たをやめオルケスタライブレポート~
結成11年の女性のみのビッグバンドが
みせた圧倒的情熱と華やかさ

たをやめオルケスタ"たをやめパンチ"ビッグバンド✕ビッグバンドw / パンチの効いたオウケストラ2019.08.29@高円寺HIGH
たをやめオルケスタは今年結成11年の女性のみのビッグバンド。自らを「おんなばかりのトロピカルビッグバンド」を標榜し、計13管からなる重厚で迫力のあるトロンボーン、トランペット、サックスの管楽器群、南国~南米~カリビアンからオリエンタル~雅~アジアの土着を縦横無尽に行き来するリズム隊、その上に乗る優雅な鍵盤やフルート、歌等で各曲毎にここではないどこかへと誘ってくれる楽団だ。「たをやめ(手弱女=たおやかでなよなよと優美な女性)と名乗ってはいるものの、ポップさと圧巻さ、本格さが同居したそのユニークな音楽性は、かなり手強く主張性もたっぷり。なかなか「手弱女」とはいかない。
そんな「たをやめオルケスタ」が、同じく女性ビッグバンド「パンチの効いたオウケストラ」との女性ビッグバンド同士の対バン初共演が実現した。8月28日に高円寺HIGHにて『"たをやめパンチ" ビッグバンド✕ビッグバンド』とタイトルされ行われた、この日。女性ビッグバンド同士ながら、構成も音楽性もタイプもキャリアも全く異なる両者が、どのような一夜を織りなしていくのか?その辺りも興味深く会場に赴いた。
まずは熟女ビッグバンド「パンチの効いたオウケストラ」の総勢11人がステージに現れる。メンバーは各位名うてのミュージシャンたちであり強者揃い。主にブルースやブギウギを基調とした、関西風土も交えたその生活感のある音楽性や歌は、まさにバンド名同様。インパクトと魅了性が同居したステージを終始展開した。 女性ならではの悲哀や想いをやんなった節的にコミカルに軽く伝えるタイプの歌たちも印象深かった彼女たち。ブルーズ&ブギヴキテイストのインスト曲を始め、ボサノヴァタッチの曲や4ビートのシャフルも交えた「夏に生まれた夏子」、中盤もファンキーさも伴った「百姓の娘」等が場内に躍動感がみなぎらせていく。後半も「加藤さんのテーマ」での盛り上がりをハイライトに、八代亜紀の「舟歌」meetsジョーン・ジェットの「I Love Rock’ n’ Roll」のシフトによる叙情性とダイナミズムの融合のセンスには恐れ入った。
たをやめオルケスタ
ステージにボックスや譜面台が設置され更に賑やいでいく。続いては、たをやめオルケスタの登場だ。鍵盤、ベース、パーカッション、ドラム、5管のサックス、4管のトロンボーン、4管のトランペットからなる彼女たち。序盤は躍動感や生命力溢れる曲が目立った。ジャングルビートに雅やかなメロディのインストナンバー「ジャパヤメ」からライヴが走り出していく。「たをやめはじめるよ~!!」とサックスでリーダーの女将・岡村トモ子が場内をアジテート。続く「麗しのレイディ」に入るとパーッと場内が華やかに。マンボやモントゥーノなリズムに合わせ会場もクラップ。徐々に高揚感が引き出されていく。そしてコンガの上、雅やかなメロディも印象的だった「嫁入りマヱ」では、途中8ビートも飛び出し会場も並走をみせる。
「総勢28人もの女性がステージに現れることもそうそうない。パンチの効いたオウケストラには(これからのミュージシャンとしての活動に於ける)勇気をもらった」と女将が語る。「今日は残暑いっぱいでお送りしたい」と続け、ここからはパーっとした景色観のある曲たちが次々と現れた。
爽快で開放感を与えてくれた「妄想ツーリスト」では、カリビアンな南国気分に。また「メンバーの青春の曲だった」という吹奏楽の定番曲THE SQUAREの「宝島」では、サンバを基調にした吹奏楽アレンジも印象的。♪取り戻せあの日の夢を♪と途中揃いの銀テープボンボンで踊るシーンも印象深かった。
たをやめオルケスタ
2019年11月2日(土)に「TAWOYA-meeting vol.21」と題した11執念(周年)記念ワンマンを渋谷リビングルームカフェにて行う告知がされ、大いに歓迎される中、ここからは更に各曲を通し、色々な場所へと会場をテレポーテーションさせていく。キーボードの大西まみの作った「Moon Safari」では、オリエンタル性と5拍子の混じったバルカンサウンドの下、クレズマー要素がいい感じに哀愁を呼び込んでいけば、女将作曲の「カルダモン砂漠」では気分は南米へ。また違った哀愁性が呼び込まれる。大西まみの鍵盤とベースの愛沢まりによるユニゾンと躍動感を育み、金澤沙織(Dr.)と青柳智里(Per.)が同曲のブリッジをが同曲のブリッジをよりふくよかにしていけば、打って変わって優雅さを場内に広げた「Tokyo Rose」では、6/8拍子のリズムと、各人によるリードとユニゾンにもグッとき、ムーディさからじわじわととてつもない高揚感へと引き上げてくれたのも印象深い。
「音楽の凄い部分はそれぞれ趣味やタイプが違った人たちが集まっても11年もやれちゃうってところ。でもそれも見てくれる皆さんあってのこと。感謝しています」と女将。ラスト2曲は完全に残暑突入モード。より妖しさも増し高揚感もアップ。情熱度高く伝えた、美空ひばりの「真赤な太陽」のインストバージョンをを炸裂させれば、本編最後はよりその高揚度と情熱度を上げた「SCARLET」が、まるで夏の終わりを全力で謳歌するかのように響いた。
アンコールは大円団。マンボのリズムに乗り、日はまた昇る的な「One Mint Julep」のカバーがみんなの明日を照らしてくれた。
たをやめオルケスタ
この共演を機に、パンチの効いたオウケストラのように、いつまでも音楽家として活動していく!!そんな決意も新たに11年目を猛進中の彼女たち。そんな中、誕生日会とも言える次の「TAWOYA-meeting」執念記念ワンマンの告知も、この日はされた。やや気が早いかもしれないが、この日を振り返りつつ、それを経てまた一段と逞しくなったであろう、たをやめの渋谷リビングルームカフェでの雄姿を思い浮べている自分が居た。
取材・文=池田スカオ Photo by Lilly

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