【対談連載】ASH DA HEROの“TALKIN
G BLUES” 番外編 ゲスト:nishi-ke
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ASH DA HEROをホスト役に、毎回ゲストを迎えてトークセッションを繰り広げる対談連載が、“TALKING BLUES”だ。あるときは同じミュージシャン目線で、またあるときは異ジャンルに斬り込む対談企画であり、これまでL'Arc-en-CielのHYDEやKen、MICHAELの松岡充といった大先輩や、気鋭ギタリストDURANやJUONなど数々のアーティストを迎え、会話で深く熱くセッションしてきた。
番外編として行われる今回は、新作レコーディング中の都内某スタジオにて、プロデューサーのnishi-kenを迎えてお届けする。曰く、「新しいASH DA HEROを」というコンセプトのもとに選出されたプロデューサーがnishi-kenだ。プロデューサー、コンポーザー、アレンジャー、トラックメイカー、そしてキーボードプレイヤーとして活動中の同氏は、GReeeeNケツメイシ、HYDEやマオ from SID、宇都宮隆ミオヤマザキなど、名だたるアーティストの作品やツアーに関わってきた辣腕の持ち主でもある。

9月末より3ヵ月にわたって東名阪マンスリーライヴ<ASH DA HERO LIVE TOUR 2019「GOD SAVE THE ROCK AND ROLL II」>を開催、各ライヴ会場にて限定シングルをリリースすることが発表されているASH DA HEROと、そのプロデュースを務めたnishi-kenに訊いたインタビューでは、大きな変化を迎えようとしているASHサウンドが浮き彫りとなった。

   ◆   ◆   ◆

■“こう歌ってくれ”って音源から
■引き出されていった──ASH DA HERO

──新しい音源のプロデューサーにnishi-kenさんを迎えたわけですが、どういったきっかけでnishi-kenさんのことを知ったんですか?

ASH:nishi-kenさんと関わりのある作曲家さんとかアレンジャーさんとか、実は共通の知り合いがいるんです。だから”nishi-ken”の名前は、僕がASH DA HEROを始める前から知っていて、いつかご一緒したいなと思っていたんです。で、今年に入ってから自分の中で静かなる挑戦をいろいろ始めているんですけど、元号も変わったし、新しくしようというところで、一緒にやりたいプロデューサーという話になったとき、nishi-kenさんとやれないかな、と事務所に相談して。それで実現することになりました。
▲ASH DA HERO

nishi-ken:僕は、ASH DA HEROという名前が世に出たタイミングから知ってましたね。まず、名前がカッコいい。そして、なんという個性的な声の持ち主だろう、と。それにヴィジュアルもカッコいい。すごいロックシンガーが出てきたなと思って。

ASH:わっ、嬉しい(笑)。

nishi-ken:会って話してみたら、実は共通の知り合いもいたりして。このタイミングでご一緒させていただいたのは、ご縁そのものだなと思って。もちろん、いろんな方がつないでくださったんですけど。

──今回の制作が始まるとき、最初にASHから原曲デモなどを渡されたんですか?

nishi-ken:そうですね。まずASH君からデモが3曲届いて、どういう方向性を求めているかとか、歌詞についてのテーマとか、細かく曲ごとに提示もしていただいて。それを僕の中で解釈しつつ、僕が関わることで、どういうふうに今までの流れを変えられるのか、とか。最初はけっこう頭の中で作業をしていましたね。

──イメージを膨らませながら?

nishi-ken:そう、イメージトレーニングというか。いつもそうなんですけど、僕は実際に作業に取り掛かるまでが時間掛かるんですよ。頭の中でピーン!とチューニングが合ったときに、音を出してみようかなっていうスタイルなので。3曲聴いた中で「Starting Now」が、一番チューニングが合って、これかなと思ったんです。3曲の中でも最も勢いを感じて、この「Starting Now」をまず着地させて、他の2曲はその連鎖反応でプロデュースしていくのがいいのかなと。だから「Starting Now」に関しては、けっこう時間を掛けましたね。「Gatekeeper」と「未完成ストーリー」は、「Starting Now」を軸に仕上げた感じで。
▲nishi-ken

──頭でイメージする中で、いくつかのプロデュースワークも思い浮かんだと思うんです。実際に形にしなかったものの、頭にあった別バージョンとして、どんなものがありました?

nishi-ken:バンドのシンガーだと、そのバンドの音やスタイルも関係してくるじゃないですか。でもソロシンガーは、可能性としてものすごく幅広いジャンルを歌える存在だと思っているんですよ。例えば、リズム隊の音色を全てデジタルに寄せるとか、要はクラブやダンスというベーシックなところにロックを乗せるという。それは僕が基本的に得意としているところで、「Starting Now」にもありかな……と思ったんですよ。でも今の世の中をバッと見渡したとき、ロックサウンドで攻めるボーカリストが一番カッコいいと僕の中で思っているんです。生のサウンドで、ライブにも通じる音で、音源からステージも見えるぐらいの。音源が見せてくれるヴィジョンを大事にしたほうがいいのかなと考えたんです。

──その時点でデジタル路線はボツに?

nishi-ken:はい、その考えを止めました。

ASH:一度、ラフ案が上がってきたとき、いい意味ですごく意外だった。nishi-kenさんのサウンドを、あらかじめ何となく想像していたから。デジタルな方向に寄せて、そこにロックサウンドやロックボーカルが縦横無尽に駆け抜けるみたいなことをイメージしていたんです。でも、そこを逆に超えてきたというか。洗練されたロックサウンドが、ラフで上がってきたので。意外であり、驚きであり、新しい肥やしにもなったというか。究極の引き算をnishi-kenさんに教わった感じ。
▲ASH DA HERO × nishi-ken

──ラフミックスを聴かせていただきましたが、すごく生々しいバンドサウンドが溢れていますね。レコーディングの参加ミュージシャンの選択も、nishi-kenさんが?

nishi-ken:いや、今回、インストゥルメンタル(楽器)は、全部僕です。ドラムとベースは打ち込みで。要は自分好みに音色を全てセレクトできるんですね。トータルサウンドプロデュースって、こういうことかなと。もちろんミュージシャンをセレクトして録るっていう、ミュージシャン参加型のレコーディングもあるんですけど、今回は個人完結のやり方。そういうところでのマインドはクラブミュージックに近いんですね。ASH君の曲をトータル的にどう仕上げたいのかってことを、僕のみでやっている感じ。だからこそ、こだわりも強く出ているし。なによりも統一感を出せるんです。今回の3曲とも、実は共通した音色を使っているんです。同じシンセブラスの音色を3曲とも使っています。ドラムの音色も、ベースの音色も、全部同じもの。それも統一感を出すためなんです。そうした中で、何が曲ごと違うように聴かせるか。それはメロディと歌詞なんです。一聴して、ASH君の声が優勢に立てるポジションにしていったという。

ASH:今、お話をうかがって、確かにそこだなと改めて思いましたね。聴感上の歌はもちろん、歌にあるマインド的な部分が、前にいる。演奏はいい意味で主張しすぎてないっていう。nishi-kenさんが全てのインストゥルメンタルを演奏していることで、この隙間に歌をこういう感じで入れてほしいんだろうなってのが、ほんとに見えやすいアレンジだったんですよ。こう歌ってくれって、音源のオケから導かれて、引き出されていった感じだったんです。
■一瞬の驚きが人の心を掴む
■この曲の場合はどこだ?って考える──nishi-ken

──ボーカルのメロディ、ボーカルアレンジにも、nishi-kenさんは様々なアイデアをインプットしていったんですか?

nishi-ken:メロディはASH君から湧き出てきた良いメロディーだったので、聴いた感じ、変える必要は無いなと思ったんですけど、ただ、歌いまわしによって変化を付けることはありました。それにあたって、ASH君の持っている声質を、どういうパターンで聴かせてあげられるか、ということだったと思うんです。今回、すごく高音で張っていて、まるで槍のような声で、聴いている人は気持ちいいだろうし、スカッとするだろうし。そのボーカルが主軸にありながら、一方でASH君の持っているスウィーティなところ、セクシーさをどう出すか。だからコーラスワークも頑張ったよね?

ASH:いや〜、頑張りました(笑)。
▲nishi-ken

nishi-ken:ちょっとブラックミュージックの匂いもする音階の降り方とか、コーラスのメロディに織り交ぜたりして。そういうところで、今までにないボーカルアレンジを組み込めたかなと思っているんです。

ASH:コーラス、楽しかったですね。デモを作る段階からコーラスやハーモニーを重ねて、1枚の絵を描くようにアレンジすることも多くて。でも自分でコーラスを作っていくと、ある種の手癖が出るんですよ。ここでマイナーメロディに行くとか、こっちではメジャーとか、自分のパターンみたいなものがある。でも今回、そこでこう来るのか? このメロディはなに?って(笑)。レコーディングでメインボーカルを録った後、「ハモを録ろうか。ASH君、これを歌える?」って、nishi-kenさんがコントロールルームの鍵盤で弾いたメロディを、その場で僕が歌ってハーモニーを積み上げていったんです。ヒリヒリするし、緊張もするし。でも、それに勝るワクワク! ここから積み上げたら、どうなるんだろうって。そして歌い終えて聴いてみると、nishi-kenさんも「ほらね!」って。

──まるでセッションワークのようなコーラスレコーディングですか?

ASH:ほんとにセッションワークでしたよ。新しいASH DA HEROを、そこでまた作ってもらった感じがあります。嬉しかったし、楽しかったし。
▲ASH DA HERO

──「未完成ストーリー」はコーラスワークがいろいろ詰まってますね?

nishi-ken:そうですね、特に後半のAメロとか。

ASH:でもね、僕のデモのほうが、ハモやコーラスは多かったんですよ、この曲。それをnishi-kenさんは間引いてくれた。「ここは十分だと思う、このほうがいいよ」とか。

──ASHのスウィーティな歌いまわしを、さらに活かすために?

ASH:そう。そこを出すためにはコーラスはこうしたほうがいいとか。それに“何々はどうした”って歌詞があったとしたら、「接続詞の“は”って部分。そこだけこう歌って」と言われて、“は”だけを何10回録ったか(笑)。こうでもないのか? どうなんだ、これも違うのか?……「おっ、来た!」っていう。

nishi-ken:これは僕の持論なんですけど、アーティストのことをもう一歩踏み込んで“良いなと思う”っていうのは、瞬間で決まると思うんです。トータル4分ある曲だとしたら、4分間聴いて“いいな”って思うことは当然あるじゃないですか。でも、聴いている最中に「ウワッ!」という一瞬があったら、“いいな”っていうのがさらに増幅されるんです。そういうポイントが、ほんのちょっとしたワンワードにあると思うんですよ。一目惚れする瞬間に近いというか。一瞬の驚きが、人の心をわりと掴む。その掴む部分を、歌詞を読んで、この曲の場合はどこだ?って考えるんです。
▲ASH DA HERO × nishi-ken

──なるほど。

nishi-ken:だからこそ歌い方とか声のしゃくり方とか、「違うんだ」とか「もっと」とか。この一瞬で人は好きになるんだよってことを、その場でASH君には言わなかったけども、何度も何度もトライしてもらって。ASH君は何度も歌いながら、多分、間合いを取っていたと思うんですよ。で、歌ってみようかとなったときに、やっぱりキタよって。この間合いの取り方は良かったねって話もしましたし。声ってやっぱり瞬間的に自分の思ってもいない歌い方が出たりするもので、しかも、そういうのが良かったりする。だから待つしかない。

ASH:自分のキャリアの中で、一発目に歌ったものを採用することが多かったんですよ。でも、今回は歌にめっちゃ時間を掛けて録りましたね。自分でもそういうことをしたいと思っていたし。ただ、nishi-kenさんは答えを言わないんで。ブースの中で何回も録りながら試すわけですよ。そうすると「来た!」って声が聴こえる(笑)。10時間ぐらい歌いっぱなしでしたよね?

nishi-ken:そうだね、初日はそれぐらい。

ASH:休憩もはさみましたけど、ずっと歌ってましたね。

──でも鍛えられるし、新しい部分を引き出されるし、それが刺激的だし?

ASH:そうそう。それに、その状況自体が自分のブルースになっていく。“これ正解じゃない? どれなの、正解は?”って沸々と湧き上がってくる気持ちがあるんですよ、やっぱり。怒りでもないし、苛立ちでもない。“オマエはできるだろ”って自分に対する葛藤が膨らんでいくと、1テイク目や2テイク目よりもエモーションやブルースが乗っかって、それが出てると思います。だから歌とか歌詞に説得力が出たなと。これを歌えるヤツにさせてもらえた感じがしました、その闘いがあったから。自分の歌詞に励まされながらレコーディングブースにいましたね(笑)。
■一人の人間がマイクを持って歌う
■それと同じ現象って、演説だと思う

──nishi-kenさんは歌詞もすごく重要視しますよね?

nishi-ken:いや、歌詞こそですよ。曲のジャンル分けって歌詞じゃないですか。どういうときに聴きたいのかってことだと思うので。それが音先行なのか、歌詞先行なのかといったら、圧倒的に今は後者だと思う。だからASH君が書いた歌詞を、どういう歌声で、どんな声成分で表現するか。それをトータルして僕は“音質”だと思っているんです。音質がいい声を録るためには、やっぱり時間が掛かるんですよ、チューニングという意味で。ASH君にとっては“なんだ、なんだ!?”ってことになったと思うけど、僕の中では“いいぞ、いいぞ!”って感じだったんです(笑)。

ASH:僕も“うわ〜”となりながらも、これを超えたら、一枚剥けるんだろうなって。総じてワクワクのほうが常に勝っていたから。スポーツに例えるなら、いい試合をした後の疲れですよ。そういう感じ。よし、明日もこの集中力を切らしちゃダメだぞ、みたいな。ずっとギラギラしていて。それに自分でも伸びしろを感じていたから。ここをもっとこうしたら、nishi-kenさんの想像をさらに超えられたかなとか。
▲ASH DA HERO

──ラフミックス段階で聴かせてもらった3曲は、どれも素直なボーカルになったなと思いました。

ASH:それは自分でも思います。カッコつけてない感じ。そういうふうにnishi-kenさんが誘ってくれたんですよ。自分の歌い方があるから、最初にそれで録ってみるんだけど、「すごくカッコいいけど、もう1回やってみよう」って。例えばリーゼントでバチッと決めていたのに、前髪はおろしたほうがいいよとか、ちょっと水をぶっかけてみようかとか。それで前髪がパッとたれて、セクシーになってるとか。そういった感じだったかな。それでいい意味で素の自分を出せた歌。

nishi-ken:一人の人間がマイクを持って歌う。それと同じ現象って、演説だと思ってるんですね。例えば選挙演説とか大統領演説とか。それぞれに立場を持っていて、その演説を聞きたいか聞きたくないかってことだと思うんですよ。大統領が、今から僕がしゃべりますってときの説得力。あと立候補しているときの説得力。声のトーンは絶対に違うんです。候補である人は訴えかけているんですよね。歌声も一緒だと思っているんです。歌詞において、恋愛なのか、元気を与えたいものなのか。本人が提示できるトーンというものを、調整してあげる必要が絶対にあるんです。ASH君の今までの曲を聴くと、声のトーンがいい意味で主張的なんです。それを受け入れられるか、受け入れられないかってところは、人それぞれなんですけど、パブリックを広げると視野が分散されすぎるんです。

ASH:うん、それは思いますね。
▲nishi-ken

nishi-ken:だからこそ、トーンをもっと穏やかに。今回のレコーディングにおいて、声が荒々しくても、セクシーに録りたかったんです。ASH君がとにかくセクシーに見えるように。そこに一番重きを置いていたような気がします。そしてASH君が納得できる歌だったかどうか。だから、録った後に僕は「今の歌い心地はどうだった?」って聞いていたと思うんです。

ASH:ええ、言ってました。

nishi-ken:今、良い感触で声を出せたかって意味合いなんです。それを踏まえて、曲を聴いている人たちに対して、ASH君の歌声がどういうバランス感だと、すんなり入っていくのか。そういうところで一傍観者であるべきで。プロデューサーという立場で入り込みすぎると、判断が麻痺してしまうんですよ。だから曲に入っている自分と、客観視している自分が常に同居していて。アレンジしながら、レコーディングしながら、“このシンセはこれ以上入れたら違うな。ASH君の邪魔になる”って。それでどんどん引き算していったら、最低限の音数になっていくという。

ASH:それによって説得力が出ていると思いますね。ちょうど、このレコーディング前にアコースティックのライブをやっていたこともあって、余計にモードもそれに近かったというか。抽象的な言い方だけど、バチバチに髪をセットしてライダース着るのもいいけど、裸で歌っても全然ロックじゃないのかなってモードが、自分の中にもあったんですね。そこからの今回のレコーディングだったんで。“オメーって男は、どんぐらいだ”って自分に問いかけながら録ってましたね。
▲ASH DA HERO × nishi-ken

──生身で勝負できるだろ、と。

ASH:うん。それをnishi-kenさんが引き出してくれた。艶やかに、もっとセクシーに、とか。男の色気を教わった感じの歌録りですよ。

nishi-ken:色気は大事!ほんとに大事。シンガーは特にそう。

ASH:その色気を随所に感じてもらえるんじゃないかなと思います。

nishi-ken:「未完成ストーリー」は特にそうかもしれないね。

ASH:色気たっぷりかも。僕自身も、この歌い方になるんだ、と。デモ段階では超パンクロックな曲だったんですよ。自分でも発見でした。ライブではもっと良くなると思いますね。あと僕がジジイになってもずっと歌っていく曲だろうなって。それも見えた感じしたんですね。
■これまでとの圧倒的な違いは
■聴いた瞬間に分かってもらえる

──現在、レコーディング作業は最後の工程であるミックス〜トラックダウンに入っています。3曲はどう磨かれている最中ですか?

nishi-ken:初期衝動、誰かにとっての初めての感じというか。要するに聴いたときに“ウワッ!”という。だから未だに客観視もしているし。それに自分自身も驚きたいし、ASH君のことも驚かせたいし。そのことだけが今、僕の中では優先順位として一番にありますね。それに仕上がった作品が、ASH君にとってどれぐらい存在意義があるものになるのか。そしてもちろん、新しく聴いてくれる人たちにとってもどれぐらいインパクトがあるものなのか。瞬間的に心を掴まれるものを、どれだけ引き出せるかってことを大事にしたいなと思ってますね。

ASH:これまでとの圧倒的な違いは、聴いた瞬間に分かってもらえると思います。進化してますよね。自分でもそう思うし、トラックダウンが終わるのがすごく楽しみです。

nishi-ken:そう思ってくれているのは、僕はむちゃくちゃ嬉しい。
▲nishi-ken

ASH:心底、思ってますよ。nishi-kenさんとレコーディングしてから、明らかに自分で、新曲のデモを作っていてもOKテイクが変わってきた。瞬間的なものを掴むというか。“あれっ、俺はこんな声だったかな”って、デモを作っていて、自分のPCから聴いたことないような歌声も出てきたから。これはnishi-kenさんとのレコーディングの成果だなって。俺はまだまだ伸びるなって。ずっと成長期なんだなって。そういう感じなんですよ。シンガーやミュージシャンとか、人に希望や夢を与える人間は、常に成長を止めてはいけない。そういった意味で、またさらにグググッと成長させてもらえた感じ。それが今、ものすごく嬉しくて、気持ちよくて。同時に、追いつけていない自分に、ほんの少しフレストレーションも抱えていたりするんですよ。

──nishi-kenさんから、シンガーとしてもっとこうしたらいいよって、ASHのケツをさらに蹴り上げるような言葉もいただけたらなと思うんですが?

nishi-ken:いや、シンガーとしてという意味合いでは、本当にカッコいいなと思っているんです。でもトーン、音質ってものを、本当の意味で知ってほしいかもしれない。音量とか音色とか、多分、もう分かってると思うんです。でも音質って大事なんです。例えばの話で、他のアーティストの名前を出しますけど、米津玄師君とかあいみょんとか、やっていることはものすごくクラシックなんですよ。ただ音質が、どう考えても新しい。どういう艶感とか、声の張り方とか、どういう周波数を出せば、世の中にス〜ッと通るんだろう、みたいなことなんです。電車の車掌さんのアナウンスは、「次はどこ駅」とか、あの独特の周波数帯域にすることで、全員の耳元に届くじゃないですか。車掌さんのトーンには理由があるんですよね。あれも僕に言わせたら音質なんです。ASH君の持っているこの見た目、歌のカッコよさとセクシーさ。これがどうやったら一番スーッとストレートに通るのかっていう。今回のレコーディングを経て、こうなのかな?あっちかな?とか、選択肢を持てたなら、そこを絞っていってほしいなって感じです。

ASH:うん、掴みかけている感覚がすごくあって。
▲ASH DA HERO

nishi-ken:自分の中で、上のほうにあるものに触れられそうな気がする感覚があるんだったら、多分、そこで大事なのは音質だと思う。そこをどんどん磨いていくと、聴いている人たちにとって大切な歌にもなっていく。簡単に説明すると、“歌い方”って言い方になると思うんですけど、僕の中ではその言葉で片付くことではないんです。質感というものを、年齢を重ねるたびにどんどん磨いていってほしいなと思いますね。

ASH:自分自身で導いていくことですよね。歌い続けて見つけていくことだと思うし。

──それに音質というのは、シンガー一人ひとりが持っているもので、その人の個性に通じるところですからね。

nishi-ken:そうなんです。僕は、バンドとかグループのレコーディングを担当するとき、よく言うんですよ。USA For Africaの「We Are The World」を観ろと。

ASH:うん、間違いない! あれは教科書だ。
▲ASH DA HERO × nishi-ken

nishi-ken:だって、参加シンガーのみんな、声が違うから。そういう意味では今のご時世、声が似すぎている「We Are The World」ができあがってしまってる。そうではなくて、もっと一人ひとりが個性的でいいんですよ。僕の声はこうです、私の歌はこうですって。じゃあ、それを活かして質感を変えましょうって話なんです。例えば今、ASH君が「We Are The World」に入って歌ったら、誰が聴いても、ASH君の声だって気づくはずなんです。それぐらい僕はASH君に個性を感じているし、ものすごいシンガーだと思ってる。好きな分、レコーディングの歌録りにはこだわらせてもらったんです。中途半端では絶対にできない。どんどん個性的になっていい。

ASH:だからnishi-kenさんとすぐにまたやりたいんです(笑)。さらに成長というか、“この前と俺、違ってません?”って感じでやりたいんですよ。

──間違いなく、ステージでの歌い方やライブパフォーミングにも大きな変化が生まれそうですね。

ASH:間違いなく変わると思います。このレコーディングがあった未来と、なかった未来では、今のこの時点で大きく違っていたと思う。それぐらい自分の中で劇的な変化をすでに感じていて、さらに磨いていきますね。だから次のツアーのASH DA HEROは新しいと思います。

取材・文◎長谷川幸信
■<ASH DA HERO LIVE TOUR 2019「GOD SAVE THE ROCK AND ROLL II>
09月29日(日) 大阪・OSAKA MUSE
open16:30 / start17:00
(問)サウンドクリエイター 06-6357-4400
▼シングル「未完成ストーリー」+ オリジナルGOODS
XQCR-1108 ¥3,000
※OSAKA MUSEライヴ会場にて発売開始

10月18日(金) 東京・Veats Shibuya
open18:30 / start19:00
(問)ディスクガレージ 050-5533-0888
▼シングル「Starting Now」+ オリジナルGOODS
XQCR-1109 ¥3,000
※Veats Shibuyaライヴ会場にて発売開始

11月23日(土) 名古屋 ElectricLadyLand
open16:30 / start17:00
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
▼シングル「Gatekeeper」+ オリジナルGOODS
XQCR-1110 ¥3,000
※名古屋ElectricLadyLandライヴ会場にて発売開始

▼チケット
前売り ¥4,000(税込) / 当日 ¥4,500(税込)
※スタンディング / 入場時ドリンク代別途必要

3ヶ月連続シングルCDリリース情報

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