【まなおのアニメ感想戦!】第11回 
まだ「空の青さ」を知らない皆さんへ

 「天気の子」公開日、雨模様の空が一気に晴れ上がった出来事は記憶に新しいですよね。「空の青さを知る人よ」は逆に、台風19号が迫る嵐の前の静けさの中での公開となりましたが、実際には雲ひとつない空の下にぴったりの作品です。
◆あらすじ
 「心が叫びたがってるんだ。」などアニメファンにはお馴染み、「超平和バスターズ」(長井龍雪、岡田麿里、田中将賀)が手がける本作。両親を失くした相生あおい(若山詩音)は姉のあかね(吉岡里帆)とのどかな町で二人暮らし。あるときあおいの前に、高校時代の姉の恋人だった金室慎之介(吉沢亮)が13年前の姿(以下こちらを「しんの」)のまま現れます。
 一方で東京へギタリストになるため離れていた現実の慎之介も姉妹の前に登場します。……と、一見ファンタジーな世界観の中で、人と人との心の距離、理想と現実のギャップといったリアルさに打ちのめされるような恋愛群像劇となっています。
◆耳だけでも幸せ!? すばらしすぎる声のキャスティング
 吉岡里帆さんの責任をもって妹を見守ってきたお姉さんらしい語り口。若山詩音さんの透明感のある真っすぐな声色。「こんな姉妹がほしい!」と思わずにはいられない、それぞれの魅力的な立場を全力で演じられています。
 そして今回、吉沢亮さんはアニメ声優初挑戦とは思えない完璧な一人二役で、序盤からラストまで全人類を圧倒アンド魅了してくれます! 高校生バンドでギタリストの夢を追うキラキラした青年しんの。東京へ出て、不満を抱えながらバッグバンドでギターを弾くスレた慎之介。どちらが好きかを語る女子会を定期開催したいくらいにはカッコいい演じ分け! これはもう身近な女子を衝動的に劇場へ向かわせるなら「しんの、慎之介、吉沢亮に惚れにいってこい!!!」と叫べば十分なほどなのです。なお私は大人シブい慎之介派ですが、しんの派と2時間お茶をするのはまんざらでもありません。
◆自分の物語のように
 そうなるとこの項目は蛇足かもしれませんが、でもどうしても言いたいのは、鑑賞した誰しもが、自分の経験のように感じられる瞬間が訪れますよという点です。もっと言えば、それは4人のうちの誰なのか、あるいは誰かの一瞬なのかは、私にはわかりません。観る人の生き方次第で、映り方も響き方も違う。映画の一番の魅力が引き出される作品だし、色々なかたに観て感想を聞かせてほしい。だからこそ推してしまうのです。
 将棋という選択の連続のゲームに触れてきた私としては、4人がそれぞれの選択を問い、問いながら選択する点を非常に興味深く、悔いるのか立ち止まるのか、ハラハラしながら見守りました。そして最もグッときたのは、あおいが自宅の階段で膝を抱えながら言い放った一言です。予告編でも出ていますが、ぜひ劇場で聞いて、感じてほしい。人によって印象的なシーンが多様なこともまた本作ならではの魅力だと思います。
◆まとめ
 最近鑑賞した中で、声のお芝居が印象的だった作品を挙げるなら今作と「プロメア」(堺雅人さんの熱演がこれまた大迫力)になると思います。余談ですが、「プロメア」は先日アカデミー賞長編アニメ部門にエントリーされましたね! 他にもエントリーした「海獣の子供」「若おかみは小学生!」「天気の子」はコラムも書きました のでそちらもぜひご一読ください。
 そうしたキャスティングや、あいみょんさんの最の高な主題歌をもってして、誰もが自分の物語に感じられるテーマが際どく、大切に描かれています。誰しもに向けられた作品にもかかわらず、台風の影響でまだ観れていない方が多すぎるのが現状です。さらに日本には追い打ちをかけるように台風が……。二重の意味で青空が遠のくのが歯がゆくて、思わずコラムを執筆しました。
 どうかもっとたくさんのかたに「空の青さ」を知ってもらえますように。

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