ASCAインタビュー「自分をさらけ出し
ても受け止めてくれる人がいる」アル
バム『百歌繚乱』発売、そして初ツア
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今年3月、TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』の第2期OPテーマ「RESISTER」で熱い歌への思いを語ってくれたASCAが再登場!初ワンマンライブを経てアルバム『百歌繚乱』発売、初のワンマンライブツアーへの意気込みを聞いた。

「私の歌ってちゃんと届いていたんだな」ワンマンライブで実感した思いを歌詞に
――『百歌繚乱』の曲順は、「凛」を最初にもってくると決まっていたそうですね。
そうなんです。最初に『百歌繚乱』というタイトルを付けて、花が咲き乱れるという意味の“百花繚乱”という四字熟語から、「凛」ではMVで花びらが舞っているシーンがあったり、ジャケット写真にも赤い花びらが散っていたりもするので、1曲目に決めました。
――そこからアニメ主題歌になっている曲が続いて、新曲が終盤に固まっています。
全部並べてみたときに、飽きずに聴いてもらえる曲順ってどんな感じなのかなと思ったときに、1章、2章でわけたほうがいいなと思って。まず私の代表曲と言える曲たちを並べまして、9曲目の「KOE」までが1章。ぼくのりりっくのぼうよみさんに作っていただいた「Suspected, Confused and Aciton」という曲で第2章がスタートというイメージで作りました。
――CDで聴いて楽しいということが念頭にあったんですね。
そうですね。私が好きなアーティストさんのアルバムを聴くときに「どういうふうに曲順とか作っているのかな」と考えながら楽しんで聴いていたので、順番で聴いてもらったときにどう楽しめるかっていうのを考えました。
――なるほど。アルバムの新曲について収録順で、まずはアプリゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング』の主題歌「セルフロンティア」について伺いたいと思います。「RESISTER」に続いて、こちらでも作詞をされていますよね。
はい。「RESISTER」では孤独に戦いながら、運命を切り開いていくというようなイメージを、上京してきた頃の自分の心情と重ね合わせて書いたんですけど、「セルフロンティア」では4月に開催したワンマンライブでの経験をこのアルバムのタイミングで伝えたいし、歌に残したいと思って作詞させていただきました。
――その経験というのは?
私の想像の何十倍もの大きさで熱く迎えてくれて、「私の歌ってちゃんと届いていたんだな」ということが伝わってくるくらいの温かさだったんです。私が楽しければみんなも楽しいし、こんなにASCAっていうアーティストを愛してくださっているんだと気づけたことが大きくて。私が歌うことをまっすぐ。曲げずに続けてきたらこんなに素敵な景色が待っていたから、諦めずにまっすぐ進んでいってほしいという願いをこめて書きました。私自身も応援してくださっている皆さんの声を力に変えて、一人では歩いてこられなかった道だと思うので。
撮影:中田智章
――このタイトルは、自分自身=「セルフ」と未開拓地=「フロンティア」を合わせた造語ですよね。「RESISTER」とも重なる部分がありますね。「存在証明」みたいな重い言葉もバシバシと出てきます。
自分自身の限界を超えていけっていう歌詞になっているのですが、前はもっと「自分で頑張らなきゃ」というか、「一人で」っていう気持ちが強かったんです。それが『ソードアート・オンライン』(以後、SAO)という作品で2曲歌わせてもらって、今は応援してくださっているみんなと一緒に進んでいきたいと変わってきたというか。自分の成長もすごくこのアニメ、作品をとおして感じることができたので、そういう意味でも改めて『SAO』に関わることができて良かったです。
――ASCAさんご自身の話なのに、『SAO』主人公のキリトくんのような印象がありますね。最初はソロプレーヤーだったのが、仲間や友人の思いを背負って戦うようになっていくという流れにも重なります。
本当ですか?うれしいです。作品と連動した歌詞にはしたくて、自分とキリトくんたちとすり合わせられる部分ってなんだろうと考えたときに、キリトくんが仲間たちを引き連れてより大きな敵に立ち向かっていくというところは一緒なのかなと思って「セルフロンティア」の歌詞を書きました。
“地球の母”みたいな存在、阿部真央の楽曲提供を受けた「NO FAKE」
――続いて「NO FAKE」は、先ほど名前の挙がった阿部真央さん書き下ろしの曲です。
そうなんです。私の学生時代から聴いております。私にとっての神様のような方にオファーさせていただきました。
――楽曲提供してもらうまでの経緯はどういうものだったのですか?
私の3枚目のシングル「凛」をリリースしたときに、真央さんの「Don't leave me」という楽曲をカバーさせていただいたご縁で対談させていただいて、そのときにインタビュアーさんが「いつか一緒にライブしたくないですか?」と振ってくださったんです。そうしたら真央さんが「じゃあ曲が要りますよね」と言ってくださって。
――言質をとったぞ!と(笑)。
その後もライブに何度か通いまして、真央さんの10周年の武道館ライブを観に行かせてもらって挨拶に行ったら、「聴いたよ、あの曲(RESISTER)」と言ってくださって、「神が私の曲を聴いてくださっているの!?」と驚きと喜びがすごかったんですけど。そのときにスタッフさんとアイコンタクトして「(オファーするなら)今だ!」となりまして(笑)。快諾してくださったという流れです。
――発言を実行してもらう時が来たんですね。
撮影:中田智章
どんな楽曲を書きましょうかという打ち合わせで、真央さんと二人きりで話す時間をもらったんですよ。
――めちゃくちゃ緊張したんじゃないですか?
それが、懐が深すぎてなんでも話したくなってしまうような方なんですよ。なんだろう、“地球の母”みたいな。そんな大きく言ったらどうなんだろうって思うくらい(笑)。でも、それくらいなんでも受け止めてくださる方で、「最近、ASCAちゃんは不満とかムカついてることとかないの?」って聞かれて。活動しているとまあまあ出てきますよね、いろいろ。
――ASCAさんの怒りが歌詞になった。
私は普段あまり怒りを外に出すタイプの人間ではないんですけど(笑)。自分で怒りの感情の歌は作らないと思ったんですよ。自分に書けないものをお願いしようというのはいちばんに考えました。それに、私自身が真央さんのメッセージ性の強い攻撃的な楽曲が好きなのもあって。ちょうど私のワンマンライブを観にきてくださったあとに打ち合わせをしたとき、「ASCAちゃんとASCAちゃんのファンが暴れられる曲を作ろう」と。そうして出来上がったのが「NO FAKE」です。
――「起き上がらなくなるまで殴れ」ってめちゃくちゃ語呂も良くて強い言葉ですよね。
はい(笑)。気持ちいいんですよ、歌ってても。今まで歌ってこなかったタイプの楽曲だったりするので、これを聴いた人が「実はASCAってすごい怒ってる人なのかな」って思うかもしれないですけど、そう思われてもいいですし。実際に歌うと本当にすがすがしくて。レコーディングで、何に怒っていたかとか何を話したとかも全部忘れました。
――レコーディングには阿部さんもいらっしゃったんですか?
メインの部分は編曲をしてくださった重永亮介さんに録っていただいて、ひと通り録り終わった後で真央さんが来てくださったんです。録ったものを聴いてもらったあとで、曲中にある「NO FAKE!」とかのガヤを一緒に歌わせてもらいました。レコーディングのブースの真ん中にマイクを1本立てて。真央さん、私、近くにいた重永さんとスタッフさんと、スタジオのエンジニアさんにもお願いして歌いました。
――何か阿部さんからアドバイスなどはありましたか?
ガヤはすごく大事なんだと熱く話してくださいました。「1回私が見本を見せるから」と見せてもらったら、想像よりも叫ぶ。叫ぶというより怒鳴ってるという表現が合ってるかもしれないです。数秒の間に今持てるだけの声量を解き放てみたいな感じでしたかね。ご指導いただきました。
――それは貴重な経験ですね。続いて「Unti-L〈100S-R2〉with mizuki」ですが、澤野弘之さんのアルバムに収録されている「Unti-L」のリアレンジ、再レコーディング版ですが、この〈100S-R2〉はどのように読むのかなと…。
「百歌繚乱」です。これがもう澤野さん節全開の名づけ方なんですけど100は「百」、SはSongで「歌」、R2が繚と乱(のローマ字表記での頭文字)ということらしいです。5秒考えてて「これはこうかな」って出てきたのがこれで「早い!」って(笑)。名づけ慣れているんだなって。
――なるほど!こちらのバージョンを最初に聴いたときの印象は?
最初は弦がたくさん入っていてチェロとかが立っている楽曲だったので、もとの「Unti-L」よりも重めな、ずっしりとくるようなリアレンジをしてくださったんだなと思っていて。ASCAの楽曲も弦がたくさん使われていることが多いので、これはASCAの楽曲を意識して作ってくださったのかなと解釈していたんですよ。それが、先日「絶対レディオ」という私のラジオ番組に澤野さんがゲストで出てくださって、そのとき話を聞いたら正反対で(笑)。澤野さん的には従来の「Unti-L」のほうが重めで、「〈100S-R2〉」はそれよりも軽く作ったそうで「ぜんぜん違いましたね…」って(笑)。弦に関してもASCAのこれまでの曲に合わせたわけじゃなくて偶然だったらしくてくて「そういう(ASCAの楽曲に合わせた)ことにしておきます」っておっしゃっていました。
――「with Mizuki」とあるようにお二人で歌われていますが、Mizukiさんについてはどういった印象がありますか?
Mizukiさんは、以前から大好きな歌声の持ち主で。一度、澤野さんのライブを観に行かせてもらったときに初めて生で歌声を聴いたときに、澤野さんの楽曲を100%表現する方だなと思いました。自分が持っている声とは真逆の性質…、私の歌声が赤だとしたら、Mizukiさんの声は青というか。それぞれの声を聴くと正反対だなと思ったんですけど、ユニゾンでかぶさる部分とかで耳馴染みよく聴こえるのが不思議で。(声が)混ざり合ったときが心地よく聞こえたので、歌えて良かったなという気持ちがありました。
――阿部真央さんの楽曲提供やガヤ参加に続いて豪華なコラボといいますか。
今回アルバムで「Unti-L」を収録するとなったときにぜひMizukiさんと一緒に歌いたいなということでオファーさせていただきました。いつものブレないMizukiさんの歌声を乗せていただいて、本当に特別な1曲になりました。
――「このメロディーに乗せて」はかなり落ち着いた曲調で、アルバムのなかでも雰囲気が違いますね。
いろいろな方とコラボさせていただいた配信限定の楽曲もありますし、ひとりだけでは完成することのできなかったアルバムなので、改めて感謝だなとなりまして。デビューシングルから関わっていただいてASCAの楽曲には欠かせないsakuさんと、重永さんの二人に曲を書いていただいて、そこに私が詞をのせるという形になりました。
――たとえば「あの日冷たく見えた東京タワー今は優しく映るから」という一節は実体験が元になっていたりするんですか?
実話です。歌詞を書いていた時期に、ちょうど東京タワーで仕事がありまして。私、すごく東京タワーが好きで、近くを通るたびに写真をツイッターにあげたりしているんですが、上京したときは東京タワーがすごく遠いものに思えていたんですね。
――「冷たく見え」ていたんですね。
はい。最初はデビューが決まっていない段階だったので「あなたには歌は無理でしょう?」「早く諦めて(実家に)帰れよ」と言われているように見えていたんですけど、この歌詞を考えながら歩いているときに東京タワーを見たら涙が出てきてしまって。「優しく映る」っていう表現がぴったりで。自分の心の変化が見えるというか、ASCAとしては一人の女性として強く歌い続けるシンガーでありたいと歌ってきたんですけど、この曲は等身大の自分を書きたいと思ったのでこういう自分に近い言葉選びをしました。ありのままの私が歌にのるといいなと思った歌詞ですね。
――東京タワーは、もともとはテレビの電波を送信する役割があったものですし、ASCAさんの歌がメディアで流れる前は遠く見えて、アニメの主題歌なども担当するようになって優しく映るというのは象徴的でもありますよね。
そうだ!そういう意味ではピッタリですね。
――これまであまり悩みや弱い部分を見せなかった印象があるのですが、そういった部分も出していこうという意識は最初からあったんですか?
そうですね、今までそういう部分は出してはいけないと思ってきたので。だけど、自分をさらけ出しても受け止めてくれる人がいるという安心みたいなものが大きかったんだと思います。これもワンマンライブがあったから変わった部分ですね。ちゃんと皆さんイベントで私に伝えてくれていたし、思いも届いていたんですけど、なんか自分の殻に入っちゃっていたというか、自信がなかったんですよね。
――ワンマンライブの経験がなかったらこのアルバムも違った印象になっていたかもしれませんね。
私はエゴサの神と呼ばれておりまして(笑)。SNS上でのつながりはけっこう深かったと思うんですけど、実際に会った時のつながりっていうのがあんまりできていなかったのかなと。そういう経験がすごく生きた『百歌繚乱』というアルバムになったかなと思います。
撮影:中田智章
「地元で歌うのがいちばん緊張する」初の凱旋ライブへ高まる思い
――最後に、12月1日からのライブツアーについてお聞きしたいと思います。東京公演にはMizukiさんがゲスト出演されると発表になりましたが、ライブの構成などはもう決まってきましたか。
はい。新たな試みがあったり、構成はほぼ決まっています。あとはMizukiさんにはどのタイミングで出てきていただこうかと、考えを練り練りしているところです。セットリストも会場ごとに変えたいなとは思っています。私も各地にそれぞれの思いがあったりしますし、それぞれの会場でできる特別なことがあればいいなと思っています。
――重永さんが「NO FAKE」について「ライブで盛り上がる1曲」とツイートされていましたが、12月のライブツアーに向けてキラーチューンになりそうですね。
まさにですね。こんなにバンドで映える楽曲っていうのはASCAのなかで今までなかったんじゃないかっていう曲で。ガヤがしっかり入っているのも初めてなので、会場が一体になれる1曲だと思います。これまでは弦を立てたライブをしていたんですけど、今回は「NO FAKE」のような楽曲もありますし、ゴリゴリに盛り上がれるようにベースとドラムを加えた初めてのフルバンドで臨みます。
――ライブで得た経験がASCAさんの内面やクリエイティブの変化に繋がったというお話がありました。12月の東名阪でも新しいものが見つかるかもしれない。
はい。ワンマンで見つかるものってすごく大きくて。また見つけに行けるっていうのが楽しみです。それに自分だけが発信しているわけではないと気づけたので。3会場それぞれで「一緒にすごい瞬間を作れたね」と言えるようにツアーを回りたいです。ひとつアーティストとして進めた気がします。
――以前のインタビューで「いつか愛知で凱旋公演をしたい」とおっしゃっていましたよね。
ついにです。11月でデビューからちょうど2周年なんですけど、ずっと言っていた凱旋が叶います。そしてファイナルなのでドキドキです。地元で歌うのがいちばん緊張するんですよね。やっぱり思い出がいちばんありすぎますし、どんなふうになってしまうのか当日が楽しみです。自分の気持ちだったり、歌っていてあふれてくる思いもあるだろうなと今から楽しみです。
撮影:中田智章
取材:加東岳史 文:藤村秀二 撮影:中田智章

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