【特集企画】日米合作の画期的プログ
ラムにより誕生する、A New Musical
『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』
The road to the opening<No.1>

ブロードウェイの新進気鋭のソングライティングコンビと日本のクリエイティブチームが、新作ロックミュージカルを共作し、世界に先駆け上演するプロジェクトとして注目を集めるA New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』(以下『FACTORY GIRLS』)。
この作品は、劣悪な労働環境の改善と、働く女性の尊厳を勝ち取ることを求めて、19世紀半ばアメリカで実際に起った労働争議を率いた実在の女性サラ・バグリーと、サラと固い友情を結びながらも雇い主との板挟みで苦しむハリエット・ファーリーを主人公に、今の時代にこそ伝えたい「自由を求めて闘った女性達の物語」を、ロックサウンドのミュージカルナンバーに乗せた、迫力の歌とダンス満載のエンターティンメントとして創り出す、日米合作による画期的な新作。
SPICEではこのかつてないプロジェクトで生み出される作品が、開幕するまでの道程に密着。様々な角度から、作品が立ち上がっていく過程をレポートしていく。
その栄えある連載第1回として、この作品の米国クリエイティブチームのソングライティングコンビである、クレイトン・アイロンズとショーン・マホニーへの、メールインタビューが実現! そもそも彼らが作品を生み出すきっかけから、今、まさに日本で進んでいる上演に向けたプロセスへの期待を語ってくれた。
(左から)ショーン・マホニー、クレイトン・アイロンズ
日本のクリエイティブチームとのチャレンジングなプロセス
ーー「FACTORY GIRLS」というテーマで、ミュージカル作品を制作しようと思ったそもそものきっかけは?
私達はこの作品をニューヨーク大学芸術学部ティッシュ・スクール・オブ・アートでの、ミュージカルシアターライティングプログラムの学位プロジェクトとしてスタートさせました。私達は歴史的なものを基にしたアイディアを探していたのですが、そんな時に“ローウェル・ミル・ガールズ”の物語に触れたのです。ローウェル・ミル・ガールズはアメリカで最も早く働き、自立した生活をし始めた女性達で、彼女達の多くは自由時間に文章を書いたり、勉強したり、当時のニューイングランドの賢人達のレクチャ―を受けるなど、向上心に溢れていました。そんな彼女たちが、1840年代に男性と平等の権利を求める為に苦闘した姿が私達を惹きつけ、これは現代の世界に続く問題だと感じ、作品にするに相応しいテーマだと考えました。
ーー作品で最も訴えたいこと、大切にしていることはなんですか?
物語の舞台はアメリカですが、私達は作品を通して立ち上がる疑問は、世界共通のものであると感じています。つまり、ある曲の歌詞でも問いかけていますが、“Do we live to work? Or do we work to live?”(私達は働く為に生きているのか? 生きる為に働いているのか?)ということです。
アメリカで最初に紡績工場を設立したフランシス・ローウェルは、産業革命による動力とテクノロジーをより上手く使い、アメリカの人々に多くの自由時間を与えられる方法を積極的に探究していました。彼は機械を発展させることによって、平均的な労働者が1日14~15時間に及んでいる労働時間を短縮できると考えていました。けれども残念なことに彼の夢は、工場のオーナー達がより長時間労働者たちを工場で働かせることによって、大きな利益を得られるという目論見の前に、全く逆の方向に使われてしまった。このローウェルの描いた理想と、現実との乖離が最も今日につながるテーマとして、作品の大切な背景になっています。
ーー日本のクリエイターとの共同作業により、作品を日本で初演することに対する期待や感じる魅力、同時に難しさもあると思いますが挑戦する醍醐味は?
日本のクリエイティブチームとのコラボレーションは、この作品の歴史においてとても大きなハイライトになっています。彼らは作品にフレッシュな視点と、題材に対するリスペクトを持った新たな観点をもたらしてくれていて、そのプロセスはとてもチャレンジングで楽しいものでした。
今回の上演に向けて演出家からのリクエストで9曲の新曲を書きましたが、新しい楽曲は力強さと明快さ、さらに作品に音楽的な多彩さを与えてくれました。
そんな作業の中でのハードルは、もちろん言葉の壁です。アメリカの人々には歌詞の翻訳は適切なのと聞かれますが、その答えは……分かりません!(笑)けれども、最初期のやり取りから、私達は日本のクリエイティブチームの献身性と緻密さに感銘を受けていたので、作品を私達のわからない言葉でプレミア公演を行う事に関しての不安は、信頼の中での自由な創作の場に変わっていきました。
サラは水、ハリエットは水車
ーー現在「機械のように」「“自由”か“死”か」「あなたと出会えて」の力強く、また美しい3曲が公開されていますが、それぞれの楽曲を創るにあたってどうイマジネーションを広げ、何を目指して曲を構築したかをお聞かせ下さい。
3曲ともそれぞれミュージカルの違った側面を象徴しています。公開されているスポット映像は、この作品で私達が打ち出そうとしている音楽面での幅や深みを表してくれています。歌詞にはファクトリーガールズが実際に書いた言葉や歌詞を使ったり、ロック、カントリー、ファンク、ヘビーメタル等をブロードウェイの音楽的な語法を用いて、私達のストーリーを現代の方々に語る為に使っています。
“Think Like A Machine(機械のように)”で目指したのは、簡潔に工場システムの中で彼女たちがどの様に働いているかを描き、この新しいシステムによって得られた“自由”が彼女らの人間性を賭ける価値があるものなのかを伝える事でした。
“Live Free Or Die(自由か死か)”はニューイングランド、ニューハンプシャー州のモットーで、私達にとっては故郷を賛美する言葉であり、女性達が立ち上がる時に、より強く結束する力を呼び起こす曲になっています。
“Wheel and The Water(あなたと出会えて)”は工場の動力源と、主人公であるサラと、ハリエットの二人の関係性に光を当てるメタファーになっています。ハリエット・ファーリーは現状の中で労働状況を改善していこうと言う人物=水車であり、サラ・バグリーは力を生み出し現状のシステムに変化をもたらそうとする人物=水なのです。
ーー新進気鋭のソングライティングコンビとして注目を集めるお二人ですが、創作者として互いに感じている魅力は?
私達は大学で一緒に書く様に決められたことで出会いました! ショーンはボストンのローウェルの近くの出身でロックとギターのバックグラウンドを持っています。クレイトンはピアノを弾く、幼い頃からの演劇作家でノースカロライナの出身で、全く違うバックグラウンドを持っていますが、何年にもわたってバンドとして演奏していることで、音楽的な繋がりを強くしていきました。二人共クラシックなロック、ソウル、フォークミュージックが好きで、これらのジャンルから今作の女性達の声を見出し、長い時間をかけて互いに認め合い、協力しあってきました。
日本のクリエイターは全てにおいて私達の予想を超えている
ーー大変アーティスティックな衣装でのキャストのビジュアルが公開されていますが、どんな印象を?
全てのスポットやビジュアルに私達は感動させられています。私達はいつも心に1800年代のファッションを描いていましたが、日本のクリエイター達はコスチューム、オーケストレーション、ビジュアル面全てにおいて、私達の予想を超えたものを作ってくれました。そして、日本のクリエイティブチームがした、全てのデザイン面での選択は、作品のテーマやキャラクターを深く理解してのものだと言うことも明快でした。私達はその全てを見て聴く為に、9月のプレミア公演で日本を訪れるのをとても楽しみにしています。
ーーでは改めて、世界初演への意気込みをお願いします。
私達は「FACTORY GIRLS」の物語を世界と共有できる事を光栄に思っています。現代の工業化社会を作った機械の世界で、働く女性たちの人間性を讃える闘いをし、貢献したサラ・バグリーとハリエット・ファーリー、そしてローウェルの女性達のストーリーを。私達がこのストーリーを語るために、彼女達は自分の手による記事、ポエム、手紙、「The Lowell Offering(ローウェル・オウファリング)」 と「The Voice of Industry(ボイス・オブ・インダストリー)」を残し、私達を手助けしてくれました。それらは1840年代に刊行されたのにも関わらず、書かれた言葉は時代を超え、国境を越えています。私達は観客の皆様がこの作品に感動し、楽しんで欲しいと思っていますが、さらに皆様には、過去の女性達が現代の私達に何を語りかけているのかを、自分に問いかけながら劇場を後にして欲しいと願っています。
<プロフィール>
■クレイトン・アイロンズ​ Creighton Irons(作詞作曲)
ノースカロライナ州チャペルヒル出身、テネシー州ナッシュビル在住
大学まで兄弟と共に楽曲制作に打ち込みながらチャペルヒルで育つ。ノースカロライナ大学に成績優秀者に与えられるモアヘッド奨学金を受けて進学し、ミュージカル制作に目覚め、在学中に大学からの助成を受けて『Ran Together』『Soul Notes』の二作を上演する。 大学卒業後、ジャマイカの首都キングストンでミュージシャンとして活動。アメリカに帰国後ニューヨークに移り住み、ニューヨーク大学の芸術学部ティッシュ・スクール・オブ・アートのミュージカルシアターライティングプログラムで学び、美術学修士を取得。 ニューヨーク大学在学中にはコラボレーターの Sean Mahoney と出会い『Factory Girls』の制作を開始し、コネチカット州の Goodspeed Opera House の”Festival of New Artists”に選ばれデベロップメントの機会を得たのち、ニューヨークの National Alliance for Musical Theater の Festival of New Musicals、ペース大学、ボストン音楽院、American Conservatory Theater、Musical Theater Factory、 11th Hour Company でワークショップ・コンサート形式での上演を重ねている。その他のミュージカル制作においてはサンフランシスコの American Conservatory Theater演劇教育プログラム「Young Conservatory」の為に脚本家の Craig Slaight とタッグを組み『Homefront』を2011年に、その2年後に Janet Allard とのコン ビで『Staying Wild』を上演した。現在は新作ミュージカル『The Moon and the Sea』とオリンピックで5つのメダルを手にした後にドーピング違反が発覚し剥奪となったベリーズ出身の陸上選手マリオン・ジョーンズの生涯を描いたミュージカル『Marion』の制作に取り込んでいる。
■ショーン・マホニー Sean Mahoney(作詞作曲)
ニューハンプシャー州ホワイトマウンテンズ出身。コロラドとニューヨークをベースに活動するミュージカルライター。ニューヨーク大学の芸術学部ティッシュ・スクール・オブ・アートにて美術学修士号を取得、ニューハンプシャー大学で文学士号を取得し、ニューヨーク州イーストビ レッジとコロラド州テルユライドを拠点に活動中。これまでの作品に『Factory Girls』 (with Creighton Irons)、 『Prep School Musical』(with Sam Forman)、『Sweetwater』(with Patricia Noonan)、『The Invincible Three – The Great Telluride Bank Robbery of 1889』、『Sweet Cassandra – A Greek Rock Opera』(with Amy Burgess)があり Birdland、Joe’ s Pub、Merkin Hall、Symphony Space、Ars Nova、Goodspeed Opera House、 ACT/San Francisco、Boston Conservatory 等での上演歴がある。
その他にもステージ/セッションギタリスト、モバイル/クラブ DJ としても活動し、教育者としても4年間 Lucy Moses Summer Musical Theater Workshop にレジデントソングライターとして参加し楽曲提供、指導を行なうなど15年以上に渡るキャリアを持つ。

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