FRONTIER BACKYARD × 新代田FEVER店
長・西村仁志氏 改めて語り合うバン
ドとハコ、それぞれの歩みと今

2019年9月13日、新代田のライブハウス・FEVERが10周年を迎えたことを記念し、同ライブハウスとかかわりが深く、今年で15周年を迎えたFRONTIER BACKYARDとのコラボ企画ワンマン『FRONTIER BACKYARD 15th & 新代田FEVER 10th presents PUTA'S FEVER』を開催する。これに伴いSPICEでは、店長の西村仁志氏とFRONTIER BACKYARD・TGMX、福田"TDC"忠章による対談テキストを掲載。じっくりご一読いただきたい。
西村:なかなかこんなふうにゆっくり話すことってないですよね。
TGMX:そうそう。FEVERにいても長くしゃべる時間がないですもんね。
西村:ライブハウスの人のスタイルにもよると思うんですけどね。2次会3次会まで打ち上げにつき合う人と、あくまでもお店の中でライブをどう面白くするか考える人と。俺はそんなに打ち上げについていくタイプでもないし、特に昔はお酒も強くなかったんですよね。TGMXさんたちと知り合ったのは90年代のスキャフル(SCAFULL KING)の頃で、あのときは全然飲めなかった。
TGMX:あんな時代に酒が飲めないなんて(笑)。
西村:あの頃の打ち上げは毎晩すごかったですからね。
TGMX:イスが飛びかったりするような打ち上げだったからね。マジで喧嘩してるのを、俺らが笑いながら止めたりして(笑)。でも、ライブハウスの人が打ち上げまでつき合ってたら体壊しますよね、絶対。
西村:それ言ったら、バンドマンの人はすごいですよ。
TDC:でも、バンドマンは次の日が休みだったりするからね。
TGMX:しかも、西村さんの場合は、「今日は飲みますか!」みたいなヤツらが毎日来るから(笑)。
西村:そういうことは少なくなりましたね。最近、下北界隈にいるバンドマンは昼飲みしてることが多いんですよ。昔はライブが終わって次の日の昼前まで飲んでるスタイルが多かったけど。
TGMX:確かに昼飲みしてる人は多いかもしれない。
TDC:最近のシェルターは昼の部が多いから、それが終わってからずっと飲んじゃうっていうのがあるのかもね。
TGMX:ちなみに、FEVERは昼の部ってやってるんですか?
西村:たまにやってますけど、夜の部でリハを長くやりたいバンドが増えてきて、しかもみんな早い時間に入りたがるので、そのせいで昼の部があまりできないっていう状況はあります。
TGMX:でもリハは関係なく、FEVERは早く来たくなる場所だよね! なんでだろう? 俺らは家が近いからかもしれないけど。
TDC:自転車で来られるからね。
TGMX:14時入りって言われても13時半ぐらいにはもう入ってる。楽屋がいいからっていうのもあるよね。あそこまで楽屋が広いライブハウスはなかなかない。
西村:俺が最初に思い描いてたのは、カッコいい先輩のバンドが年を重ねて子供ができたときに家族を連れてこられる環境をつくるために、楽屋を広くしたり、ライブハウスの隣に飲食店を置くっていうイメージだったんですよ。
TGMX:確かに、子連れのミュージシャンは多いですもんね。
FRONTIER BACKYARD 撮影=垂水佳菜
西村:だから、「FEVERだったらライブしに行ける」っていうバンドマンとか、「FEVERだったら観に行ける」っていうお客さんは最初から狙ってはいたので、それはよかったと思ってますね。
TGMX:ヘタしたら楽屋でライブができますよ(笑)。
西村:海外のミュージシャンによく言われますよ、「なんでフロアを広くしないんだ」って。でも、「このキャパだからこそできる面白いことがあると思うんだよね」って伝えると、ちゃんと理解してくれるんですよね。楽屋を狭くして、その分フロアを広くしたら、俺がやりたいことはできないんですよ。ところで、フロンティア(FRONTIER BACKYARD)を始めて何年になるんですか?
TGMX:15年です。
――フロンティアだけで15年かあ! いつの間にかそんなに長いこと活動していたんですね。
TGMX:ちょっと軽い気持ちで始めたバンドがメインになってきちゃったっていう。
――スキャフルとフロンティアみたいに、2つのバンドでしっかり存在を確立できている人たちってなかなかいないですよね。
TGMX:確立してんのかなあ?
――してるじゃないですか!
TGMX:そうかあ……そう言われるとうれしいねえ!(笑) FEVERにはSCAFULL KINGの撮影場所としてお借りしたりしてお世話になってるけど、フロンティアもずっとお世話になってますね。我々は家から近い場所にあるから本当にうれしくて、バンド観ながら飲むっていうイメージで遊びにこさせてもらってるし、勝手にホームだと思ってますよ。
西村:そう思っていただけるのはありがたい話です。
TGMX:“FEVERづいてる”って言葉があるぐらいですから。しかも、FEVERの公演は他のバンドから誘われることも多くて。ということは、俺たちの周りもみんなFEVERでやってるんですよ。そういうのもいいですよね。
――みなさんの付き合いは昔からなんですか?
TGMX:西村さんが下北沢シェルターにいた頃……1998年ぐらいからかな? それぐらいからSCAFULL KINGはよく出させていただいてたし、元々俺らはシェルターっ子でしたね。スキャフルは当時、<DOUBLE TUCK OUT>っていう2マン企画をやってて、それを西村さんに頑張って宣伝してもらったり、逆に提案をもらったりして、本当にお世話になってました。
西村:あの頃は「なんでずっとシェルターでやってくれるんだろう?」って思ってましたよ(笑)。
TDC:やりやすかったんですよ、すごく。
TGMX:そんなにリハやらなくても「はい、オッケー!」みたいな感じで中音もすぐ決まってたし。まあ、メンバーが6人だから狭いっていうのはあったけど、すごく力を入れてくれてたからね。
西村:今、ふと思い出したんですけど、俺の師匠は平野さん(平野実生さん)で、平野さんはシェルターの初代店長で、俺は3代目なんですけど、スキャフルって昼の部に出てましたよね?
TDC:すげえ昔に出てました。
西村:そのときのことを平野さんが話してくれて。
TGMX:「こいつらを売れ!」みたいな指令でもありました?(笑)
西村:平野さんは売る/売らないっていうより、「あいつらは絶対面白いから」みたいなことを言う人なんですよ。そういう言葉からこっちがいろいろ汲み取るっていう。平野さんにとっては面白いかどうかが大事なんですよね。
TGMX:言っていいのかわからないけど、俺らをメジャーレーベルに紹介してくれてましたからね。
西村:あ、そういう話もありましたね。
TGMX:とあるレコード会社の会長とお会いしてご飯食べさせてもらいましたもんね。
TDC:噂で聞いたのは、シェルターの深夜のバータイムのときに、俺らのプリプロのテープを大音量でかけて、「このバンドはどうなんだ」っていう会議が行われたっていう(笑)。
FRONTIER BACKYARD 撮影=垂水佳菜
――結局、なんでメジャーに行かなかったんですか?
TGMX:「ま、いっかな」ぐらいに思ってて。自分たちが知ってるスタッフだけでやりたくて。あのときもせっかくの好条件だったんだけど。当時はまだ僕らのまわりとかがメジャーに行く前で、「スキャフルはどこ行くんだろう? トイズか?」みたいに、どのバンドがどこに行くのかよく話が出てたよね。
――90年代後半って本当にそういう感じでしたよね。
TGMX:そうそう。すげえ懐かしい(笑)。
――そんな流れのなかでよく行かなかったですね。
TGMX:なんかねえ……“セルアウト”ってしょうもない言葉なんだけど、それがずっと頭のどこかにあって。別に、僕らのまわりがメジャーでセルアウトしたわけじゃないから、やり方次第なんだなとはあとで思ったけど、当時はメジャーに行く考えはあまりなかった。悩みはしたんだけど、「やっぱ止めよう」って。でも、メジャーに行ってたらこんなふうに西村さんと仲良くなってなかったかもしれないし、日本全国のライブハウスの人たちと直接ご挨拶したりお話することでたくさんの財産を得ることができたから、それはよかったなって。
――TGMXさんたちがホームグラウンドをシェルターからFEVERに移したのは、西村くんの存在が大きいですよね。
TGMX:そう。西村さんという人ありきだったと思います。だから、FEVERの場所が新代田じゃなかったとしても、西村さんがつくったライブハウスなら俺らは出てたと思う。
西村:最初から新代田にライブハウスをつくるつもりはなかったんですよ。はじめは下北でやろうかとも思ってたけど、ロフトグループに申し訳ない気持ちもあったし、それ以上に家賃が高すぎて。それで、「駅近が面白そうだな」と思ってたらたまたま隣町の駅前にいい物件があったから、「これはいいな」と。
TGMX:最初は、「新代田? 代田橋? よくわかんねぇな」って、こんなに近くに住んでるのに区別つかないぐらいの街で(笑)。ところで、FEVERってジャンルはないんですか?
西村:そこも師匠からの教えというか、カッコいいものをちゃんとカッコいいと言える環境づくりをしたくて。だから、たとえお客さんの数が3人でも、伸びていくだろうと感じたバンドならしっかりサポートしていくっていう。そういうところに夢を持ちたいんですよね。ただ、これは課題でもあるんですけど、ここ2、3年「FEVERはホームだ」って言ってくれるバンドが増えてない気がして。若いバンドがもっとこっちに来てくれたらいいなと思ってるんですよね。
TGMX:ああ~。
西村:その原因のひとつとして、FEVERの敷居が高くなっちゃってるらしいんですよ。
TGMX:絶対そうですよ。それは宿命ですよ。
西村:誰でも出られるライブハウスにしたいのに、それがすげえ嫌で。
TGMX:すでにある程度名前が知られてるバンドばかりがFEVERでやるっていう。
TDC:だからFEVERでイチから育てるのが難しい。
西村:そうですね。シェルターではバンドを育てた経験があったので、余計にそういう状況が歯がゆかったりして。
TGMX:どうしたらいいんだろう。昼の部をバンバンやるとか?
西村:まあ、ないものねだりなのかもしれない。はじめの頃は全然スケジュールが埋まらなかったりしたし。
FRONTIER BACKYARD 撮影=垂水佳菜
TGMX:僕らはFEVERで長くやらせてもらってるからわかりますけど、最初の頃より照明が増えたり、音響もよくなってハコのグレードが上がってきてるから、みんな使いたがりますよ。
西村:シェルターでは先輩の顔を潰さないように仕事をしてたんですけど、FEVERで10年続けてきた今はちょっと意識が変わってきましたね。
TGMX:10年ですもんね。
西村:そっちは15年じゃないですか(笑)。昔からお2人を見てますけど、たとえ電源が落ちても、カッコいいことをしてくれるっていうか、ピンチをチャンスにできるバンド力がある気がして。
TDC:最初の頃はすごくトラブルが多かったよね。太一(古川“TA-1”太一。フロンティアのライブサポートメンバー)のシンベ(シンセベース)の音が出ないとか。
TGMX:だから、そのための練習もしてた。「もし打楽器しか音が出なくなったら、こうやってつなごう」とか。電気がつながらないからって30分間ぼーっとしてるのはお客さんに失礼だし。
――トラブル対策をやってるバンドってなかなか聞かないですね。
TGMX:今はローディとかスタッフをつけてやってるけど、前はみんな若かったから適当だったんだよ。アンプ飛んだらみんなでただ首かしげたり(笑)。そういうことがあって余計に「これは自分らでちゃんとやらないとダメだな」って思ったんだよね。
西村:スキャフルもそうだけど、フロンティアも「音楽が楽しくてしょうがない」っていう思いが伝わってくるんですよね。フロンティアをやり始めた頃はちょっと音楽性が難しくなった印象があったんですけど、ここ何年かで楽しいことを追求する姿勢が前面に出てる気がする。
TGMX:スキャフルとは違うことをやろうと思ってたから難しくしたかったっていうのがあったんですよね。でも、それじゃああまり伝わらないなっていうことに気づいて、ライブをアッパーに見せたり、そういう方向に見せ方が変わっていったんですよ。
TDC:最近、自分たちの昔の音源を聴く機会があったんですけど、曲がごちゃごちゃしてて全然わかんないんですよ。「これ、どういうことなんだろう?」っていうのが多い。「このコードは合ってるのか?」とか、いろいろと再発見できました(笑)。
西村仁志氏 撮影=垂水佳菜
――西村さんが2人のことを長年気にかけている理由はなんですか?
西村:面白いことを追求しようという姿勢が2人には常にあって、それがまたバンドマンとは違う視点だったりするんですよ。もちろん、完全にバンドマンなんだけど、ミュージックラバーでもあるし、ちょっと不思議な2人。ライブでも毎回何か面白いことを仕込んでくるし。
TGMX:僕らはさておき、面白いことを考えてる人たちって今はすごくいっぱいいるじゃないですか。でも、今は世の中的にできないことが多くなっちゃって。ハードコアのライブだとドラムセットとかをステージから投げたりするけど、そういうのは今もあるのかなあ?
西村:FEVERでのライブで刺激的だったのはmilkcowですね。
TGMX&TDC:ああ~!
西村:マーシャルのボトムが飛んできたり。あと、ちょっと困ったのは火ですね。FEVERは天井が高くないので、それでちょっと面白いことになったりして。
TGMX:何か燃えたんですか?
西村:フロアでボーカルのツルさんが火を吹いたら、天井のエアコンフィルターがブワッと(笑)。
TGMX:うわぁ、ヤバい! それはヤバい!(笑)
西村:その後、何かが燃えた臭いがフロアに充満して大変でしたね。今でもそのフィルターは残してありますよ。
TGMX:あとでツルさんと何か話したりしたんですか?
西村:今でも「あのときはごめんね」って言われます(一同笑)。
TGMX:じゃあ、今度は俺が火を吹くしかないかなー(笑)。
西村:「TGMXさん、出禁です!」って(笑)。でも、出禁になるバンドって最近は聞かないなあ。
――出禁になってる居酒屋はないんですか?
TGMX:あるかもしれないけど、わかんないよね。ビールジョッキにおしっこしたことはあるけど。さすがにそれは「買い取ってくれ」って店から言われた(笑)。
TDC:それ、いつだっけ?
TGMX:ものすごい昔だね。ビールとおしっこを見分けるゲームをやって(笑)。もちろん、飲まないんだけどさ。まあ、買い取りっていうのも当然だよね。そのジョッキはしばらく機材車に乗ってた(笑)。
FRONTIER BACKYARD 撮影=垂水佳菜
――あはは!
TGMX:でも真面目な話、激しめなライブじゃなくても、ひとつでもいいから「あの日のあのライブ」って思い出してもらえるようなライブがしたいよね。例えば、会場の電源が落ちたっていうのでも、TGMXが異常にダメだったとかでもいいんですよ。
西村:何かを刻めたら。
TGMX:「あのときのあのライブね!」って思い出に残るのがいいなと。9月にFEVERでやるライブは周年というテーマはありますけど、何かひとつでもすごいことができたらいいですね。
――フロンティアの今後のビジョンは?
TGMX:曲をつくってライブをするっていうのは変わらないと思う。あと、これまでのライブは「サポートメンバーはこの人」って絶対決めてたけど、今後はいろんなバンド編成で、もっと流動的にやっていこうと思ってます。そして、そういう活動が曲に反映できたらなと。音源のリリースの仕方ももっとライブと連動させていけたらいいなと思ってます。例えば、会場限定リリースもけっこう早くからやってたし、そういうことは今後も続けたいですね。
――なるほど。
TGMX:あとは、がんばって新しいことを探したい。自分たちのなかでは何周目とかになることかもしれないけど、そこを自分たちで「フレッシュだ」って思えないとダメだと思うんですよ。自分たちの中ですでに答えが見えてる部分もあるんだけど、違う角度からチャレンジしていかないと楽しく続けられないから。例えば、FEVERでは何回もやらせてもらってるけど、これまでとは違う会場の使い方を探ってみるとか。そういうことを重ねていければ、「ああ、今日は楽しかったね」っていうことにつながると思う。俺らも、「あれはよかった、これは悪かった」っていうのがないと、やっててよくわかんなくなってくるからね。
――ええ。
TGMX:それに、100万円もらえた、10万円もらえたっていうお金の喜びは長くは続かないと思うんですよね。俺らはお金がほしくてやってるわけではないし、お金のためにやるならもっと売れる音楽をやるべきだと思うし。そうじゃないところに自分たちの存在意義を見出せないと「もういっか」ってなっちゃうと思う。俺らもだいぶオジサンのバンドになってきたし、「もういいよ、若い人に任せれば」って思うこともあるんですよ。若い人のほうがカッコいいに決まってる。これまで自分らもそう思ってやってきたし。「オヤジのバンドなんて辞めちまえよ」って。
TDC:それは本当にそうだね。50歳近いバンドって……。
TGMX:カッコいいわけねぇじゃん!(笑)
TDC:……って自分たちが20代の頃に言ってたし。
TGMX:カウンターじゃないやり方は自分たちでもわかってるはずだから、あとはもっとしっかりとした活動とその見せ方を探すだけですね。
――フロンティアはここにきて自由度が高くなっているような気がします。
西村:今度のFEVERではそんなライブを見せてもらいたいですね。フロンティアって元々自由度が高いから、そこからさらに上を目指すのはめちゃめちゃ大変だと思うけど、俺、スキャフルのTシャツに書いてあった「SORRY FOR PUZZLING SOUND」(困らせるようなサウンドでごめんなさい)っていう言葉がすごく印象に残ってて。難しい音楽だけど、ポップで楽しいっていう。「こんなことをできる人たちがいるんだ!」って当時から思ってたし、未だにその自由度の高さを探ってる2人はすごいと思うので、FEVERとしてももっと面白いことを考えて提案できるように、遊びに来たお客さんの印象に残るようなものになるように、一緒に探していきたいですね。2人には今後もずっと追いかけたくなる先輩であってほしいです。
TGMX:僕らも今度のライブのことを考えるだけでワクワクしてるし、いろいろ盛り込みたいと思ってるんで、ぜひ相談に乗ってください!

取材・文=阿刀“DA”大志 撮影=垂水佳菜
FRONTIER BACKYARD / 西村仁志氏 撮影=垂水佳菜

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