今秋アジア初上陸のエレクトロ・クラ
シックグループ SYMPHONIACSとは?
彼らが創る”ネオクラシック”その神

ヨーロッパを中心に全世界で注目を浴びている若手クラシック奏者集団・SYMPHONIACS(シンフォニアクス)。ドイツを活動拠点とし、管弦楽団などの奏者、またソリストとして活躍中のヴァイオリニスト3人、チェリスト2人、ピアニスト1人、そしてエレクトロアーティスト/コンダクター1人の計7人からなる筋金入りの実力派だ。
“コンサートにいったことがない人でも気軽にクラシックを楽しんでもらいたい”をコンセプトにした熱い思いから新ジャンル<ネオクラシック>を提唱し、コールドプレイ、アヴィーチーやダフト・パンクなどの楽曲をクラシカルでダイナミックなサウンドに昇華すると同時に、バッハやヴィヴァルディといったクラシックの名曲をエレクトロニックなサウンドやビートで躍動感あふれる新しいクラシックを奏でる。そんなシンフォニアクスが2019年11月15日(金)東京国際フォーラムにて初の日本公演を行う。シンフォニアクスの目指すものや来日公演に向けての意気込みを、プロモーションで来日中のヨハネス・フライシュマン(ヴァイオリン)、トム・スーハ(ヴァイオリン)、コリン・ストークス(チェロ)の3人にきいた。
ーーシンフォニアクス結成のいきさつと、どんなことをやろうということで集まったのでしょうか。
コリン・ストークス(以下、コリン):まずは“音楽は音楽だ”ということが共通認識としてあった。300年前のものでも現代に書かれたものでも、”自分達の気持ちを伝えるために音楽はある”という考え方なんだ。僕らはクラシックから始まっているんだけど、クラシックと今の音楽を全部ひっくるめて新しいものとして提示しようというのが僕たちの理念なんだ。
コリン・ストークス
ーーみなさんは個々にクラシックアーティストとして活躍していらっしゃる。そんななかでシンフォニアクスとして集まるのはスケジュール管理が大変そうですね。
コリン:そうなんだよ。それぞれ個々のプロジェクトが進行中で、ツアー中のメンバーもいる。それぞれのスケジュールの合間に今回は日本に来たんだ。ヨハネスなんか、先週日本にいてまた今戻ってきて、そして11月に来日公演をするという過酷なスケジュールなんだよ(笑)。
ヨハネス・フライシュマン(以下、ヨハネス):それで1月にもまた日本に来るんだよ。僕の住んでいるオーストリアと日本は国交樹立150周年で、僕はオーストリアの音楽大使をつとめている。だから大使館などでイベントがあると僕が呼ばれるので、日本とオーストリアを行ったり来たりなんだ(笑)。
ーーみなさん住んでいるところも世界中でバラバラですよね。どうやってそんな皆さんを集めたんでしょう?
トム・スーハ(以下、トム):今の時代だからネットだよね。僕たちはそれぞれが成功しているので、いろいろなところに名前が挙がっているんだ。それをこのグループのプロデューサーでありオリジナル曲の作曲もしているアンディ・レオマーが集約して声をかけていったんだよね。まずは腕のい良いプレイヤーであること、そしてシンフォニアクスが目指すものに興味があって、それをステージでもちゃんとパフォーマンスできるかどうかが重要だったんだ。

トム・スーハ

ーーリハーサルも大変ですね。レコーディングもそうだと思うんですが、どうやっているんですか?全員が集まるのって大変でしょう。
ヨハネス:ベルリンにオーケストラが集まれる規模のアンディのスタジオがあって、そこがマザーシップのようになっているよ。必要なときは皆がそこに集まるんだ。アンディが曲のベースを作って、それをクラシカルアレンジにしたりエレクトロなものにしたりと皆で試していく。ものすごい実験場のようなことになるんだよ。それはすごく楽しい作業なんだ。事前の話し合いなどはネットでやりとりすることもあるけど、録音に関しては必ず全員が集まってやる。ストリングカルテットというのは、絶対に全員で演奏するのが基本だからね。でも僕たちの場合はそこにエレクトロが入るので、そういうのは一つずつオーバー・ダビングしていく。そのやり方はクラシックとは違うけど、必ず立ち会うようにしているんだ。
コリン:アンディにはドイツで認定されている“トーン・マイスター”という肩書きがあって、クラシックのオーケストラのレコーディングがちゃんとできるという資格なんだ。一つ一つの音をしっかり録ってそれをオーケストラ全体として成立させる。普通のポップス系の人にはちょっと無理な仕事なんだよね。それができるアンディがいるからこそ、このシンフォニアクスの音作りができて僕らが存在できるんだ。
ーーヴァイオリニスト3人、チェリスト2人、ピアニスト1人、そしてエレクトロアーティスト/コンダクター1人の7人編成なんですが、ヴィオラがいないんですね?ちょっと不思議に思いました。
コリン:いや別にヴィオラに恨みは無いんだよ(笑)。というのは、ヴァイオリン、チェロというのはオーケストラのソロ楽器なんだよね。ソリストを集めるというのがシンフォニアクスの趣旨だったのでこうなっているんだ。
ヨハネス:でも、クリスチャン・キムがヴィオラを弾くよ。僕らにはアンプラグドのコンサートもあって、そこではシューマンやショスタコーヴィチなどの純然たる室内楽もするので、そういうときはクリスチャンがヴィオラを弾くんだ。
ヨハネス・フライシュマン
ーーシンフォニアクスには激しいリズムの曲も多い。クラシック・ミュージシャンにとって、リズムトラックに乗せてインテンポで弾くというのはかなり難しいと思いますが。
ヨハネス:難しいね。普段はイヤモニ(インイヤーモニター)を使ってクリックなどを聞きながら演奏するんだけど、これ自体も慣れないと難しいんだ。それとホールにもよるんだけど、5万人収容のホールで演奏するときは、音が後ろまで行ってステージ側に戻ってくるまでに相当の時差がある。それにプラスして、ドイツのお客さんは手拍子が好きなんだよね。だから、自分の出している音と返ってくる音と手拍子が入り混じって、もう頭が大混乱するんだよ(笑)。
コリン:アレンジによっては曲の途中でクリックを止めてフリーテンポで演奏し、またクリックが始まるなんていうこともあって、それは演奏者の柔軟性がすごく必要になるんだ。でも、電子楽器も僕たちの音楽の一部。一緒になって作り上げているものだから、そこは楽しんでいるよ。
ーーアンディはシンセサイザーのミニ・モーグを使っていますね。クラシック楽器との相性はいかがですか?
コリン:ミニ・モーグって一番ストリングスに近いシンセサイザーなんじゃないかな。ビブラートもかけられるし、音と音の間の音階を出せるポルタメント(※ある音から別の音に移る際に、滑らかに徐々に音程を変えながら移る演奏技法)で演奏もできる。アンディはシンセマニアでたくさんのシンセを持っているんだけど、ミニ・モーグが一番コンサートで使いやすいんだと思う。
左から ヨハネス・フライシュマン、トム・スーハ、コリン・ストークス
ーーコールドプレイやアヴィーチーなどのロックやEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)をクラシック風に演奏することと、クラシックを現代風に演奏することは違いますか?
トム:どんなアレンジでもそうだけど、やっている人の個性が出るよね。僕らの音楽はロックやEDMやポップス、それとクラシックまで本当に幅広い音楽をやるので、心がけているのは“品良くやらなければならない”ということなんだ。且つ両方のエキスパートじゃなければできない。とにかく難しいことだから、双方の音楽に愛情を持って、そしてすべての経験値を注ぎこんで、とにかく練習しまくるしかないんだよね。最終的に優れたものを残そうという気持ちはどちらも同じだよ。
コリン:これはアンディが言っていたことなんだけど、エレクトロのリズム重視と反復という構造に、クラシックの叙情性を持ち込むということを大事にしているらしいよ。逆の場合では、バッハの無伴奏チェロ組曲なんかだと、クラシックの元の曲の資質は活かしつつ、シーケンサーの反復などの性格を持ち込むということ。でも先ほどトムも言っていたけど、ポップス側からのアプローチもクラシック側からのアプローチも目指すところは同じなんだよね。
ーーベルリンでの公演をYouTubeで見ましたが、お客さんが踊りまくっていますね。シンフォニアクスのファンって、ああいう踊りに来る若い人が多いのでしょうか。
ヨハネス:僕たちも最初のコンサートのとき、こういう音楽を聴いてくれるのはどういう人たちなんだろうって思っていたんだ。でも子供から年配の方まで幅広い層が来てくれた。僕たちのファンにはクラシックはもちろん、ジャズやロック、クラブ系の人までいろいろな人がいるんだよね。僕の母はオペラを教えているプロフェッショナルでEDMのコンサートになんか絶対に行かないんだけど、僕らのコンサートには来てくれて、ショーとしての要素があってすごく楽しかったと言ってくれた。クラシック好きな人にはEDMのテイストが新鮮で、逆に馴染みがない人にはピュアなクラシックの要素が楽しめる。そういうショーを作り上げられているのかなと思う。演っている僕らが楽しいので、踊ってくれてもいいし、楽しさが伝わればいいかな。
A Sky Full Of Stars/Coldplay - SYMPHONIACS (violin, cello, piano and electronic version/cover)
ーー最後に、11月の来日公演についての抱負を聞かせてください。
トム:パーティー・パーティー・パーティーだよね!
コリン:日本ではまだアルバムも出ていないけど、ここ6ヶ月くらい皆でスタジオに集まって曲作りをしていたんだ。そこでオリジナル曲もできているので、今度の来日公演ではオリジナルを2曲、世界初披露することになると思うよ。
ヨハネス:VIPチケットがかなり売れていると聞いたんだよね。これには秘密のギフトも付いているので、それも楽しみにしてほしいな。
取材・文=森本智 撮影=山本れお

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