新時代のファンクを提示した
ハービー・ハンコックの
『ヘッド・ハンターズ』
ヘッド・ハンターズの
メンバーをヘッドハント
本作『ヘッド・ハンターズ』について
本当は泥臭くて粘液質のファンクが、本作ではスッキリと整理されていて分かりやすいだけに、一般のポピュラー音楽ファンにも支持され、ハンコックとしては初の全米ジャズチャートで1位、総合チャートでも13位と大ヒットとなった。ただ、コアなジャズファンは「ハンコックは日和った」と酷評する者も少なくなかった。しかし、本作が以降のフュージョンに与えた影響は多大で、フュージョンの基本的技術はほぼ網羅(ギターは参加していないので除く)されていると言ってもいいだろう。
収録曲は4曲。長尺のナンバーばかりである。ハンコックの「ウォーターメロン・マン」を再録、デビュー盤に収められたファンキージャズ・スタイルの同曲が、見事に洗練されたファンクへと転身しているので聴き比べてみてほしい。冒頭の15分に及ぶ「カメレオン・マン」はハンコックの多重録音も聴きものだが、ハーヴィ・メイソンのタイトで重いドラムワークが光るナンバー。「スライ」は文字通りスライ・ストーンに捧げられたナンバーで、すでにフュージョン作品として完成されている。途中、テンポアップしてからのメイソンとジャクソンのコンビネーションは恐ろしいまでの完成度である。それに触発されてか、ハンコックも熱の入った素晴らしいプレイを繰り広げている。
本作はファンクを極めようとしたアルバムであり、フュージョンというジャンルを創造した重要なアルバムでもある。この作品がリリースされていなければ、以降のポピュラー音楽の風景は少し変わったものになっていただろう。ハーヴィ・メイソンとポール・ジャクソンが世間に認知されたこと、そして一般のリスナーに、分かりやすいファンクを伝道したということでも大きな意味を持つ作品である。
TEXT:河崎直人