go!go!vanillas 長谷川プリティ敬祐
(Ba)完全復活のツアー初日に見たバ
ンドの核心と未来

THE WORLD TOUR 2019

2019.10.11 Zepp Nagoya
※本文内には演奏曲を記載した箇所があります。

「アンコールありがとう! そんで、改めて言わせてください。帰ってこれました! ただいま!!!」
フロアからの鳴り止まない拍手に応えて、長谷川プリティ敬祐(Ba)が登場。ステージ衣装の短パンを履こうとしたらポケットからピックが出てきて、その時「事故に遭う前の俺もベースが生きがいだった」と実感したこと。入院中にメンバー3人のライブ映像を観た時、ステージに立てない悔しさよりも「次何やるんだろう」と3人の演奏に夢中になる気持ちの方が勝ったのだということ。だからこそ、ライブができない間は半分死んでいるような心地になったこと。そんななか、牧 達弥(Vo,Gt)、ジェットセイヤ(Dr)がプレゼントを手に励ましに来てくれたのが嬉しかったこと――。療養中のエピソードを一つひとつ観客に伝えたプリティは、その最後にクシャッと笑い、「でも今日ここでみんなに音届けられて、みんなの笑顔見れて、やっと生き返れました!」「ただいまー! 俺はここで生きてるぞー!」と叫んでみせた。
ダッシュしてきて勢いよくプリティに飛びついたのは牧。プリティからマイクを奪い、「泣くなー!」と叫んだのはセイヤ。普段は敬語を使いがちな柳沢 進太郎(Gt)は「何で俺のプレゼントのことは言わねえんだよ、結構金出したのにさ(笑)」とフランクな口調で笑っている。4人のgo!go!vanillas、完全復活である。
“プリティが交通事故に遭った”というショッキングなニュースが流れてきたのは昨年末のこと。病院に搬送されたプリティは一時意識不明の重体だったが、数日後に意識を回復。彼が復帰に向けてリハビリに励むなか、バンドは、年末にレコーディングを終えていたニューアルバム『THE WORLD』を5月にリリース。フェスやイベントの出演もキャンセルせず、当初行う予定だったツアーもそのまま開催する決断をした。そんななか、『THE WORLD TOUR 2019』がスタートした5月30日には、プリティの右腕の手術が成功したことを発表。“ツアー後半からの復帰を目指す”というその時点でのアナウンスの通り、後半戦の初日にあたる10月11日(金)Zepp Nagoya公演では、ステージに4人が揃ったのだった。4人でライブを行うのはおよそ10ヶ月ぶりである。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
開演予定時刻を少し過ぎた頃、4人が駆けこんできて、ステージの中央で肩を組む。うわーっと歓声が上がるなか、「この時を待ってた!」「約1年分の想いを今日はみんなに届けさせてくれー!」と牧が叫び、ライブが始まった。メンバーはそれぞれ腕や脚に赤いバンダナを巻いていて、4人は一心同体なのだということが改めて強調されている。このバンダナは物販で売られているグッズのひとつで、バンドと関わりの深いデザイナー・YUGO.がプリティの復活を祝して描き下ろしたイラストがプリントされている。おそらくメンバーの姿を確認したあとにそれを真似たのだろう、フロアには同じバンダナを腕に巻いているオーディエンスも見受けられた。
気合いのライダース姿でライブに臨む牧は、時にはメロディラインをアレンジしながら、心の赴くままに唄っていて、フロアへ投げかける声にも気合いが滲んでいる。柳沢の唄うようなフレージングや、感情のままにアレンジを入れているのにテンポは乱れないセイヤのドラムからも、ツアー前半戦を経ての成長が感じられた。下手から聴こえてくるベースは力強く、プリティ不在時に牧が代わりにやっていた煽りを、久々に本家バージョンで聞けたのも嬉しい。最初の数曲を終え、気になるプリティの第一声は「俺、正直どういう気持ちになるのか想像つかなかったけど、こんなに楽しいと思わなかった!」。滑舌のせいで少々聞き取りづらいのは10ヶ月前と変わらず、後にメンバーからツッコまれることになる。
「プリティ・イズ・バック!」とみんなで声を合わせてから突入した「デッドマンズチェイス」は交替で全員がメインボーカルをとる構成――つまりこの4人が揃わなければライブではどうしても演奏できない曲で、セイヤの革ジャンの背にこの曲のタイトルがペイントされていたのにも強いメッセージを感じる。「“今後こういうことがあるから折れないように”と神様が書かせてくれたのかなと感じた」(牧)と語られた「No.999」は半年前、“3人の生音+同期によるプリティの音”で演奏していた時よりも明らかに爆発力を増していた。「もう(プリティが)帰ってきたから湿っぽいことはなしで、このあと楽しんでいこうと思いますけど、いけますか!?」と牧が切り出してから始めた「パラノーマルワンダーワールド」は、牧がところどころ歌詞を詰まらせ、唄えなくなってしまっている。それでも涙をこぼさぬよう、上を向き、首をブンブン振ってから再びマイクへ向かう姿には、ここまでバンドを引っ張ってきた彼の強さを感じたし、柳沢がステージ前方にひょいと歩み出て、こういう時は自分が牧を支えるのだと言わんばかりに、悠々とソロを弾いていたのも頼もしかった。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
「みんなの声のおかげで俺ら3人も頑張ってこれました。ここから4人になっても超最高のバンドでいるからよろしく! 全員でgo!go!vanillasだ。いけるか!?」
「今日は俺が弱かったけど、いい音楽やって、強くなって、みんなと歳をとりてえな。今日は一緒に唄おう! 最高の歌にしよう!」
音楽とは、ロックンロールとは、嬉しい時も、悲しい時も、大きな声で歌うべきもの。そう信じる者同士が、ライブハウスに集い、互いの声を合わせるこの光景は何よりも美しい。この日は“今聴くとどうしようもなくグッとくる曲”の連続で、メンバーからしても観ている側からしても、感情が抑えられなくなってしまう場面が多数あった。そういうライブをしっかりとできたのは彼らがロックンロールバンドで在り続けたから――言い換えると、これまでのバンド人生で感じたこと・考えたことを、嘘なく、生半可なやり方もせず、全て音楽や言葉に落とし込んできたから――こそである。「バンドとして自分たちの音楽を愛してやれてると思います。なので、今が一番最高だと思う」、「プリティ含めた4人でライブハウスに立ててる喜びを噛み締めながら、ここからのツアーまわっていきたいと思います。これからもバンド人生まだまだ続くから、(今回の)ツアーだけじゃなくてもいい。これからもgo!go!vanillasをどうぞよろしくお願いします!」と牧。go!go!vanillasの旅はこのようにして、ここからまだまだ、続いていくのだ。
さて、今回の記事ではツアーの内容に深く関わる記述は控えたが、その辺りについては後日、他公演のライブレポートにて改めて語らせてもらえればと思う。『THE WORLD TOUR 2019』は12月15日、Zepp Osaka Baysideでの振替公演でファイナルを迎える。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=ハタサトシ

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