戦隊ソングからプリキュア、アイマス
作曲までこなす高取ヒデアキ25周年ラ
イブへの思い

スーパー戦隊シリーズの熱い物語を彩る歌の数々を筆頭に、シンガー&作曲家として様々なアニメソングや「プリキュア」シリーズなどへも参加。アニメ&特撮ファンでその歌に触れなかった人はいないであろうシンガー・高取ヒデアキが今年でメジャーデビュー25周年を迎える。それを記念して、11月1日に自身の原点でもある名門ライブハウス・渋谷 eggmanで『高取ヒデアキ 25th anniversary ZETKIレコ発 ワンマン LIVE』を開催。
ファンからリクエストを募ってセットリストを作成するなど、ファンと一体になって自身の特撮・アニソン史の過去から未来までを見せようとする高取ヒデアキに、これまでのキャリアや歌を通して関わってきた作品、アニソンを取り巻く現状、そして自身のキャリアの原点回帰ともいえる今回のライブへの熱い思いを語ってもらった。これを読めば、間近に迫ったライブへの期待が高まること間違いなしだ!

■スーパー戦隊と共に走り続けてきた熱き日々
――1994年のデビューから数えて25周年、アニメソングをメインにしてからは21周年ということですが、ここまで重ね続けてきた時間はやはり感慨深いモノがありますか?
この歳になるまで音楽が続けられるとは思ってなかったので、無我夢中になってやってきて気がつけば25年という感じですね。
――高取さんといえば、『忍風戦隊ハリケンジャー』以降のスーパー戦隊シリーズの歌をほとんど手掛けられていますが、どんなきっかけで関わる事になったのでしょうか?
『忍風戦隊ハリケンジャー』の楽曲コンペに参加して、最初はエンディングテーマの「いま 風の中で」で選ばれたんですよ。それがきっかけでスーパー戦隊の世界に関わるようになったんですけど、当初はエンディングが採用されたのでそれを歌う事になると思っていたんです。でも、その時のデモテープを聴いたプロデューサーの方達から「主題歌を唄ってみた方が良いんじゃない?」というお誘いがあって。結果的にエンディングは影山ヒロノブさんに唄ってもらう事になって、主題歌は及川眠子さん(作詞/代表作『残酷な天使のテーゼ』『魂のルフラン』など)と池毅さん(作曲/『光戦隊マスクマン』『星獣戦隊ギンガマン』の挿入歌・イメージソングなどを手掛ける)の作られた「ハリケンジャー参上!」を歌う事になりまして。自分を作曲家としても歌手としても評価してくださった番組が『忍風戦隊ハリケンジャー』なんです。
――それが現在放送中の最新作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』まで続いているんですね。
『忍風戦隊ハリケンジャー』がきっかけとなって現在の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』に至るまで、主題歌・エンディングや挿入歌などで参加させていただくことになって。それは作曲家として曲を書き、歌手としても唄えるという自分の引き出しが多かったおかげかなと。そんな感じで、最初は自分も無我夢中でスーパー戦隊の世界に飛び込んだんですけど、熱さとか真っ直ぐな気持ちや想いとか求められるものを楽曲や歌声に乗せていくうちに、いつの間にか「戦隊シンガー」という評価を自然といただけるようになっていたのは嬉しいですね。
――スーパー戦隊シリーズに参加することで得た忘れられない思い出はありますか?
それこそたくさんあり過ぎるんですけど(笑)、2016年に『動物戦隊ジュウオウジャー』の時は、作編曲にボーカル、そして演奏はZETKIとすべてを手掛けて、自分の理想の形で主題歌を唄えたことですかね。スーパー戦隊の楽曲は毎回ガチなコンペで決まるんですけど、それを自分のチームで挑んで主題歌を勝ち取れて、そして「超英雄祭 KAMEN RIDER ✕ SUPER SENTAI LIVE & SHOW 2016」でZETKIと一緒に日本武道館のステージに立てたというのも嬉しかったですね。バンドをやるやつなら誰もが「夢は日本武道館」って思っているし、10代の頃からそれを目標として目指していましたから。スーパー戦隊シリーズを長く続けてきたおかけで、それが思わぬ形で自分の好きな仲間達と一緒に実現したのが一番思い出深いですね。
――そんなブラスロックバンドユニット「ZETKI」は結成から長いこと路上ライブでの活動がメインだったようですが、高取さんなりの路上へのこだわりからなんでしょうか?
こだわっていたというわけではないんだけど(笑)、結成したのは一年間『ハリケンジャー』を担当した後なんです。当時は全国を回って沢山の子供達や親御さんの前で一人で唄ってきたんですけど、みんなすごく盛り上がってくれて、それが終わった後のぽっかりと穴が開いたような虚脱感がすごくて。でも、一年間そうしてライブで唄いきれたことが自信にもなりましたし、当時は35歳ぐらいだったけど音楽を始めた10代の頃みたいにもう一度バンドをやりたいなって気持ちが芽生えたんです。名前にアルファベットの最後の文字となる「Z」を入れたのも「これがダメだったらバンドもう諦めよう」っていう気持ちを込めたからなんです。そんな風に始まったバンドだったんで、スケジュールが空いた時に来られるメンバーだけで場所を選ばず演奏できるのが路上、それも自分の音楽の原点でもある渋谷だったんです。会場を押さえて何ヶ月も前から準備して、というのではなく、唄いたい時に唄うみたいな勢いで始めたんですけど、けっこう長く続いちゃったし楽しかったですね。今じゃ怒られるのでもうできないですけど(笑)。
■スーパー戦隊と「プリキュア」というニチアサ二大看板での関わり方の違いは?
――改めてディスコグラフィーを振り返ると、かなりの数のアニメ特撮ソングを歌われていますよね。そしてスーパー戦隊と並ぶ日曜朝の顔でもある「プリキュア」シリーズの楽曲も手掛けていらっしゃいますし。
作曲家の仕事としては「プリキュア」シリーズも大きかったですね。スーパー戦隊と並んで自分の音楽の幅を広げさせてもらったというか。
――スーパー戦隊も「プリキュア」も同じ「日曜朝の子供向け番組」という同じラインの作品ですが、曲作りに関しては意識する部分は違ったりしますか?
スーパー戦隊の曲は「いつでも自分が唄ってやる」という我がでちゃう部分があるんですね。もちろん作品に対して自分に何ができるかという前提で取り組んでいますけど、あわよくば唄おうとする気持ちもあるんです(笑)。でも「プリキュア」に関しては絶対自分が唄う機会は無いので、そういった我がでなくて素直に作品と向き合って曲を作れるという違いがありましたね。自分がいつものノリで「プリキュア」の曲を唄ったら子供の夢を壊しちゃいますし(笑)。その分「プリキュア」は楽曲的に凝ったことも色々できたという面もありますね。
――そんな高取さんの我がもっとも強く出た曲はあったりしますか?
やっぱり『ハリケンジャー』以来の主題歌『動物戦隊ジュウオウジャー』ですね。スーパー戦隊40作記念というのがあって、才能あふれるシンガーがたくさん出てきている中で「こういう節目の記念作品なら、俺がもう一回主題歌を唄ってもいいんじゃない?」という気持ちがありまして(笑)。だから26作目の『ハリケンジャー』から関わり続けてきた集大成でありつつ、自分が唄いたい&自分にしか唄えない楽曲のつもりで書いた曲ですね。我が出過ぎるのも良くないけど、自分にとってはスーパー戦隊も「プリキュア」も自分の音楽のとっても大切な部分を担っている作品ですね。
――意外なところでは『アイドルマスター シンデレラガールズ』の曲(『Happy New Yeah!』『炎の華』)も手掛けられていますが、高取さんにとってアイドルソングというのはどうでしたか?
メチャクチャ楽しんで作りましたね(笑)。「炎の華」はスーパー戦隊の曲と言われても過言じゃ無いくらいの勢いで作ったんですけど、原作となるコミック(『アイドルマスター シンデレラガールズ WILDWIND GIRL』)をしっかり読み込んでから作らせていただいたんで、思いきりロックをやらせてもらいましたね。意外な曲という流れだと、純烈の「純烈一途」ではムード歌謡路線で書かせていただいたり、色々楽しんで自由に作らせていただいてますね。
――個人的に好きな曲では『しあわせソウのオコジョさん』のエンディングテーマ「眠くなるまで」も、渋くて好きでした。
あの曲はソロの「高取ヒデアキ」名義で唄った初めての曲なんですよ。それまではCOA(実弟でZETKIメンバーでもある高取伸和とのユニット)やR.A.M.(『電脳冒険記ウェブダイバー』の楽曲を手掛けた平間あきひこ&Sister MAYOとのユニット)というユニット名義だったので。アニメも面白かったので思い出深いナンバーですね。
■記念ライブは高取ヒデアキの過去・現在・未来を体感できる時間旅行に!
――いよいよ11月1日開催に迫った『高取ヒデアキ 25th anniversary ZETKIレコ発 ワンマン LIVE』ですが、会場となる渋谷 eggmanは思い入れのある場所だとか?
これまでの25年を振り返ってみると、最初にメジャーデビューを決めた時や、アニメソングの世界に入るスタートになった時とか、自分にとって転機になる時に渋谷 eggmanでライブをやっているなと。自分をアニメソングの世界に導いてくれた恩師にもeggmanのライブで見つけてもらったので。実はそれ以来eggmanでライブをやっていなかったので、今もあるのかなと思っていたら昔と変わらず同じ場所にあってくれたと。楽屋とかも昔のままだし、ここでまたライブをやれば一つの節目になるのかなと。自分にとっての音楽人生の大事な時期にeggmanのステージに立てたことはとても大切な経験なので、原点回帰のつもりで21年ぶりぐらいにやらせていただこうと。自分としてもすごく楽しみでにしているんです。
――Twitterなどで唄って欲しいナンバーのリクエストを受けつけていますが、反応はいかがですか?
集まるナンバーが本当にレアだったりマニアックすぎたりして困っちゃってます(笑)。自分でも「そういえばこんな曲あったな」というぐらいなライブで唄ったことのないようなナンバーを、ファンの皆さんがサルベージしてくれていますね。曲にまつわるみなさんの思い出とかも聞けたりして、こんな風にみんなの気持ちに残っている楽曲を作れたんだなというのがすごく嬉しくなりましたね。ただ、どうライブに反映していいのかと(笑)。できる限りリクエスト上位の曲は何とかやってみて、できなかった曲は今後の課題としようかと。譜面が無いのも多いのでそこらへんは書き起こしてやってみようかと思っています。どこまでやれるかって不安もあるんですけど、何をやるんだろうと楽しみにして来ていただければ。できなかったらキレないでねと(笑)。
――譜面から起こし直して過去の曲を歌うことで、ファンの皆さんにもグルーヴ感が伝わるものになりそうですね。
できるだけ過去のものに忠実でありたいんですけど、歳も重ねてきているので、そこらへんの重みも感じていただければ。そして皆さんにも思い出の曲を生で聴いてもらうことでタイムスリップした気分になってもらえるんじゃないかと。当時好きだった音楽を聴くと、当時の匂いや空気を感じてその時代に帰れるような瞬間があるじゃないですか。自分も色々な転機を迎えた思い出深いステージで、今唄うことでみんなと一緒にタイムスリップしたいと思っていますので。もちろん過去だけでなく、未来の新しい楽曲もお披露目したいと思っています。
――最近は声優さんやアニソンメインのシンガーさん、鈴木雅之さんや小林幸子さんといった大御所アーティストも積極的にアニソンを唄うなどジャンルの多角化やとりまく環境の変化が進んでいますが、特撮・アニソン歴21年の高取さんはこういった流れをどう感じていますか?
自分がアニメソングの世界に入った時は、音楽業界的には低く見られるまだまだ不遇な時期だったので、現在の「アニソンを唄いたい」っていう若いシンガーや声優さん達が増えているのは、すごく幅が広がったなとビックリしています。自分より上の先輩方がたくさん苦労しながら、不遇な時代を乗り越えて歌い続けてこられたことが、いま正当に評価されてきているのかなという気はしていて、自分もそんな先輩方の末席から貢献できたのかなという自負はありますね。
――アニソンだからといって色眼鏡で見られるようなことはもう過去の物になりましたか?
今は才能のある子達がたくさんいて、声優さん達も演技だけでなく歌も踊りもできるエンターテイナーになって、自分も子ども達の前でキレッキレのダンスを見せなきゃいけなくなったりしているんですよね(笑)。アニメソングがエンターテイメントとして大きく広がって、唄う側も色々求められるモノが増えてきたのかなと感じているので、自分もまだまだ負けられないなということで、そういう流れに追いついていきたいなという思いはありますね。作曲家としてアニソンを作る側から見ると、以前は作詞・作曲など作る側と唄う側が分業制みたいな感じでしっかり分かれていたんですが、そこから次第にシンガーソングライターが受け入れられるようになっていったので、そういう部分では自分の活動も貢献できたんじゃないかと思っています。それが今のアニソンシンガーや声優さん達にも広がっていって現在の形になっているのかなと。今のアニソンシンガーが求められることはたくさんあるので。
――今はアニソンシンガーも「アーティスト」として見られるようになった感じはありますよね。
そうですね、俺も声優さんたちとアニメソングでお仕事する機会が増えてきましたけど、すごいスキルの高い子達がたくさんいるんですよね。もう「アニソンシンガー」という枠でも括れなくなるような広がり方を見せていますし、逆に従来のアーティスト側からアニソンの側へ来ることも増えていますし、ちゃんとアニソンシンガーもアーティストとして評価されだしているという気がしますね。
――そういう状況を踏まえながら、25周年を振り返る今回のライブは面白いものになりそうですね。
自分なりにもこの25年は「やってきてよかった」と思うこともありましたし、唄う機会も限られていたので、今回のライブでこれまで歩んできたものを再現できればなと思っています。なおかつ未来のものも考えていきたいので、新しい楽曲もお届けして過去と未来を行き来できたらいいなと思いますね。
――自分が「やめる」というまではアーティスト活動に終わりはありませんものね。
ささきいさおさんや水木一郎アニキや串田アキラさんとか、70代になっても現役バリバリで僕らが子供の頃に聴いていた歌をそのまま唄われていますものね。そんな偉大な先輩方を見ていると僕はまだまだ中堅なのかなと思っていて、これから20年後を目指してやっていかなきゃいけないなと。
――20年後も歌い続けるために、何か体調管理などで気をつけていることはありますか?
できるだけ気をつけないようにしています(笑)。節制とか色々気をつけだすと色々怖くなっちゃうから、あまり考えずに人前で歌い続けることしかないですね。本当歌い続けている先輩方はみんな元気ですからね。
――最後にファンの皆様へライブへ向けてのメッセージをお願いいたします。
ライブのキャッチコピーに「全て此処から始まった。」とある通り、僕の原点でもあるこだわりのある場所に20数年ぶりに立って、こだわりのある楽曲を皆さんと、最高の仲間たちであるZETKIと一緒に噛みしめながらライブができたら嬉しいなと思っていますし、初めての方でもお気軽に足を運んでいただいて高取ヒデアキ、ZETKIを初体験していただけるのも大歓迎です。今回のライブをまた新たな切っ掛けにしたいと思っていますので、ぜひ皆さん来ていただければ嬉しいです。
取材・文:石黒直樹

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