〈ナイトミュージアム〉コンサート 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:増田雄介
このほか東京奏楽堂では『ベンジャミン・ブリテンの世界 IV』として歌劇 『ノアの洪水』を演奏会形式で上演。さらに東京国立博物館で2009年から行われている『東博でバッハ』シリーズをはじめ、上野公園内の美術館や博物館、公園などでも様々な演奏会が目白押しだ。
桃色の春祭フラッグがすっかりおなじみとなった上野の山へ、ぜひ桜とともに「芸術の春」を楽しみに出かけたい。
桜の街の音楽会 写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:飯田耕治
取材・文=西原朋未

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