勝つのは愛か欲望か?「さらざんまい」が伝えたかったつながりとは?

勝つのは愛か欲望か?「さらざんまい」が伝えたかったつながりとは?

勝つのは愛か欲望か?「さらざんまい
」が伝えたかったつながりとは?

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アニメ界の鬼才が仕掛ける“つながり”の物語!
『さらざんまい』は、『少女革命ウテナ』、『輪るピングドラム』を手掛けた幾原邦彦監督が手がけたオリジナルアニメ作品です。

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物語の主人公は、サッカーが好きだった矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人。
3人は、カッパ王国の第一王子・ケッピの怒りを買いカッパにされてしまいます。
彼らがもとの姿に戻るには、“ゾンビの尻子玉”を奪わないといけません。
3人がゾンビに奪われた大事な物を取り返し、大事な人との繋がりを取り戻すために大奮闘します。
物語は、一稀の語りから始まり、弟の春河の声に振り向いた途端、アと書かれた標識が落下する夢から動き出します。
カッパ像を誤って壊してしまい、大爆発に巻き込まれた一稀と悠!
気づいたら、頭に水をかけていたり、無我夢中でキュウリを食べていたり...不可解な出来事が起きるのです。
一体何が起きている?これから何が始まるの?そんな好奇心を刺激する展開が最後まで続き、飽きさせません。
なかでも、突出した演出が“漏洩”です。漏洩とは、ゾンビの尻子玉をケッピに送る際、転送者の秘密が他の2人にバレてしまうこと。
その秘密から登場人物の本心や過去が分かり、謎だった点が繋がり、線になって、つながっていくのです。
毎回ラストには、予想外の衝撃展開が待ち受けています。
至る所に伏線が張り巡らされており、謎解きの要素も満載!
2回、3回と繰り返し見たくなるアニメです。
メディアミックスも“つながっている”!?
『さらざんまい』には他のアニメにはない仕掛けがたくさんありましたね。

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たとえば、『さらざんまいのうた』、『カワウソイヤァ』といった個性的な音楽、同性同士の絡み。そして、標識風のロゴマークを多用した斬新な映像、抽象的な言い回しや数々の謎。
幾原監督作品が初めての人にとっては、“何なんだ!?”と驚きを与えてくれる演出がこれでもかと詰まっていましたね。
また、10話放送後、ネット上に前代未聞の衝撃が走ったことをご存知ですか?
10話で警官コンビ・玲央と真武が世界から消えた際、アニメ放送前からあった玲央と真武の公式Twitterアカウントが、ある真武のつぶやきを最後に、ツイートが少しずつ消去されていくのです。
アイコンも黒く塗りつぶされ、最後にはアカウントだけが残りました。
アニメの世界とTwitterを連動させる試みは前代未聞!
メディアミックスを巧みに利用したのも、放送した時代に合わせた問題を投げかけてきた、鬼才・幾原邦彦監督ならではですね。
他にも、アニメ放送期間中は、東京お台場にある、ノイタミナショップで週末に次回の先行上映会が開催され、毎回多くのファンが詰めかけました。
“放送より先の内容が見たい!知りたい!待ちきれない!”、そんなファンの欲望を掻き立て、その望みを叶えてくれるのも『さらざんまい』の魅力といえるでしょう。
そして、幾原監督と脚本の内海照子が執筆した、ノベライズ版ではアニメであまり描写できなかった場面も丁寧に描かれており、たくさん貼られた謎の答えも見えてきますよ。
多岐にわたるメディアを追うことで、物語の謎を解くヒントがゲットできる!そんな謎解きアドベンチャーのような作品です。
愛と欲望にあふれたキャラクター達
ここからは、『さらざんまい』に登場するキャラクターをご紹介します!
▲さらざんまい本PV
矢逆一稀(声:村瀬歩)
サッカーに熱中していた中学2年生。弟・春河の事故を自分のせいだと責め、サッカーを辞め、春河の好きなアイドルの吾妻サラになりすまし、LINEを送り合っています。
久慈悠(声:内山昴輝)
車上荒らしなど悪事に手を染めている不良少年。それは、反社会勢力に属する兄・誓のため、兄に助けられ、兄のために大好きだったサッカーボールを捨ててしまいます。
陣内燕太(声:堀江瞬)
小学生時代、帰国子女で周囲から浮いていたところ、一稀が燕太をサッカーに誘い、仲良くなります。燕太はそんな一稀に片思い。しかし、一稀と悠が仲良くなり、悠に嫉妬してしまいます。
ケッピ(声:諏訪部順一
カッパ王国第1王位継承者。カエルに間違えられると激怒し、一稀達の尻子玉を抜いてカッパに変身させてしまいます。尻子玉とは、人間の欲望を蓄積する臓器。カッパとは、生きていて死んでいる状態を指します。
新星玲央(声:宮野真守
ギザギザの歯と褐色肌が印象的な警官。真武を愛していましたが、カワウソ帝国によって蘇生された真武を認められません。願いが叶う希望の皿を狙い、かつての真武を取り戻そうと思っています。真武と共にゾンビを生み出します。
阿久津真武(声:細谷佳正
色白・メガネが特徴の寡黙な警官。玲央をかばって命を落としましたが、カワウソ帝国によって蘇生。カワウソのメンテナンスを受けることで人間らしくなりますが、玲央は生前の真武と違う彼を受け入れず、苦悩します。
登場人物達は皆、大切な一人を思っていますが、行動が行き過ぎたり、伝わらなかったり、秘密を隠していたりしています。
私たちと立場や境遇が全く違っていても、応援したくなったり、思いが報われない切なさを感じたりできるのは、根底にある愛情が美しいからなのでしょう。
つながりたいから、諦めない!エネルギッシュなOP!
『さらざんまい』のオープニングテーマは、ロックバンド・KANA-BOONが歌う『まっさら』。作詞・作曲はボーカルの谷口鮪が自ら手掛けました。
▲KANA-BOON 『まっさら』Music Video
楽曲のテーマは、“つながりの修復を願う気持ち”。
早速歌詞の一部を見ていきましょう。
まっさら 歌詞 「KANA-BOON」
https://utaten.com/lyric/qk19054088
(中略)
まっさら 歌詞 「KANA-BOON」
https://utaten.com/lyric/qk19054088
大事な人と会えない夜や、仲違いした後は寂しいですよね。
「もう一度 話せたら 繋がれたら ただ触れて」からは、会いたい気持ちや、関係を修復したい気持ちがストレートに伝わってきます。
悠の兄・誓への思いや、燕太の一稀に対する恋心、昔の真武に会いたい玲央、久慈との出会いをなかったことにしたくない一稀など、キャラクターの心理とピタリと重なります。
心の距離が遠くても決して絆を諦めず、ひた走って縮めたい。
「まっさらな思い」とは、繋がりたい欲望を指しているのかもしれませんね。
そんな思いが爽やかなメロディーと合わさることで、エネルギッシュな印象を与えます。
幾原監督の作詞でないにも関わらず、物語とリンクした『まっさら』は、まさに主題歌と言うべき1曲です。
つながりたいけど、つながれない。切ない距離感を描くED
エンディングテーマ『スタンドバイ・ミー』を歌うのは、『青春豚野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』の主題歌・『君のせい』でアニソン界に名を残したガールズバンド、the peggies
可愛い歌声でありながら強さを感じさせるボーカル、アニメ作品の本質をとらえた歌詞が心に深く染み渡ります。そんなエンディングテーマの歌詞を見ていきましょう。
スタンドバイミー 歌詞 「the peggies」
https://utaten.com/lyric/qk19051025
(中略)
スタンドバイミー 歌詞 「the peggies」
https://utaten.com/lyric/qk19051025
曲のテーマは、“孤独”と“つながりたい思い”。10話までの衝撃的で切ない展開と、見事マッチした楽曲ですね。
Aメロの「繋いだ手の儚さを知る」は、1話冒頭の一稀の台詞、“でもそのつながりは簡単に消えてしまう”と一致しています。
「消えかけの電球」とは、祖父の言葉をきっかけに、自分の家族に疑問を抱き続けた一稀の心を表しているよう。
それが実母との再会や春河の交通事故をきっかけに、家族との繋がりが切れてしまったことを言っているように感じられますね。
サビの「スタンドバイユー お願い 何もかもを取っ払ってしまいたい」は、カワウソから離れ、玲央とふたりでいたい真武の本心が垣間見えませんか?
だけど、それを叶えようとすると自分の命が尽きてしまうのが、とても切ないです。つながりたいけど、つながれないキャラクターの心理と重なり、聴いていると胸がぎゅっと締め付けられる一曲です。
中毒性抜群!インパクト大の挿入歌!「さらざんまいのうた」
ゾンビとの戦闘シーンで一稀と悠、燕太、ケッピが歌う『さらざんまいのうた』は、シュールな映像と歌詞に度肝を抜かれた方も多いのではないでしょうか?ミュージカル風の演出は日常から、非日常に切り替わるアクセントになり、物語の盛り上げにぴったりの演出でした。
作詞は、幾原邦彦監督と脚本の内海照子、作曲は、『おそ松さん』や『輪るピングドラム』のBGMを手掛けた橋本由香利が担当しています。
歌詞を見ていきましょう!
さらざんまいのうた 歌詞 「矢逆一稀(村瀬歩)、久慈悠(内山昂輝)、陣内燕太(堀江瞬)、ケッピ(諏訪部順一)」
https://utaten.com/lyric/kz19070206
レトロ感のあるリズミカルなメロディーと、カッパ達が無表情で歌うシュールな映像が印象的ですね。
ケッピの「カッ・パラ・エー」は、本心や過去をさらけ出す呪文のよう!そこから3人で歌うパートになり、3匹の表情も真剣に、3人で輪になってゾンビに果敢に立ち向かうシーンにぴったりです。
「およげ人生 掴め栄光」とは、周りに流されず自分の欲する道を進み続ければ、輝かしい未来は手に入れるという意味なのかもしれません。
息ぴったり!一度聴いたら忘れられない!「カワウソイヤァ」
大人気の挿入歌をもう一つご紹介します。
『カワウソイヤァ』は、警官コンビの玲央と真武が、犯罪者の欲望を抜き取り、ゾンビにする場面で、歌われる楽曲です。
カワウソイヤァ 歌詞 「新星玲央(宮野真守)、阿久津真武(細谷佳正)」
https://utaten.com/lyric/kz19070205
力強い「ソイヤァ」のかけ声と、息のあったふたりの歌声の重なりが耳に残りますね。歌詞も覚えやすく、歌いたい、何度も聴きたいという欲望を刺激します!
「ソイヤァ」とは、神輿を担ぐときのかけ声。あのダンスシーンは、段ボール箱を神輿に見立て、カワウソイヤァの歌と踊りを奉納し、カパゾンビを覚醒させていると解釈ができます。
「去勢された負け犬ども」とは、受験戦争や就職活動、恋愛などで挫折し、高望みしなくなった人だとすると、「惰性で生きる虫ケラ」は、暇さえあればスマートフォンで動画やSNSを見て、ダラダラと一日を過ごしてしまう人ではないでしょうか。
「欲望を手放すな」とは、現代を生きる私たちに向かって、“今の自分が本当にしたいことは何か?”、“SNSに浸る時間より大切な時間はないのか?”を問いかけているのかもしれません。
アの標識とは何だったのか?全ての謎の漏洩はいつ?
謎の多い『さらざんまい』で、最後まで明らかにならなかった謎と言えば、1話冒頭に出てきた“ア”の標識です。
実は、アニメが始まる時にアを囲む円に“TSUNAGARITAI”の文字が入っているのをご存知ですか?そこから、アの標識とは、人とつながりたい欲望だったと推測できます。
また、アの看板の裏にはカワウソのマークが描かれていましたね。つながりたい思いは自分本位の欲望であり、愛の裏返し。アの標識は、もう一度あの人と繋がりたいという思いが形になった物かもしれません。
アといえば、一稀達がケッピに尻子玉を転送する“さらざんまい”をする時に、3匹のカッパの頭の皿がつながって、アが書かれたWi-Fiマークが浮かびあがりますよね。それから転送する代表者の頭上に同じマークが浮かび、ケッピへの尻子玉送信と他の2人への隠し事の漏洩が始まります。ここでのアはアクセス、つなぐことを指しているのではないでしょうか。
幾原監督が私たちに伝えたかった、“つながり”とは、嘘や隠し事をしない、互いの心を見せ合う関係を大切にすることなのかもしれませんね。
さらに、ラジオ『ぷれざんまい』や『an・an』の幾原監督のインタビュー記事、小説などにも物語を解くヒントが隠れていました。その点で、インターネット時代以前に主流だった活字やラジオとファンをつないだ架け橋とも言えますね。 
未解決の謎はまだまだありますが、Blu-ray&DVDのブックレットにさらっと書いてないか探したり、小説下巻や10月に開催されるファンイベントを待つことが、本当の答えとつながるかもしれません。
これからも、幾原監督の発言や『さらざんまい』情報から目が離せません!
最新情報はこちらから!
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「さらざんまい」好き必見!オススメアニメ記事!
他にも伏線を巧みに回収し、挿入歌とマッチした作品と、イケメン揃いのアニメをご紹介しています。
是非、チェックしてみて下さいね。
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TEXT Asakura Mika

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