【対談】BAROQUE × ACID ANDROID、
時代と表現と音楽「受け継ぎながら繋
がっていく」

BAROQUE主催2マンライブシリーズ<kiss the sky>の第4弾が10月4日、東京・Shibuya duo MUSIC EXCHANGEにて開催される。これまで、RayflowerGOTCHAROCKAsleepyheadといった面々と2マンを繰り広げてきた同シリーズだが、今回の対バン相手はL'Arc-en-Cielのyukihiroのソロプロジェクト、ACID ANDROIDだ。
ドラマーとしての緻密なプレイやマシンビートとの融合を確立した先鋭的なスタイル。アンビエント的手法や吹き荒れるノイズを縦横無尽に行き交いながら、核を貫くポップ感。yukihiroが作り出す時代の最先端そのものの音楽に、BAROQUEの音楽的中心人物である圭は、いつも刺激を受け続けてきたという。

<2MAN LIVE BAROQUE x ACID ANDROID「kiss the sky IV」>の前哨戦として行われたyukihiroと圭の初対談は、音楽観と音楽的背景が深く語られるロングなトークセッションとなった。お互いの印象はもとより、ルーツ、リズム論、楽器と作曲の関係性などなど、音楽談義が止まらない。さらには、それぞれに選んでもらった“これだけは外せないアルバム5枚”が浮き彫りにしたものは、ふたりの共通点と相違点。最終的には“あるドラマ”の話で初対面とは思えぬほど意気投合する結果となった10000字対談をお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■今までのドラマーとは
■全然違うタイプだと直感した──圭

──こうしてお話するのは今日が初めてだそうで、ライヴを前にお互いをより理解し合えるような対談ができたらと思っています。まずは今回で4回目を迎えるツーマンライヴ<kiss the sky>ですが、BAROQUEがこのシリーズをスタートした経緯から。

圭:BAROQUEの歴史は長いんですけど、今のふたり編成になってからは、まだ4年くらいなんです。この体制になって、音楽性やヴィジョンを再構築した感覚があって。と同時に、それまでは対バンライヴをしたことがあまりなかったんですね。たまにイベントに呼んでもらえたりはすることはあっても、音楽的にクロスオーバーする人たちが見つからないという悩みもあったので。それなら自分たちで、一緒にやってみたい人に声をかけていったらいいんじゃないか、というのが、このツーマンの始まりで、今年からスタートさせました。

──これまで3回、Rayflower、GOTCHAROCKA、Sleepyheadを迎えて主催ツーマンを開催していますが、現在までの感触はどうですか?

圭:2バンドだけのライヴには毎回刺激があります。それぞれのステージもしっかりと観ることのできる尺の長さもありますから。
▲BAROQUE

──yukihiroさん自身もツーマンライヴは多いほうではありませんよね?

yukihiro:ACID ANDROIDはあまりイベントに出ないので、経験は少ないですね。自主企画ではいろんなバンドに出演してもらってるんですけど、こうして声をかけてもらうのは嬉しいです。

圭:最近だとcali≠gariとのツーマン (<cali≠gari 25th Caliversary“1993-2019”終わらない夏の伝説達へ…〜Can’t Stopが止まらない! 8/37 A pool without water “It always seems impossible until it’s done”>2019年9月6日@恵比寿LIQUID ROOM)がありましたよね。それはcali≠gariのほうから誘いがあって出演することになったんですか?

yukihiro:そうですね。誘われてもスケジュールが合わないことが多かったので、こうして9月、10月とツーマンライヴが続くのは珍しいですね。

──とてもいいタイミングで、お誘いすることができたというわけですね?

圭:People In The Boxの(山口)大吾くんは、ACID ANDROIDのサポートドラムであり、僕らのサポートをしてもらうこともあるので、実は彼を通じて様子をうかがっていたんです(笑)。「yukihiroさんにライヴのお誘いをしても大丈夫ですかね?」って。そうしたら、「言うだけなら全然いいんじゃない」ってことだったので。「であれば、ぜひ」と勇気を出してマネージャー経由でオファーさせてもらったんです。でも、まさかこうして本当に対バンしていただけるとは思っていなかったので、受けていただけたときは嬉しかったですね。

──改めて、圭さんはyukihiroさんについて、またACID ANDROIDというバンドについてどんな印象を持っていますか?

圭:もちろん、子どもの頃からずっと見ていました。yukihiroさんが作る曲はインダストリアルだったり、ビートが緻密。初めて見たときは今までのドラマーとは全然違うタイプだなと直感したんです。僕自身、yukihiroさんが作る音の世界観が好きなんですよ。

──yukihiroさんはBAROQUEにどんな印象がありますか。

yukihiro:上品。

圭:そうなんですか!?

yukihiro:出てくる音が上品だなと思いましたね。曲の雰囲気とかも。

──背景的に近いものがあるとか、バックボーンのイメージとか、音楽的なところで感じるものもありますか?

yukihiro:世代は違いますけど、僕が聴いてきたような音楽を聴いているのかなと感じる部分もあります。それぞれ世代や背景が違えば、表現しようとするものは変わるのかもしれないけど、音楽は影響を受け継ぎながら繋がっていくものだと思うんです。だから、実は聴いている音楽に、そんなに差がないんじゃないかなと思っていますね。
▲<acid android live 2016 #3 「acid android in an alcove vol.8×THE NOVEMBERS PRESENTS 首」> 2016年8月11日@川崎CLUB CITTA'【Depeche Mode cover special session】

──圭さんは実際、どういう音楽がルーツとなっているんですか。

圭:今、yukihiroさんがおっしゃったように、リアルタイムではL'Arc-en-Cielをはじめとする1990年代の音楽を聴いてきて、今度はそういうミュージシャンがどんな音楽を聴いていたのかを掘っていったりしたので、“繫がっていく”というものは大いにあると思います。そういう音楽を遡っていくのが好きなタイプだったので。たとえば、ニューウェーヴというジャンルやデペッシュモードはyukihiroさんがフェイバリットに挙げていたことで知ったり。あと、僕が16歳の頃にレディオヘッドの『KID A』がリリースされたんですけど、それにすごく衝撃を受けてテクノが好きになっていったんです。改めてyukihiroさんが作った曲とかを聴いたとき、“なるほど、そういうことなのか!”っていろんな音楽の繋がりや背景がわかったりもしましたから。

──『KID A』が10代の頃だったというのは、かなりの刺激になりそうですね。

圭:そういう意味でも、いつもyukihiroさんたちの世代に憧れるんです。いろいろな音楽が溢れていた感じがあるじゃないですか。

yukihiro:そうだね。

圭:メタルもあればYMOみたいなテクノもあるし、ニューウェーヴもあって。その世代が作るものって面白かったというか。いい部分をみんなが吸収してやっていた感じがあるので、羨ましいなと感じているんです。
■音楽のジャンルというか種類は
■リズムで決まるんじゃないかって──yukihiro

──1980年代や1990年代は、新しい音楽とか新しいムーブメントが生まれていた時代でもありました。ご自身が音楽を作る上で、クリエイティヴなことをしようとか、新しいことを実戦してみようという気持ちは、yukihiroさん自身にも強くありましたか?

yukihiro:自分の音楽体験で、恵まれているなと感じるのは、いろんな音楽が出てきては廃れてというのを見てきていることです。リアルタイムで新しい音楽が出てきたから、それを体験できたと思うんですね。

圭:そうですよね。

yukihiro:機材が進化すれば、それに伴って音楽ができたり。たとえば、ターンテーブル2台で音楽を作り出したりとか。そういうことをリアルタイムで見ることができたということ自体、世代として得してるんだろうなと思います。新しい音楽を探すことは、テクノロジーの関係上、現代より難しい時代ではあったと思うんですけど、それが楽しかったんです。だから情報を探し歩いていたという感覚ですよね。
▲ACID ANDROID

圭:音楽を聴くこと自体も好きだったんですか?

yukihiro:大好きでしたね。毎日レコード屋さんに通ってました。

圭:何か新しいものを見つけようと?

yukihiro:そう。でも店員さんに話しかけるのが苦手で(笑)。多分、“この人、ずーっといるな”って思われていたと思う。お店でかかっている音楽ってアルバムだと大体30〜40分くらいじゃないですか。で、聴いていて“これはイマイチだな”と思ったら、一回お店を出て、次のアルバムがかかるだろう1時間後くらいにまた戻ってみたりとか(笑)。ただ、「今かかっているアルバムは誰のですか?」って店員さんに聴くのが苦手だったので、“現在流しているアルバムはこれ”って掲示しているお店に足繁く通っていましたね。

圭:その情熱がすごい。今だったら、流れている音楽がアプリですぐに検索できるし……そう考えると、逆につまらないですね(笑)。

──つまらないですか(笑)?

圭:すぐ分かっちゃうのって、発掘しがいがないじゃないですか。話は飛びますが、yukihiroさんはドラマーですけど、ブレイクビーツとか、いわゆるドラムマシーン的なアプローチを昔からやっているじゃないですか。ドラマーの人って生の音にこだわるというか、デジタルなものに理解がある人が少ない気がしていたんですけど、最初から違和感はなかったんですか?

yukihiro:僕は、そういう音楽がカッコいいと思ったんですよね。例えば、打ち込みの音楽を聴いていても、“ここで生ドラムが加わったほうがカッコいい音楽ができるんじゃないかな?”とイメージしたりしてました。

圭:もともとそういう発想をお持ちだったんですね。

yukihiro:それを自分でやってみようと思ったことが、きっかけなんです。
▲圭 (BAROQUE)

──ふたりとも作曲をするので、音への着眼点というのは気になるところです。どういうところを意識して楽曲を作っていきますか?

yukihiro:リズム周りはもちろんですけど、一時期、音楽のジャンルというか種類はリズムで決まるんじゃないかと感じてました。今もそこは意識しますね。こういう音色にしたら、音楽を聴く人はこういうジャンルだっていうことを想像するんじゃないかなとか。このテンポで四分打ちだったらこういうジャンルって思うかなとか。ちょっと粗い音だったら、ブリストル系とかヒップホップの影響とかを感じるかなとか。

──そこでミスマッチな食い合わせにして遊ぶようなこともあるんですか?

yukihiro:出来上がったものがカッコよければいいと思うので、そこもやりながらですよね。クロスオーバーすることで新しいものも生まれると思いますし。

圭:確かにダンスミュージックとかは、BPMでジャンルが決まるところもありますね。

yukihiro:以前だったら、テクノはBPM140くらいないとって感じだったけど、今は130とか120くらいでもアッパーな雰囲気になる。音色の変化もあって、テンポが上ったり落ちたり、というのは結構ありますよね。

圭:テクノも1990年代初頭くらいが好きだったんですか?

yukihiro:レイヴの盛り上がりがあって、ブレイクビーツが出てきて、四分打ちもどんどんアッパーになって、アンダーワールドみたいなアーティストが出てきて、ロックに接近してきたところもあるじゃないですか。逆にロックがそっちに寄っていったのかもしれないですけど。どんどんジャンルの境界が近くなって、いろんな人が手を出しやすくなる。ただ、そうなると終わるっていう気もします(笑)。そういう繰り返しでもあると思いますけどね。

圭:そうですね。僕はちょうど今、古いテクノをいっぱい聴いているんです。今日は9月9日だから“909の日”ですけど、ローランドのTR909とかリズムマシーンが出ると、その音色からいろんな音楽が生まれたり。yukihiroさんがおっしゃったように、こういう機材があったから、こういう音楽ジャンルが生まれたというのも面白いなと思うんです。
■Macが出てきた時が
■いちばん衝撃でしたね──yukihiro

──機材好きなところもおふたりに共通していると思うのですが、普段の楽曲制作は、現在はPC上でやることが多いんですか?

圭:最近はそうですね。でもリズムマシーンも好きなので入手して使ったりもしていましたよ。ただ、シールドをつなぎ変えたりするのが大変なので、今は、それら機材の音を全部PCに録って活用しています(笑)。

──圭さんの世代でも、すでに自分が曲を作りはじめた頃とは、使用する機材や作り方もだいぶ変化しているのでは?

圭:違いますね。僕は10代の終わりくらいで初めてMacを買って。そこで初めて“パソコンで音楽を作る”ことができるようになったんです。その前はMTRでしたからね。yukihiroさんは、昔、打ち込みとかは何でやっていたんですか?
▲ローランドMC-500MK II

yukihiro:最初は、ローランドのMC-500MK IIという片側にテンキーがあって、レジみたいな形をしたシーケンサーなんですけど、それで始めましたね。

圭:それって何か音源が入ってるんですか?

yukihiro:シーケンサー機能しかないもので、MC-500MK IIでサンプラーを鳴らすという感じでしたね。だから、ひたすらテンキーで数値を打ち込むんですよ。音符の長さも音程も数字。当時、そういうことをやっている人たちとは数字の会話をしていた感じでした。

圭:それって、慣れるまでめちゃくちゃ大変じゃないですか?

yukihiro:最初は数値を紙に書き起こしたりしてましたね。その頃はまだ、写真に撮っておくことも簡単じゃなかったので(笑)。撮ったら現像しに行かないといけない時代だったから。でもアナログシンセとかもそうでしたよ。

圭:確かに、設定を保存できないですもんね。

yukihiro:写真を撮るにしても、シンセを4分割して撮って、それを貼り合わせた一枚のシートを見ながら設定を再現して同じ音を出そうとするんだけど。でも絶対同じ音にはならない(笑)。

──シーケンスが出てきたときは衝撃でしたか?

yukihiro:僕はMacが出てきた時がいちばん衝撃でしたね。“すごい! 画面があるよ”って(笑)。

──MC-500MK IIの表示画面は、とても画面と呼べるサイズではないですもんね。

yukihiro:Macも最初は白黒画面でしたけど、それがカラーになったときは、RECボタンが赤く表示されるわけですよ。それだけで“今、レコーディングしてるのがわかる!”というくらいの衝撃を受けました(笑)。

圭:Macの画面が白黒だったのって、いつぐらいですか?

yukihiro:1990年代初頭かな。

圭:ということは、yukihiroさんがMacを導入したのって相当早いですよね。

yukihiro:僕が初めて買ったのは、IIci(1989年9月末発売)という機種でした。
▲ACID ANDROID

圭:当時から打ち込み用のソフトがあったんですか?

yukihiro:Performerを使ってた。IIciの頃に、最初のPro toolsができたんだけどサンプラー程度のものでしたね。そういう変遷も経験してきました。

圭:当時からPCを使っていたっていうのは、ミュージシャンの中でも早かったんじゃないですか?

yukihiro:そういうのを好きなエンジニアさんの横にいられたのは大きかったですね。その人が新しいもの好きだったから、いろんなものが集まってきたんですよ。メーカーもその人にテストしてもらうとか。それでいろいろなものを触ることができたんです。

圭:今は、めちゃくちゃ便利になったじゃないですか。コンピューター1台で完結できますよね。でも、逆に失われたものってあると思いますか?

yukihiro:うーん、それは多分あんまりないと思う。その人の感じ方じゃないかな。昔、ハードウェアを積んでいた人も、今はコンピューター1台でやっちゃうよっていう人もいるし。それがその人にとって、今の自分の音楽に対する正解なんだと思う。僕はいまだにハードウェアが好きだから、ハードウェアを使ってるけど、だからといってMac1台でやっちゃう人に対して、失ったものがあるとは思わない。やりたいことに対して沿っているのであればいいんじゃないかな。

圭:そうなんですね。

──圭さんが最初にPCを導入した時は、“作曲の可能性が広がったぞ”という感触がありましたか?

圭:サンプリングみたいなこともMacがスタートだったので。ブレイクビーツを作ることとかも、そこで初めてできるようになった感じでしたね。ただ、ないものねだりの憧れはあるんですよ。今でもハードウェアのサンプラーを使っている人がいっぱいいるじゃないですか。ハードウェアの音の良さや存在感も確実にあって、そこを通ってきてないからこそ知りたいっていうのはあるんです。

──なるほど。黎明期への憧れというか。

圭:世代なのか、やっぱりPCの方が早いなって、戻ってしまったりはするんですけどね。ちょっと観点が変わっちゃいますけど、今はPC上で音楽を作れるから、一流のスタジオを経験したことはないけど、プロミュージシャンとして活動している人もたくさんいるじゃないですか。でも、知らないのは損しかないんじゃないかなって思うんです。さっきyukihiroさんがおっしゃったみたいに、自分のスタイルで選んでいくことって大事だと思うんですね。でも、それを知って選んでいる人と、最初から選べない人とでは違うと思うんです。なるべく、一回自分で体験したり、本物の音を聴いて選びたいと思ってるんですよね。
■今日選んだ5枚は自分がブレたら
■聴いて正すような作品──yukihiro

──すでに音楽的ないろいろなお話も出ましたけど、さらにお互いの背景を知る上で、今日はそれぞれ5枚の作品を選んできてもらいました。yukihiroさんがセレクトしたのは、ジャパン『Tin Drum』(1981年リリース)、デペッシュ・モード『Violator』(1990年リリース)、ナイン・インチ・ネイルズ『The Downword Spiral』(1994年リリース)、マッシヴ・アタック『Blue Lines』(1991年リリース)、レディオヘッド『OK Computer』(1997年リリース)の5枚です。これはどんなテーマで選んだものですか。

yukihiro:CDを5枚持ってきてくれと言われていたので、家を出る10分前くらいにCD棚の前に立って、バーっと見て選んだ5枚なんですけど(笑)。あえていうならば、常に聴いているもの、何か始めようという時は必ず聴くアルバムですね。
▲JAPAN『Tin Drum』

──では、まずジャパンから。

yukihiro:洋楽に興味を持ったきっかけというか、自分で初めて買った洋楽のアーティストがジャパンなんです。土屋昌巳さんのツアー参加などもあって存在を知りました。外せないアルバムですね。

圭:『Tin Drum』はリアルタイムで聴いていたんですか?

yukihiro:バンドを知ったときにはもう解散が決まっていて、土屋さんがツアーに参加している時だったので。アルバムとしてリアルタイムだったのはライヴアルバム『Oil On Canvas』(1983年リリース)ですね。

圭:あれはヤバイですよね。

yukihiro:だから、ジャパンは遡って聴いていました。デペッシュ・モードはリアルタイムです。
▲Depeche Mode『Violator』
▲NINE INCH NAILS『The Downword Spiral』

──デペッシュ・モードを聴いた当時、新しさを感じたんですか?

yukihiro:最初はちょっとわからなかったんですね。テクノポップというものに馴染みがなくて。存在はデビューした時から知っていたんですけど、段々とテクノとかに興味を持ち出して『Violator』でハマりました。

──ナイン・インチ・ネイルズの『The Downword Spiral』は2ndアルバムですね。

yukihiro:彼らの前にミニストリーの存在が僕の中にあって、その頃は“ミニストリーがいなければナイン・インチ・ネイルズはいないんじゃないか”っていう考え方だったので、ここに多分ミニストリーを感じてたと思うんですけど。でも、改めてトレント・レズナーがやってきたことや、今もやっていることを見ると、ミュージシャンとしてのあり方としてカッコいいなと思います。

──音楽的な部分もスタイル的な部分も。

yukihiro:あとは、トレント・レズナーの背景に自分とちょっと近いものがあるかもなって思えたりするんです。ニューウェーヴとかもトレント・レズナーの根底にはあると思うんですよ。ミニストリーも実はそうですけどね。
Radiohead『OK Computer』
MASSIVE ATTAC『Blue Lines』

──ミュージシャンとしてのあり方ということでは、レディオヘッドもそういう理由が大きそうですね。

yukihiro:僕の見解ですけど、『OK Computer』というアルバムがなかったら、ロックが変わってただろうなと思うんです。「Creep」で世界的に注目されて、『The Bends』というギターロックの傑作を作ったバンドがこのアルバムを作ったというのは、ロック史の何かが変わったような、自分の中でもそんな音がしましたね。今でも何かにつけて聴いちゃいますから。

──マッシヴ・アタックはどうですか。

yukihiro:ブリストルミュージックというジャンルを作った人たち。当時はトリップホップと呼ばれていたサウンド、その1枚目ですね。クラブシーンがこんなダウナーな音楽で盛り上がるっていうのが、最高だなって思いましたよ(笑)。今日選んだ5枚は、何かにつけて聴いている作品ですね。引き戻される感じというか、自分がブレたら聴いて正すような感じもあります。
■yukihiroさんの遺伝子を僕ら自身から
■感じてもらえるライヴができたら──圭

──一方の圭さんは、レディオヘッド『KID A』(2000年リリース)、ビョークの『POST』(1995年リリース)と『Vespertine』(2001年リリース)、ボーズ・オブ・カナダ『Music Has The Right to Children』(1998年リリース)、U2『How to Dismantle an Atomic Bomb』(2004年リリース)、ピンク・フロイド『The Dark Side Of The Moon』(1973年リリース)の6枚です。こちらはどんなテーマでセレクトしましたか?
圭:自分のルーツだと思うものですね。
▲U2『How to Dismantle an Atomic Bomb』
▲Radiohead『KID A』

──U2は意外だなと思いました。

圭:U2は子供の頃から知っていたんですけど。どちらかというと『The Joshua Tree』(1987年リリース)とか初期の作品が有名で、みんなロック入門編みたいな感じで聴くと思うんです。でも、子供の時にその辺りを聴いた僕はあまりピンとこなくて。20歳くらいの時に、たまたまイギリスに旅行に行ったんですけど、その時に『How to Dismantle an Atomic Bomb』を聴いたらすごくよくて。それで聴くようになりましたね。

──ギタリストとしても?

圭:U2は、特にエッジのギターに影響を受けました。

──yukihiroさんと同じレディオヘッドですが、圭さんが選んだのは『KID A』。

圭:レディオヘッドは『OK Computer』と『The Bends』も好きなんですけど、衝撃を受けたという意味では『KID A』だったかな。ただ、いちばん好きなアルバムということでは『OK Computer』かもしれない(笑)。『KID A』は音楽体験として、“なんだこれ!?”っていう感じでしたね。17歳くらいのときに聴いた当時、最初は意味がわからなかったですけど、これがテクノが好きになるきっかけにもなりました。
Bjork『POST』
▲Boards Of Canada『Music Has The Right to Children』

──そしてビョークは2作で悩んでいるようですね?

圭:世代的には『Vespertine』ですけど、『POST』のほうが好きかな……。常に新しいことをやっていて、たまに“これはわからないな”って思うこともあるんですけど(笑)。

yukihiro:(笑)。

圭:でも最新アルバム『Utopia』もカッコよかったし、ビョークの作品で知るアーティストもいますしね。最近だとARCAとかもそうで、狂ってるなと思いますし。

──ボーズ・オブ・カナダはどんなところがポイントですか?

圭:これはローファイでアンビエントっぽい感じで、そういう音響的で空間的なものとか、白昼夢的なものが好きなんです。サンプリング主体なんですけど、曲を作る時にこれを思い出したりすることが多いんですよね。すごくローファイにしたシンセとか。あ、あとシガーロスを入れ忘れてるな。シガーロスのアルバム『()』(2002年リリース)はリアルタイムで影響を受けましたね。BAROQUEのライヴの感じとか、やりたい雰囲気は近いかもしれないです。
▲PINK FLOYD『The Dark Side Of The Moon』

──そしてプログレッシヴロックのピンク・フロイド『The Dark Side Of The Moon』。

圭:これはギターの影響も大きいし、あとはアーティスト性ですね。アートワークもそうだし、いろんなことにチャレンジしていたりとか。空間とか景色が見える音像が好きなんです。今聴いても発見があるアルバムですね。

──それぞれのルーツもわかるし、共通点を感じるところもある計10枚+αのセレクトになりましたね。

圭:はい。yukihiroさん、シンセ好きなんですか?

yukihiro:ハードウェアのシンセが大好きで、最近も買っちゃってます。

圭:古いアナログシンセですか?
▲Prophet-5

yukihiro:古いのも新しいのもですね。最近、プロフェット5を買って。

圭:マジですか! いいなあ。

yukihiro:プロフェット6は持っていて。それを触ってたら、本物が欲しいっていうか、5も欲しいなと思っちゃって。

圭:僕はプロフェット'08を持っているんですけど、5には憧れますね。それこそ『Tin Drum』の頃ってプロフェット5ですよね。

yukihiro:ジャパンと言えばだし、坂本龍一さんはもちろんですけど、当時の代表的なシンセだよね。

圭:シンセはロマンがありますよね。暇がある時、シンセの動画ばっかり見てるんですよ。Netflixの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』ってドラマあるじゃないですか。あのサントラが好きで。
yukihiro:最高だよね(笑)。

圭:シンセ好きはときめきますよね。

yukihiro:どちらかというと、ドラマよりも音楽が先にきちゃったから。それで観ようかなって思って、見始めたらハマりました。

圭:まったく同じです(笑)。古いシンセの音がいいですよね。

yukihiro:シーズン4が待ち遠しい(笑)。

──では、本題に戻って。10月4日のツーマンライヴ<2MAN LIVE BAROQUE x ACID ANDROID「kiss the sky IV」>が待ち遠しくなってきました。

圭:自分的には、単純に楽しみでしかないんですけど、僕らからしたら音楽の遺伝子のひとつになっているルーツの方なので、その方が作る世界観をお客さんに見てもらえるし、僕ら自身からyukihiroさんの遺伝子を感じてもらえるライヴができたら嬉しいですね。

yukihiro:頑張ります。

取材・文◎吉羽さおり
■<2MAN LIVE BAROQUE x ACID ANDROID「kiss the sky IV」>

10月4日(金) 東京・Shibuya duo MUSIC EXCHANGE
open18:00 / start18:30
▼チケット
・1階スタンディング ¥6,300(tax in) ※ドリンク代別
・1階&2階 指定席 ※SOLD OUT
イープラス https://eplus.jp/kissthesky4/
チケットぴあ 0570-02-9999 (Pコード:161-706) http://w.pia.jp/t/kissthesky4/
・ローソンチケット 0570-084-003 (Lコード:74952) https://l-tike.com/kissthesky4/
(問)NEXTROAD 03-5114-7444(平日14:00~18:00)
【BAROQUE LIVE MEMBERS】
BAROQUE:Vocal 怜 / Guitar 圭
Support Members
・Bass 高松浩史(THE NOVEMBERS)
・Drums KENZO(彩冷える、gremlins)
・Key&Manipulator佐久間薫
■BAROQUE全国ツアー<THE BIRTH OF LIBERTY>

※終了している公演は割愛
10月13日(日) 埼玉・西川口Hearts
10月19日(土) 愛知・名古屋SPADE BOX
10月22日(火/祝) 宮城・仙台darwin
10月26日(土) 岡山・IMAGE
10月27日(日) 静岡・浜松窓枠
11月10日(日) 千葉・柏PALOOZA
11月16日(土) 静岡・SUNASH
11月17日(日) 京都・KYOTO MUSE
11月23日(土) 東京・町田プレイハウス
12月08日(日) 埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
12月14日(土) 石川・金沢GOLD CREEK
12月15日(日) 長野・LIVE HOUSE J
12月22日(日) 大阪・ESAKA MUSE
<THE BIRTH OF LIBERTY -FINAL->
2020年1月10日(金) 神奈川・ハーモニーホール座間 (大ホール)
to be announced…
▼チケット
スタンディング ¥5,400 ※ドリンク別
・イープラス https://eplus.jp/baroque/
・チケットぴあ https://w.pia.jp/t/baroque19/
・ローソンチケット https://l-tike.com/baroque19/


■<ACID ANDROID LIVE 2019 #2>

11月03日(日) F.A.D YOKOHAMA
open17:30 / start18:00
(問)クリエイティブマン 03-3499-6669
11月07日(木) 名古屋UPSET
open19:00 / start19:30
(問)ジェイルハウス 052-936-6041
11月08日(金) 大阪バナナホール
open19:30 / start20:00
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888
11月10日(日) HEAVEN'S ROCK 熊谷
open17:30 / start18:00
(問)クリエイティブマン 03-3499-6669
▼チケット
ALL STANDING ¥5,500 (TAX IN/D代別)
一般発売日:10月5日(土)10:00-
※営利目的の転売禁止 ※未就学児入場不可

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